日進月歩

日進月歩

独りぼっちの馬と裏切り者の鹿・5


それが答えだった。

あまりに目立つあの小さな箱から
屋上へと沙咲を連れ出し問い詰めていた。
「どうして、長谷川のおば様の前であんなこと言ったの?!」
少し黙ってから沙咲はふふっと笑ったかと思うと
当惑する樹里をよそに大声で笑い出した。
「ちょっ?沙咲…?」
そう、樹里が言うと今度はぴたっと笑うのを止め
「だって…」
口を開いたのだった

「な?!何それ?
 そんな理由であんなことしたって言うの?!」
すると、それがよほど沙咲にとって意外な事だったのだろう
吃驚した顔で
「そうよ。当たり前じゃない。」
それ以外何があるの、と逆に問うてきたくらいだ。

樹里は面食らってしまった。
意味さえ判らなかったし、第一樹里は沙咲の事を
親友だなんて思ったことさえない。
「いい奴」だから、友達でさえない、と思っている。

そんな間柄の人に、「親友は二人は要らない」なんて。
その親友のうち、1人は確実に菜留子だろう。
そして、会話の流れからすると恐らくもう1人は、沙咲。
まあ、それも樹里の親友の事を言ってればだが。
十中八九そうだろう。

とんでもない事だ。
沙咲は勘違いしている。
訂正せねば。

「沙咲?
 ちょっと待って。誰と誰が親友だって?」
今度は、沙咲が面食らってしまったらしい。
何故そんなことを聞くのか、という風な目で樹里を見詰め
「私と貴方よ、樹里。」
当たり前でしょ、と沙咲は首をかしげた。

呆れて、物も言えなくなった。
なんてことだろうか。
この子は、自分の事を親友と勘違いしているのだ。

なんだか哀れに思えた。
転校ばかりで、本当の友達が出来ない、と嘆いていたのを思い出したからだ。
寂しかったのだろう。
悲しかったのだろう。
辛かったのだろう。
それには、同情する。
しかし、今回やった事については許す事など出来なかった。

とそこへ、誰かが通報(?)したのだろう
生活指導の先生が担任と共にやってきた。
それをぼんやりと樹里は確認した。


―――――――――
今回かなり短めです。
なんか、もう此処で切らないと
ずるずる行ってしまいそうだったので…

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