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無尽の鎖 第17話

無尽の鎖 第17話「春雨の夜に響く声 前編 ―Sprig Rain Part2―」
作者:倉麻るみ子

―ファラスの家―
―夜―
皆は、眠りにつく。
その中で、起きているあの双子・・・。
ユリウスとライディスだ。

ユリウス「ライディス・・・、そろそろ寝ないか?」
ライディス「・・・まって、もう少し起きてる。」
ユリウス「何でだよ?特にやることないだろ?」
ライディス「う、うん・・・。まぁね・・・。」
ユリウス「じゃ、早く寝ろよ。」
ライディス「そう言う兄さんこそ、僕なんか待ってないで、先に寝ちゃえば良いのに。」
ユリウス「俺は弟想いなだけだ。」
ライディス「あぁ、そうですか。」

二人は、そう言葉を交わしつつ、その数分後に眠りについた。


その真夜中・・・。
ライディスは夢を見る。

・・・そう、もしも自分がこの力を持っていなかったらという夢・・・。


―2007年 9月2日―
イギリスのとある病院。
そこで、元気な男の子の双子が生まれた。
とても元気な産声を上げている。

一人は、髪の毛が灰色の子で、その子の名前をユリウスと名づけ、もう一人の髪の毛がクリーム色の子は、ライディスと名づけられた。

二人はすくすくと育っていった。
何の問題もなく。二人は元気に育っていった。

そんな、二人がちょうど5歳になったある日・・・。

ライディス「兄ちゃんのばか!ばかばかばかぁ!!うわぁぁん!」

何やらハプニング発生。
詳細はこうだ。

自分が大切にとっておいたおやつを、ユリウスが勝手に食べてしまったのだ。
それを見たライディスは、「ばか」を連呼して、泣いてしまうという始末。

ユリウス「ライディスが、ちゃんとしとかないからだろ?」
ライディス「ちゃんとしておいたもん!!それなのに、食べちゃうなんて、ひどいよ~!うわあぁん!」
ユリウス「また買えばいいだろ!?」
ライディス「うわあぁぁん!」
ユリウス「泣くな、ばか!!」
ライディス「・・・っ!!あぁぁぁぁあああぁん!!ママ~。」

ユリウスに怒鳴られた事により、ライディスはさらに泣き、母親の元へ。

母「ユリウス、謝りなさい。」
ユリウス「や、やだよ・・・。なんでおれが・・・。」
母「おやつはまた買ってあげるけど、あなたはお兄さんなんだから、ライディスに優しくしなさい。」
ユリウス「・・・。」

ユリウスは数分そっぽを向く。
そして・・・。

ユリウス「ごめんな・・・、ライディス。」
ライディス「・・・・ぅん・・・、ぼくもごめん・・・。」
ユリウス「なんでおまえが謝るんだよ・・・。おれが悪かったんだぜ?」
ライディス「わかんない・・・・。でも、これからは一緒におやつ食べよ。」
ユリウス「うん^^」

ことは一件落着。
やはり、双子は仲がよくなくては。


そんな普通の生活が、何年か流れた。

・・・しかし、ここでライディスの夢が覚めた。
時計を見ればまだ2時15分。
ライディスは部屋のテーブルにあったボトルのフタを開けて、それをコップに注ぐ。

そして、もう一度ベッドに入る。

だが、今度の夢は、ライディスが過去に味わった現実を直視させるものだった・・・。


―2007年 9月2日―
ライディス『こ、ここは・・・?』

ここは、イギリスのとある病院。
そこで男の子の双子が生まれる。
一人は、灰色の髪の毛で、もう一人はクリーム色。
二人とも、狼の耳がついていた。

ライディス『あれって、兄さんと僕・・・?』

ライディスが暫く見ていると、生まれたばかりである、クリーム色の髪の毛の子に異変が起きた。
髪の毛の色が黒くなり、爪をたて自分の周りにいる者を襲い、両親を殺害した。
それを静止しようと、何人もの人たちが、その赤ん坊を追い詰めた。
そして、一斉に麻酔銃から麻酔矢が放たれた。

その麻酔銃を撃った人物たちの中には、金髪の青年がいる。
青年は、自分の持っていた首輪のような銀色のリングを、その赤ん坊の首に掛けた。


ライディスは、その光景を見て、自分の目を疑った。

ライディス『・・・も、もし、あの子供が僕なら、僕が・・・、両親を・・・!・・・そ、そんなはずないよ・・・。これ、夢だもん・・・。』

ライディスは、自分にそう言い聞かせた・・・。

ライディスの夢は、ここで途切れようとしていた。
だがそこに、ある声が紛れ込んできたのである。
それも、聞き覚えのある声が・・・・・・。

謎の声『フフフフ・・・。夢なわけがなかろう・・・。これは現実だ。現実に起きたことなんだ・・・。』
ライディス『・・・!』

ライディスは、声のしたほうに振り向くと、目の前に声の主がいた。

ライディス『プ、プラノズ様!!』
プラノズ(=謎の人物)『ライディス・・・。お前が、自分で両親を殺したんだ・・・。』
ライディス『そんな・・・、う、嘘だ・・・!そんなはずない!!』
プラノズ『なら、何故捨てられていた?』
ライディス『・・・・・・!』
プラノズ『そうだ・・・、現実を受け入れるんだ・・・。』

