放浪の達人ブログ

涅槃

      【涅槃】

旅行に行ったからには誰もが「どうせなら良いホテルに泊まりたい」と思うだろう。
かといって高ければ良いのではなく、コストパフォーマンスが良いという意味だ。
「料理が良かった」とか「窓からの景色が良かった」「サービスが良かった」など
色々な考えがあるが絶対的な条件は「値段の割に良かった」ということだ。
安くても部屋が汚ければ満足しないし、高くても料理が不味ければ満足しない。
立派な庭の見える部屋に泊まっても雑草が生え放題ならばそれで減点である。

その点、俺の思う「良いホテル」というのは一般的な考えとちょっと違う。
3月に親子でネパール郊外の丘の上にある宿に泊まってきた。
村の地図にも載ってない最果てにポツンと一軒、ヒマラヤが見渡せる場所にあった。
広い部屋には2つのベッドにトイレ、洗面台、テーブルと一通りの設備が揃い、
夜は持参したロウソクを窓辺に置いてそりゃもう情緒たっぷりなのである。
全3室のそのホテル「ニルヴァーナ」は村の最果てだけあって他の宿泊者はおらず、
貸し切りで2階のテラスに出て満天の星空を眺めることもできた。

食事は別棟の食堂でロウソクの灯りの下でネパールのローカル料理を食べるか、
外に置いてある手作りのテーブルで食べるかは自由に選んでよかった。
もちろん食事を持参してヒマラヤを見ながら草の上で食べてもいい。
敷地内には放し飼いの鶏の親子達が歩き回り、段々畑の続く山肌を見下ろすと
谷の向こうの家々の台所からは煙が立ち昇り、空では鳥達が鳴いている。
時々穏やかな風がヒマラヤ桜の花を揺らしながらヒマラヤ山脈の方に吹いて行く。
俗世界から隔離されたその宿はまさにニルヴァーナ(涅槃の意味)だった。
気になる宿泊料金は1人あたり1泊200円(食事代別)、完璧だろ?

俺が思う「良いホテル」とはそういうものなのだ。
誰もが頭の中で思い描く究極の理想の宿、ありそうだけど見つけられない宿。
ゆったりとした時間が流れ、誰にも干渉されず、全てにおいて自由な宿。
「え~、wifiないの?iphone使えないじゃん、死ぬ~」って人は多いが、
そんな理想の宿でスマホいじってるヤツがいたら逆に哀れだよな。

読者さん達のために「ホテル ニルヴァーナ」への行き方を教えておこう。
まず飛行機に乗ってカトマンズへ、ナガルコットという村行きのバスに乗って
終点からバザールの前を突っ切ってズンズン歩く。Y字を右へ進み行き着くまで。
分からなかったら村人に訊け。どうだ、あまりにも簡単だろ?
難しいと思うのはあなたの頭が自分の行動を自制しているからだけなのである。


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