「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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小説喫茶・メル
第十九話
夜の城下町にて、ミハエルとメルの前に現れたのは
「あなた・・・・・・確か、シード君?」
少し険しい表情で、二人を見つめているシードだった。
「・・・・・・何かあったのですか?」
さすがの彼も、この二人の前では敬語だが、その唐突な質問にメルは驚く。
だがミハエルの方は落ち着いており、静かに返す。
「どうしてそう思うんだ?」
「あんた達みたいな王族が、夜に町を不自然に歩いてたら、そう思うのが普通なのでは?」
こういう話の時、メルは基本口を出さない。
ミハエルに任せる方が妥当だからだ。
「そうか?夫婦で夜の町を散歩するのも、結構普通だと思うんだがな?」
「・・・・・・あいつは、関わっていませんよね?」
「あいつ?」
そう言われ口を閉ざすシード。
メルがトントンと促し、ようやく気づいた。
「あぁコノハか、心配するな、まず兄貴がそんなこと許すはずないさ」
その言葉を聞き
「・・・ありがとうございます…」
頭を下げ、シードは去っていった。
遠回しに、何か事件があったのを教えてくれたからだ。
そしてそれにコノハが首を突っ込んでいないことも。
当然メルもわかっており、「ふぅ」と軽く息をつく。
「一度、スイ兄達と合流しようか」
「そうだな」
アジトのさらに奥、かつてレナスとディスが戦った場所に、スイ達5人はいた。
そこで出会う、ある一人の男に。
「あんたが、兵器を新たに作ってる奴か?」
彼等の前にいるのは、予想とは違い、少し老いたおじさんだった。
スイからの問い掛けに、老いた男は不敵に微笑む。
「ほほう、随分早かったの・・・さすがはシルファーと言ったところか」
手に持つ杖らしきものを、コツコツと地面に当てる。
「兵器の製造は禁じられてるの知ってるよな?今自首したら、まだ罪は軽く済むぜ」
「・・・お主ら、考えたことはないかの?」
スイの言葉を全て無視し、自分の話を進める老人。
「強大で恐ろしいとされている古代兵器、物によっては町一つを破壊出来る力を持つタイプもある」
淡々と話す言葉に、ただ耳を傾ける5人。
いつ戦闘になっても良いように、スイとマルシアだけは、一歩前に出ていた。
「しかしそんな兵器より、恐ろしい存在がいるとは思わんか?」
「・・・何?」
「兵器を破壊出来る力を持つ、わしを含めた、お主ら【悪魔】じゃよ」
呆然となる一同。
そんな風に言われたのは、スイやマルシアも初めてだったからだ。
「じゃから、滅ぶべきなんじゃよ、強大な存在は・・・・・・やがて世界を滅ぼすからの」
老人の言葉に、唖然というより、半分呆れたような雰囲気のスイだが
「なっ・・・何よそれ…」
コノハが、拳を握り締め、今にも飛び掛りそうになっていた。
アクアの方も、同じく飛び出しそうなのを耐えている。
彼の想いもぶつけるように、コノハは叫ぶ。
「そんな、そんな勝手な思い込みで兵器を作って、みんなを殺す気なの!?」
「これ以上、力をつけさすわけには、いかぬからの」
微妙にかみ合っていない中、老人の元に、どこからともなく兵器が現れてきた。
クモ型の他に、ハチのような形の物まである。
そして背後の壁がギギギと動き、その先が通路となっていた。
「まずは、可能性のある者達から、排除するとしよう」
老人はハチ型の一つに乗り、その通路に入っていく。
「あっ!!待ちなさい!!」
慌てて追おうとするコノハとアクアだが、それを残りの兵器達が止めようと立ち塞がる。
「ちっ・・・ひとまずここは脱出するぞ」
スイにそう言われ、不本意ながらも、彼女等も出口へと足を進めた。
城に戻り、ミハエルとメルとも合流し、再び会議室に集まる。
「【サイリス】・・・まさか彼が生きていたとは…」
ナルクの顔が珍しく曇る。
「ナルクさん、知ってる人なのか?」
