月下美人の語り草

月下美人の語り草

その瞳に映るものは・・・ 第25話


ラクチェ「ホントね・・・。」

手応えがないとはいえ、攻撃を加えれば一時分身からの攻撃は緩む。
その為、休む暇なく酒姫とラクチェは斬撃を繰り出し続けた。
しかし満足に動けないウェイブのフォローやラクチェ自身の疲労もあり、確実に追い詰められていた。

ブラムセル「クックック・・・どうした?我はここだぞ?」
ロゼ「くっ・・・ヤな奴!!」
ウェイブ「どこか・・・どこかに奴を見破る方法があるはず・・・!」

必死にブラムセルの一挙手一投足を見つめるが、答えは見つからないままだった。

ブラムセル「無駄だ。お前達がこの部屋に入った時から既に我の術中に嵌っているのだからな・・・。」
ロゼ「部屋に・・・?」
酒姫「まさかこの部屋自体に仕掛けが・・・?==」
ブラムセル「今更探したとて見つからぬわ。大人しくしておれば苦しまぬように殺してやろう。。」
ラクチェ「そうはさせるもんですか・・・っ!」

黒い炎をロゼに放とうとした分身に突撃し、一撃を与える。
攻撃は中断され、分身の姿が揺らめく・・・。

ラクチェ「なっ・・・!?」

ガシッ!
分身が不敵な笑みを浮かべたかと思うと、ラクチェの手を掴んだ。
別の分身が黒い炎を放ちラクチェを襲う!

ロゼ「ラクチェっ・・・!?」
酒姫「くっ・・・!!」

フォローに回ろうとした酒姫を、分身たちが行く手を遮り邪魔をする。
避けることもできず、ラクチェはそのまま炎に包まれた。
言葉を発することもできずしばらく熱と痛みに耐えていたが、炎が消えると同時にその場に崩れ落ちた。
酒姫とリエルは分身を蹴散らし、急ぎラクチェの元へと駆け寄った。

酒姫「・・・息はある。大丈夫、意識を失ってるだけだ。。手当てをすれば。。」
リエル「なんとかやってみるにゃあ!」

慣れない回復魔術を詠唱し始めるリエル。
ラクチェをリエルに任せ、ブラムセルへと向き直る酒姫。

ブラムセル「まず一人・・・だな。クックック・・・。」
酒姫「アンタ・・・死にたいのね。。」
ウェイブ「貴様だけは・・・許さん!」

重傷であることも忘れ、大剣を構えるウェイブ。
酒姫も冷たい視線を向け、殺気を放っている。
ブラムセルは面白そうに笑みを浮かべていた。

ブラムセル「そう吠えるな。お前達もすぐに同じような姿になるのだ・・・。」
ロゼ「・・・これ以上、好き勝手はさせない・・・。」
ブラムセル「クァッハッハッハ!!一体どうやって我を止めるつもりかね?未だ一撃すら与えられないというのに・・・。」
ロゼ「・・・ッ!!」

その笑いに逆上したか、ロゼは分身に突撃する!
さらに酒姫、ウェイブ、親衛隊も後に続き攻撃を仕掛けた!



数分後・・・。
一人、また一人と倒れていき・・・やがて立っている者はいなくなった。
皆、息はあるが動くことができない状況である。

ブラムセル「・・・クックック。もう終わりのようだな。。」

辺りを見回し、誰も反応がないのを確認すると思い出したかのように振り返った。

ブラムセル「・・・そういえば、お前もいたのだったな。」
リエル「ぅにゃっ!?気付かれたにゃあ!?」
ブラムセル「お前は術に長けているようだが・・・どうだ、我と共に来ぬか?」
リエル「ど、どういう事にゃあ!?」

真意を掴み取れず困惑するリエル。
ブラムセルは笑みを浮かべたまま言葉を返す。

ブラムセル「我はこの世界を我が物とするべく動いておる。その為の布石としてこの国を破滅へと導いたのだ。我一人でも事は成し遂げられるのだが、何しろ時間がかかりすぎるのでな。。手駒となる者が必要なのだ。」
リエル「これまたありきたりな理由にゃあ!」
ブラムセル「ぅぐっ・・・!ま、まぁそういう事だ。我に従うというのなら、命は助けてやろう。」
リエル「3秒考えるにゃあ。・・・1・・2・・3。お断りだにゃあw」
ブラムセル「ンなっ・・・!?」
リエル「確かに死にたくはないけど、アンタみたいなヘッポコ三流手品師にコマ使いされる程落ちぶれちゃいないにゃあ!」

