人魚の鱗とチャイナドレス


              それはいつの間にか現れて

              私の足を縛ってしまうのです

              ひとつとなった私の足は

              自由を奪われてばたばたと抵抗を試みます

              押し殺した哂い声の主を見れば

              それは貴方


              愛しい貴方の姿に化けた悪魔が

              私を食べるのです


              そういえば人魚の肉は美味しいという

              言い伝えがありました

              だから私を人魚に変えて

              食べてしまおうという魂胆なのです


              私は悪魔の生贄になるなんて

              まっぴらごめんです


              またもや足をばたつかせ抵抗します

              鱗がひとつふたつ剥がれ落ちました

              みっつめから貴方が唇で剥がしはじめました


              貴方の舌先で舐められた私の鱗が

              きらきら光って紅く色を変えてゆきます 

              息苦しく悶える私を御構い無しで食べ尽くす

              私の悪魔



             「長い髪を切って差し上げるから、

               私の鱗でチャイナドレスを作るのは

                         やめてください」


              という私の願いも 

              もはや言葉にはならないのですね

              何故なら

              貴方が私を人魚にしてしまったから












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