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2007.08.08
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カテゴリ: カテゴリ未分類
阿久悠さんが亡くなった。

ガンも患っていたし、70歳といっても、そのことに驚きはなかった。けど、かなりショックだった。

ちょうど、先週土曜日、古くからのライター仲間と飲んでいて、そんな話が出たんだった。なぜ、小説を書かないのかについて。小学校の頃までは小説家になりたいと思っていたんだけれど、CMの衝撃を受けて。けっきょく、何が面白かったかというと、枷(カセ)なんだよね。クライアントがいる、商品がある、それを受け止めるユーザーがいる、そのカセ。ただオレの世界(オレじゃねぇけど)を、オレの言葉で知らしめること(押し付けること?)に、あまり魅力を感じなかった。何かを売りたい人がいて、その旨味を伝えるために、時代の空気を含んだ言葉を探す。見つかって、届いて、それがちゃんと消費に結びついて。あー、いい時代だった。おいしい生活。

阿久さんがまさにそうで、あの人は、広告畑の人。歌い手がいて、メロディがあって、時代のほしがる空気があって、それに応える言葉が自分の中から湧き上がって、ピタッと世界がハマる。それ以上の至福はないと思う。何よりも好きなのが、言葉と人だから。作詞家というよりPです。

いまの自分の十八番は「津軽海峡冬景色」。その前置きでいつも語るのが、「阿久悠の弟子から薫陶を受けた弟子の弟子」。函館のスナックで歌ってた人が、阿久悠の関係していたカラオケ教室の先生(作詞とは無関係)から教わったという理由(ウソじゃないけどホントでもない)。どうにもツボなのが2番の「ごらんあれが竜飛岬北のはずれと…」以降。けっきょく自分も、阿久さんの術にハマったわけだけど。

最初の出会いは「時の過ぎ行くままに」だった。多感な受験生の頃。高田馬場の珈琲館でいつも流れていた。つながるのはフラスコみたいなコーヒーフロート、ピーマン玉ネギソーセージ入りのナポリタン、ジュリーと長谷川和彦と桃井かおりとショーケンと神代さん。いまだにコテツの散歩のとき(泣)、月明かりが暗いと口をついて出た。「あなたはすっかり疲れてしまい生きてることさえいやだと泣いた。壊れたピアノで思い出の曲片手で弾いては溜め息ついた」「身体の傷なら治せるけれど心の傷みは癒せはしない。小指に食い込む指輪を見つめあなたは昔を思って泣いた」。

けっきょくこれが自分の原点だと思う。阿久さんは、美しい日本語を投げかけて、つねに時代に問い続ける。「狙い撃ち」も「サウスポー」も、高校野球の応援の定番になっている。私のいまのもう一つの十八番は「舟唄」だ。大好きな歌詞でも、歌わずに鼻息だけですごくウケる。一滴も飲めないくせに「時代おくれ」を作った彼の気持ちが、腹立たしいほど理解できる。一つの言葉にしがみついて、それが誰の心にもポトンと落ちるために、血道を上げて三千世界を築くクセ。

言葉を慈しむこと。言葉なしに伝えること。二つのことを教えてくれた恩師を、同時に失った。この先何をしろというんだろう。





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Last updated  2007.08.14 22:08:09
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