桜工房(だったところ)

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#12


#12 トレーニング第一日目

 Gクラス特別コーチによるスポーツ祭典に向けてのトレーニング初日。

 クラスのほとんどの生徒が参加したトレーニングの第一日目のコーチは、マヒロだった。

 みんな体操着に着替えて、運動場に集合した。

「はーい、みんな。私が教えるのは基礎的な身体能力アップ方法だよ。運動が出来る人も、出来ない人にも手軽に出来て効果もある。私が演劇をする時に、実際にやっているトレーニング方法を伝授しちゃうよ!」
 参加者から、まばらな拍手と声が上がる。
「んじゃ、まずはシェイプアップに踊りをミックスした体操から始めましょう。ちなみに、これは私がお世話になった劇団の人に教えてもらったやつなのよ。なので、みんな真面目にやってねー!」

「おー!」と腕を上げて一際元気な様子を見せるカナエ。
「お~!」とその隣りでハルカも多少困惑した様子で腕を上げる。
「・・・ん? ハルカちゃん、元気ないねぇ?」カナエは首をかしげた。
「あ、あぃ・・・。私、体を動かすのは好きだけどぉ。スポーツ、カナエちゃんみたいに得意ではないんですぉ~」ハルカは肩を落とす。
「それなら丁度良いじゃない! 今度のトレーニングでスポーツ得意になろうね?」カナエは明るく言った。
「そ、そうだねぇ~」

 マヒロの動きに合わせて体を動かすGの面々。
 その中で他の生徒よりもワンテンポ遅れているものがいた――ミキである。
「う~~。う? う? マヒロさんが~~、スポーツ得意とは思いませんでした~~」動きだけでなく、口調ものんびりなミキ。
「ミキちゃーん。しゃべらないで体を動かしてー!」ミュウがいった。
「うう~~? 動かしてますよ~~」ミキは少し困った顔をしていった。
「で、でも・・・。みんなと、ワンテンポ・・・。下手すると3テンポぐらい遅れているような・・・」ミュウは小さくため息を吐く。
「それにしても~~。一生懸命体を動かすミュウちゃん可愛いですね~~」
「は? はい?」
「うふふ~~。思わず抱きしめたくなっちゃいます~~」
「あ、あの~」
 満面の笑みを浮かべてにじり寄ってくるミキに、ミュウは言い知れぬ危機感を覚え後ずさる。

 一方、そもそも今回の企画を始める切っ掛けとなったダイスは、額に汗をにじませながら何とかマヒロ体操に追いつくのにやっという様子だった。
「はぁ、はぁ・・・」息を弾ませながら一生懸命体を動かすダイス。
「うーむ、なかなか初日からきついなぁ、ダイス」
 ダイスの隣りで体を動かしているオペル。
 ほとんど錬金術部の部室にこもって研究ばかりしているため、運動が不得意そうなイメージのある彼だが、ダイスに比べて余裕がありそうだった。
「ま、まったくだ・・・。この作戦は良かったのか、わ、悪かったのか・・・」
「大成功だろ? 参加してくれる奴も多かったし」
「そ、そうだな・・・」
「明日は、ディルスか・・・」 
「ち、ちょっと、不安だな・・・」
「あぁ・・・」

 二人は何となく空を仰いだ――。

   *

 そんな運動場のGクラスの面々の様子を屋上から何気なく窺っていたのは、制服姿のシューだった。
 伸び放題だった髪を少し短く刈り込み、短いポニーテイルにまとめている。
 しばらくして見飽きたらしいシューは、校舎の中へと戻ろうとした――。

「・・・ん?」
 うつむき加減だったシューは、自分の進む先に脚が見え、顔を上げる・・・。
「何だ、あんたか?」シューはつまらなそうに言った。
「・・・あなたもサボり?」そう言ったのはエレンだった。 
「ああ・・・。昨日まで散々、いろんなところを回ってきたからな・・・。明日のことは知らないが、今日くらいのんびりさせてもらいたいもんだ」
「そう・・・」エレンは感情のない声でいう。
「あんたは? みんなと一緒にやらないのか?」 
「運動嫌い・・・」
「あ、そう・・・。んじゃ、ここにはどうして?」
「・・・何となく足が向いたのよ」
「ふぅん・・・」シューは苦笑した。
「・・・何?」
 エレンは細い目で、シューを睨みつけた。
「別に・・・。ま、ごゆっくり・・・」

 シューはそういってニヤニヤしながら、屋上を後にした。

「余計なお世話よ・・・」

 シューがいなくなった後で、エレンは呟き。
 屋上の手すりにもたれて、運動場を見下ろした――。



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