日進月歩

日進月歩

サヨナラの夢


ただ其処に転がっているだけ。
貴方の居ない世界は
それだけの世界。
無味乾燥な世界。

***サヨナラの夢***

電話が鳴った。
それはごく自然な事で。
でも、その一本の電話が
私の世界を全部真っ白に染めた。

「はいもしもし、雨宮ですけど。」

何でもないように電話を取り上げ、決り文句を口にする。

「あ…比奈ちゃん…?」

はじめ、電話の向こうから聞こえてきた声の持ち主の見当がつかなかった。
しかし、確実にどこかで聞いた声だ…と思いを巡らす。
そしてようやく思い当たった人物。

「…おば様…?」

相手は意外にも彼氏の母、宮崎 可南子だった。
めったに電話しない人で、声を聞いたのも半年振りぐらいだ。
判るはずないわっ!!と心の中でツッコミを入れていると
驚く事に電話の向こうで泣き声がし始めたのだ。

―はい?!

比奈は訳が判らなかった。
まず、何故可南子が電話をよこしたのか。
比奈に用事があるとも思えないのである。
そして、今現在の最大の疑問。
何故、電話の向こうで可南子が泣いているのか。
まさか比奈の声を聞いたから悲しくなったというわけでは無かろう。
それなら、電話など掛けないだろうし…

今度ばかりはどんなに思いを巡らしても
答えを見つける事が出来なかった。

「すまないね、比奈ちゃん。」

とりあえず声でも掛けようか…と比奈が考え始めた時だった。
今度は彼氏の父―名前は忘れたが―の声が聞こえてきたのだ。

「いいえ…おじ様…?何があったんですか?おば様…」
聞いてはいけないことかもしれない…と思いつつも聞かずに入られなかった。
当たり前のように沈黙が流れた。

「…比奈ちゃん、中央病院まで来てくれないかい?」

沈黙を破ったのは、明らかに想像を越えた答えだった。

―病院?

なんなんだろうか。
先程から訳の判らない事だらけだが、とりあえず行けば判るだろう、と考え
宮崎に2つ返事で答えると電話を切り、支度を済ませて病院へ向かった。

確実に真っ白な世界へと足を踏み出していたことを知ったのは
病院に着いてからだった。

「え…?秀が?」

聞かされた事実。

「植物状態です。恐らく、意識が戻る事は…」

彼氏の、秀の事故と被害状況。
信号待ちしていた秀にトラックが突っ込んできた。
居眠り運転だったそうだ。

何も判らなくなった。
何も聞こえなくなった。
何も見えなくなった。
それを聞いた瞬間から。
世界が真っ白になっていく。
全てが色をなくし、消えて消えて消えて消えて…
消えていく。

目の前に、身体のあちこちから無機質な管を通され
横たわっている秀だけが残った。

呼んでも答えない。
ヨンデモコタエナイ。

ただ、其処にあるだけ。
秀の外側が、其処にあるだけ。

ベットの傍に座って泣きつづけた。
涙は枯れることなくただただ流れ
タオルに吸い込まれては無くなっていく。

何日、そうやって其処に座っていただろうか。
何日、泣いては寝る事を繰り返しただろうか。
ふいに、上の方から聞き覚えのある声がした。

「臓器…提供しようかと思うんだ。」

「…へ?」
泣き腫らした目で、声がした方を見上げる。
其処に居たのは宮崎だった。

宮崎は一度比奈の肩に手を置くと
少しだけ微笑んで、隣の椅子に腰を下ろした。

「比奈ちゃんには悪いんだが…秀を…その…」
「殺すんですか?」

宮崎はイキナリ比奈が喋った事に驚いて、苦笑いを浮かべる。
それから困ったように「うむ…」とだけ言って黙ってしまった。

比奈は判っていた。
このまま秀を此処に縛り付けていても何の意味も無い事。
臓器提供という道を選べば、少なからず誰かの人生を救える事。
そして、それが一番良い方法だという事。

でも。
秀はいなくなるのだ。
この世から。
それは、比奈の世界の中心が、すっぽり抜け落ちる事と同じで。

それでも
「いい…かね?」
それでも
「辛いという事は、痛いほど判る。」
それでも
「しかし…だね。」
言わなきゃいけないことが
「このままでは…」
あるでしょう。
「比奈…ちゃん…。」

「はい…そうですね…」

それだけ言うのが精一杯だった。
しかし、比奈の決心を伝えるには充分だった。

すまないね、と27回謝って宮崎が出て行くと
腕を伸ばして秀にそぅっと触れる。

もう2度と
自分を抱きしめてくれる事の無い腕に。
もう2度と
自分の映る事の無い瞳に。
もう2度と
つなぐ事の出来ない大きな手に。
もう2度と
自分の名前を呼ぶ事の無い唇に。

そんなものを全部。
全部焼き付けようと。
焼き付けて忘れないように。
秀がいたこと。
確かにこの世界に
比奈の隣に存在たこと。

「ごめんね…秀…ばいばい。」
やっとそう擦れた声で別れの言葉を告げると
比奈は部屋を出た。
すれ違いざまに入ってきた医者と看護婦に会釈して
何日かぶりの外へ。

次の日、秀の手術が行われた。

秀は、秀の身体は空っぽになって返ってきた。


夢なら。
全て、全部、夢なら。
早くさめて。
こんな夢、嫌。
嫌嫌嫌。

どうか。
全部。
早く。
夢なら。
早く。
どうか。


覚めて。




目が覚めた。
寝ていたのだろう。
本当にすべて夢になったらしい。
凄い汗。
「嫌な…夢。」
苦笑いしてそう呟くと、キッチンへ立った。

「水…」
喉がカラカラだ。

たかが夢に…


と。


電話が


鳴った。


―end―



―――言い訳所―――

コレ…別に深い意味とかないですよ?(オイコラ
なんかこう…最初と最後だけぽっと浮かんだんですよ。
で、これで行って見よう!!みたいな。

これだけ早く出来た小説っぽいものは、後にも先にも無いと思う…
ぷっすま見てる間に出来たしv(コラコラ。

てか、ベタネタですねー。
あ、続きませんよ?
というか、続けれませんよ…
これが精一杯だってば…

毎度毎度お目汚しで申し訳ない…
では。

――――――――――――――――――――――――――2006年4月26日

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