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作者:J・ラコタ(PN&HN) ―森の中― ―ガンッ、 ―ガシィッ、 何かがぶつかり合う音がする。 ファラス「なかなかだ。セラ。」 森の中。小屋から少し離れたところで、セラとファラスはお互いに木刀を振るい合っていた。 今の音は木刀同士がぶつかり合う音だったのだ。 ファラス「だが・・・、」 と、ファラスは木刀でセラの足元を掬う。 セラ「あぁっ、」 ―ドサッ、 ファラス「勝負ありだ。」 と、ファラスは、木刀をセラの喉元に突きつける。 セラ「うぅ・・・、酷いですよ、足元を掬うなんて・・・、」 ファラスは、木刀をそこらへんに放り、木刀はただの木の枝に戻った。 ファラス「戦いの時には、相手に足元を掬われることだってある。それを実践してみただけだ。」 セラ「・・・はい。」 ファラス「さぁ、昼の稽古は終わりだ。」 セラ「・・・いいえ、もう一回。もう一回だけ!」 ファラス「・・・本気か?」 と、ファラスはセラの目を見て言った。 ファラス「・・・分かった。いいだろう。」 ファラスは再び木の枝を拾って、木刀に変化させた。 ファラス「今の練習を頭に入れて、本気で来い。」 セラ「はい・・・、やあぁぁぁっ!」 ―ガシィンッ ユリウス「まだやっているよ、ファラスの奴。」 ライディス「もう日が高いのになぁ。朝からやっているし。」 ライディスとユリウスは練習している2人の様子を見ている。 ―ギリギリ・・・、 ライディス「今日は、ラルドたちは町に戻っているけど、その合間にもこれだよ。 1日ぐらい休まなきゃ、体壊すって。」 ―ガンッ、 ユリウス「うわぁ・・・、本気でやっているよ、ファラスの奴。」 ライディス「・・・あの様子だと、ファラスよりもセラの方が大変みたいだけどね。」 ―ギィンッ、 ―1日前― ファラス「そうか・・・、町に戻るのか。」 カイン「あぁ。もう何日も家を開けっ放しにしているからな。いい加減に戻らないと。」 ユリウス「俺たちも行っていいか?」 ラルド「やめておいたほうがいいな。」 ライディス「どうしてさ?」 ミラル「その耳。」 ―ピョコ、ピョコ 2人の耳がわずかに揺れた。 ユリウス「それなら帽子が・・・、」 ウラン「帽子も持って来るのを忘れちゃったんだ。」 ライディス「でも・・・、」 ミラル「あと、この環境の方がやっぱり落ち着くんじゃないの?」 ラルド「都会なんて騒がしいだけだからな。」 ユリウス&ライディス「・・・それもそうだ。」 と、2人が納得したわけで・・・、ユリウスとライディスも小屋に残ることになった。 ラルドたちは町に戻って行った。 しばらくは帰ってこないだろう。 ファラス「さてと・・・、数日彼らがいないということは、しばらくゆっくり出来るわけだ。」 セラ「あの・・・、」 ファラス「ん、セラか。どうした?」 セラ「その・・・、言いにくいことですけど・・・、」 ファラス「?」 ユリウス「で、セラがファラスに頼んだんだよな。」 ―ギンッ ライディス「妹代わりの弟子に頼まれたら、さすがに断れないよねぇ。(笑」 ―ガンッ ファラス「そこ、五月蝿い!」 ユリウス「ゲッ、全部聞こえていたのか・・・?(-_-;」 ライディス「地獄耳だ・・・。(゜д゜||」 ファラス「(ここまでは良い。だが、次の攻撃は避けられるか・・・?)」 と、ファラスは、木刀を素早く動かし、そして、セラの足元を掬おうとする。 しかし今度は、セラは避けた。 そして、下の方に木刀があるため、上の防御が甘くなった。 セラ「(もらったーっ!)」 セラはその防御の甘くなった上面を攻撃しようと木刀を振り下ろした。 だが、ファラスはその攻撃を、素早く木刀で受け流して、一歩下がった。 セラの木刀は地面に突き刺さった。 セラ「(え、は、早い!!)」 セラの木刀が地面に刺さってしまい、なかなか抜けない。 そして、ファラスはセラに、またもや木刀を突きつける。 ファラス「・・・勝負ありだ。」 セラ「・・・。」 と、セラは木刀を降ろす。 ファラス「これで満足したか?」 ファラスも木刀を下ろす。 セラ「・・・。」 ファラス「とりあえず、今は昼飯時だ。昼食を食べてから稽古するのも構わない。」 セラ「は、・・・はい!」 ユリウス「あれれぇ。張り切っちゃって、まぁ。」 ライディス「兄さん、今のマズイんじゃぁ・・・、」 ―ドカッ、 早速、木刀の柄の部分が飛んできた。 ユリウスに命中・・・。 ユリウス「ぐぁっ、」 ―ヒューン・・・、・・・ドスン! ユリウスは木の上から落ちた。 ライディス「あーぁ、やっぱりこうなった・・・。」 落ちたユリウスは、目を回していた。 ―1時間後― 一方、ファラスとセラは小屋に戻って昼食を食べていた。 ・・・いや、食べ終わっていた。 ファラス「・・・セラ。」 セラ「な、何ですか?」 ちょっと慌てるセラ。 ファラスは一息ついて、次に彼はこんなことを言った。 ファラス「・・・何故、俺の所なんかに来た?」 セラ「え・・・、それは・・・、」 ファラス「確かに家に戻りたくないのは分からなくもない。 だが、いつまでもここに居ることは出来ないんだぞ?」 セラ「・・・まさか、私に「家に帰れ」と?」 