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『ファウンデーション』前史。地球はすでに放射能を帯びて久しい星です。惑星フロリナが消滅する!そう予言した地球出身の空間分析家が、何者かの手によって鞭打たれた。結果としてその空間分析家は脳に損傷を負い…その結果どうなったか。犯人は誰か。などなどを書くと興ざめなのでここには書きません。ただ、人命よりも既得権の方が重い、という貴族の思い上がりには唖然とするばかりです。いい本ですが、ある言葉が障りとなって、世に出回るには改訳が必要になるでしょう。江戸川乱歩なら、何も言われないのでしょうけれども。【中古】 宇宙気流 / アイザック・アシモフ [文庫]【あす楽対応】
2013.10.16
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旧銀河帝国興亡史三部作の掉尾を飾る作品。前半はミュールが、後半は第一ファウンデーションがその存在を嗅ぎつけ、発見に躍起になる。アシモフお得意のミステリー仕立てでもあり、どちらもそれなりに楽しめる構造になっている。第二ファウンデーションは果たしてどこにあるのか? おっと、それは言わぬが花でありました。 【中古】ライトノベル(文庫) 銀河帝国興亡史 第二ファウンデーション(3) / アイザック・アシモフ【画】【中古】 銀河帝国の興亡 (3) / アイザック・アシモフ [文庫]【あす楽対応】
2013.09.18
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行きがかり上ハヤカワ文庫で紹介しているが、銀河帝国興亡史三部作は、創元推理文庫で読んだ方がいい。岡部さんが悪訳というのではなく、厚木淳さんの方が読みやすいのだ。それにこのタイトルでは、第2巻の半分しか表していない…そこから得られる教訓はひとつ。「支配者は、有能な部下を恐れるものだ」。アシモフ先生の物語作りのうまさには敬意を表するけれども、こんなものは、心理歴史学でも何でもない。後半のミステリ仕立ての方がまだしもだ。十代の頃初めて創元推理文庫で本書を読んだ不具は、涙を禁じ得なかった。ミュールに自分自身を投影したのだ。障害者と呼ばれる人たちなら、とくによくわかってもらえる心理だと思う。勿論その他の種類のマイノリティや健常者でも涙するかもしれない――十代、せいぜい二十歳前後までなら。それを過ぎたら難しいかもしれない。少なくとも不惑を過ぎた不具には無理だった。それでも、久しぶりに読み返してみて、独りさびしく立ち去っていくミュールに同情することはできた……たとえ彼が独裁者であっても。 【中古】ライトノベル(文庫) 銀河帝国興亡史 ファウンデーション対帝国(2) / アイザック・アシモフ/訳:岡部宏之【画】【中古】 銀河帝国の興亡 (2) / アイザック・アシモフ [文庫]【あす楽対応】
2013.09.17
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『ファウンデーションの誕生』のあとに読んでもさほど違和感を感じない、アシモフの若き日の佳作。ただ、第1部を読んだ後に、もう一度『誕生』のエピローグに目を通しておくと、よりわかりやすいだろう。小国が大国に伍して生き延びようとするとき、どうすればもっともうまくいくか。「心理歴史学」という御託はともかくとして、宗教で科学技術を神秘化して心理的優位性を保つとか、貿易立国としての地位を確立するとか、それなりのアイディアは面白い。ただ主要な登場人物はいずれも小粒であり、狂言回しの傀儡という気がしないでもない。同じオムニバス形式でも『誕生』の方にハリ・セルダンというバックボーンがいたのに対し、こちらはただの「年代記」の感がある。駿河屋なら各種キャンペーンにエントリーするとポイント10倍以上!【中古】ライトノベル(文庫) 銀河帝国興亡史 ファウンデーション(1) / アイザック・アシモフ/訳:岡部宏之【10P18Oct13】【画】【中古】afb
2013.09.14
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アシモフ先生の遺作にして『ファウンデーションへの序曲』の続編。最晩年の作であるせいか、喪失と死に彩られている。デマーゼル、クレオン1世、ドース、ユーゴ、ウォンダ、レイチ、マネルラ…もっともこれらの人物が現前するようだと、若き日の『ファウンデーション』に支障が出るのだが。なかでももっとも感動的あるいはメロドラマ的なのは、ドースの「死」の前後のくだりだろう。昔この本を読んだときは、あまり感動しなかったような記憶があるが、どうしてどうして見事なものだ。ついでに言うと、デマーゼルのロボット「疑惑」の解決法と、スティーブン・バイアリーのケース(『われはロボット』)を比べてみるのも、面白い。歳をとるということは、少しずつ、少しずついろいろなものを失っていくということだ。それでも人は前に進まなければならない。かくいう私も、人生の折り返し地点を過ぎた。初めて読んだ時より今の方が身に染みるのも、歳月を経たせいかもしれない。【中古】 ファウンデーションの誕生 銀河帝国興亡史 7(下) ハヤカワ文庫SF/アイザック・アシモフ(著者),岡部宏之(訳者) 【中古】afb
2013.09.12
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アシモフのファウンデーションシリーズを何から読むか。古くからの読者は否応なしに発表順(あるいは翻訳順)に手をつけざるを得なかった。しかし若い読者はやはり、アシモフの未来史に沿って読むのが一番いいと思う。つまり『われはロボット』からである。面倒くさければ『鋼鉄都市』『はだかの太陽』『夜明けのロボット』だけでも読んでおくと、この本がもっと楽しめるだろうと思う。『ロボットと帝国』も、と言いたいところだが、これはあるいは、本書の後に読んだ方がいいかもしれない。なぜなら、アシモフのSFは多かれ少なかれミステリ的であり、本書も決して例外ではないから。そして決定的な予備知識のない方が、結末を素直に驚けるだろうから。もっとも、制作年代順に読むのもまた一興である。『ファウンデーションと地球』の後でこれを読めば、消えたオーロラ人のその後もある程度推察できるし、デマーゼルやヒューミンの正体もおおよその見当がつく。ドースにしてもそうだと言えよう。基本的にこのふたつの物語構造はよく似ており、極端に言えば、主人公が探索するか逃亡するかという違いしかない。トレヴィスも若き日のセルダンも性格が異なるようでその思考プロセスは近似している。同じことが、作品は違うが、イライジャ・ベイリにも当てはまる。いずれも作者精神の分身であろう。もうひとつ本書を読むうえで興味深いのは、第一銀河帝国の首都であるトランターが、結局のところ地球の比喩になっていることだ。勿論作品上の世界観では異なる。地球は伝説の惑星であり、オーロラもイライジャ・ベイリの足跡も歴史のはるか彼方の存在でしかない。それでも400億の人口を抱える巨大な鋼鉄都市の、とあえて言わせていただくが、抱える多様性と人種・民族差別はまさに今、わたしたちのこの惑星の上で起こっていることだ。そういういう観点から読み解くことができるのも、また本書の魅力であると言えよう。
2013.09.10
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『宇宙の旅』シリーズの完結編であり、映画『2001年宇宙の旅』でもある。今度の主人公は、千年前、ハルによって宇宙船外に棄てられたプールである。蘇ったプール、リップ・ヴァン・ウィンクルはしかし見事に31世紀に適応する。このあたりの描写もおそらく千年後には陳腐になっているだろうが、それはSFを書く者の宿命だ。虎穴に入らずんば虎児を得ず。話が逸れた。終局とは何を意味するか。実は物語の完結編というほかに、モノリス自体の終局も意味していた。モノリスそれ自体は知性体ではない。プログラムである。それが地球人類を進化させ、木星よりもエウロパを選んだ。これまでのところ、それは人類に直接の脅威ではなかった。だがもし、…ムニャムニャ。プールが旧友デイヴと再会し、ハルと和解する場面もいいが、個人的には、思わぬところでスーザン・キャルビン博士の名前を発見して嬉しく思った。クラークさん、ありがとう。天国でも執筆してますか?ハヤカワ文庫 SF 1347【1000円以上送料無料】3001年終局への旅/アーサーC.クラーク/伊藤典夫
2013.09.09
