クラブ時代vol.3~派閥闘争~
日付を入れるのは実際に出勤した日だけにして、クラブ回想は
volを使って連続性を持たせることに変更しました。
その方が、わかりやすいですよね?
私は子供の頃、習い事をたくさんしていた時があり、
ピアノ・そろばん・英語塾に通っていた時は、忙しさでストレスも溜まり、
母親に止めたいと申し出たことがある。
英語塾はまだ通い始めて2週間というところだったので母親は、
「今は辛いと思っても何でも時間をかけて取り組むと、楽しくも
なってくる。辛抱強い人間にもなる。だからすぐに止めるなんて言わずに
頑張りなさい。」と言って、すぐに投げ出してはいけないという
教育方針は、その後も一貫していた。
だからなのかは知らないけど、私が今まで経験したことのないクラブ勤務は
最初の1週間、地獄の拷問のように感じたにも拘わらず、
2年近くも続けることになった。もっとも母親は、
「そんなことは律儀に続けなくてもいいの!!」と言って怒るかもしれないけど。
勤め出して、3週間くらいした頃に、ビビアン・スーを
高校生にしたような感じのかわいい女の子に話し掛けられた。
彼女は19歳。
バレエのためにロンドンに留学する資金を貯めるためにこの業界に
足を踏み入れたとのこと。
色が白くて肌のきれいな子だったが、どう見てもさっき掘り起こしたばかりの
さつまいものように田舎っぽい子だった。いやらしい話、
「この子と仲良くしても、全然得なことはないだろうな」とその時
思ったことをよく憶えている。
その頃、私は仕事のやり方が少しずつ分かってきていた頃で、
誰と仲良くすれば、紹介指名がもらえるのか?どこの派閥に属しておけば、
安心なのか?ということを漠然と模索中だった。
私はこの商売、どうせやるなら、私に会いにきてくれるお客さんの
接客がしたいと考えたし、まずは紹介指名でももらわない限り
永遠にヘルプめぐりをするのだろうという不安もあって
結構焦ってきていた。
彼女はわたしにとって仲良くする必要のない人のように思われたのに
何故か、妙に惹き付けられてというか、ひきずり込まれるような感じがあって
仲良く話をするようになった。
彼女19歳。私22歳。
当然のことながら、妹のめんどうを見る姉のようなスタイルだったのだけど
1ヶ月としないうちに、彼女にめんどうを見てもらうような格好に
変わってしまった。
彼女は店始まって依頼の大当たりだったのである。
毎日指名が10本入り、毎日同伴出勤(これについてはまた別の機会に)をし
月間No1、チェーン店全店のNo3になるくらい売れに売れまくっていった。
仲良くしている私は、彼女に紹介指名をもらい、そのお客をきっちり
固定させることで店長にも信頼されるようになり、指名が無い時も
ヘルプには廻らずに質のよさそうなフリー客(特に指名のない人)に
付けるようになった。
その結果お給料もあがり、毎日にも張りが出て、堂々と接客できるように
変わった。
ところが、彼女や私やその仲間たちが、うまく階段を上っていることに
おもしろく感じない人間も少なからずいて、派閥同士の激しい闘争が
繰り広げられるようになった。
前に、ロッカにー水をぶっ掛けられたことがあると書いたけど
それも闘争の1部である。私たちが仲の悪かったそのグループは
皆んな元ヤンみたいなカンジの子達で、髪は金髪、スーツはベルサーチ
口癖は「見てみて~かわいくな~い?♪」。
典型的ブリッ子(死語だな)ヤンキー馬鹿娘たちだった。
私たちのグループは、女子大生も混じっており、清楚なお嬢様風?
だったので犬と猿のように気が合うわけは無かった。
しかしお客さんはそんなことは全然知らないので、
ベルサーチ軍団とお嬢様チームの一員が、同じテーブルに付く事もある。
ベルサーチ軍団の固定客は金のネックレスに今更リーゼント風の
力仕事系の人が多く、雰囲気もぴったり合っていたのだが、たまに趣味の
違う男の人もいて、ヤンキーの集会の中にフェリス女学院のハマトラな
お姉さんがひとり紛れこんでるような不思議な情景が作られることがあった。
私もそういう状況に陥ったことがあるが、ベルサーチ軍団の意地悪は
嫌だったけど、そのお兄さんは感じのいい大工さんで、気さくな人だった
ので人を見かけで判断しちゃいかんな~。と反省する良い経験になった。
ベルサーチ軍団がお客さんのの前で意地悪をする仕方は、
私が恥をかくようなことを言ったりしたりすることで、
陰では、ロッカーを蹴飛ばしたり、水をぶっかけたり、持ち物を
盗もうとしたりする。
具体的には、わざと私の飲み物だけを注文せずに乾杯のタイミングを
ずらしたり、私がわからない話を延々と続けたりといったことだが、
大抵は私を指名したお客さんがかばってくれたので、彼女の株が下がるだけで
こっちは痛くも痒くもなかった。お客さんの前で意地悪をする子は
賢くないと思う。自分の価値がどんどん下がってしまうということが、
どうしてわからないのか不思議でならない。
陰での意地悪は、殆ど犯罪なので、自分の身を守るため鍵の管理だけは
徹底していた。女の子の1人は、鍵をかけ忘れたために、化粧品を盗まれ、
私服を踏み潰されていた子がいた。女のロッカールームの中は
スラム街のような物騒さと、ムッとするような香水の香り
で満ち満ちていた。
私はベルサーチ軍団をやっつける1番の方法は、彼女の成績を抜くことだと思い
殆ど執念のような思いでランキングアップにチャレンジすることになった。