やさぐれていますが、なにか?

やさぐれていますが、なにか?

PR

×

プロフィール

777・にー

777・にー

カレンダー

バックナンバー

2026.06
2026.05
2026.04
2026.03
2026.02
2010.05.07
XML
カテゴリ: 【滝が~】 関連
 奨月のおかげで、どうやら少年……いや……タキは、闇の外へ出られたようだった。
(なんだか頭がぼうっとしてる……)
 そこがどこか、などという問いには、タキには答えられるはずも無い。見覚えの無い場所だった。もっとも、タキには記憶がないのだから、忘れてしまっているだけなのかもしれないのだが。

 一面の緑と、まぶしい光の中に、タキは立っていた。空色の長い髪が、風にふかれてさらさらと流れる。それは流れる川のように、太陽の光を受けて輝いていた。
 タキは胸を反らせ、大きく息を吸い込んだ。
 肩に巻いておいたバンダナを解き、その不思議な色の髪を結わえる。
(ただ考えてても何も変わらない。まずは自分が動かなきゃ……)
 自分自身に気合を入れてみる。そうやって改めてあたりを見回すと、木々のあいだに家々がかすんで見えた。
(村があるんだな……)


 竪琴の音が響き、その余韻も消える頃、タキの足元の草は、さあ……っと音をたてて、二つに分かれていた。その道はやがて、人の手によってつくられた道へとつながった。しばらく歩くと、ひとつひとつの家の特徴がわかるぐらいに、村は近づいた。タキはその村の一角から、細い煙が昇っていることに気づく。
(焚き火……かな)
 心に何かひっかかったまま、タキは村へと足を進めた。煙ののぼっていたところから、小さな火の手があがる。
(───火!!)
 タキはそこへ向かって駆け出した。なぜかはわからないが、駆け出さずにはいられなかった。
 炎はどんどん大きくなっていく。
 村の手前まで来ると、村の人々が口々に何かを叫んで、火に水をかけている様子が見えた。タキはそれを見て一瞬立ち尽くし、すぐに村へと駆けた。
 村の中、火の元に近づいてきたのだろう、きな臭さが目と鼻を突く。

 タキの目の前で、一軒の家が炎に包まれていた。
 身を引こうとした瞬間、その家の半分ほどが、音を立てて崩れた。
 タキの中に、言いようのないおかしな感覚が走った。

 タキの体の力が抜け、その場に膝をつく。呆然としているタキの前で、再び家が崩れ、タキを炎に巻き込もうとしたそのとき、大きな龍が、タキの目の前に降りた。龍の出現と同時に、先ほどまでの業火は消えた。龍は再び空に舞い、村中を駆けた。龍のからだを透かして、村の様子が見える。村を一巡りして、龍は再びタキの前に降りた。
 龍の背には一人の少年が立っていた。少年が底から飛び降りると、水の龍は霧になって散った。

