『マモさん、セキュリティのマデです。どうしました?』
ものの一分もしないうちにドアの外から声がした。
聞き覚えのあるその声は、まさしくマデのものである。
『いやァ・・・その・・・友達が中にいて・・・、外にいる女性は、その奥さんで・・・、実は、その・・・ちよっとトラブルがあって・・・それはそれでいいんだけど、問題はなんというか・・・』
と、ボクの状況説明は、オタオタとなんともだらしない。
『とにかくドアを開けてくださいよ』
『それが出来ないから呼んだんだよ。友達の奥さんと来た男が問題で・・・』
『ちゃんとガードしているから大丈夫ですよ』
現職警官マデの声はあくまで冷静沈着。
そこで、そっとドアを開けてみて、さすがと舌を巻いた。
人相のよろしくない男ふたりとデウィちゃんを廊下の向こう側に押しやり、その前に立ちはだかるセキュリティのマデ。更にボクの部屋の前にはアパートのスタッフがふたり立ち塞がっていた。
頼もしや!
二人の男は、いかにもこわおもてでボクの後ろに隠れている源さんを睨みつけ、デウィちゃんは、怒り心頭の様子がありあり。
手早く仔細を説明する。
テウィちゃんは部屋に入って源さんと話してもいいが、兄弟と称するふたりの男は認めない・・・と。
と言っても、納得するはずがないが、マデが現職の警官と判ると不承不承うなづく。素性は知らぬが、子供の使いじゃあるまいし、すごすご帰るのでは腹の虫も収まるまい。それに、ボクのアパートの所在を知ってしまった。また押しかけられたら面倒である。
そこで、すかさず十万ルピア札を一枚ずつ握らせると、途端にニコニコと礼を言って引き上げて行った。なんとも詮無いことである・・・。
てな訳で、デウィちゃんだけ招きいれたのだが、とんでもない修羅場が始まったのは、その直後だった・・・・・。
なんとデウィちゃん、入るなり、どこに隠していたのか刃渡りの長い刺身包丁を取り出したのである・・・・!
PR
Keyword Search
Freepage List
Comments