ファラス「その通りだ。」 セラ「・・・嫌だよぅ・・・。」 ファラス「帰るんだ。」 セラ「嫌ぁ・・・。」 ファラス「・・・ユリウスとライディスを見ただろ?あの戦い方を。・・・いや、能力も。 これから俺が相手にしようとしているプラノズって奴の仲間には、他にもあんな感じの相手がいるかもしれない。 下手すれば、セラ。お前の命すらも危うい。」 セラ「それでも構わない。私・・・、あんなところに戻るぐらいだったら死んだほうがマシよ・・・!」 ファラス「バカッ、何を考えているんだ!」 セラ「それなら私と一緒に来て。それかダメなら、ダメなら・・・、ここに置いてください!」 ファラス「・・・出来ぬ相談だな。」 セラ「・・・。」 ファラス「・・・俺の特訓に付いて来られなければの話だ。」 セラ「え・・・?」 ファラス「午後も特訓してやる。ラルドたちが戻るまでずっとだ。その間、例え厳しくても、絶対に弱音など吐くな。」 セラ「・・・はい!」 ―午後1時半― ファラスとセラは、開かれた森の一本道をランニングしている。 セラは、息が上がっている。 だが、一方のファラスは疲れている様子が無い。 そろそろ900mだ。 ファラス「そろそろバテてきたようだな。息が上がっているぞ?」 セラ「い、いえ・・・、大丈夫です・・・、(でも、息が・・・上がってきた・・・、このまま、あと3kmも持つか・・・、)」 作者2だったら、恥ずかしい話、2kmを越える前にボロボロになっています。 しかし、セラは12歳で、オマケに女の子なワケだから・・・、・・・さすがに4kmマラソンはキツイ。 それにセラはあまり持久力が無い。・・・そう、ファラスはセラの弱点を既に知っている。 「コレだけやれば、大人しく家に帰るだろう」とファラスは考えていた。 だが、考えが甘かった・・・。 実際に、2kmを越えても、セラはファラスに付いて来ていた。 ファラス「(な、何っ!まだ付いてこられるのか!?)」 と、ファラスは驚いていた。 だが、実際には、セラはほぼ限界だった。 そして、遂に・・・、倒れてしまった。 セラ「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・、」 ファラスもその事にすぐ気付いた。 ファラス「なかなかやるじゃないか・・・、だが、まだ残り2kmある・・・。 そこまでお前は持つはずがない。諦めろ。」 セラ「でも・・・、どうしても・・・、ハァ・・・、・・・家には、・・・か、帰りたくないん・・・です・・・、」 ファラス「・・・それなら、もっと詳しく理由を聞こう。・・・当然、お前が回復してからだが。」 ―2時間後― ―ファラスの小屋― ファラス「さて・・・、詳しい理由を聞こうか。本当のことを全部話さないと、ベルギーに送り返す。」 セラ「・・・私・・・、」 ・・・次の瞬間、セラは衝撃的な事を言った。 セラ「私・・・、ロシアンシンジケートに売り飛ばされそうになったんです。」 ファラス「・・・何だと!?」 セラ「うぅ・・・、(泣」 セラは泣きながらも、話を続ける。 セラ「私の家・・・、莫大な借金を抱えていたんです。でも、父と母もその借金を返済するのに必死で、全然、私なんて相手にされなかった・・・。 そして、私聞いちゃったんです・・・。 ある日の夜に、知らない男の人が家に来て、父が「私達の娘を売ろう。それで私達の借金をチャラに出来るだけの金額を払ってくれ。」って言って、母が私の写真を男の人に渡したの・・・。 その後、男の人が私の写真を見て、「交渉成立だ」と言ったんです・・・。 「次の日に私を買い取ろうと来る」。私はそう直感して、急いで荷物をまとめて、やっとの思いで家を飛び出しました・・・。 もう・・・、自分の家には戻れないんです・・・、」 ファラスは、セラの目をジッと見る。 セラ「だから私・・・、ここを追い出されたらもう・・・、」 ファラス「・・・それ以上言うな。」 セラ「え・・・?」 ファラス「お前は、本当の事を言っている。よく、自分の辛い理由を話したな。」 セラ「・・・、」 ファラス「だが、ここに置いてやるわけにはいかない。」 セラ「え、そんな・・・、」 ファラス「・・・これからの特訓についてこられなければの話だ。」 セラ「!!」 ファラス「今さっきのマラソン4kmはお前に、家へ帰る決心をつけるためのモノだったが、今の話を聞いて、そうはいかなくなったからな。」 セラ「/////」 セラは頭を下げた。 セラ「こ、これからもよろしくお願いします!!」 ファラス「・・・1つだけアドバイスしてやる。」 セラ「・・・はい?」 ファラス「もしもスタミナを付けたいのなら、たんぱく質を取ることだ。 ちょうどこの森には、鹿も生息しているからな・・・。 鹿を倒す特訓も・・・」 ユリウス「ただいま~。」 ユリウスとライディスが帰ってきた。 が、持っていたのは・・・、 セラ「え・・・、」 ファラス「し、鹿・・・!?」 ライディス「おいしそうだから狩って来たんだ。」 ユリウス「ちょっと臭いけど、湯でればそんなモン気にもしなくなるって☆」 ファラス&セラ「・・・(汗」 この兄弟の野生の本能を、すっかり忘れていたファラスであった・・・。 第14章へ続く |