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2015.12.30
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カテゴリ: 小説
少年が年上の女とやりまくったり朗読したりたら、相手が蒸発してナチス関連の裁判で有罪になって恩赦間際に自殺してしまう話。

●あらすじ
I:戦後のドイツで15歳のミヒャエルが黄疸で吐いていたところを36歳の市電の車掌のハンナ・シュミッツに介抱され、お礼を言いに行ってやりまくったり朗読したりするものの、ハンナは突然仕事を捨てて引っ越してしまう。

II:ミヒャエルが大学のゼミでナチス時代の強制収容所職員の裁判に行くと、焼けた教会のドアを開けずに囚人を死なせた罪で被告になっているハンナを見つけて公判に通うようになり、ハンナが報告書を書いた首謀者扱いされて不利になっていて、ミヒャエルはハンナが文盲だと明らかにして擁護しようかと思って父に相談するものの、ハンナが文盲であることを恥じていたので結局裁判長には何も言わず、ハンナは無期懲役になる。

III:裁判後、ミヒャエルはゲルトルートと結婚するものの、ハンナと過ごした時間と比べて何か違うような気がして、ユリアが5歳のときに離婚して、カセットテープに朗読を録音してハンナに送り続ける。18年の服役のあとでハンナが恩赦されることになりそうだというので刑務所に行って出所後の相談をしていると、ハンナは自殺してしまい、遺産をユダヤ人の文盲団体に寄付する。

●感想
一人称で、ハンナの死後10年経ってからミヒャエルが過去を回想する形式。しかしミヒャエル自身の生活や思想がほとんど書かれていないせいで、語り手役はこなしても登場人物としては存在感がなく、語りの手法としては失敗している。
ミヒャエルはハンナを愛していたけれど、ハンナはナチスで、ナチスは批判しなければならないので、ハンナを批判しなければならないという認知不協和による葛藤があり、ハンナは自分が事件の首謀者ではないが文盲だとは知られたくないという認知不協和による葛藤があり、この二つの葛藤が物語の軸になっていて、I章ではミヒャエルとハンナへの愛、II章ではハンナが裁判で文盲だとは知られたくないがゆえに罪をかぶる葛藤、III章ではミヒャエルのナチス批判とハンナへの愛の葛藤が書かれる。ヒーローとヒロインの両方の認知不協和を書くので物語の構造としては複雑になるけれど、その複雑さに対して全体的に書き込み不足。
I章は少年の性欲を愛として扱って、セックスを無批判に愛として美化するのは気に入らない。性欲に負けたことに罪悪感をもって愛を否定するトルストイの小説のほうが作家の感性としてはまとも。ミヒャエルが年増好みなのか、母親代わりの相手を求めていたのか、性欲発散の相手として都合よかったのか、ハンナを好きになる動機が不明。III章でミヒャエルと母親の間に問題があることをほのめかしているものの、直接の家族の問題が書かれていないあたりはプロットとしての仕込みが不十分。

III章はミヒャエルが長年ハンナに朗読のカセットテープを送るくせに直接会ったり手紙を書いたりしようとせず、その割にはハンナが恩赦されそうになるとホイホイ会いに行く理由がよくわからない。歳をとれば考え方も変わるだろうに、ミヒャエル自身の思考の変化を書かずに何十年もすっ飛ばしてしまっていて、語り手としての役目をサボっている。それに刑務所はたいてい自殺防止の措置があるだろうに、どうやって道具を調達して看守に見つからずに首を吊ったのかという詳細が書かれていないうえに、自殺の動機を明らかにしないまま感情に訴える終わらせ方をしたことで、最後にご都合主義を印象付けることになってしまって全体が台無しになった。
著者は元判事で法学部教授のミステリー作家らしいものの、ミステリー作家の割には動機の追及が手ぬるい。肝心なところで一人称の疑問系を悪用して追及をはぐらかしてしまうのは語り手として不誠実。ぼくはどこへ行けばいいんだ?なんて聞かれても読者はしらねーよ、こっちが聞きたいくらいだよ。動機があいまいで疑問点だらけでご都合主義的な感動の押し売りに見える。もう100-200ページくらい細部を書き込んだらもっといい小説になっていたかもしれない。
「心の底から涙があふれでる。「これぞ小説!」」という低俗なキャッチコピーの帯がついているけれど、泣きたかったらたまねぎでも切ったほうがましである。たまねぎに「心の底から涙があふれでる。「これぞたまねぎ!」」というキャッチコピーをつけて売ったらベストセラーたまねぎになるとおもう。

★★★☆☆



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最終更新日  2017.04.05 03:55:44
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