Polymnia

Polymnia

ファンタスマゴリア 前篇



―「かっちゃん、なぁに?話って」
「あのね、僕この町を引っ越さなくちゃいけないんだ。」
「えぇ!?いやだよ。かっちゃんとお別れしたくない!」
「僕も‘…ちゃん’とお別れしたくないけどしょうがないんだよ。」
「ねぇかっちゃん?私のこと好き?」
「えっ!?う、うん。好きだよ。」
「じゃあ約束して。私の…………


ジリリリリリ!
目覚まし時計が朝を告げる。
…またこの夢、か。
10年前に去ったこの町に帰ってきて、なおかつ
この町の高校に入学するなんて一か月前には想像することすらできなかった。
俺の名前は碧井蠍(あおいかつ)、名前の由来?…親が聖闘士星矢の大ファンで
…ここまで言えば分かる?
蠍座だから…蠍。改名したいくらいこの名前は気に入っていない。
「おはよ~兄ちゃん♪」
こいつは妹の双葉。
勘がいい人なら分かるかな?そう、双子座だ。
父は双子って名前にするつもりだったが俺が止めた。
「あぁ、今起きたところだよ。双葉。」
「そうなの?でも兄ちゃんつまらないなぁ~
もう少しネボスケさんならもっと萌え萌えなシチュエーションが出来たのに~」
「は、はい!?」
「・・・ぷ、あはははは!兄ちゃん何照れてるの?
本っ当真面目なんだから。」
「勘弁してくれ・・・。」
「ごめんごめん。でもさ、少しは緊張取れたでしょ?」
「緊張?はて?・・・あ、入学式のこと?」
「そこは忘れちゃダメでしょ。」
「まぁクラスで目だたないように気をつけるよ。」
「でも兄ちゃん、妹の私の目から見ても、かっこいいし、
頭いいし、スポーツできるし、性格もいいし・・・」
「ふぅ・・・褒めてくれるのは素直に嬉しいけど買いかぶりすぎ。」
そう言ってこつんと双葉の頭をたたく。
「いてっ。」
「痛くないだろ?そんなことよりそろそろ着替えなくちゃな。
双葉、今日学校は?」
「・・・・・今何時?」
おそるおそる双葉が俺に聞く。
「8時。」
俺は時計を指差しそう言う。
「!?馬鹿!もう少し早く気づいてよ!!遅刻する~!」
バタバタと音を立てて階段を駆け下りいってきまーすと元気よく叫ぶ双葉。
それと同時に聞こえる母の怒声。
・・・平和だ。平和すぎる。
おれ自身この町に帰ってきたのは10年ぶり。
建物もそんなに変わってないし、人の雰囲気もそんな変わるものではない。
グゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
俺の腹が大きな音を立てて鳴る。
「さすがに腹減ったな・・・よし、朝飯食いに行くか。」
「おはよ~!!かっちゃん!!」
「おはよう。朝からテンション高いね。」
「そりゃあ息子の晴れ舞台ですもの!!」
「その台詞、是非中学の卒業式で聞きたかったよ。」
「アハハ・・・」
母さん、蒼井薫はこの性格、身長150cmくらいしかないことから
よく妹に間違えられる。
本人は全く気にしてないようだが。
「ん?今日の朝ごはんは焼きそば?」
「そうだよ。かっちゃん好きでしょ?」
「うん。じゃあ、いただきます。」
        ・
        ・
        ・
「いってくるよ。」
「はいはい。母さんもあとでちゃんとむかうからね。」
母さんに軽く微笑み、俺はドアを閉める。
空耳かもしれない。でも母さんがこういうのが聞こえた。
‘…ちゃん’元気かな・・・
                       (蠍side)


2.

