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作者:J・ラコタ(PN&HN) ラルド「・・・一体、今のは何だ?」 ウランは落ちてきた少年の顔を見た。 ウラン「・・・これ、ライディスだ。」 ファラス「・・・やはりな。プラノズの手下か。」 カイン「どうして分かったんだ?」 ファラス「俺たちは不思議な力を持っているが、精神をさらに鍛えれば相手を感じることが出来る。」 ラルド「・・・連れて、帰るか?」 ファラス「危険だ。コイツはプラノズの手下だ。何をするか分からない。」 ファラスは近くにあった木の枝を手に取り、長剣に変化させて構えた。 ファラス「ここで殺す方がいいかもしれない・・・。」 カイン「待った!」 ファラス「カイン、またか・・・。」 カイン「何も殺さなくたって・・・。それに、怪我しているじゃないか。」 ファラス「・・・。・・・ふん、好きにしろ。」 ラルド「カイン、手伝うぞ。」 ―ファラスの家― ミラルの代わりに、今度はライディスが寝かされている。 ナイフが貫通した部分には包帯が巻かれている。 ファラス「・・・問題はこれからだ。ウラン、確かお前が言う通りならば、プラノズを倒すためには、俺たちのような念の力を持つ少年が必要なんだな?」 ウラン「そう。」 ファラスは窓の外を見た。 ファラス「・・・今日は満月だ。・・・だが、嫌な予感がする。」 ―午前2時30分― 満月の明かりが照り、その中を1つの影が走っていく。 頭から狼の耳のような物が生えている少年。 彼の名前はユリウス。 ライディスの兄である。 そして、彼は指笛を鳴らした。 その音に反応したのは狼たちだった。 狼達はファラスの家へと向かっている。 だが、その事にいち早く気付いたのは、ファラス自身だった。 ファラス「おい、カイン。・・・起きろ。」 カイン「・・・ん、・・・?・・・何だよ、今、真夜中だろぉ・・・。」 ファラス「寝ている場合じゃない。狼が来る。」 カイン「そんなわけ・・・、」 しかし、その時、狼の遠吠えが聞こえた。 カイン「・・・マジかよ。」 カインはすぐさま、ラルドたちを起こしに行った。 ファラス「・・・やっぱり、お前達はペアで行動するのか。ということは、今感じている気配は、お前の兄、ユリウスということか?」 ファラスはライディスの寝顔を見ながら言った。 ファラス「・・・。」 ファラスは家から飛び出した。 ユリウスは狼達と共に移動している。 狼で家を取り囲む気だ。 だが、ユリウスの目の前に、ファラスが現れた。 ライディスを背負って・・・。 ファラス「・・・ユリウス。」 ユリウス「ファラスか・・・。」 ファラスはライディスを近くの木の下に降ろした。 狼達は唸り声を上げている。 ユリウス「僕達に付いてくる気になったのかい?」 ファラス「・・・いいや。だが、目的は俺だけのはずだ。すぐに狼達を森の奥へ返せ。」 ユリウス「・・・ラルドたちもいるんだろ?」 ファラス「・・・あぁ。」 ユリウス「だったら、彼らも仲間に加えなくてはいけない。」 ファラス「それならば・・・、」 ファラスは木の棒を手に取り、長剣に変形させた。 ファラス「俺に勝てば、弟は返してやるが、二度と俺の目の前に姿を現すな。 だけどな・・・、ここで負けるわけには行かない!」 ユリウス「君が勝ったら?どうする?」 ユリウスの体が変形していく。 ファラス「!?」 ユリウス「知ってかい?僕らの能力を・・・。」 ユリウスの体の変化が終った。 ユリウス「俺ら兄弟の持つ能力は、獣化。」 ファラスは剣を構える。 ユリウス「覚悟はいいかい?」 ファラス「あぁ。」 ユリウスがファラスに飛び掛ってきた。 しかし、ファラスもそれを避けて、剣から衝撃波を飛ばす。 その様子を見ているのは何十匹もの狼達だ。 狼の一匹がファラスに飛び掛った。 だが、ユリウスはその狼を払いのけた。 ユリウス「邪魔だ。こいつは、俺の獲物だ・・・。」 ユリウスは再び、ファラスに向き直った。 そして、爪を振るった。 しかし、ファラスはそれを剣で受け止めて、ユリウスを突き飛ばした。 ファラス「(やるな・・・。・・・だが、)」 ファラスは一歩踏み込んだ。 すると、いきなり姿が消えた。 ユリウス「な、何!?」 だが、ファラスはユリウスの後ろに回り、 ユリウス「!?」 ファラス「・・・。」 ユリウスに重たい一撃を放った。 ユリウスはその際に吹き飛ばされた。 ユリウス「く・・・ぅ・・・、」 そして、気絶した。 ファラス「・・・まだまだだな。」 狼達は退散していく。 ファラスはユリウスとライディスを縄で縛りつけた。 その直後に、ラルドたちが駆けつけてきた。 カイン「ファラス!」 ファラス「どうにか、片付けた。狼を操っていたのはこいつだったんだ。」 ファラスはユリウスを指差した。 ウラン「・・・ユリウスだ。」 ラルド「・・・やはりか・・・。」 ウラン「うん。プラノズの仲間だよ。」 ファラス「だが、軽い物だ。数秒で勝負が付いた。」 ラルド「本当か?」 ファラス「あぁ。」 だが、その1分後。 ユリウスとライディスは目を覚ました。 ライディス「うぅぅぅ、・・・兄さん?」 ユリウス「ライディス。起きたか・・・。」 ライディス「ファラスが目の前にいる・・・。