日進月歩

日進月歩

普通の裂け目・2




この高校に入って
耐え難いプレッシャーの数々を受けてきたが
これほどまでも
思い悩んだことはなかった。

かといって
本人目の前にあたふたするのも悪い。

「ぁ。
 ぇと。笹山 詩夷です」

いすに腰を下ろしているのもなんだか億劫で
さらに頭を下げた。

「….柊 桧埜です」

とりあえずは文庫本から顔をあげてくれたものの
それでもどこか人を寄せ付けぬような
そんなオーラが漂っている。

『ぅ。。。絶対この人 ァタシを嫌ぉてるなぁ』

詩夷は
人懐っこく 明るく 責任感があるという代名詞を背負っているが
実のところ

偽りの自分。

人と付き合うのは好きではないし
ましてや明るくもないし
責任感があるわけでもない。


『ったく。西沢先生ったら 何を考えているのやら』

途方にくれる詩夷をよそに
目の前で再び文庫本に視線を落とす桧埜。

『読書 邪魔しちゃいかんかな?? 』

そう思いつつも
やはりこの空間で
2人きりで
何も話さないというのは

『耐えられへんわ!!』

詩夷はぐっとこぶしを握り締めると

「桧埜ちゃんはD中出身だよね?? 」

桧埜は文庫本から視線を上げず
ただうなずいた。

興味がないのだろう。

「ァタシもね 本当はそこに通う予定だったんだ。
 ぁ。ほら 噴火があったじゃない??
 だから逃げてきて 今のとこにいるの」

「ぇ?? 」

桧埜は少し驚いたような声を上げ
同時に視線も上げた。

「うん。本当。
 だからもしかして山が噴火しなかったら同じ中学だったかもねぇ」

「そぉなんだ」

詩夷は
驚いた。

桧埜が
少しはにかむように
不器用に 微笑んだからだ。

『望みはあるぞ!! 詩夷っ!! 』

心の中でのガッツポーズは
桧埜には見えない。

「あれ いるっしょ?? 真帆。
 ァタシの幼馴染なんだ。
 3年まで真帆もこっちに一緒にいたからねぇ」

「うん。真帆さんでしょ??
 4年の新学期から来たからねぇ」

「ブハッ 真帆さん?!
 さん?!」

「ぇ?? うん。美人だし 誰からもさん付けで呼ばれてたよ」

「マヂ?? 」

「うん。スポーツも万能だったしね」


他愛もない話は
尽きることなく

ただ

それだけ。

同じ空間で
「くずのたまり場」と呼ばれる
この空間で

同じ時をすごしただけ。
同じ時間を

共有しただけ。




『明日の朝には
 話せなくなってたりするのかなぁ。
 つか
 もう話題がないんじゃ....』


詩夷の不安をよそに

二人は


同じ時間を
同じ傷を背負い

すごしていくことになる。



出会いは
必然。

二人の出会いは
必然と運命という
対照的な言葉が
表裏一体になっていたことに

気づくのは

そう遠くない 未来。






<Production by風上 遥>

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