ここはどこ?何も見えない・・・
私は誰だっけ?思い出せない。
―気がついたか?―
だ、誰!?
―そんなにあわてなくてもいい。私は・・・そうだな、
君らの言い方で閻魔様と言われる人だ。―
閻魔様?そんなお偉い人が一体何の用?
―君の記憶を開放しに来たんだ―
そう言った瞬間私の中に「なにか」が流れてきた。
「そう・・・だわ。私は天野花火。9歳のときに飲酒運転のトラックに
はねられて・・・今何年?」
―あの時から7年経ってるから2009年だ。―
「じゃあさ、私生きてたら16歳?」
―そんな仮定は必要がないがな。―
「血も涙も赤血球もないのね、でも死んでる私の記憶なんて開放して
なんか意味があるの?」
―人の気持ちなど知らなくて結構だ。
だがな、今日は君の願いを果たさせに来た。―
「願い?」
―君がひと時も忘れなかった約束のことだ。
それが分かってるという仮定のもとで話をすすめよう。
4日間だけ仮の生を与える。その間に約束を果たして満足に帰って来い。―
「わ、分かった。でも不思議ね。閻魔様ってもっと酷い人だと思ってた。」
―それは誤解だと下界の者に伝えるんだな・・・―
私の意識はそこで途絶えた・・・
                        (花火side)


3.

入学式・・・そんなもの学生側からしたらただの暇な時間であって、
校長の話など誰一人ろくに聞いていない。
大体はこれからの友達について考えているのだろう。
無論、俺もその一人だ。
「なぁ?」
いきなり隣から話しかけられる。
「ん?なに?」
「いや、俺クラスの知り合いいなくてさ。話しかけちゃマズかった?」
「そんなことないよ。どうせ先生の話は聞いてなかったしね。」
「ぷ、そりゃあそうだ。俺加藤スバル。スバルでいいよ。」
「蒼井蠍。さそりってかいてかつ。おれもかつでいいよ。ヨロシク。」
「よろしくな。蠍はどこ中?」
「岩岡中。岩手の中学だよ。」
「岩・・・・手?」
頭上にクエスチョンマークがでているので説明する。
「ほへ~そんな遠くからか。」
「親の都合でさ、こっちにきたんだ。友達いなかったからな。
スバルに話しかけてもらえてホント感謝してるよ。」
「そこまで言われると照れちゃうぜぃ。」
「あっ、話が終わった・・・ってことは入学式終わりだな。」
「じゃあもう帰り?」
「クラスに帰って、先生の話を聞いたら終わりだな。」
「うへ~また話かよ。勘弁してくれ・・・」
「そんなこと言っても・・・まぁいきなり授業とどっちがいいって話だ。」
「そう言われると話だな!!」
「そうだろ?なら我慢我慢。」
「おぅ!」

・・・30分後・・・

「なぁ蠍。」
「ん?なに?」
「長いぞ、長すぎるぞ。」
「うん。分かるよ。しかも言ってる意味分からなかったし。」
「とりあえず今日は終わりだな。お前帰り道どっち?」
「こっち。スバルは?」
「あっち。あちゃぁ思いっきり逆方向だな。」
「じゃあここでバイバイか。また明日な。」
「おぅ!!バイバ~イ。」
こうして俺の高校生活初日が終わった。


4.

帰り道俺は今日のことを思い出してた。
まさか一日目から友達が出来るなんて想像すらできなかったからだ。
加藤スバル・・・いい奴だ。
話しやすいし、見た目は中学生、いや小学生でも通りそうだったな。(
本人にいうと怒りそうだが)
明日が楽しみだな。
そう思い、ふぅとため息をつく。
すると前方で光の柱が見えた気がした。
「雷か?でも音はしなかったし・・・・」
動物的本能が近づくなと言っている。
でも本能でも考えての行動でもない「何か」が俺を足を動かした。
「!?・・・何にもないじゃないか。
やっぱり見間違・・・ん?」
足元に9歳くらいの少女が倒れていた。
これは非常にヤバイ。
「おい。おい!!しっかりしろ!!」
そう言い、俺は少女の肩を叩く。
「ん・・・ん。」
とりあえず生きているみたいだ。
そう分かったとたん急に冷静になれる自分がいた。
「なんだ・・・びっくりさせやがって。とりあえず家で寝かせるか。」
俺は見た目に違わず軽い少女を抱え上げ家に向った。

                         (蠍side)



2章:再会?いや出会い?