器用にも中指をおっ立てて啖呵を切るリエル。
さすがにこれにはブラムセルもキレた。

ブラムセル「貴様・・・後悔しても遅いぞ・・・!」
リエル「やれるもんならやってみるにゃあ!」

もはや怒り心頭。
特大の黒い炎を作り出す為、魔力を集中させ始めた。
リエルは黙ってブラムセルを睨んでいる。
ブラムセルの眼前にリエルの10倍の大きさはあろうかという黒い火球が生まれた。
そして、それがリエルに向かって放たれる・・・前に消失した。

ブラムセル「がはッ・・・!?」

突然ブラムセルが吐血した。
魔力を放出しすぎた・・・のではない。
はたまたリエルが何かしたわけでもない。
次々にブラムセルの分身が消え、その内の一つだけが残った。

ブラムセル「ば・・・バカな。。」

二、三歩進み背後を振り返る。
そこには今までなかったはずの人影があった。
短い銀髪に紅い瞳。紺色のマフラーがトレードマーク。

蜘蛛「リエルさん、注意を引いてくれてありがとう(笑)」
リエル「どういたしまして、にゃあ!」
ブラムセル「貴様、いつの間に・・・いやそれよりも、一体どうやって我の幻術を見破れたのだ・・・!?」
蜘蛛「ふぇ。。幻術って。。?(汗)」

問われて困惑する蜘蛛。
どうやら心底わかっていないらしい。

ブラムセル「この部屋に入れば香薬の力で我が暗示にかかるはず・・・。」
蜘蛛「あぁ。。なんかこの部屋臭かったから。。マフラーでマスクを。。。(苦笑)」
ブラムセル「なっ・・・!?そ、そんな封じ方が。。」

かなりショックを受けるブラムセル。

酒姫「なるほど・・・媒体か。。==」
ラクチェ「手品のタネ明かしを見てみれば・・・なんだこんなモンか、って感じね。。」
ブラムセル「はっ・・・!?」

いつの間にやら倒れていた者が立ち上がり、各々の武器を構えてブラムセルを睨みつけていた。

ウェイブ「ここまでだな。観念しろ、ブラムセル。」
ブラムセル「くっ・・・。」

立場が逆転し、追い詰められるブラムセル。
苦々しげな表情でラクチェたちを見渡す。
幻術を打ち破られた今、勝ち目はなきに等しい。

ブラムセル「くっ・・・く・・クックック・・・。」
ロゼ「・・・・・?」
ブラムセル「クァッハッハッハハハハ!!!・・・面白い!まさかここまで追い込まれようとはな!!」
ラクチェ「・・・この状況で笑えるとは、なかなか大した奴ね。。」
ブラムセル「笑いたくもなろう?危機からの大逆転。そしてさらにそこから大逆転をこれからするのだからなッ!!」

ピシッ!
何かが通り抜ける感覚。
この場の誰もが身動き一つ取れなくなった!

ラクチェ「・・・ッ!?動けない・・・!」
蜘蛛「なっ!?なにこれ。。。(汗)」
ウェイブ「クッ・・・しまった。。」
ブラムセル「クックック・・・油断したな。。残念ながら我の力は幻術のみではないのだよ。」

動けずもがいている様子を眺めながら笑みを浮かべていたが、スッと表情を一変させ冷たい視線を走らせた。

ブラムセル「・・・さて、このままお前達を苦しませたいところだが、思いのほか先程の傷が深いようだ。。一気に片付けてしまおう。」
蜘蛛「も。。もしかして僕のせい!?(汗)」
ブラムセル「そうだな。お前から息の根を止めてやろう。。」
蜘蛛「いや。。ちょっと待って。。(泣)」
ブラムセル「待てぬな。心配せずとも痛みは一瞬。。安心して逝くがよい。」

蜘蛛の首を掴み、魔力を高めていく。
仲間達は助けに行きたくとも身動きがとれない。
蜘蛛の表情が恐怖に歪む・・・。
ブラムセルの腕に力が加わる。

ブラムセル「死ね・・・。」

ボッ!!!
何かが弾ける音・・・。
そして崩れ落ちる蜘蛛の身体・・・。
誰もが惨劇を見るのを躊躇い、目を背けた。
・・・その声を聞くまでは。

「あらあら・・・ダメですわよ?勝手なことをされては・・・♪」

この声は・・・。
ラクチェの、リエルの、酒姫の脳裏に焼きついているこの声は・・・。

ブラムセル「ぐううううぅぅぅッッ!!!き、キサマァァァアアアッッ!!!」
「くすくす♪大逆転から大逆転・・・さらに大逆転された気持ちはいかがかしら?w」

ブラムセルは吹き飛ばされた右腕を押さえつつ、声の主を睨みつける。
声の主は平然としたまま、妖艶に笑みを浮かべていた。
窓から差し込む太陽の光を浴びて、黒いフードから覗く銀の髪を眩しく輝かせている。

