いつもの たぬき

いつもの たぬき

長女 風花随筆文学



高校生の部 優秀賞・仁愛女子短期大学賞〉

   「ふれあいを通して」

                  福井県立00高等学校 りきkkぱぱ長女

 母と母の友人二人と食事をした私は、この三人の関係をとてもすてきだなぁと感じた。

 母の友人の一人は、ライアーを演奏して、人形劇をしたり、小学生にお話会をしたりしているお寿司屋さんの若奥さんだ。三人の小さな男の子達がいるのに夜遅くまで働いている。一人の男の子はアトピーにかかっていて、なかなかねむれない子どもにつきっきりになるそうだ。睡眠不足が悩みだと言う。

 もう一人の人は、秋田美人の薬剤士さんだ。料理が上手で、家の中もとてもきれいにしている。私は、「自分がなりたいものに、なればいい。」とはげましてもらったり、アドバイスをもらったりする。この人の子どもは、ダウン症という障害をもって生まれた。三、四回死ぬまぎわまでの状態になったりしたけれど、がんばって生き続けている。一年間入院生活を送っている時に、おみまいへ行ったが、とても痛々しかったのを覚えている。でも、この人は毎日、つきっきりで看病している間、いつ、どんなことが起こっても覚悟はできているよと、笑顔で一日一日を過ごしていた。

 二人の母の友人には共通しているものがあることに気づいた。二人ともがんばり屋さんで、子どもに、大きなハンディキャップがあるということだ。そして母にも同じような共通点がある。母もまた障害児を持つ。つまり、私の弟は障害児である。自閉症という障害だ。今の弟は元気に小学校へ行っているが、昔の弟は見ていてとても苦しくなった。偏食がひどく、決まったパンしか食べないし、会話もしない。一人の世界に入ってしまい、目もなかなか合わせてくれなかった。母は何かあると苦しそうに泣いていた。それから、すてきな先生や、家族の努力で弟はだんだんよくなった。初めて家族の名前を呼んでくれた時の喜びは今でも忘れない。弟とのふれあいを大切にしたおかげで、弟の閉ざされた心が開きだした。母もがんばり屋さんだと私は思う。

 母と母の友人二人。自分達の苦しさ、うれしさを話し合って、はげまし合っている。母が、友人二人に「生んでくれてありがとう」という本について話していたのを覚えている。この本を通して母は、障害のある弟と生きる意味を感じたそうだ。私は母達の姿を見て、すてきだと感じることができたのは、お互いのつらさをのりこえて、はげましあう仲間ができて、どんなハンディキャップをもっていたとしてもすばらしい人生を歩んでゆけることに気づいたからだと思う。年も育ちも違う三人は子どものとりもつ縁で出会ったのだ。もちろん自分自身をはげますことも大切だ。母の友人も、絵を描いたり、自分の思いを筆ペンで表現することによって、がんばろうという気持ちにするそうだ。でも私は、「人は誰かを支え、誰かに支えられながら生きていくんだ」と思う。私は母や母の友人二人とのふれあいによって、それを学べた気がする。私にもいつか、こんな仲間ができたらいいなあと思う。

 母によると、子どもの障害を知った時は、絶望のどん底だったという。何がいけなかったのか。どうしてなのか。と自分を責めるばかり。でも、しばらくすると悩んでばかりいられない。と、受け入れてくれる保育園を探したそうだ。この保育園で三人は出会った。初めは、三人それぞれ自分の子育てで精一杯だったという。母も半年、弟と通園して毎朝手おし車やハイハイ運動をした。体と脳の働きを統合するのにいいときいたからだ。だんだん弟が言葉を覚えたり、パニックが減っていくにつれて母にも余裕ができたのか明るくなった。それから、保育園にはアトピーやダウン症の子がいるのに気づいたという。障害を持つ親同志ではげまし合えるようになったのもこの頃からだ。お互いの子の成長を喜び合えるような仲になっていった。この保育園は、障害児も快く受け入れていろんな指導法を考えてくれる。海、野山、園庭など自然の中で、木造の天井の高い開放感あふれる園舎で弟達は過ごした。園長先生は、入園時に落ちこんでいる母にこう言われたそうだ。「きっとこの子のおかげで、他の親が味わえない感動を得られるはずですよ。」と。この言葉どおり母も二人の友人も、つらい苦しい時をのりこえ、子どもの小さいけれど、一つ一つの成長に喜び、幸せを感じているのだ。時々この三人は「この子達は神様からの贈りものよね。私達だったら育てられると、母親に選ばれたのよね」と笑って話している。そうやってひたむきに生きる三人を本当にすてきだなあと感じる。そして、この三人は、自分達のハンディキャップを持った子が明るくすばらしい人生を歩めるようにと考えている。私も、人とのふれあいを通して、この三人のような優しさと強さを学んでいきたい。



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