―おい、起きろ。―
「ん・・・なによ・・・。」
―だから起きろと言ってるんだ。―
「起きる・・・ハッ!!ここどこ?」
―さぁな。道で出会った男に拾われて家に連れられたぞ―
「その男・・・どんな人だった?」
おそるおそる私は尋ねる。
気のせいか声が高い気が・・・
―好青年だったぞ。ただロリコンかもな。―
「ロリコン?なんでよ。」
―自分の体を見てみろ―
「え?・・・・なにこれ!?」
そう、私の体は9歳のときのまんまだった。
「ちょっと!!16歳の体にしてくれてもいいじゃない!!」
―フハハハ誰がするって言った―
「やっぱり汚い・・・ん?そういやぁあんたどこ?」
―さ、さぁな。探してみろ。―
そういう閻魔様・・・声の聞こえるほうに顔を向けると、
可愛らしい人形のみが置いてある。
「あなた・・・これ?」
―な、なぜバレた!?―
意外に閻魔様とは知能が低いらしい。
「だってこのぬいぐるみ以外近くにないもん。
そんなことより・・・・あんた人のこと馬鹿に出来ないわねぇ。」
ついついニヤニヤしてしまう。
―うるさい、これくらいしか転生できるのがなかったんだ。―
「ふーん。」
―ん?誰か来た。気をつけるんだな。俺の声は君にしか届かないが・・・
君が私の声に反応して大きな声出さないようにな。―
コンコン
「は、はーい。」
ガチャ
「あっ、起きた?大丈夫かな。道で倒れてたんだけど。」
「え?あぁうん。もう大丈夫みたい。」
「そう。よかった。」
「お兄ちゃんが助けてくれたんだよね?」
「そうだよ。」
「ありがとうね、なんて名前言うの??」
「蒼井蠍だよ。君は?」
「私は、天野花火。・・ねぇお兄ちゃんって蠍って書いてかつ?」
「驚いたな・・・よく分かるね。」
「・・・まさかかっちゃん!?」
バンと音を立てて机を叩いてしまった。
―ほぉ、まさかお目当ての奴に助けられてるとはな。―
「う、うるさいわね。あんた最初から分かってたでしょ。」
「どこかであったかな?しかも今の・・・独り言?」
(なんなんだろう、この子。でも初対面とは思えないし・・・
少し探りを入れてみるか。)
―ほぉ、向こうにこっちのことが勘付かれたな。どうする?―
「えっとね・・・その・・・」
「俺の名前そんなに変かな?」
―下手に話すなよ。こっちの事を調べてる。―
「う~ん。変だなぁ。」
「変?ははは、それもそうだよね。」
(この子人が気にしてることをズバッと・・・)
花火は思い出していた。
蠍が自分の名前が気に入ってないこと、さらに今の反応から
それはまだ変わらないこと。
そして・・・怒ると短く微笑む癖。
あの頃のままのかっちゃんだ・・・
「それでね、私の友達でかっちゃん、かっちゃんって読んでる子がいたの。
でもね、いままでそれが思い出せなかったの。それでかつ・・・かつって考えたら
思い出せたの!!」
無論蒼井蠍のことだ。
しかしそんなことだろうと思わない蠍は子供のたわごとだと思っていた。
(やっぱただの子供・・・か。)
「そうなの?大体分かったよ。」
「わぁお兄ちゃんさすがぁ。」
―なかなか9歳っぽいぞ。向こうもあきらめたっぽいしな。―
「それでね、この子ペンギンのペン太。」
―ぺ、ペン太!?―
「そう・・・よろしくね、ペン太。」
このとき蠍は確信した。
この子は頭がいい。わざとふざけてる。
もう少ししたらぼろを出すだろう。
「どうして倒れてたの?」
―記憶喪失みたいにしてもいいだろう、それとも本当のことを話すか?
ふふふ。―
「あのね、覚えてないの。ある人に会いに来たのは覚えてるんだけど
途中で記憶がなくなって・・・。」
「いつまで子供ぶる気だ!!!」
自分の声が聞こえない。ふと冷静になるとおびえた顔をした彼女がいた。
「あっ、ごめん。大きな声出しちゃって。」
「・・・・・」
彼女は何も話してくれない。
その時彼女は嬉しかった。
少なからず自分に気付いてくれていたのだから・・・
「困ったな・・・」
「じゃあ、一つお願い聞いてもらっていい?」
「俺に出来ることなら。」
「そう。遊びに来てもいい?また。」
「ここに?いいよ。いつでもおいで。」
「本当?ありがとう!!」
「よかった、まだ泣いてるのかと思ったよ。」
「泣いてないよ~全然。」
(泣いてない?9歳でたくましいな・・・・)
「じゃあ、今日は帰るね。」
「あっ送ってくよ。」
「ん~ん。いいよいいよ。頑張って帰るから。」
「あ、そう。じゃあ気をつけてね。」
「うん、バイバ~イ。」