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『2010年』の世界から50年後。地球に再びハレー彗星が接近していた。だから物語は彗星への観光旅行のシーンで始まる。一方、木星の軌道上の探査船がハイジャックされた。余儀なく禁断の衛星エウロパに着陸させられた彼らは、そこで未知の、しかし驚くべき生態系を目の当たりにする。クラークの(近)未来史はアシモフとは一線を画していて、さしずめ東欧的な暗さのないレムの作品、というイメージがある。モノリスなどもレムが扱うともっと不条理な存在になるだろうが、クラークはあくまで「科学的に」説明しようとする。それでいて情感あふれる世界を構築するのが、作家としての彼の特質、だと思う。興味深いのは、木星本体にも生物がいた、という設定である。実はこのアイディアはクラークの親友アシモフがその科学エッセイの中で言及しているのだが、ではなぜモノリスを作った未知の知性体は、ガス惑星ではなくその衛星を生命進化の場所として選んだのか? このテーマがやがて『3001年終局への旅』につながっていくのだが、それ以上はもちろん、ここでは書けない。追記:ガニメデはアシモフやハインラインはじめ、色々な作家の舞台となっている。クラークがどのようにガニメデをテラフォーミング化したかというのも、本書を読む楽しみのひとつである。9/29 10:00~10/2 23:59は各キャンペーンにエントリーで14倍!【中古】ライトノベル(文庫) 2061年宇宙の旅 / アーサー・C・クラーク/訳 山高昭【10P04oct13】【画】【中古】afb
2013.09.06
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大著である。ハードカバーの四段組で600頁以上もする。正直言って、読了するのに非常に骨が折れた。量だけではない。アシモフの正編に比べて、文体が読みこなしにくいのである。かてて加えて、正編の『ファウンデーションへの序曲』『ファウンデーションの誕生』を読んでいない読者にはちと薦められない。なぜここにダニエルが出てくるのか、ドースとはどうして知り合ったのか、がまるでチンプンカンプンになることうけあいだからだ。しかしともかくも正編を読んで生ずる疑問には真正面から答えようとしている、と思う。・「心理歴史学」の根拠を、もっともっともらしく説明できないか?・銀河系に地球人の子孫以外の知的生物がいないのはなぜか?前者については本書を読むに如くはなし、とだけ書いておく。読んでいるその時はわかったような気になっても、一旦本を閉じてしまえば、きれいさっぱり忘れてしまっているからだ。後者については、ロボット三原則および『ロボットと帝国』で示された第零原則に基づく結果だということが暗示されている。つまり、ロボットが守るのはあくまで「人間」及び「人類」であって、その他の知的種族ではなかった、ということである。物語はだから、SFという体裁をとっているにもかかわらず、時として復讐譚のように生臭い。模造人格として登場するジャンヌ=ダルクや、ヴォルテールの言動からも目が離せないし、亜人間パンが登場するのも見逃せない。またこれは正編との絡みで当然と言えば当然なのだが、エト・ディマーゼルはハリ・セルダンを後継者にしたい。しかし彼には政敵がいる。はたしてその男を、ロボット三原則及び第零法則の範囲内で、政治的に葬り去ることは可能か? という興味もある。なお、アシモフの初期作品には異星人の出てくる短編もあり、ロボットシリーズ及び銀河帝国シリーズとは相容れないが、それはそれで面白いと思う。【中古】 ファウンデーションの危機(1) 新・銀河帝国興亡史 海外SFノヴェルズ新・銀河帝国興亡史1/グレゴリイベンフォード(著者),矢口悟(訳者) 【中古】afb
2013.09.05
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小説ではなく映画版の続編。平井和正の『ウルフガイ』シリーズにも似たところがあるが、パラレルワールドというべきか。というわけで、舞台は土星ではなく、木星である。デイブの失踪後、ディスカバー号を回収し、HALを復活させるべく、チームが編成された。それはある程度成功するが、今やスター・チャイルドとなったデイヴからのメッセージがあった。考えてみればその背後には「スター・アダルト」の存在があるわけだ。彼らの意志により、木星は第二の太陽と化し、その衛星エウロパに知的生命が芽生える…この程度の粗筋は単なる覚書にすぎない。小説を読む楽しみはストーリーを知ることではなく、その過程を味わうことにある。クラークのヴィジョンは2010年が過去になった現在でも新鮮だ。SFファンなら必読の一冊である。ハヤカワ文庫 SF 1733【2500円以上送料無料】2010年宇宙の旅/アーサーC.クラーク/伊藤典夫
2013.09.03
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『夜明けのロボット』の続編にして、銀河帝国の物語につながる重要な一書。もう何回読み返しただろうか。みどころは少なくとも三か所ある。ベイリ・ワールドでのグレディアのスピーチ、ダニエルとヴァジリアの対決とその顛末、そしてスリーマイル島での一部始終。しかし何よりも不具の興味をそそるのは、アシモフのロボット小説の中で、『二百周年を迎えた男』と本書だけが、ロボットが主人公の物語だということである。他の小説でも重要な役割を与えられているが、主人公ではない。「人間そっくりでありながら人間ではない」「学習するロボット」に自分自身を重ね合わせるために、不具はこの物語を愛してやまないのだと思う。9/22 0:00~9/24 23:59はツールバー利用でポイント19倍。さらに!9/23 20:00~9/23 23:59はエントリーで28倍!【中古】単行本(小説・エッセイ) ロボットと帝国【10P25Sep13】【中古】afb
2013.09.02
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映画を観たレイ・ブラッドベリ曰く、「クラーク、キューブリックは君の作品を蹂躙しているね」クラーク「なに、蹂躙したのはお互い様さ」というわけで、小説は映画の原作ではありません。お互いに影響を与え合い、数か月の時間差はありますが、ほぼ同時期に公開/出版されたものです。どちらが優れているかとは、一概に言えません。なるほど小説版は人類の黎明期とモノリスとの出会い、HALが「狂った」原因や「精神生命体」への進化の過程――『幼年期の終り』の著者らしいアイディアでしょう――など、SFとしての説明責任を果たしています。これに対し、映画の方は100分以上映像と音楽だけで成り立っており、『博士の異常な愛情』の監督とは思えないほど寡黙です。にもかかわらず、どちらも複数回の鑑賞に堪え得るものであり、機会があればそうすべきだと思います。ことに映画の方は、できれば映画館で観る方が望ましい。これは、掛け値なしにそう言えます。小説の紹介の日記のはずが、映画へのコメントが多くなってしまいました。両方ご覧になった方にはすぐわかることですが、小説と映画の大きな違いのひとつは、ゴールが木星か土星かということです。映画で土星にしなかったのは正解でした。完成後、ボイジャーからの映像が地球に届けられたからです。あ、また映画へのコメントになってしまいました。最後に一言。翻訳は旧訳ではなく、決定版の方をお薦めします。用語が違います。【送料無料】2001年宇宙の旅決定版 [ アーサー・チャールズ・クラーク ]
2013.08.30
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ノウンスペース・シリーズのなかでも一番の長編。血の気の多いクジン人、200歳を超えてなお30代のように若々しい主人公、その彼に恋する「幸運の女性」が、臆病なパペッティア人の案内で、宇宙に浮かぶ「リングワールド」に向かい、不時着する。そこでさまざまな冒険に出会う…というのが物語の骨子である。本書を読むにあたっては、事前に『中性子性』および『地球からの贈り物』に目を通しておくと、パペッティア人やクジン人のこと、不老長寿の秘密のことがよくわかると思う。内容的にはニーヴン版『宇宙のランデブー』という印象を受けたが、「幸運の女性」がなぜ一行に加わったか、という理由が喜劇的で笑った。続編もいつか読みたいが、とりあえず本書は、処分本NO247。【中古】 リングワールド ハヤカワ文庫ノウンスペース・シリーズ/ラリイ・ニーヴン(著者),小隅黎(訳者) 【中古】afb
2013.08.11
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原題は『暗い12月』。この手のSFは、冷戦下で花ざかりだった。『レベル7』『渚にて』『霊長類南へ』などがすぐ頭に浮かぶ。おなじ破滅テーマでも『大地は永遠に』『草の死』などと違って、核戦争により人類が破滅する、という物語に救いはほとんどなく、妙に生々しい(ちなみに、上記五作ともすでに手放してしまって久しい)。この物語では少なくとも、人類は絶滅しない。それが前三作とは違う点だ。少し甘いかもしれないが、『レベル7』の文体の雑さや、『渚にて』の感傷性はない。ひとつには、主人公ギャビンが少佐ということもあるだろう。少佐。しかし彼は実際に現場で戦ったことはなかった。核ミサイルのボタンを押しただけだ。その結果世界は滅び、コリングウッドのような半気違い少佐が現場を仕切るようになった。だが彼の言うことにも一理ある。「ギャビン、おれはたぶん百人は殺したよ。貴様は、何人ほど殺したんだ?」ギャビンは答えられなかった。現実に、たとえそれが上からの命令であろうとも、確実に世界を滅ぼしたのは彼の手、なのだから。その反作用で今では銃をもっても自衛のための殺人もできないとしても、それがいったい、何であろう。…それでも彼はカリフォルニアへと進む。妻と娘に再会するために、狂った世界で、様々な人の助力を得、また人助けをしながら。…コリングウッドとの最後の対決は、自らに巣食う「人間の悪魔」との対決ではなかったか。しかもなお、その悪魔は自らの弱さによって自滅したのだ。…処分本No246。
2013.08.06
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『ファウンデーションの彼方へ』の続編にして、時系列的にアシモフの宇宙史最終巻。トレヴィスの旅は一応終わりになるが、結末に一抹の不安が残る。第一、「銀河系外からの敵に備えて、自分たちの世界はひとつにならなければならない」という結論は、あまりにありきたりではないか?だがそれでいいのかもしれない。アシモフ晩年の諸作品は、筋書きや物語の構成よりも、思索の過程を楽しむものだ。『ファウンデーションと地球』は何度読んでも通俗だと思うが、通俗だからこそ面白い。若い時の作品は、構成は密だが、やはりSF色が強い。好みの分かれる所だろうが、ノンフィクションや科学エッセイを書きまくった後の、晩年の作品の方が読者により親切なのは確かだと思う。巨匠円熟の味、というところか。ところで。アシモフのように、今までの自作の世界をひとつにつなげるという企ては、考えてみれば、日本では松本零士さんが試みているわけだが、こちらはなかなか、遅々として進まないようである。… 【中古】ライトノベル(文庫) ファウンデーションと地球 上 / アイザック・アシモフ/訳:岡部宏之【10P17aug13】【画】【中古】afb【中古】 ファウンデーションと地球 銀河帝国興亡史 5(下) ハヤカワ文庫SF/アイザック・アシモフ(著者),岡部宏之(訳者) 【中古】afb
2013.07.25
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トレヴィスには、不完全な手がかりから正しいものを選び取る力があった。そこで思い出したのが本書の主人公、イライジャ・ベイリである。ミステリーSFを書かせたらアシモフの右に出る者はいない。そしてアシモフの小説は多かれ少なかれミステリー的である。SFという言葉がわが国の読者にまだなじみがなかった時代、「変格推理小説」という長たらしい文句が一部でつかわれたことがあったが、アシモフはさしずめその道の大家、と言ってもいいだろう。晩年の彼はとても冗長である。なるほどハインラインもそうだったが、『ウロボロス・サークル』などはついていけなくていまだに読了していない。アシモフは違う。男女の直接交渉などについてあからさまな描写が目立つようになった点は似ているかもしれない。しかし長くなったことで、SFというより物語として通俗的になったきらいはあるにせよ、より読者にわかりやすい親切な小説になったと思う。最晩年のハインラインにはそれが足りない。覚えている限りでこの本を読むのはこれで三度目になる。三度とも面白かった。最初の時のような驚きと興奮はないが、内容を適度に忘れていること、筋書きを追うことよりも場面場面を楽しむようになったことに、…歳月を感じた。 【中古】単行本(小説・エッセイ) 夜明けのロボット【スーパーセール】【中古】afb
2013.07.23
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久しぶりに読む本には二種類ある。内容をすっかり忘れてしまったものと、大体覚えているものとだ。本書は前者に当たる。確かにすっかり忘れてしまっていたが、三つ巴のクライマックスには既視感を覚えた。そうだ、確かに以前、この本を読んだことがある、と。これは一種のスペース・オディッセアである。何ならスペース・ドン・キホーテと言ってもいいし、銀河道中膝栗毛と言ってもいい。どちらも間違ってはいないが、「辺りと言えども近からず」、である。やはりホメロスの叙事詩に喩えるのが一番いいだろうと思う。トレヴァスの旅は、まだ道半ばである。…味読するには著者若き日の『銀河帝国興亡史』三部作を読むに如くはない。けれどもむしろここではやはり著者若き日の「うそつき」(『われはロボット』所収)及び後年の『ロボットと帝国』を薦めたい。少なくとも続編『ファウンデーションと地球』を読む前に。 【中古】単行本(小説・エッセイ) 〔銀河帝国興亡史4〕 ファウンデーションの彼方へ【10P17aug13】【画】【中古】afb 【中古】ライトノベル(文庫) われはロボット / アイザック・アシモフ/訳:小尾芙佐【10P17aug13】【画】【中古】afb【中古】 ロボットと帝国(上) ハヤカワ文庫SF/アイザック・アシモフ(著者),小尾芙佐(訳者) 【中古】afb【中古】 ロボットと帝国(下) ハヤカワ文庫SF/アイザック・アシモフ(著者),小尾芙佐(訳者) 【中古】afb
2013.07.22
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自分が身障者のせいか、ミュータントものに弱い。ことに片輪とか、ちんばとか、今ではほとんど書かれなくなった言葉が載っているとつい手元にとっておきたくなる。これもそのうちの一冊だ。長編だが、四つの中短編からなるオムニバス形式の作品だ。核兵器が広範に使用された第三次世界大戦直後の話。世界はゆっくりと復興してゆくが、出生率が低下した上に、生まれてくる子どもの大半は奇形児、ミュータントだ。このままでは人類の存続が危ない…SFの世界では、スーパーマン・ミュータントは迫害されるのが常だ。『オッド・ジョン』然り、『スラン』然り。しかしアラリック・ウェインは救世主として登場する。選ばれたエリート・ミュータントたち八人は、ウェインの音頭取りのもと、新天地に植民地の礎を築くべく、火星に降り立つ。しかしそこでも、「東側」と対立しなければならなかった。中編「未来の子たち」後半の戦いは、『ミュンヒハウゼン男爵の冒険』に出てくる早耳男や千里眼たちの活躍を髣髴とさせる。このへん、ちょっとしたパロディであろうか。結果はお約束のように西側が勝つ。通俗と言えば通俗である。エピローグは遠い未来。ごく短いエピソードだ。「新人類」はすでに木星の衛星に植民地を築こうとしている。地球はとうの昔に亡び、自給自足を目指した火星の植民地も、アラリック・ウェインの死により頓挫したことが描かれている。彼らがどんな姿をしているか、作者は描かない。だがとにかく、ロボットやアンドロイドではないようだ。防寒服を着ているから。…アンダースンの作風は温厚である。ヴォネガットのような軽妙さも、ヴォクトのような鋭敏さも、シマックのような叙事詩も、ブラッドリのような抒情も、ハインラインのような意志の力も、アシモフのような知性も、クラークのような洞察もない。いや勿論そういう要素が皆無というのではなく、そのどれもが上記の人たちに及ばないということである。『タイム・パトロール』にせよ『百万年の船』にせよ、個人的にの話だが、安心して読める代わりに突出した売りのない作家、という印象を受ける。ファンの方には失礼なことを書いてしまった。長らく書棚にとっておいたけれども、やはり処分本NO.244に認定しよう。 【中古】ライトノベル(文庫) オッド・ジョン / オラフ・ステープルドン【10P17aug13】【画】【中古】afb《早川書房》ヴォクト 浅倉久志訳世界SF全集17 ヴォクト スラン/宇宙船ビーグル号 …21世紀の文学 【中古】afb偕成社文庫 2074【1000円以上送料無料】ほらふき男爵の冒険/ミュンヒハウゼン/高橋健二【RCP】《ハヤカワ文庫SF》ポール・アンダースン 深町真理子/稲葉明雄訳タイム・パトロール 【中古】afb【中古】 時間線の迷路(上) タイム・パトロール ハヤカワ文庫SFSF/ポールアンダースン(著者),大西憲(訳者) 【中古】afb【中古】 時間線の迷路(下) タイム・パトロール ハヤカワ文庫SFSF/ポールアンダースン(著者),大西憲(訳者) 【中古】afb《早川書房ハヤカワ文庫SF》ポール・アンダースン 岡部宏之訳百万年の船 揃 【中古】afb
2013.07.14
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「消えた少女」リチャード・マシスン家の中の次元の穴に閉じ込められた少女の話。冒頭の作だけあって一番軽い。「悪夢団」ディーン・R・クーンツ超能力少年を親玉に持つ暴走族、ナイトメア・ギャング。日本で言えば平井和正あたりを屈折させるとこうなるか。「群体」シオドア・L・トーマス人間を食べるスライムの話。「歴戦の勇士」フリッツ・ライバー改変されようとする歴史を守る歴戦の勇士、に頼まれて後衛を守った「ぼく」の話。「ポールターのカナリア」キース・ロバーツポルターガイスト短編の佳作。「影が行く」ジョン・W・キャンベル・ジュニア『遊星よりの物体X』の原作小説にして『月は地獄だ!』と並ぶ氏の代表作。「探検隊帰る」フィリッ・K・ディック火星から帰還した探検隊。だが彼らは火星に墜落して死んでいた。ロボットが死体を回収したから間違いない。しかし殺しても殺しても、「探検隊」はしつこく地球に帰還し続ける。「仮面」デーモン・ナイト脳髄以外サイボーグになって生きるより、いっそ月面で孤独に生きる方がいい。ああ、だが呪わしい地球を頭上に拝まねばならぬとは!「吸血機伝説」ロジャー・ゼラズニイ遥かな地球。最後の人間はとうに絶え、世界はロボットが支配していた。彼らの脅威は吸血機。吸血機危うし! そのとき「彼」を救ったのは、最後の吸血鬼だった。人間のふりをして昼日中ロボットたちに撤去を命じたのだ。しかしその代償として…「ヨー・ヴォムビズの地下墓地」クラーク・アシュントン・スミス火星の地下墓地には、闇に生き、生体をむさぼる化物蛭がいた。「わたし」は命からがら洞窟から逃げ帰るが、頭の中の声に誘われるように病院を抜け出し…「五つの月が昇るとき」ジャック・ヴァンス月がひとつでもルナティックになるなら、五つもあればどうなるか。どうするか。答えは簡単。気絶してしまえばいい。「ごきげん目盛り」アルフレッド・ベスターアシモフもびっくりの三原則の落とし穴。一人称と三人称がごっちゃになるのは普通反則だが、共感覚と「投影」が売りのこの短編にはぴったり。「唾の樹」ブライアン・W・オールディスイギリスの片田舎に突然落下した隕石。実はそれは宇宙船で、目に見えない巨大な異星人が乗っていた。体験者から話を聞いたウェルズが、「宇宙戦争」「透明人間」「神々の糧」を書いたという楽屋オチ。【中古】 影が行く ホラーSF傑作選 創元SF文庫/フィリップ・K.ディック(著者),ディーン・R.クーンツ(著者),中村融(訳者) 【中古】afb
2013.06.17
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「チャリティのことづて」ウィリアム・M・リー250年の時を隔てて交流する少年と少女の魂。だが1700年代の少女が未来の事象を語ればどうなるかは明らか。彼女を救ったのは判事の隠れたる犯罪だった!「むかしをいまに」デーモン・ナイト『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』で起こったことが、個人の出来事ではなく世界的事象として現れたら、というお話。「台詞指導」ジャック・フィニイ過去へのタイムスリップというのは珍しいアイディアではない。ただ「愛は永遠ではない。チャンスを逃したらそれきりだ」という箴言は、わが胸にもずしんと堪える。「かえりみれば」ウィルマー・H・シラス『アトムの子ら』一作で名を成した作者のSFほら話。1週間と云わず、今の精神を保ったまま、もう一度青春をやり直してみたいという気持ちは不具にもある。「時のいたみ」バート・K・ファイラー妻の命を助けるために過去にもどった男。妻は助かった。だが…。ラストが切ない。「時が新しかった頃」ロバート・F・ヤング『ジョナサンと宇宙クジラ』の作者らしいロマンチックでセンチメンタルな中編。惑星と時間を超えた愛は、集中2番目のスケールの大きさである。「時の娘」チャールズ・L・ハーネス母が娘で娘が母で…時の円環に閉じ込められたような女性の愛憎劇。「出会いの時巡りきて」C・L・ムーア遥かなる時の彼方から時の終りまで、お互いを求めてめぐり合う二つの魂。マヤと真澄ではないが、「魂のかたわれ」とはこういうのを指すのかもしれない。「インキーにわびる」R・M・グリーン・ジュニア実は高名な小説家らしい覆面作作家の中編。精神的及び物理的なタイムスリップがモザイクのように散らばり、やがてパズルのように収束する珠玉のラブ・ストーリー。【送料無料】時の娘 [ ジャック・フィニイ ]
2013.06.14
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この本を初めて読んだのは随分昔の話だ。この日記を書くにあたって、過去の記録を読んでみる。なるほど、と思う。しかし現在の自分は、間違いなく過去の自分よりもこの小説を堪能した、と思う。新生モーロックの世界やイーピョルニスの島とそこでの入植者たちのことはおぼろげに覚えていたが、前回はそれ以降の巨視的ヴィジョンに気持ち的についていけなかったような気がする。のっけから、ユートピア思想が語られるのがいい。時間と空間の多様性に関する大風呂敷も抵抗なく読めた。文体も「時間旅行家」のものだ。「プラトナー」のオチにも笑った。結末も頷ける。彼はウィーナとともにタイムマシンで逃亡することもできた。分裂する世界の多様性などお構いなく、だ。しかし彼はそこに踏みとどまることを選んだ。かの世界と自分の行為に責任を持つために。おそらく「彼」はモーロックに殺されてしまっただろう。「書き足された記録などなかった」のだから。しかし、多様性の宇宙の彼方から記録が届けられた「この地球」の未来では、彼はモーロック人の説得に成功し、エロイ人との新しい共存共栄関係を構築する礎を作った偉人として奉られているかもしれない…少なくともそう想像することは自由ではないか?【中古】 タイム・シップ(下) ハヤカワ文庫SF/スティーヴン・バクスター(著者),中原尚哉(訳者) 【中古】afb
2013.06.13
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短編集。「永遠の問題」「夕陽の国ドノマーガ」「SFパロディー」からなる。そのひとつひとつについて詳細に感想を述べるほどのことはないと思う。ハッピーエンドものがほとんどないのが特徴だ。日本で言えば星新一の味に近い。<シャーロック・ホームズ秘話>は、名探偵が実はロボットだったというありきたりのものだが、ホームズファンとしては捨てがたい。「夕陽の国ドノマーガ」冒頭の<幻影>は、<ロボットの恋>として『不可能の公式』に収録されている。個人的には<遺産相続人>が心にのこる。ドノマーガが終焉を迎えるとき、地球上でたった一人残った老人が先に死ぬのに耐えられず、機械が叫ぶのだ。「死ぬ前に、俺の回路を切ってくれ!」
2013.05.16
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小説に書いたことがその後実現したSF作家と言えばジュール・ヴェルヌやハインラインが有名だが、北の大地にも一人いた。地質学者で古生物学者のイワン・エフレーモフだ。また科学エッセイではアシモフが有名だが、エフレーモフは小説の中で科学の解説をごく自然に行う。本書はそんな彼の面目躍如たる短編集である。「過去の影」ここに出てくるような天然のカメラの暗箱の役割を果たすような地層が自然界に存在していれば、恐竜をはじめ絶滅した古生物の生態がわかっていいだろう。「アク・ミュンゲス――白い角――」エベレストと伝説の悲恋物語を組み合わせた幻想的短編。「ダイヤのパイプ」ダイヤ鉱山を発見する話だが、実際に発見したのはこの短編を発表した後だった。「にじ流れるの入江」生命の樹の正体は何だったか?
2013.05.02
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題名からフランケンシュタインものを連想しましたが、違いました。確かに生肉を食料としたりと多少グロテスクな面もないではないのですが、そして開発者が怪獣の危機に際して自分の片腕を提供したりする場面もあるにはあるのですが、それがメインではないのです。むしろ開発者が怪獣を掘削など平和利用しようとしているのに、政府は軍用を検討し…というような物語構造で、それをどうやって出し抜くか、裏をかくかというお話なのです。ついでにいうと開発者の助手は反体制運動の一員であったりして、それがまたアクセントになっています。もちろんこれは旧ソビエトのSFですから、体制側はファシスト、反体制側は共産主義です。しかしまあそういったことを抜きにして楽しんでも何ら差支えない本でしょう。なおこの物語に固有名詞はほとんど登場しません。出てくるのは「人間」「見習工」「科学芸術院総裁」という具合で、全体主義国家へのアイロニーであることはすぐわかりますが、かえってそれが物語を寓話的にしていまして、今日ではむしろ共産主義社会への風刺として読解可能だと思うのであります。同時収録の短編『実験』(リンマ・カザコーワ)は、ある実験の申請のために青年が担当の女性に許可を迫るというお話です。女性は前例がない事なので悩み、夢にまで見ます。そしてほとんど許可してもよいと思うところまでいきます。しかし実はその夢自体、青年の実験によって作り出されたものでした、というオチです。
2013.04.27
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現在は岩波文庫の『モロー博士の島』で読むことができるウェルズの「故エルヴィシャム氏の物語」を発展させたような長編。ただしこのアメリカの株屋は手違いで犬の体に自分のアイデンティティを移植され、次第に同化していってしまう、その喜悲劇を描いている。作者の目論見が資本主義社会の風刺にあることはもちろんだが、現在読むとやや古めかしい。そういえば『ルパン三世』にも同じモチーフの話がありましたね。【中古】 モロー博士の島 岩波文庫/H・G・ウエルズ(著者) 【中古】afb
2013.04.25
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現代ソビエトSFシリーズ2。大阪府立図書館から相互貸借で借りたもの。「よくできた惑星」ストルガツキー兄弟無人?の惑星に降り立った地球人。だがそこは機械文明ならぬ生物文明の宝庫だった。「機械対人間」B・グルフィンケリ日本を舞台にした短編。貨物列車を運転する電子大名が運送の途中で急停止した。電子大名は責任をとって「自殺」した。貨物は破損し、保険金の支払いをめぐって裁判になった。裁判官もまた機械だった。裁判官はその原因を調べ、急停止の原因が線路で転んだ人間の子どもを救うためであったと知り、電子大名の行為をたたえ、保険金の支払いには及ばずとした。「粘土の神」A・ドニェプロフ国際科学研究所に連れてこられた主人公が、そこで行われる研究に不審を感じて追及するミステリー仕立ての小説。実はそこは普通の炭素生物を珪素生物に換える研究を行っている施設だった。何のために? 戦争で従順な兵士を量産するために。「グレグ」A・グロモア『自己との決闘』の著者の作。一見無人の惑星に降り立った地球人。だがその地下には鳥に似た現地の人間たちが居住していた。なぜ? 地上にはグレグがいるから。グレグとは? 現地の支配者によってつくられたウィルスで、それに感染すると生物は意志や感情を持たぬ奴隷や兵士にされてしまうから。支配者はどこに? 人民とともに地下に潜っている。なぜ? 地上に出ると空気感染してしまうから。上記二篇ともにファシズム批判の短編だが、今となってはそう読めない。「ベルヌ教授の目覚め」U・サフチェンコ「もしも第三次世界大戦が勃発したら、第四次世界大戦はこん棒によって行われるだろう」という冒頭のアインシュタインの言葉が効いた短編。冷凍睡眠で一万八千年後、つまり200世紀に目覚めた教授は、そこで猿人の群れに襲われる。これはアインシュタインの予言が成就したぞと思ったが、実はそこは人類の進化を再現するための研究所に変わっていた、というオチ。
2013.04.17
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現代ソビエトSFシリーズ1。不具が生まれる前の本なので、当然のごとく絶版である。「砂漠の夜」ストルガツキー兄弟砂漠の野獣狩り。火星人一号となる赤ん坊の出産に立ち会うべく母親のもとに急ぐ医者二人。舞台設定を除けば普通小説の体裁である。「遅すぎた発見」D・ビレンキン透明人間になる方法を発明した男。だが金銭のない共産主義社会でなんの役に立つ?「石の嵐の港」G・アリトフ地球は宇宙の辺境にある。宇宙人は、地球などに興味ない。彼らは銀河系の中心を向いている。地球人は、辺境の遺跡を見つけるだけである。…「分子合成喫茶店」「ロボットの恋」I・ワルシャフスキー本物とまがい物の違いは何か。人間がロボットに恋する話はアシモフでお馴染みだが、映像に恋するのは…。ビレンキン、グリゴリエフの短編とともに、日本の星新一や小松左京の短編のような味がする佳品。「プラスアルファ」V・ジュラブリョワ世界は、それまでの科学常識を打ち破る革命によって進歩してきた。「不可能の公式」E・ボイスクンスキー&I・ルコジャノフ高度に発達した文明社会が逆に人類を堕落させるというアイディアはウェルズの『タイムマシン』でお馴染みだが、モーローックの役割をマザー・コンピューターに与えたところが新鮮。「もどらなかったタイムマシン」V・グリゴリエフとんびが鷹を産んだために起こった喜悲劇。「二重らせんのカフスボタン」M・エムツェフ&E・パルノフ世界は弁証法によって進歩するということを言いたいがための一篇。「怒りの一日」S・ガンソフスキー人は、理性によってのみ人になるにはあらず。「ファラデーのいたずら」A・ドニェプロフもしも空っぽの頭蓋骨の脳波が、覚醒した人間と同じ波形を描くとしたら、否、酔っぱらいの脳波よりはるかにまともな脳波を示すとしたら、我々の精神活動を制御しているのは何なのか? ウェルズ的皮肉に満ちた落ち。
2013.04.14
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ラドガは物理学者の星である。瞬間移動の研究をしていたが、その副作用として両極から一種の「波」が出て、居住者の生活を脅かしていた。ある日、その波が惑星全土を覆うほど強くなることがわかった。残り時間は3時間。宇宙船が戻ってくるのは10時間後。救命艇に誰を乗せるべきか、というお話。学者をか、それとも…『タイタニック』のSF版。絶版だが、一種の不死人間カミールの扱いが端役的なのが不満。
2013.04.11
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『ストーカー』の著書の、およそSFらしくないSF。舞台は中世の封建社会。どうみても地球そのものなのだが、読み進めていくと聞きなれない国名や人名がでてくる。それもそのはずで、ここはどこか別の星、住んでいる人間も地球人そっくりの異星人だったのだ。地球人も同じ星に何人か住んでいた。この星の社会の発展を見守り、陰ながら善導するためだ。読み書きのできる知識人が殺されないように保護するためだ。だが彼らに助力することはできない。助けた知識人に地球の進んだ武器を渡し、この社会の自然な発展を妨げることはできない。…要するに情報員である。ソ連人(当時)の作者は、ロシア革命を意識している。共産主義そのものが一種のファシズムであるにせよ、そういう批判はまだ、前面に出していない。だが、不具は最後まで読んで近代日本と朝鮮の関係を連想せざるを得なかった。勿論地球とこの星の間には何光年もの宇宙空間があり、日本と朝鮮の間には一衣帯水の狭い海しか間になかった。したがって、半島の情勢はそのまま日本の国益を左右する。それでも、中途半端に金均玉に手を貸したのはよくなかったのではないだろうか、と思ってしまうのだ。本書をSFの形を借りた政治小説とみるか、思考実験のSFとみるかは、読む者の手に委ねられているが、情報員アントンと結婚した現地人の妻キースの悲劇的な最期は、忘れられない。ストルガツキー兄弟の『神様はつらい』を映画化したコメディ・タッチのSF作品 【中古】●VHSビデオ●惑星アルカナル 宇宙からの使者●実際は喜劇ではありませんが一応紹介。
2013.03.28
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『緑の瞳』は死者からつくられたゾンビの話だった。一方これは完全な人造人間、合成人間、そしてロボットのお話である。創造者たちと被造者たちをめぐる群像劇と言っていいかもしれない。人間が生命の創造にかかわる際の倫理性については、古くは『フランケンシュタイン』から、最近ではテレビドラマでも取り上げられている問題なので、ここでは問わない。結末の悲劇性は『モロー博士の島』以来のお約束だろう。1963年の作品である。世界SF全集24巻より。《早川書房》ヴェルヌ/ウエルズほか世界SF全集 全35揃 【中古】afb
2013.03.27
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科学者が死者からゾンビを作る、というのはメアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』以来のゴシック小説の伝統である。さらにこのルーシャス・シェパードという作者、SF専門の書き手ではないらしい。したがってこれを怪奇幻想小説の部類に入れることも考えたけれども、一応疑似科学とはいえ生化学的にもっともらしく見える説明をしているので、やはりSFに分類した。ちなみに科学者の名前はエザワ、日本人である。さてこのゾンビ、死者の魂がそのまま蘇るというわけではない。寿命はもって一年。そのことに気がついたドネル・ハリソンは、ゾンビ仲間のリッチモンド、女性の療法士とともに研究所を脱出。だがリッチモンドは逃避行の途中で死んでしまう。それから話が面白くなる。バイブル・ベルトの南部でドネルがイエスよろしく「奇跡」を行うシーンは圧巻だ。神の子がつくり給うイエス。人の子がつくり給うドネル。このへんとても象徴的である。するとさしずめ、療法士はマクダラのマリアか。結末はわざとぼかしてある。ドネルはやはり寿命が尽きて死んだのか。常識的に考えればそうだが、彼女の心の中では永遠に生きているのだろう。処分本NO242。《早川書房 ハヤカワ文庫SF》ルーシャス・シェパード 友枝庸子訳緑の瞳 【中古】afb
2013.03.27
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原題は『世界と世界に架ける網』。『楽園の泉』と同趣旨のこの小説は、「科学的に正しいSF」である。もっとも静止衛星「アトランティス」と赤道を結ぶ宇宙エレベーターなんて構想は、技術者や科学者に任せておけばよいので、文系読者は科学的背景をBGMとして聞き流しつつ、人間関係のドラマとミステリーを追っていけばよい。緊迫したプロローグ、両親の死の謎を追う青年技師に持ちかけられる壮大な話、ロケット王レグロの野望と病気と妻と娘、マッドな主治医モレル、怪物クラーケン…橋が架かった後で、すべてが絡み合い、最後の三章で物語は一気に解決する。その畳み掛けるような展開が小気味よく、クラークとアシモフを足して二で割ったような佳品である。処分本NO241。
2013.03.22
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「忘れろ……」後催眠のかけあいによるミステリアスな殺人(?)事件。妄想とか嫉妬とか動機のことはさておいて、キー・ワードが「忘れろ」だけに面倒なオチが待っていた。「うるさい!」異星人も地球人も社会制度が同じなら心理構造も同じだという仮説に基づくドタバタ喜劇。ただし、円盤人の言語がすべて「歌」だったとしたら…筒井康隆的一篇。「逃ける」ふける、と読む。ポン引き詐欺とその被害者の話だが、SFというより怪奇心霊譚に属する。「逆臣蔵」室町時代に忠臣蔵の夢を見た男。しかしその男には締め切りに追われるSF作家小松の生霊がとりついていて……。「お糸」短編集屈指の傑作。出だしは普通の時代小説。だが次第に当時にはないはずの語彙があらわれ、おやと思う。天狗船、からくり籠、錦絵鏡、凍氷室、早問答筒…ないはずの二十世紀の文明の利器があり、とうに開国していた江戸時代の話。ついに片仮名が一語も出てこないのが粋でいい。「予知の悲しみ」24時間先を正確に予知できるとしたら、誰でも競馬や株に走るだろう。だが予知できるだけで自分の運命は変えられないとしたら。……「虚空(そら)の足音」地球人の超能力者も登場する大人版『E.T.』と考えると、序章だけで終わっている。が、短編としてはこれでいいのだろう。裏表紙には「八篇」とあるが、いくら数えても七篇しかないミステリアスな一冊。処分本No.240。《文春文庫》小松左京虚空の足音 【中古】afb
2013.03.19
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SFとミステリーを融合させた第一人者と言えば、『鋼鉄都市』『はだかの太陽』で有名なアイザック・アシモフが挙げられる。では、宇宙を股にかける私立探偵ジャン・ダーセックが登場する本書はどうか。絶版文庫ということもありシリーズ第5作しか読んでいないので何とも言えないが、アシモフの匂いもしないではないものの、どちらかというと太陽系の英雄だったキャプテン・フューチャーの規模をもっと大きくしたような印象を受ける。アシモフの宇宙に地球人の植民以外の異星人はめったに登場しないからだ。もっとも物語としては『虎よ! 虎よ!』の構造に近いだろう。あいにくアルフレッド・ベスターの小説と違って探偵が全面に出ているので、クワスロルクは重要参考人程度の位置におさまっているのだけれど。処分本NO.239。《サンリオSF文庫》ロイド・ビッグルJr 新津一義訳ダーゼック・シリーズ 揃 暗黒のすべての色/暗黒の監視人/この暗黒化する宇宙/沈黙は死の匂い/時の復讐 【中古】afb
2013.03.18
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はるかな昔、異星の文明が地球を見つけた。そこは植民できそうな星だった。ただひとつ問題があった。大気の組成が彼らの生存に不適格だったのだ。異星人たちは地球の生物にその問題を処理することに決めた。人類の進化に干渉し、やがては地球の大気を彼らの生存に適するまで浄化してくれるように。…人類の敵に立ち向かったのは一人の男だった。彼は一人であり、また過去における天才たち、闇の力によって道半ばで挫折せしめられた天才たちの意識の集合体でもあった。結末まで書いてしまうのは野暮だから差し控える。30年以上前の本だが今日読んでも文明批評として有効なのは、日本の原子力発電とそれに伴う放射能汚染問題や中国の大気汚染問題を引合いに出すまでもないだろう。処分本NO.238。《早川書房ハヤカワ文庫SF》ロジャー・ゼラズニイ 深町真理子訳燃えつきた橋 【中古】afb
2013.03.17
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世界SF全集24巻より。地球文明と異星文明のファースト・コンタクトものとしてはお粗末である。とくに双方ともに資本主義を克服し、全土が共産主義化されているとあっては。人間中心主義に対して翻される反旗も、異星人の思考回路に関する議論も、底が割れてみれば浅いものだ。しかし「記憶」についての物語だと考えると今読んでも興味深い。死んだ人間の記憶の復元や、人間の性格を薬物によってコントロールできるというのはややディス・ユートピアぽく聞こえるかもしれない。ただし、クムビに関しては別だ。当時そんな用語はないが、クムビはいわゆるサヴァン症候群である。驚異的な記憶力を持ち、何年何月何日何が起こったのかをたちどころに言ってみせる。だが、劣化しない記憶と引きかえに、クムビはただのカレンダーになってしまった。主人公のミケランジェロ(!)は、クムビに想像することを教える。はじめは苦痛だったが、少しずつ空想するようになり、やがて忘れることを「覚える」。それによって彼の人生はより生き生きしたものになった。…実際の症例で有効だとは思えないが、空想するのは楽しい。クムビに神の恵みあれ。《早川書房》ヴェルヌ/ウエルズほか世界SF全集 全35揃 【中古】afb
2013.03.16
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惑星イシュタルは千年に一度、焦熱期に悩まされていた。3番目の太陽が千年周期で大接近し、地表を焦がすのだ。まあ、ハレーすい星の恒星版だと思えばよい。そんな星にも文明はあった。しかし今回は南部の蛮族がその文明国を襲うという。地球政府は、半人半馬の北部イシュタル人を救うのに積極的ではなかった。不干渉主義というわけだ。加えて、別の植民星をめぐる異星間戦争もあった。とても手が回らない。上梓されたのは1974年。したがって本書は、地球政府=アメリカ、ナクサ星人=(旧)ソ連、イシュタルと蛮族の戦争=ベトナム戦争、と見立てたプロパガンダ小説と読めないこともない。空爆まで出てくるし。もっともそれは作者の無意識の動機であって、主流小説でもないSFにそこまで肩入れするのはひいきの引き倒しかもしれない。戦争うんぬんより、地球人女性ジルの揺れ動く心理の方が興味深いが、処分本NO.234。《ハヤカワ文庫SF》ポール・アンダースン 関口幸男訳焦熱期 【中古】afb
2013.03.11
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キャプテン・フューチャーが活躍していたスペース・オペラの時代、太陽系は生命に満ち溢れていた。どんなに装いをこらしても、そこは地球のパワー・ゲームの縮図だった。1980年代のSFは、そうはいかない。本書は、ボイジャー1号が送る映像など当時の最新の科学的知見に基づいて、木犀の衛星ガニメデの地球化(テラフォーミング)のために苦闘する人々を描いたハードSFである。少年が主人公だからジュブナイルかと思ったら、様相が違う。第一、三人称だ。マヌエルが少年なのは前半だけで、後半は大人になっている。成長物語と言えないこともない。ガニメデの自然は厳しい。他の植民地(小惑星)との競争もある。父なる地球は今や社会主義の星だ。開拓地である最前線の「資本主義」をよく思っていない。悠久の昔から、父と子にはよくある話である。マヌエルもまたそれを体験する――。そもそもはアレフが原因だった。そのためにイーグルが死に、老マットも死んだ。ではアレフとは何者なのか。ヒントはある。後半である程度解明される。だが完全ではなく、謎は謎として残る。それでいいのだと思う。何もかも明快になってしまったら、余韻が残らない。文体は文学的で、主人公がアレフを追うさまは『白鯨』や『老人と海』を連想させないでもない。またイーグルは『モロー博士の島』の改造動物たちの末裔でもある。いわばSFと文学のハイブリッドのような作品と言えるだろう。処分本NO232。《早川書房ハヤカワ文庫SF》グレゴリイ・ベンフォード 山高昭訳アレフの彼方 【中古】afb
2013.03.07
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ここに帝国の植民地にされそうな星がある。デイヴィッド王が支配者として全土を統一した暁には、帝国の傘下にならなければならない。ただし法律によれば例外がある。宇宙船を建造できる星は、第二級惑星以上の待遇を受ける、というものだ。もちろんサミュアル王子の惑星にそんな科学技術はなかった。しかし耳寄りな情報が入る。辺境の惑星マカッサーにある聖堂の奥深くに、宇宙船の設計書が眠っているという。特命を帯びた軍人マッキニーは、貿易商人に成りすまし、チームの一員とともにマカッサーに向かった。サミュアル王子の惑星がほとんど統一というところまできていたその折も折、現地での冒険を経て一行は無事帰還した。果たして設計図は手に入ったのか? 戦闘、ロマンス、政治的駆け引き…ハインラインを髣髴とさせる上質のエンターテイメントだが、蔵書整理のため処分。NO231。《早川書房ハヤカワSF文庫》ジェリイ・パーネルデイヴィッド王の宇宙船 【中古】afb
2013.03.04
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ウッディ・アレンが古代の哲人と呼ばれる未来社会。そこでは膨張した世界人口を養うために、人々が1週間に6日冷凍睡眠する社会だった。換言すれば、どの曜日に生きる人も、1週間に1日しか歳をとらない社会である。だが勿論上層部は別だ。下々を管理する者(イマー)が1週間に1日しか目覚めていないのでは話にならない。しかしそれでは庶民と比べて7倍も早く歳をとってしまう!解決策はあった。細胞賦活剤の類の不老薬だ。何のことはない、自分たちでそれを独占しておきたいがために、手の込んだ階層社会を構築していたのだ。…これらのことを発見したのは一人のイマーの下吏だった。警官である彼は、曜日ごとに人格を変えて存在する合法的な「曜日破り」だったが、この世界には違法な「曜日破り」が後を絶たない。ある者は安息日を守るために、ある者は犯罪の懲罰から逃れるために…。この物語の主人公は7つの曜日に7人以上の妻を持つが、そのうち2つの曜日の連れ合いを殺された。「曜日破り」の殺人鬼を追い、天誅を下した彼だったが、思わぬ事件に巻き込まれてしまい、その多重人格的存在が「不安定」として「治療」の対象とされ…反ユートピア的な未来小説だが、政治理念や文明批評よりも思考実験の方が勝っているのでSFの範疇に入れる。処分本No.230。《ハヤカワ文庫SF》フィリップ・ホセ・ファーマー 大西憲訳デイワールド 【中古】afb
2013.03.03
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八つのオムニバス形式かつ時系列的な中短編からなるノウン・スペース・シリーズの一冊。ノウン・スペースとは読んで字の如く既知宇宙のことで、辺境をさすらう既存のスペオペに対抗したニーヴン世界のニュー・スペース・オペラのことである。発表されて40年以上になるが、今読んでも面白い。時代は26世紀。人類は銀河系宇宙に進出したが、そこにはすでに高度な知的種族が支配する辺境なき世界だった。異星人との小競り合いや戦争もあるが、星際的におおむね平和であった。最初の物語では、双頭三つ脚草食系パペッティア人が重要な役割をなす。このパペッティア人、わかりやすく言えばネガティブなゴルゴ13で、自分たちの星系を、決して他種属には教えない。ベーオウルフら主人公級の登場人物たちがそのありかを探すミステリーなのかと思ったら、彼らは4つ目のお話を最後に、物語の表舞台から完全に姿を消す。代わりに現れるのは、商人で情報屋のアウトサイダー人、肉食系で人類と対立しているクジン人、平地人と呼ばれる地球人、定着性知的種族のグロッグ人、重い惑星に住むジンクス人、芸術家気質のクダトリア人など。そうそう、欧米のSFではよくあることだが、この世界ではイルカをはじめとする鯨族は、「手のない」知的種族という設定である。…処分本No.229。 【中古】文庫 中性子星【10P19Feb13】【画】【中古】afb
2013.02.28
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映画の原作。映画は映画で悪くないが、あれはやはり観せるもの。登場人物が、学者、作家、ストーカー(シュハルト)に集約された幻想的な世界だった。一方小説はもっと怪奇だ。原題は『路傍のピクニック』。また映画を引合いに出して恐縮だが、『ブッシュマン』をソ連化したような作品だ。捨てられるのはコカ・コーラのビンではなく、異星人が残したさまざまのガラクタ。本当の使い道はもちろんわからない。しかし有用だ。その用途や性質によってさまざまな隠語で呼ばれるさまざまなブツをめぐって、密猟者であるストーカー、仲買人、学者、当局が織りなす人間ドラマが、本書である。ついでに言うと、登場人物の多くも隠語で呼ばれる。ゾーンは実は共産主義で、と読み解くことも可能だし、逆に資本主義で…と考えることも可能だが、その種の議論は政治的で浅薄になるから、よした方がいいと思う。不条理と考える方がまだしもではないか。映画は小説の最終章に触発されながらまるで違ったものになってしまっている。では小説の方は? これはハッピー・エンドなのだろうか、それとも新たな悲劇の始まりなのか?判断は読者の手に委ねられている。
2013.02.25
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神話の創造者と呼ばれた作者の代表作。本書でヒューゴー賞を受賞した。三日戦争と呼ばれる全面核戦争で壊滅した地球はミュータントの巣窟となり、生き残った人類はベガの市民権を求め、ベガ星人は地球の遺跡を管理していた。ところがここに変わったミュータントがいた。不死人コンラッドである。彼も核戦争の申し子なのだが、まるでポール・アンダースンの『百万年の船』の主要登場人物のように、名前を変えながら何百年も生き続けていた。地球を歴史的博物館として全面的に所有したいベガ星人とコンラッドとの虚虚実実の駆け引きについては本書を参照のこと。だが最終的にベガ星人は「あんたが俺たちの自主独立を阻むなら、俺たちはあんたが大事に思ってるものを破壊する」との脅しに屈する。その代わりに何とコンラッドを地球の「相続者」にしたのだった!処分本NO225。【中古】 わが名はコンラッド / ロジャー・ゼラズニイ
2013.02.06
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たぶん『われら面を選ぶとき』の方がより適切な邦題だと思う。主人公はシチリアの出身。職業:殺し屋である。殺されて、遠い未来によみがえった。そこでまた暗殺を依頼されるのだが、話にはいろいろ裏があった。地球はどうやら大規模な核戦争に巻き込まれたらしい。生き残った人類も、「家」の中で細々と暮らしている。このような惨禍が二度と起きないよう、人類の性質そのものを作り変えてしまおうとお偉方は考えた。それが殺し屋の雇い主だ。だが「敵」もさるもの。殺し屋のクローンを作り出し、記憶喪失の彼を「ミスター・ブラック」として殺し屋を暗殺するよう潜在意識に植えつける。どちらにしろ、面倒な種は根絶やしにしてしまったほうが地球のためなのだ。ところで、殺し屋一族には奇妙な性質があった。ファミリーの誰かが死ぬと、その意識は生き残ったファミリーの誰かに受け継がれるのだ。つまり子孫は必然的に多重人格的性質を持つようになるが、普段は意識されない。だが危機になるとおもてに現れる。…殺し屋VSクローン、どちらが勝ち、どちらが負け、雇い主はどうなったか、興味を持った方は原作をどうぞ。処分本NO224。《早川書房ハヤカワ文庫SF》ロジャー・ゼラズニイ 黒丸尚訳われら顔を選ぶとき 【中古】afb
2013.02.05
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普通なら題名を『スター・ストーン』とするところだ。だってそれが中心の物語なのだから。それをあえてこうしたのは、『不思議の国のアリス』に対するオマージュに他ならない。作中のドジスン教授は、かのルイス・キャロルの本名。13年も同じ大学に在籍しているモラトリアム青年が、スター・ストーンをめぐって星際的事件に巻き込まれる。スリルとサスペンスと謎に満ちたヒッチコックの映画『北北西に進路を取れ』のような展開のお話だ。ミソはスター・ストーンが実は『寄生獣』のごとく知性ある生命体で…というあたり。ベスタ―の『虎よ!虎よ!』にも少し似ている。神話の創造者ゼラズニイらしからぬ長編だが、こういうのもたまには悪くない。ただ再読するほどのものでもないので、処分本NO.223。【送料無料】砂のなかの扉 [ ロジャ-・ゼラズニイ ]価格:378円(税込、送料別)
2013.01.28
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物語の大部分は過去の記録として語られている。ソ連人の言葉が中国人の日本語臭いのには目をつぶろう。翻訳者だって最善を尽くしたのだ。真空管とかラジオ受信機とか機器が古臭いのも仕方ない。何しろ1960年の事件なのだから。本の中での「現在」は2021年になっていて、もう少し未来の話である。したがって、理論的にお話そのものは古びていない。否、パラレルワールドの地球で起こった出来事と考える限り、今後も古びることはないだろう。SF史的に言うと、フレッド・ホイルの『暗黒星雲』はイギリスSFの元祖H・G・ウェルズの短編『妖星』を、ハードSF的に敷衍し発展させた労作である。暗黒星雲と地球の科学者との対話は、ウェルズの『月世界最初の人間』をある程度連想させる。だが「彼」(性別は意味ないので彼女でもいいが)は月人よりもはるかに親和的な「漂流する脳細胞」だった。太陽系を離れる前に、暗黒星雲は自らの持っている科学的知識を地球人に伝えようとするのだが…。SFは勿論お伽噺である。あるいは寓話である。荒唐無稽なようで、守るべきリアリズムはある。それがあればこそ、この分野の古典たりうるのだと書いて、今日の日記を閉じることにする。《法政大学出版局》フレッド・ホイル 鈴木敬信訳暗黒星雲 コスモス・ブックス 【中古】afb
2013.01.09
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細胞と共生に寄生しているミトコンドリアが、独立した意志をもって新人類のイヴたらんとするお話。「彼女」はそのために宿主を操り、殺し、…筆力のあるタッチで語られるこの物語は、果たしてホラーかSFか。分類が難しいところだが、かなり理系的にハードなので、SFの範疇に入れることにした。ただし後味が悪い結末だったら、逆になっていただろう。処分本NO.219。 【中古】単行本(小説・エッセイ) パラサイト・イヴ【マラソン201207_趣味】【画】
2012.07.15
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旧版ではなく新版の方で、表題作以外はほとんどすべて新顔。共通点は、50年代の短編というだけです。本題に入る前に。旧版をお読みになりたい方は、アマゾンで買うのではなく、図書館から借りてお読みになることをお勧めします。諸行無常、高いお金を出して買っても、読んだ本の内容や感想など、書き留めなければ忘れてしまうものでございますゆえ。「徘徊許可証」ロバート・シェクリイ『人間の手がまだ触れない』『残酷な方程式』など、シェクリイの作品は昔よく愛読しましたが、手元には一冊もありません。本編はむしろ「殺人許可証」とでも題した方が良いようなコメディで、舞台はペンギン村がよく似合います。ペンギン村に来た政府の役人が、村から徴兵を募りますが、平和に暮らす村人にそんな勇気はなく、こんなのを無理やり連れて行けば軍の士気にかかわると…「ランデブー」ジョン・クリストファーこれはむしろ怪奇幻想小説の類ですが、50年代は幻想も怪奇もSFも未分化でした。空で死んだ夫は、生前から妻に言っていた。生きていても死んでからも君は僕のものだと。再婚した女は、だから飛行機に乗るのを極端に恐れた。しかし彼女は忘れていた。高層ビルのホテルの一室もまた危険だということに。「ふるさと遠く」ウォルター・S・テヴィスプールに鯨が出現した! 管理人は慌てふためく。だが実はそれは、少年が手に入れた宇宙人の「三つの願い」のうちのひとつで、一時的に現れたものだった。「信念」アイザック・アシモフ旧版からの生き残り。「自分の正気を疑うより、空中浮揚を信じる方が、問題の解決を楽にする。わかりきったことだ。あとは彼が動き回るだけさ。僕を助けたいんじゃない。自分の正気を証明したいためなんだ」「冷たい方程式」トム・ゴドウィン竹宮惠子の『私を月まで連れてって!』VOL・31「バミューダ・ハリケーン」で、ニナが一言で要約し、「古い話」と一蹴しています。まあ、船の種類によりけりでしょうが。「みにくい妹」ジャン・ストラザー名作童話「シンデレラ」のパロディ。ただしグリムの原典にある残酷趣味は無視してあるので、世間に流布している毒を抜かれた要約本のパロディ。なお「みにくい」というのは精神的な意味でしょう。「オッディとイド」アルフレッド・ベスターイドというのはフロイトのイドのこと。ある男の超能力を利用しようとするはずが、逆に彼を無敵の「独裁者」にしてしまうお話で、ベスタ―らしい短編。「危険! 幼児逃亡中」C・L・コットレル『ファイアスターター』の元ネタになったのではという翻訳者の説があり、言われてみれば主人公の設定は似ているし、年齢も同じ8歳。昔読んだ平井和正の「赤ん暴君」(『美女の青い影』所収)はさらにこれを後味の悪いものに変えた短編。「ハウ=2」クリフォード・D・シマックシマックにしてはブラックなオチ。ロボットを下手に「解放」すると、人間は自由の奴隷になるしかない、というスペキュレーションとしては面白いかもしれません。ハヤカワ文庫 SF 1832冷たい方程式/トム・ゴドウィン/伊藤典夫【RCPsuper1206】
2012.05.09
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『さようなら、ロビンソン・クルーソー』の第二弾続編。「二人の異邦人」ジョン・シャーリイイヌイットの村に不時着した緑色の異星人のお話。もう一人の異邦人は白人で、平和的な異星人と冷酷な地球人の対比が描かれる。「バックスペース」F・M・バスビー嫌なことがあったら、何でもやり直せたらいいのにね。「ジョエル」ポール・アンダースンサイバーパンクの洗礼を受けたような正統派。女医とトラックの運転手の恋物語は、後者が前者についていけず、悲恋の物語になるのでした、というのをSF的に書くとこうなります。「変な間借人」テッド・レイノルズ強欲な大家さんと異星人の間借人の珍妙なやり取り。「欠けているもの」アイザック・アシモフ妻が、火星に行ったという男が教祖の新興宗教に心酔してしまった、という男が相談にやってきた。そんな馬鹿な、ということで教祖の発言の矛盾を探そうとするが、なかなか見つからない。しかし盲点は意外なところにあった。地球から見る明けの明星は水星と金星。では火星から見る明けの明星は水星と金星と地球? いやいや、実はもうひとつ、あるのです。「火星の問題について」ランダル・ギャレット<ジョン・カーター>と<ターザン>のパロディ。問題とされるのはカーターの惑星間移動に関するもので…「誘拐作戦」ハーブ・ボエム(ジョン・ヴァーリィ)未来の子どもは脳がやられて白痴同然になってしまう。そこで近過去から、人々を誘拐し、未来に連れてこさせる。大丈夫、そのままでもどうせ墜落事故で死んでしまう人たちだから。タイタニックもこの伝かもね。「気球に乗った異端者」L・スプレイグ・ディ・キャンプ古今東西の偉人・有名人の名前のパロディがあちこちにでてくる怪作。マルコ・ポーロをかたどった主人公は妻の不貞に逢い、間男ともども復讐すべく二人のあとを追いかけるが…「気球に乗って五週間」のパロディでもあります。《集英社文庫》小松左京/かんべむさし編気球に乗った異端者 海外SF傑作集2 【中古】afb
2012.04.23
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アイザック・アシモフス・サイエンス・フィクション・マガジンからのセレクション。「さようなら、ロビンソン・クルーソー」ジョン・ヴァーリィ90年生きた経済相が、命の洗濯をすべく10年の幼年期休暇へ。しかし太陽系経済戦争の進展は予想以上に早く、主人公はヴァカンスの半ばで目覚めさせられる。すっかり退行して自分が何者であったかも覚えていないピリが、本来の自分(であったもの)に目覚めていく過程がミソ。「夢の期待」サリイ・A・セラーズ不老不死で生きるのに疲れ果て、自殺しようとしても体が自然に再生してしまう女性。とある事故に遭い全身の臓器を移植されついに死んだかに見えたが…「キャプテン・クラップ・スナックス」ジョナサン・ファースト親の言うことを聞かない子どもは、悪い大人に捕まりますよ、という教訓。巧言令色少仁。「魚の夢、鳥の夢」エリザベス・A・リン核戦争後の世界。人類の居住地は極端に限られていた。鳥のように自由に空をはばたくことを夢見る少年は、飛び降りて火傷を負ってしまう。移植した皮膚は魚のうろこのようになるが、少年はそれでも鳥になる夢をあきらめない。「皆既食の時期」フレッド・セイバーヘーゲン猿も木から落ちる、弘法も筆の誤り。それに気づいた若い科学者が危機を救った。「美食の哀しみ」アイザック・アシモフ本物のスパイスが姿を消し、(味の素のような)合成物だけになった世界の話。主人公は異星から本物のにんにくをとってきて見事料理大会で優勝するが、真相を知った審査員はその場で嘔吐し、彼を追放してしまう。「時の嵐」ゴードン・R・ディクソン地球上の時間が滝のように轟々と流れる世界。人々はそれについていけず、ついには世界の終りに遭遇してしまう。タイム・ストリーム。《集英社文庫》小松左京/かんべむさし編さようなら、ロビンソン・クルーソー …海外SF傑作選1 【中古】afb
2012.04.20
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