桜工房(だったところ)

桜工房(だったところ)

#25



 薬品をしまっている棚から目的の物を取り出したエレンは、一気にそれを飲み干した。
 と、直ぐに彼女は喉に何かが詰まったような苦しそうな顔をして咳き込んだ。

「けほけほっ…!」
「だ、大丈夫ですかぁ?」カナエが不安そうな顔をする。
「え、ええ…。大丈夫、これすごい苦い薬なのよ…」エレンはおでこにしわを寄せた。「でも、効果は抜群」
「よ、よかったぁ~」カナエは安堵した顔をする。
「ええ、それじゃ急いでみんなところに戻りましょう…」
「でも、『門』はもう使えないよぉ?」
 不安そうなカナエを見て、エレンは不敵な笑みを浮かべる。
「あなた、私を何だと思っているの…?」

 ビゥオオオオ・・・ッ!!!

「ひゃああ~~~!!!」
 風を切る音が耳をつんざく。
 目には見えない強い力のお陰で、体がばらばらになりそうなのを必死に堪えるカナエ。
 ポニーテイルに結わえた髪が、バサバサッと激しくなびく。

 そこは空の上――。
 エレンが操る魔法のホウキにまたがって、物凄い速度で学園へと向かうところだった。
「あーははっ! どう? 私の愛馬の乗り心地はー?」
 エレンは普段の彼女からは想像できない喜々とした様子で、後ろで自分にしがみついているカナエを見る。
 口を開くと息が詰まりそうになるため、カナエは口をしっかりと閉じたままコクコクと何度もうなずいて、意思表示をする。
「このまま、一気に学園の待ち合わせ場所まで行くわよー!」
 エレンはさらにホウキの速度を加速させる。
「~~~~!!」
 あまりの風圧で、カナエの掛けていたメガネが吹き飛んでしまった。
「あ~~! メガネがぁ~~!」
 カナエは慌てて宙に飛んだメガネを取ろうと手を伸ばす――。

 が、
 その途端、カナエはバランスを崩してホウキから落ちた。

「あ…! あぁ~~~!」
 落ちていくカナエ。
「え…? ちょっと、何やっているのよー!」
 エレンが気が付き振り返ったときには、カナエの体は既にかなり下まで落ちていた。

「くっ…! 間に合うかしら…!」
 エレンは急旋回して、カナエの救出に向かった――。


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