―ぎりぎりだったな―
「ふぅ・・・大変だった。あんたもちょっとはフォローしなさいよ。」
―ペン太なぞと名をつけられたからな。―
「あれはとっさの判断よ。そんな怒らなくてもいいじゃない。」
―それより、お目当ての少年、蠍と言ったか、どうだった?―
「ふふふ。蠍の毒って怖いのね。じわじわと彼に酔い始めたわ。」
―・・・見た目とあわない台詞だな。―
「!?うるさいわね!!すこし大人らしさを見せただけよ。
本当はいまだドキドキしてる。彼、思い出してくれるかな?」
―それは分からないな。でも君は頑張るのだろ?―
「失うものを持ってないからね、突き進むわよ。」
―予想通りの返答だな。―
「それより私どこで寝泊りするのよ。」
―そうだったな。廃校となった学校で寝ろ。―
「きゃぁ怖い。」
―まわりに勘付かれないよう、そこはこちらが配慮しよう。―
「ありがとう。今日はつかれたわね。」
彼女は校舎に着いたら保健室へ行った。
「・・・ねぇ。静かに聴いてて。
今日ね、あえて嬉しかったけどその分辛かった。
もっと自分を理解して欲しいよ、自分に気付いて欲しいよ・・・。」
―それが普通だな。―
「決めた。明日本当のこと言う。それで受け入れてもらえないならあきらめようかな・・・。」
―・・・ふん。―


2.DREAM
―かっちゃん!!今日はどこ行くの?
今日はね~じゃん!!ここ!!
ここって・・なに?
ここはねぇ、昔学校だった場所で今は使われてないんだ。
へぇ~じゃあ早速入ろうよ。
うん!!じゃあ出発!!
あいあいさぁ・・・

かっちゃん、何ここ?
ここは保健室・・・だと思う。
保健室ってこんなんなんだね。なんか変。
そう?僕達の保健室が変なんだよ、きっと。
あっベットだ!!かっちゃん寝よう!!私疲れちゃった。
いいよ。‘…ちゃん’はどっちのベット使う?
ん~・・・ねぇかっちゃん。一緒のベットで寝ようよ。
えぇ!?
ダメ?
まぁ・・いいけど。
やった~!!じゃあほら早く入ってきてよ
うぅぅ分かったよ。
おやすみ、あなた。
なんだよ、それ。
この前見たテレビでそんなこと言ってたの。
ふ~ん。
そしたらね、向こうの男性はおやすみ、お前だって。キャー!!
意味が分からないよ・・・



3章:記憶の扉

「はぁ・・・」
蠍は昨日のことを思い出していた。
なぜあんな風にしてしまったんだ・・・
そう、悩んでいるのはあの怒声のことである。
(普段ならあんな風に怒らないのに・・・やっぱり変だ。)
彼女が初対面であるならあんな風に怒らないはず、
だけど初対面じゃないような気がして・・・
「おはよ~蠍。」
「ん?あぁおはようスバル。」
「どうしたの?なんか考え事?」
「色々とな、そういやぁ昨日の宿題やってきたか?」
「あ!!」
「・・・写す?」
「写す。」
「はいよ。」
「うぉぉぉぉ!!サンキュー!!いやぁ良かった良かった。」
そういうなりスバルは前を向いて黙々と写す。
することのなくなったスバルは外の桜を見た。
(花火、か。・・・・ん?)
蠍は外の桜の近くに少女の物陰が見えたような気がした。
「な、なぁスバル。あの桜の近くに女の子が立ってないか?」
「へ?んーあぁ。うん。いるいる。それがどうかした?」
「ペンギン、持ってないか?」
「ペンギン?・・・・・・あっ持ってる持ってる。
でもそれがどうかしたの?」
「いやなんでもないんだ。ちょっとそんな気がして。」
「ふ~ん。」
よほど追い込まれているのだろう。スバルは深く追求せずまた前を向いた。
(おいおい、なんであんなところにいるんだよ。)
花火が気になったせいで彼のテストがぼろぼろだったのは言うまでもない。

キーンコーンカーンコーン

「ふぃ~終わった・・・おい、蠍。また外向いてるのかよ~
テストが分からなかったの?」
「あぁ、さっぱりな。何を考えてるのか分からない。」
「そんなたかがテストに深入りするのかよ。そんなことよりさぁ、帰ろうぜ~」
「そう、だな。」
彼らは教室を出た。
                      (蠍side)


2.

