「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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9
それから次の日も、その次の日も、スイレンはコノハに追い掛け回されていた。
ある放課後、当然のように本日も後ろからついてくるので
「ッ・・・・いい加減にしてよ!!」
振り向き、怒鳴りつけた。
「毎日毎日「あれしようこれしよう」って付きまとって・・・・あたしの事可哀想とでも思ってんの!?」
「あっ・・・・あたしは別にそんなこと…」
スイレンの圧に押され、一歩後退するコノハ。
「あたしがいつも一人だからって!あんたなんかに同情される筋合いはないわよ!!」
大声を出したので、少し息を切らす。
呼吸を整えている間、コノハが何も言ってこないので、ゆっくりと下げていた顔を上げると
「・・・ッ!うっ・・・えぐっ・・・・・・どう・・・じて・・・ぞんなこどいうの…?」
彼女は泣いていた。
両手で涙をこすりながら、精一杯声を出す。
「あだじはだだ・・・・・・ズイレンど・・・ながよくしだい・・・・だけなのに…」
「・・・・・・あっ・・・うっ…」
涙に呆然となり、今度はスイレンが一歩下がる。
そして逃げるように、一人森の中を走っていった。
しばらく走り、疲れてきたので徐々にスピードを落とし、止まる。
「はぁ・・・・・・はぁ・・・・ッ…」
複雑な想いで胸を押さえ、木にもたれかかろうとした時、周りに人の気配を感じた。
「・・・あんた達…」
「今日こそ終わりよ、スイレン」
彼女を取り囲んでいるのは、以前彼女にボコボコにやられた女子生徒達と
「男子まで…」
同じく上級生の、男子生徒だった。
少し動揺するスイレンに、リーダーと思われる少女は不敵に笑う。
「ふふっ・・・あなたの事を良く思っていないのは、女子だけではないということよ」
(・・・・ざっと20人・・・こりゃさすがにキツイかな…?)
握り締めている拳に力を込め、額からは汗が流れてきた。
そんな緊迫した状態の所に
「スイレーン!!」
「えっ!?」
先程まで泣いていた、コノハが走ってきた。
真っ赤になった目を気にせず、彼女に向けてやってくる。
それを見たスイレンは、慌てて叫ぶ。
「バカ!ここに来ちゃダメ!!!」
「へっ?」
ポカンとなった瞬間、背後より二人の女子生徒に抑えつけられた。
「いたっ!!」
地面に倒され、背中に手を回され、馬乗りになられる。
彼女はスイレンと違って力がないため、払いのけることが出来なかった。
「ちょっとあんた達!この子は関係ないでしょ!?」
「そんなことないでしょスイレン、この子、あなたの友達でしょう?」
「そっ・・・・・・それは・・・」
「友達なら、ちゃんと守らないとね~・・・・ふふっ…」
いつもなら「違う」と言い切れたのだが、コノハの涙を見てから明らかに動揺しているスイレン。
そのため
「ッ!!かはっ・・・」
背後より頭を殴られた。
普段避けれるはずの攻撃を、まともに受ける。
生徒達は男子女子構わず、フラフラとなったスイレンに殴る蹴りを繰り返し与え続けた。
「スッ・・・スイレン!!?」
「あなたは黙ってみてなさい」
「あぐっ!!」
頑張って起こそうとした体を、再び抑えこまれる。
そしてわずか数分の間だが、コノハはスイレンが殴られ続けるのを、見ているしかなかった。
「もうその辺で良いわ」
リーダーの少女の声により、生徒達はスイレンより離れる。
そこには普段凛として、全てを圧倒してきた彼女の姿はなかった。
倒れている彼女は、全身ボロボロで、髪もバサバサ、制服も所々が破けている。
それを見たコノハは
「・・・・・・」
まるで時間が止まったかのように、呆然となっていた。
「まっ、これに懲りたら、二度と私達の目の前で、偉そうな態度は取らないことね」
そう言い、その場から去ろうとした時
「・・・どうして…?」
まだ地面に抑えられている、コノハに尋ねられた。
「どうして・・・・・・こんな酷い事が出来るの?」
彼女の言葉に、リーダーの少女は呆れたように口を開く。
「下級生は下級生らしくしていれば良いっていう、みせし・・・・・・ッ!?」
言い切る前にコノハの方を見、口が止まった。
普段のスイレン以上の、しかしどこか独特の圧が、彼女らを襲う。
「・・・・許さない…」
彼女を抑えていた二人の女子生徒は、慌てて飛び退いた。
他の生徒達も、皆冷や汗をかき、後退していく。
「スイレンをいじめるのは・・・・・・あたしが許さない!!」
コノハの叫びにより、生徒達はまるで化け物を見たように、悲鳴を上げ逃げ始めた。
「なっ・・・なんのよ・・・・・・なんなのよあんたわぁあああああああ!?」
リーダーの少女も、泣きながら撤退してしく。
全生徒が立ち去ったのを確認すると、コノハは元の雰囲気に戻り、スイレンに駆け寄る。
「スイレン!しっかりしてスイレン!!」
「・・・・・・いつつつ・・・あれ?あいつらは?」
体中アザだらけだが、意識はしっかりしており、周りを確認した。
「・・・まさか・・・あんたが?」
「ううん、あたしはちょっと叱っただけだよ?」
コノハには地面に倒れた時の汚れしかないので、本当にそうなのかと疑問を浮かべる。
しかしすぐに、次の疑問を問いかける。
「なんで・・・あんたはあたしに・・・・・・ここまで…」
コノハからしたら何回目かわからない質問。
それでも彼女は変わらず、いつもの笑顔で話す。
「だってあたし達、クラスメイトで・・・・・・友達でしょ?」
その言葉に、スイレンは
「・・・・・・はぁ~もう・・・・あんたには適わないや…」
初めてコノハの前で笑った。
新学期が始まり、森に秋の雰囲気が漂い始める。
「アヤメちゃん!クローバ!おっはよう!!」
「おはようコノハちゃん」
「おはようございますコノハ様!」
3人は新学期と言うことで、気分改め登校していた。
そして彼女らの少し前で
「スイレ~ン!!おはよ~う!!」
スイレンが歩いていた。
コノハは彼女の肩をポンと叩き、笑顔で彼女の顔を見る。
「おはよ」
彼女もいつもと変わらず、微笑程度の表情で返してきた。
4人になり歩き始め、ふとスイレンは後ろを振り向く。
目に映ったのは、こちらも変わらず、仏教面で歩いてくるいシードがいた。
彼はスイレンに見られたので、軽く手をあげ挨拶する。
すると彼女は
「・・・頼んだわよ」
誰にも聞こえない程度、口パクでそう呟いた。
シードの方はわかったのかわかっていないのか
「あぁ…」
と、同じく口パクで返した。
「あっれ~!?シードじゃん!おっはよー!!」
振り向き、手をニコニコしながら振る。
「おはようございますシードさん」
「相変わらず怖い顔ですわね」
にこやかに挨拶をするアヤメと、少しずつ彼を認めつつあるクローバ。
5人となって歩き始め、スイレンは思う。
(コノハ・・・・・・あんたがあたしを救ってくれたように、あんたのことは・・・あたしが絶対守るからね)
秋の風が吹き、彼女の頬を優しく撫でた。
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