ラクチェ「・・・グレイス。」
グレイス「あら、覚えていて下さったの?嬉しいですわね♪」
酒姫「・・・相変わらず人を食った態度ね。。==」
グレイス「お褒めに預かり光栄ですわ♪」

トゲのある言葉に返答し、指をパチンと鳴らす。
すると呪縛から解放され、身動きがとれるようになった。

ウェイブ「あの呪縛をあっさりと解くとは・・・一体何者だ・・・?」
ラクチェ「・・・どういうつもり?何故私たちを助けるの?」
グレイス「くすくす♪さて、どういうつもりなのでしょうねw」
ラクチェ「茶化さないで!あなたが私たちに何をしたか、忘れたなんて言わせないわよ!」

怒りを露わにした視線に、グレイスは軽くため息をついて答えた。

グレイス「別に忘れてなんていませんわよ。。今日はその裏切り者をお仕置きしに来ただけですわ。」

言ってブラムセルに視線を送る。
ブラムセルは憎しみのこもった目でグレイスを睨み続けている。

グレイス「・・・先程面白いことを言っていましたね、ブラムセル・・・?」
ブラムセル「な・・何のことだ・・・?」
グレイス「『世界を我が物にする』・・・?人形ごときが大それたことを・・・。」
ブラムセル「クッ・・・我は彼奴に従っているのではない!利用しているだけよ!」
グレイス「あの方は貴方の考えなど既に御存知ですわ。所詮貴方は手のひらで踊っているに過ぎません。。」

心底冷たい・・・凍りつく程に冷たい視線でブラムセルを射抜く。

グレイス「それと・・・この方々に手出しをしてはならぬ、という命をお忘れになって?」
ブラムセル「ふん・・そのようなこと、我の知ったことではない!大体こやつ等に何があるというのだ!?」
グレイス「それは貴方のような者が知る必要のないこと。。貴方は黙って命に従っていれば良いのです。」
ブラムセル「断る!我は彼奴の手駒ではない!我は彼奴をも超えてみせる・・・!!」
グレイス「愚かな・・・あの方を超えるなど、誰にも出来はしませんわ・・・。」

グレイスは会話をしつつも徐々にブラムセルに近づいていく。
そしてあと一歩、というところで立ち止まる。

グレイス「どうやら貴方はもはや必要のない存在のようですわね。この手で楽にして差し上げましょう。」
ブラムセル「くっ・・・調子に乗るでない!貴様程度が我を殺せると思うたか!!」

左手に魔力を集め、グレイスに向けて黒い炎を放つ!
至近距離での攻撃に為す術もなく炎に包まれた。
・・・だが腕を一振りさせたかと思うと炎は消え失せ、傷一つないグレイスが笑みを浮かべて現れた。
その様子に狼狽するブラムセル。

ブラムセル「ば・・バカなッ!?」
グレイス「そろそろお別れですわね。。貴方は炎をお好きのようですから、それをお供にお逝きなさいな♪」
ブラムセル「待っ・・・!?」

ゴォッ!!!
火柱がのぼり、ブラムセルと呼ばれたモノは一瞬にして灰と化した。
圧倒的な力の差であった。
一同は呆気にとられ、グレイスをただただ見つめていた・・・。

グレイス「終わりましたわ♪お騒がせして済みませんでしたわねw」

笑顔で一同を見渡すグレイス。
それで我に返った者が一人。

酒姫「・・・あなたの後ろにいる・・・『あの方』って何者?==」
グレイス「さて、そんなこと言いましたかしら?w」
酒姫「まぁ、そんな簡単に言うとは思わないけどね。。」
グレイス「くすくす♪それよりもあなた方、あの程度の者に苦戦してもらっては困りますわねw」
ラクチェ「クッ・・・。」
グレイス「まだまだ死んでもらっては困るのですからね♪それではまたお逢いしましょうw」
ラクチェ「あっ!ちょっと・・・それ、どういう・・・!?」

ラクチェが問いかけた時には既に彼女の姿は消え失せていた。

また謎がいくつか残ってしまった。
しかし解ったこともいくつかある。
まだこの世界に暗躍している者の全貌は明らかではないが、着実に近づいている・・・そんな気がした。
ともあれ、ここでの戦いは終わった。
怪我人も多い為いつまでもこの場にいるわけにもいかず、一同は一先ず隠れ家へと戻るのだった・・・。

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