「あっいたいた~かっちゃーん!!」
後ろで昨日の少女が話しかけてくる。
とりあえず無視だ。
それどころか少し足を早める。
「待って~」
後ろで何かを言っているようだがとりあえず無視をする。
少女は走っているようだ。
「待ってよ~きゃっ。」
後ろでズザサ~とこける音がする。
(さすがにこれは無視できない!!)
そう思うなり蠍は少女に駆け寄った。
「うぅ・・ひどいよぉかっちゃん。無視するなんて。」
「ごめん。ただきみになれなれしくかっちゃんと呼ばれる筋合いはないんだけど。」
「あっ冷たい!!昨日はあんなに優しかったのに~」
「うるさい、今日はあんなところにいるしさ。」
「あ、見えてた?」
「ばっちりな。おかげでテストはぼろぼろだよ。」
「あはは・・・ごめんなさい。」
彼女は怒るとシュンとした。
(ふん、素直に謝れるじゃないか)
「で、今日は何のよう?」
「昨日はあんな態度とってごめんなさい。
ただ本当のことが今日は話したいの。
・・・・私は天野花火16歳、閻魔様に4日の仮の生をもらったの。」
「・・・・」
「あなたに会いたかった・・・死んだあの時も。」
「ふざけるなよ・・・!」
「かっちゃん・・・。」
「なれなれしく呼ぶな!!なんだお前は!?いきなり現れていきなり生き返りましたってか!?
そんな話誰が信じるんだ!!お前の茶番にはもううんざりだ!」
「かっちゃん・・私待ってるから!!」
後ろから少女の声が聞こえてくるが無視し、蠍は振り返らず帰った。

「おかえり~」
「あぁ、ただいま双葉。」
「どうしたの?なんかお疲れムードだけど。」
「テストやらが大変でね。ご飯は出来てる?」
「もうちょっとだって。先着替えてきていいよ。」
「じゃあそうするかな。」
蠍は自分の部屋に入ると、すぐに着替え、降りてきた。
「あら、おかえり。ご飯、並べてくれる?」
「了解。ご飯も入れてくよ。」
「・・・ちょっといい?」
「ん?どうしたの。」
「花火ちゃんって覚えてる?」
「!?さ、さぁ。誰?」
「そう・・・覚えてないのね。昔あんなに遊んでたのに。」
「遊んでた・・っけ?」
「そうよ。そりゃあ毎日のようにね。
1回廃校した校舎に入ってってね。そこで二人で寝てたらしいの。
こっちは行方不明だって探してたのによ?
怒るよりも可愛らしい夫婦ねって花火ちゃんの母親と笑っちゃった。」
「それでその花火ちゃんはどこの高校に行ったの?」
「今日花火ちゃんのお母さんに会いに行ったら、
9歳のときに花火は事故にあって死んでしまったって。」
死んだ・・・?まさかあいつ本当のこと言ってたんじゃ・・・
「明日にでも会いに行ってきなさいよ?」
「あ、あぁ。」
「じゃあご飯にしましょうか。」
「うん。」
「蠍、あんたは優しすぎるわね。優しいがゆえに優柔不断になりうる。
こうだと思うならすぐ行動しなさい。」
「・・・」
「お兄ちゃんと何の話してたの?」
「ふふふ、秘密よ。」
「母さん。俺ちょっと散歩いってくるよ。
ご飯それからでもいいかな?」
「ふふふ、いいわよ。気が済むまで散歩してきなさい。」
「ありがとう。」


3.