その人物は、ライディスの肩に触れ、耳元で囁いた。

ライディス『嫌だ・・・、嫌だああああぁぁあああぁ!!!』




ユリウス「ライディス・・・?」

ライディスの唸る声に最初に気付いたのは、ユリウスだ。
ユリウスは、ライディスが獣化しかけているのを見て、慌ててライディスを抱きしめた。

ユリウス「やめろ!!何を見たのかわかんないけど、ここで獣化するんじゃない!!
まだ早い!!!」
ライディス「うぅぅぅ・・!!!」

プラノズ『ちっ・・・、邪魔者め・・・!そいつなど、吹き飛ばせ!!』

ライディス「うぅぅぅ・・・、がぁああぁあぁ!!!」

ライディスは、完全に獣化し、ユリウスを糸も簡単に吹き飛ばした。
吹き飛ばされたユリウスは、壁に激突した。

そして、ライディスはそのまま外へ行こうとした。

ユリウス「ま、待て・・・、ライディス・・・・!!」

ユリウスが声をかけたが、ライディスは振り向いただけで、そのまま外へ飛び出して行ってしまった。

ユリウスが壁に激突した音に気付いたほかのメンバー達、ラルド、ウラン、そしてファラスだ。

ラルド「ユリウス、一体どうしたんだ!?」
ウラン「ライディスの姿がないよ!?」
ユリウス「・・・俺の事はいい・・・、その前に・・・、早く・・・、ライディスを・・・、止めて・・・、くれ・・・。」

ユリウスはそう言って、気を失った。

ウラン「ユリウス!」
ファラス「ラルド、ウラン。とにかくライディスを追うぞ。」
ウラン「うん。」
ラルド「判った。」

3人は気配をもとに、ライディスを追った。

走る事5分。
木から木へ移る、ライディスを発見した。

ラルド「ライディス!!」

ラルドが、彼の名を呼ぶ。
ライディスは止まり、そして振り向き、こう言った。

ライディス「・・・デス・・・、クラッシュ・・・。」

と、突然ライディスの姿が消え、ラルドの目の前に現れた。
突然の出来事に、何も動作が出来なかったラルドは、立ち尽くすしか他なかった。
やられる・・・!そう思い目を閉じた・・・。

―ザシュッ!―

目を開けると、ウランがラルドを抱いていた。
そして、ウランの背中から、ブシャッと夥しい血が吹き出た。
血は、地面に音を立てて落ちた。
雨が降っている所為で、血はすぐにウランの服に滲んでいき、服が真っ赤に染まった。

ラルド「ウラン・・・、おい、しっかりしろ!」
ウラン「・・・ぅ・・・、ラル・・ド・・・、よかっ・・た・・・、無事・・で・・・。」
ラルド「何やってんだお前は!」
ウラン「・・・だって・・・、ラルド死んじゃったら・・・、カイン・・・、悲しむじゃん・・・・。」
ラルド「馬鹿か!あいつは誰が死のうと、必ず悲しむ奴だ!!だからお前が死んで良いなんてことない!!」

ライディスは、ウランの背中を切り裂いた後、後ろに引いていた。
そして、睨んだ先はファラスだった。
ファラスも、ライディスを睨んでいる。

ファラス「ライディス・・・、どうしてこんな事をした・・・?」
ライディス「うぅぅぅぅ・・・。」
ファラス「質問に答えろ。」
ライディス「うぅぅぅぅ・・・。」

ライディスは唸るだけで、ファラスの質問に答えようともしない。

ファラス「まともに応えられないほど、暴走しているのか・・・、お前は・・・。」
ライディス「うぅぅぅぅぅ・・・。」

ファラスは、その辺りにあった木の棒を刀に変え、ライディスに向ける。

ファラス「いい加減に目を覚ませ・・・、この軟弱者・・・!」

そう言い、刀を手に、ライディスに突っ込んだ。
ライディスもファラスに、ウランの血のついた爪を構え突っ込んできた。

と、ライディスにまたプラノズの声が聞こえてきた。

プラノズ『そいつの相手はいい!奴はまた後で始末すればいい・・・。』

ライディスは動きを止め、すばやく姿を消すかのように、その場を立ち去った。

ファラスが「待て!!」といった時には、そこにはもう、ライディスの姿はなかった。

雨は、まだ降り続いていた・・・。


第18話へ続く

※この話はフィクションです。実際の、国名、団体、都市などには関係ありません。


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