「えぇ、私と同じく、かつての古代兵器との戦いを生き抜いた者っすよ~」
ハルも知らない、ナルクの世代でしか知らない人物。
「彼がそんな事をしていたとは・・・・・・確かに彼は、私と同じく、発明好きな方でしたけど~」
そんな話をしている中、コノハは顔を塞ぎ込み、黙っていた。
そして一人、ガチャっと扉を開け出ていく。
アクアは彼女を心配したのか、同じように出ていった。
次の日になり、いつもと変わらず、学校にいるコノハ。
彼女等は学生なので、今は大人達に任せている。
自分の席に座り、窓の外を眺めていると
「!?」
シード達の時と同じように、轟音がグラウンドより鳴り響いた。
何かと思い見てみると、クモ型、ハチ型、サソリ型と、3種類の兵器が、ガシャガシャと歩いてきている。
数はおよそ100を超える。
「くっ・・・・・・可能性って・・・こういうこと!?」
何かを理解したコノハは、一人窓より飛び出し、兵器達の前へと降り立った。
それと同時に、兵器の中より、昨日の老人が歩いてくる。
「そうじゃ、力をつける可能性がもっとも高いもの、それはお主ら子供じゃ」
「ッ・・・サイリス!!」
折れた剣の代わりのレイピアを抜く。
構えるも、兵器の圧倒的な数に、少し後退りをしていた。
「たった一人で、これだけの数を相手にする気かの?」
老人が呟く間も、ガシャガシャと進んでくる。
「あたしが・・・・・・やらなきゃ…」
そう決意し、剣を握る手に力を込めた瞬間
「一人じゃないぜ!!」
彼女の目の前のクモ型を、アクアが剣で切り裂いた。
音を立てショートし、動きが止まる。
しかし違うクモ型が、彼目掛けて砲弾を放ってきた。
「フォースフィールド!!」
だが砲弾は彼に直撃する前に、光の壁に阻まれ止まる。
「アクア・・・フレア…」
二人の登場に、呆然となるコノハ。
「そういうことよ!!」
今度は違う個所、校舎の窓より叫び声が聞こえた。
見てみると、3人の女子生徒が、窓より飛び出してくる。
「スイレン!クローバ!アヤメちゃん!!?」
彼女の親友達は、それぞれ一定の距離を開け降り立つ。
「私はいつでも、コノハ様の味方ですわ!!!」
詠唱を一瞬で終え、二本の炎の槍を、サソリ型の兵器へと放ったクローバ。
スピードのあるそれらは直撃し、サソリは炎上する。
その中を掻い潜り、ハチ型へと接近するスイレン。
「空裂脚!!!」
勢いのあるバク宙蹴り、サマーソルトを放った。
相手は機械であるにも関わらず、そのボディを凹ませる程の威力。
彼女はそこから飛び上がり、両手を合わせ、ハチの脳天に叩きつけた。
ガシャンと音を立て、動かなくなる。
「他の生徒へは、危害を加えさせません」
アヤメがそう呟くと、彼女の背後にある校舎が、光に包まれコーティングされていく。
まるで校舎全てを守るように、バリアとなった。
「すっ凄い・・・」
スイレンとクローバの実力は知っていたが、アヤメの力を見るのは初めて。
そしてさらに今度は
「下の奴等だけに、良いカッコはさせられねぇな」
シード、プラントを筆頭に、高等部の上の者達が次々と出てきた。
挨拶代わりと言わんばかりに、兵器達の中へ、巨大な爆弾を放るシード。
ボーンと激しい爆音と爆風が起こり、複数の兵器が吹き飛んだ。
「シード・・・みんなどうして?」
彼女の言葉を聞き、現れた皆は微笑する。
「人の事言えた立場じゃないけど、一人で突っ走るなよ?」
「あんたはまだ、委員長としては半人前なんだから、あたしらがいないとね!!」
「おまえが俺達を助けてくれたように、今度は俺達がおまえを助ける番だろ?」
アクア、スイレン、シード、皆を代表する3人はそう言い、再び微笑む。
「事情はアクアから聞いたよ、あたしらの可能性、見せてやろうじゃない!!」
スイレンが叫び、皆は構え直す。
その様子に、さすがのサイリスも、表情を曇らせていた。
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