小説喫茶・メル

小説喫茶・メル

10








メルによる爆撃で、部屋全体が煙に覆われる。

ただ呆然となるサリアを余所に、メルと不知火は

「・・・・・・」

険しい表情のまま、ミハエル?がいた所を見つめていた。

煙が晴れていき、姿が見えると

「ちっ・・・メルの炎を防ぎきるとはな・・・」

体の周りに、泡のようなものを纏っている、ミハエル?が現れた。

それのおかげか、彼は傷一つ受けていない。

サリアも良く知っている、彼の得意技でもある

「水の・・・衣…」

母親であるルミスより習った、ほとんどの攻撃を無効化する防御技。

シルフィーがなくとも、彼自身の防御能力は健在だった。

無言のまま、指をパチンと鳴らすと、衣は弾け飛び地面へと落ちる。

「こっからは持久戦やな、いけるかメル?」

ミハエル?の力が尽きるか、こちらの力が尽きるか。

それでも、メルは自身満々といった様子で返す。

「蛍火で少し力を使ったけど、まだまだいけるよ」

その証拠にと、周りの炎を激しくした。

確認した不知火は、初めと同じように、ミハエル?へと突っ込む。

今度はその後にメルも続き、二人で挟み撃ちにするように動いた。

そんな中、一人残されているサリアは

「やっぱり、メル姉さんも・・・不知火さんも凄い・・・」

兄と互角に戦っている二人を見て、立ちすくむ。

「それに比べて・・・私は…」

顔を下げ、拳を握り締めた。

(思えば私は、ずっと兄さんに助けられてた…)

振り返るように、過去の記憶が蘇えってくる。

(学校のみんなにいじめられた時も、魔法の練習が上手くいかなかった時も・・・)

いつも兄が側にいた。

いつも優しい彼がいてくれた。

(酔っ払ったスイ兄さんに・・・追いかけまわされた時も…)

酔い冷ましとはいえ、大量の水をスイに放っていたことも思い出す。

(でもだからこそ・・・)

ここで、記憶がこの世界に来てからのものに変わった。

(兄さんに頼ってばかりいないで、しっかりしなきゃって思った・・・)

アクア、フレア、コノハ、3人の姿が思い浮かぶ。

皆自分より年下で子供で、弟と妹。

(・・・・だけど、リタさんが私を庇って刺された時・・・全然ダメだって気付いた)

今でも鮮明に覚えている、思い出したくない光景。

(エミルさんに励まされて、もう一度頑張ろうとも思った…)

そこまで思い、前を見ると

「なっ!?こいつまさか…」

不知火とメルが、一歩退き、ミハエル?の方を見ている。

二人が驚くのもそのはず、彼の周りの水が激しく渦巻いており、徐々に一つの形を作っていくからだ。

その姿は、サリアも、メル達でさえ数回しか見たことがない物。

「なる気だね・・・リヴァイアサンに…」

海の化身。

ドラゴンのようにも見えるその姿に、圧倒されるが

「・・・・・・」

サリアは無言で手を前にかざし、そこより大量の氷、吹雪を放った。

それにより、まだ不完全な姿の彼は、胸辺りより下を氷付けにされる。

思わず驚くメルと不知火だが、サリアは気にせず、ゆっくりと彼へと歩み寄った。

「私は・・・この世界に来て、変わりたいと思った…」

彼女の言葉を、二人は何も言わず聞く。

勿論手も出さず、ただ黙って見ている。

「兄さんに頼らなくても、しっかりものって言われるように、私一人でも・・・3人の面倒を見れるように…」

自分なりに頑張っていた。

それでも、アクアのワルキューレへの想いをわかってやれなかった。

兄を想うフレアの体を、気遣ってやれなかった。

一人ガブリエルと戦うと言ったコノハを、大丈夫と自分に言い聞かせ、止めれなかった。

(だから、どんなに苦しくても・・・これだけは言いたくなかった…)

変わるために、禁句にしていたこと。

強い女性になろうと決めていたこと。

しかし、それでも彼女はまだ

「でも・・・・・・苦しいよ・・・」

16歳の、女の子。







「【助けて】・・・・・・ミハエル・・・兄さん…」







大粒の涙を流したサリア。

ボロボロと流れる雫が、彼の氷に触れた瞬間

「!?」

パキンと音を立て、氷と共に、彼がつけていた黄色い仮面も砕け散った。

そして

「・・・サリ・・・ア・・・?」

この世界で初めて、【ミハエル】は声を出した。







スキット:【女の勘】

ルミス「・・・・・・」

マルシア「どうしました?」

ルミス「・・・ふふっ、メル達、上手くいったみたい」

マルシア「えっ・・・何故わかるのですか・・・?」

ルミス「親の勘と言うより・・・女の勘ね♪」

マルシア「はっはぁ・・・・?」

ルミス(サリア・・・ありがとう…)













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