今なら倒せるよ。」 ファラスは背を向けているのを見たライディスはそう言った。 だが、次の瞬間、ライディスは兄から予想もしないことを言われた。 ユリウス「やめるんだ、ライディス。」 ライディス「どうして!?」 その言葉に驚きを隠しきれないライディス。 ユリウス「俺は・・・、・・・ファラスに負けた。」 ライディス「え・・・?」 ライディスにとっては衝撃的な一言だった。 ユリウス「油断していた・・・。あいつは想像以上に強かった。一瞬で勝負が付いたんだ。」 ライディス「そんな・・・。でも・・・。」 ユリウス「つまり、俺たちはファラスの言ったことを守らなければならない。」 ライディス「何故・・・。」 ユリウス「あいつと約束したからだ。「約束を守る。」それは大事な事のはずだ。」 ライディス「そんな・・・。・・・僕はそんなの納得できない!」 ライディスは次の瞬間、獣化した。 そして、体を縛っていたロープを切り裂き、ファラスに飛び掛った! ユリウス「よせ!ライディス!!」 だが、この状態では、ライディスは制御が利かない。 兄であるユリウスの声など届かない。 ところが、ファラスはライディスが自分に飛び掛ってくることを反射的に知っていた。 そして、あっという間に身を翻して、剣の持ち方を変え、胴に「みねうち」を食らわせた。 ライディス「ぐは・・・、」 その瞬間、時間が滞ったように感じられた。 ライディス「(そんな・・・。)」 ライディスは吹き飛ばされ、倒れこんだ。 そして、元の姿に戻った。 だが、ライディスは気絶しなかった。 ライディスは腹に手を当てながら、立ち上がった。 かなり荒呼吸をしている。 ファラスはライディスに剣を向ける。 ライディス「はぁ・・・、はぁ・・・、はぁ・・・、」 ユリウス「ファラス!」 ファラス「分かっている。命をとるまではしないさ。」 ライディス「はぁ・・・、はぁ・・・、こ、こんなの・・・、あ・・り・・・?」 ファラス「勝負は付いている。まだ戦う気なのか?」 ライディス「・・・お前らの仲間になんて、死んでもなるもんか!」 ファラス「・・・。」 ファラスは剣を捨てた。 剣はただの角材になった。 ライディス「・・・どういうつもり・・・?」 ファラス「丸腰だ。やるなら、やればいい。」 カイン「ファラス、正気か・・・?」 ファラス「あぁ。当然だ。」 ライディス「ぅ・・・く・・・、・・・望むところだ!」 ライディスはファラスの顔を殴った。 しかも、グーパンチで。 おぁ、痛そう・・・。 しかし、ファラスはまた立ち上がった。 ファラス「・・・どうした。お前の力はそんなものか?」 ウラン「ファラス!」 ファラス「来るな、ウラン!」 ファラスはウランにそう言った。 すると、今度はライディスがこう言った。 ライディス「どうして・・・、どうして、僕を殺さない・・・?敵ならば殺してしまったほうが楽なのに・・・。」 ファラス「・・・それはな・・・。」 ファラスはライディスに歩み寄る。 ファラス「・・・俺は長い間、その問いを自分自身にぶつけていた。」 ライディス「く、来るな・・・!」 ファラス「だが、その答えは今出た。」 ライディス「!!」 ファラスはライディスの腕を掴んだ。 ファラス「それは、「誰でも改心できる望みがある」からだ。」 ライディス「・・・/////」 次の瞬間、何故かライディスは気絶した。 カイン「お、おい!」 ラルド「大丈夫か?」 ファラス「大丈夫だ。・・・気絶しただけだ。」 ファラスはユリウスに寄った。 ユリウス「・・・どうするつもりだ?」 ファラスは木の枝を手に取り、握り締めて、剣に変化させた。 そして・・・、 スパンッ、 ファラスはユリウスを縛っていた縄を切り落とした。 ユリウス「・・・どういうことだ?」 ファラス「・・・弟と一緒にいたいんだろ?ならば、俺たちにも、そして、プラノズにも関わらずに、どこかで静かに暮らせ。」 ユリウスはライディスを背負った。 ユリウス「・・・。」 ユリウスは木から木へと飛び移って、何処かへと消えた。 ファラスはそれをただただ見ていた。 ウラン「ファラス・・・、本当にいいのかい?」 ファラス「あいつらもプラノズの犠牲者だ。誰とも関わらないほうが、あいつらは幸せなはずだ。」 カイン「だけど・・・、何かしっくりこないな・・・。」 ユリウスは木から木へと飛び移る。 しかし、ユリウスはファラスたちのいる方向に振り返り、木の上で立ち止まった。 ユリウス「(・・・本当に、これでいいのかな・・・?)」 ユリウスは戸惑った。 前へ進もうとするが、足が動かない。 ユリウスはファラスたちのもとへと引き返す。 ファラスを除く他のメンバーは家へと帰ったようだ。 ファラスは1人、森の中に座り込む。 だが、 ガサガサッと、音がした。 ファラス「・・・!」 ファラスは2つの気配を感じ取った。 すると、ユリウスが気絶しているライディスを担いで飛び出してきた。 ユリウス「ファラス・・・。」 ファラス「ユリウス・・・。」 ユリウス「・・・ゴメン。また戻ってきた・・・。」 ファラス「・・・もういい。何も言うな。」 その後、ファラスはユリウスとライディスを連れて、みんなの待つ家へと帰ってきた。 そろそろ、夜が明ける頃だ。 第11話へと続く。 |