記憶を頼りに走る。そう、廃校した校舎に向かっているのだ。
「ここか・・・。」
確かに来たことがある。それは覚えている。
ただそれがあの少女ときたのか、それは思い出せていない。
「ここの鍵が開いて・・・おわっ!!」
扉を外してしまった・・・
あの時はまだ小さかったから思いっきり引っ張っても壊れなかったのだろう。
だが今はあのときの比べ物にならないくらい力がついた、だから壊れたのだろう。
「とりあえず入るか・・・」
入るとそこは保健室だった。
「ここは・・保健室か。」
そうだ・・・寝たことがある。
「このベットだよな・・・ん?なにか本が置いてある。」
3月25日晴れ
今日はかっちゃんがどこかへいっちゃった。
私のことわすれちゃうかな・・
3月26日くもり
今日からここにこの本を置いて毎日書くことにしたの。
そしたらかっちゃんがここに来たときも見てくれるかなぁ?
3月27日雨
今日は雨がきついなぁ・・
かっちゃんはかぜ引いてないかな?
3月28日晴れ
今日から春やすみ。
毎日ここに来れると考えるとうれしいな。
4月5日雨
少しお熱を出しててかけなかった・・・ごめんね。かっちゃん。
今日はかっちゃんとの思い出を書くの。
一回ね、私が寝込んだときおぼえてる?
かっちゃんね、私のためにヨモギ持ってきたの。
これで治してって。
本当馬鹿だよね。治る訳ないのに。
でもそんな優しいかっちゃんが大好き。


覚えてる、覚えてる・・・俺はヨモギを山に取り入ったんだ。
泥まみれになりながら・・・・
「もう少し読んでみよう・・・」
そして読み進めてみると少し間があいた後、
昨日の日付が書いてあるページにたどり着いた。
4月7日晴れ
今日は私がもう一度ここに帰ってこれた記念日。
今日は運よくかっちゃんに出会えた。
涙が出そうだったけど、むこうは私に気付いてないみたいだった。
そりゃあそうよね。私は9歳の体なんだもん。
向こうも私に不信感を持ってたみたいだけど少なからず私に気付いてくれた。
明日は一緒に歩けるといいな。

「こら。人の日記読まないでくれるかな?」
後ろから声がした。
花火だ・・思い出した。全て思い出した。
「あぁ~見られちゃった。恥ずかしいなぁ。」
「・・・・」
「乙女の日記読むなんて最悪よね~」
「・・・・」
「どうしたのかっちゃん?泣いてるの?どうして?」
彼女はさすがに俺の様子を悟ったのか心配そうに顔を覗き込んでくる。
「うるさい、見るなよ。」
「また意地張っちゃって。」
虚勢を張れるだけまだ大丈夫とでも思ったのか。彼女は肩の力を少し抜いた。
「・・・花火。」
「!?」
また彼女の肩がビクッと上がる。
「花火花火花火花火花火・・・思い出せたんだ。全て。」
「かっちゃん・・・」
「なんであんな態度とったんだろう。今全部思い出した。
お前は俺のこと待っててくれたのに俺忘れてた。ひどいよな。」
「ううん。いいんだよ。思い出してくれただけで。」
「花火!!」
そう叫ぶと同時に俺はか弱気少女、花火を抱きしめていた。
「ごめんごめんごめんなぁ・・・」
「かっちゃんは泣き虫だなぁ。私まで泣けてきたじゃない。」
「・・・おかえり。」
「・・・ただいま。」
「久しぶりに保健室のベットで寝ようか?」
「・・・うん。」
「おやすみ、花ちゃん・・・。」
恥ずかしかったがそう呼んでみた。
「何言ってるのよ・・馬鹿。」
向こうはさらに恥ずかしかったようだった。うつむいて眠ってしまった。

4.DREAM
―かっちゃん!!起きて起きて!!
ん・・・ん・・・なんだよ。
朝になっちゃった。
えぇ!?どうしよう母さんに怒られるよ・・・
かっちゃん、私に任せて。かっちゃんのお母さんにもちゃんと私が謝るから。
‘花ちゃん’いいよ。一緒に謝ろう。二人が悪いんだしね。
かっちゃん・・・うん。そうだね。
じゃあいこっか。
あっ!!待って。
ん?どうしたの。
手つないでいこう?
えぇ花ちゃん、何言い出すんだよ!
ダメ?
うぅぅ花ちゃんずるいよ。
そういってもかっちゃん手出してるじゃない。
しょうがないだろ。花ちゃんの頼みだもん。
・・・ねぇかっちゃん。
今度は何?
大好き!!
うわ、うわぁぁぁぁぁ・・・

**********裏話**************
まぁ頑張って後編を書きますよ。
もしかしたら中編かもしれませんがね。長くなるようなら。
次回の予告をするなら
「蠍と花火が友に過ごせる時間は残り48時間。
どのようにこの残されたときを過ごせるか。彼らの運命の終結には祝福と言う言葉はあるのか」

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