 少年はタキに手をさしのべた。
「大丈夫?」
 タキは放心したまま、少年のことを見上げる。少年は微笑みながらタキに話しかけた。

 タキは力なく、うなずいた。
 少年のしっとりと濡れた金色の髪が、太陽の光を浴びてキラキラと輝いていた。水で固まった前髪と、うしろで固く編まれた三つ編みの先から、しずくがぽたぽたと落ちる。少年は髪をほどき、髪の毛の水を絞った。
「立てる?」
 言いながら髪を指で梳いて、再び編みなおす。タキ放心したまま、座り込んでいた。
 少年はタキの腕をつかんで、脇に自分の腕をさしこみ、立たせた。バランスを崩したタキを、少年は力強く支えた。
「しっかりつかまってて」
 少年はタキの肩を支え、まだ少し煙のたちのぼる家をあとにして、ゆっくりと歩いていった。
 ふと、なにかうしろで音がした。少年が振り向くと、少年の頭上で何かがキラっと光った気がした。
「――――?」
 気のせい、だろうか。そう思った少年は、先を急いだ。向かった先の広場には。かなりの人数があつまっていた。村の人々が皆、火事の様子を心配して、集まってきたのだろう。そのうちの一人の男が、こちらに気づき、少年に声をかけた。
「おーい、シフー!!」
「お~、アツさん。無事だったんだ?」
 少年は笑顔でそれに答えた。声をかけてきた男が、無事じゃ悪いかよ……と冗談っぽく言いながら、こちらへ駆けてくるのを合図にしたように、他の村人もどんどんこちらへやってきた。
「……みんな大丈夫みたいだな」
 ひとりひとりの様子を見て、少年は言った。
「――村の裏手の廃屋が全焼したな――大きな被害はそれだけ。まあ……周りの二、三軒、ちょっと焦げちゃったみたいだけど……焦げただけだし。被害状況はそんなとこ」
「なんかよ、焚き火が風にあおられたみたいだぜ」
 アツという男が、原因を報告する。すると一人の子供が。青い顔をしてたずねた。
「……それって……村の裏口の……」
「おうよ。シンのとこの火だったんかい」
「――ごめんなさい! ぼく――!!」
 シンが泣き出しそうな顔をして、言葉を続ける。
「ちゃんと見てなかったから……ぼくのせいで……ぼくの……」
 アツはそんなシンの頭をくしゃっとなでて、言う。
「そんなに気にすることねえやな、燃えたのは廃屋だしよ。わざと燃やしたわけじゃねえんだしよ。なあ、シフ?」
「そうそう。アツさんの言うとおり。男はもっと、でっかくかまえなきゃだめだぞ。俺みたいに」
「ちげえねえや。けどよ、シフ。おまえ 『俺みたい』 ってなんだよ」
 村の人たちがいっせいに笑った。けれどシンは笑わなかった。うつむいたまま泣き出しそうな顔をして、つぶやく。
「でも……これだけで済んだのは……もし、シフがいなかったら……」
「あのな、 『もし』 とか、考えたってしょうがないだろ。俺はこの場にいたんだから、よけいな想像はしなくていいよ。みんな無事だったんだから、それでいいんだよ、シン。これからは、気をつけるよな?」
 シフはそう言って、優しく微笑んだ。シンもシフにそういわれて、笑顔になる。それを見届けてから、アツがシフに話しかけた。
「ところでよ、シフ……さっきから気になってたんだが……誰だい、そいつは?」
「ん、目の前で廃屋が全焼しちゃってさ~、ちょっとびっくりしたんだよな」
「……そうでなくて、ラ・ルーダのもんじゃ……」
「そんなのはどうでもいいじゃん、な~」
 シフはアツの言葉を無視するように、自分の傍に立っているタキに話しかけようと、顔をのぞく。そして驚いた。タキの顔は蒼白で、目はひどくうつろだった。呼吸も荒い。
「おい……おまえ……」
 話しかけるが、返事は無い。真っ青な顔はふき出すような汗で濡れていた。シフがタキの額に手をやったとき、その身体にタキの全体重がかかった。
「!!」
 シフはタキを抱き上げた。
「どうした、シフ」
「……気ィ失っちゃったみたいだ。それにひどい熱で……。アツさん、あとは……」
「わかった。こっちはまかせとけ。早く診てやんな」
「ん……悪い。なるべく早く、手伝いに戻るから」
「気をつけろよ」
 アツに頭を下げたシフは、タキのことを抱きかかえて、駆け足で広場をあとにした。


+++++


励みになります。がんばれる気がします。


にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ
にほんブログ村






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2010.05.10 11:52:26
コメント(4) | コメントを書く


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


2-2 のこと  
777・にー  さん
出ましたね、シフ。
この人は、目が緑色です。
白銀のシフィルは、青いです。
アツさんのフルネームは、あるんだけれど……この話では、出てきません。

ダッシュ分割、直していません。
(2010.05.08 09:58:39)

根円・・・。  
シキシャ さん
 すいません、ちょっと気になったものですから。
あと2,三軒 ってとこも・・・。

 シフ=シーフの略!?盗人かよ・・・。
とかひとりで妄想。
 アツ・・・。
卓球のゴム質の部分の、厚さをとっさに思い出してしまった。
私はなにやってんだろ、文句っぽくなってきたかな? (2010.05.09 21:50:23)

グハッ !!( ゚∀゚)・∵.  
777・にー  さん
気になる気になる~。よく気づきましたね。すごい。
ワードのほうは直しました~。
ありがとうございます。気づかなかった。

シフ、タキ、アツ 昭和初期とか、歴史小説の中に出てきそうな名前だよね~。

きっとこの村の風習なんだよ。ごたいそうなフルネームを、テキトーに短縮するのは。

アツ……フルネームは 【アーツェル・ヴェル-=ガ・〇ー〇】 といいます。〇部分は、内緒。

………………バレバレ?
(2010.05.10 11:40:42)

あっちゃん  
シキシャ さん
 アーツェル・ヴェル-=ガ・〇ー〇
・・・。
〇ー〇がわからぬむ。
うーんなんだろう?
・・・シーフが通るとしたら、ローグとか?
ちょっと泥棒関係で探りを入れてみる私。 (2010.05.10 20:01:25)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: