桜工房(だったところ)

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#22



 ミオに投げ飛ばされ、光を潜り抜けたカナエは、エレンの屋敷の薄暗い地下室の積み上げられた小麦粉の袋の上に着地(あるは着弾?)した。

 勢いが付いていたこともあったのだろう、カナエの体を支えきれずに袋は、バフッ!と音を立てて中身を辺りに撒き散らした。
 もうもうと立ち上る真っ白な小麦の粉塵にカナエはむせ返った。
「けほっ、けほっ!」

 間もなくして続いて、第二弾――エレンが壁にレンガで枠組みされた「門」を潜り抜けて、カナエの上に降ってきた!
「きゃう~~!」
〈…あぅ!〉
 幸いにもお互いに怪我はなかったが、カナエのときに破れた袋が今度は完全に破裂して。さらに小麦粉の煙幕を地下室全体に舞い上がらせた。
「けほけほけほっ!」
〈…こ、呼吸が…〉
 二人とも粉まみれになりながら咳き込んだ。

 そして――、地下室を淡い光で照らしていた「魔法の門」が突如、その光を失う。
 完全な闇が地下室を包み込む――。

「けほけほ…、あぁ、光が…!」
 カナエはよろよろと「門」があった壁を撫でた。
 ひんやりと冷たい石壁の感触が、その手に伝わる。
〈…やってくれたわね…〉エレンが語りかける。
「ど、どういうことぉ? エレンさん…?」
〈…ミオさんが「門」を壊したのよ…。バカなことを…〉
 闇の中でエレンがきびすを返し、上の階へ向かうために階段を上り始める足音がした。

 キュ、カツカツカツカツ…タン、タン、タン……、 

 カナエは慌てて足音を追った。

「ま、まって…! 助けに行かないとぉ!」
 エレンに追いついたところで、カナエは訴える。
 しかし、エレンは後ろを振り返らずにカナエの頭に語りかける…。
〈…今は無理よ。「門」が壊された以上、引き返すことは容易じゃないわ…〉
「で、でもぉ…!」

 一階に出たところで、エレンはカナエを振り返った。
〈ミオさんは、私たちにチャンスを与えてくれたわ…〉
「…チャンス?」
〈えぇ、これ以上はない。最高のチャンスを…〉
 エレンは真っ直ぐにカナエの目を見つめる。
〈チャンスを与えられた者は、ただ与えてくれた人に感謝だけして…。目的を達成しなければならないわ…〉
 エレンはまたきびすを返して、上の階へと向かう。
〈…それが、チャンスを与えられたものの使命…よ〉

 カナエは、エレンの言葉を噛み締めるようにしてうなずいた。

 その頬を、大きな瞳にあふれた涙が伝い落ちる――。


 無論、小麦の粉が目に入ったためではない。


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