Polymnia

Polymnia

LASTEND


そして彼女が俺のために生きた4日がすぎて・・・早2年。
俺は色々な思いを胸に学校を卒業する・・。

【遠い日の彼方】

「にしてもはやいよなぁ、卒業まで。」
卒業式は先に在校生が入場。その後俺たち卒業生は拍手と同時に式場に入る。
今俺たちは式場の前で待機中だ。隣のスバルが感慨深そうにつぶやいている。
「そうだよなぁ。この前スバルに会った気がする。」
心からそう思った。
「俺の初・高校友達とは三年間同じクラスだったなぁ。」
恥ずかしげもなくそう言う親友。正直それがたまらなくうれしかった。
「高校だけの友達にはしたくないって俺は思ってるよ。」
「おぅ。俺も俺も。」
式場から卒業生が入場します、拍手でお出迎えくださいというアナウンスが聞こえる。

卒業式は順調に進行し、仲谷会長の送辞に差し掛かった。
その送辞にはさほど興味はわかなかった。会長はただ緊張してウケを狙って失敗していた。
そんな会長も(冷たい)拍手の中、壇上を降りていった。
ふと隣の方を覗いてみるとスバルは寝ていた。
・・・こいつがいなかったら俺は『あの』四日間へと逃げていただろう。
しばらく学校に来ない間に俺達二人の環境はずいぶん変わっていた。
スバルは持ち前の明るさでどんどん友達を作っていたが、
俺はというとしばらく休んでいた『問題児』とのレッテルが貼られていた。
そんな中でもスバルは俺と話してくれた。
休んだ理由も深く言及しないでくれた。
そうやって二人で話していくうちに一人、また一人と友達は出来ていった。
いつの間にか俺を揺り動かしていた思い出が薄れていくのを感じた。
俺の心のどこかでは思っているのだろう。花火に会いたくなれば校舎があると。
それは甘えなのかもしれないが・・・。でもそれでもいいと思えるほど高校生活は充実していた。
3年生最後の文化祭では二人の子から告白された。その子たちとは親しいというほどではなかったが、
仲がよかった、だからこそ迷った。
しかし花火が頭をよぎるのだ。・・・花火ならそんなこと言わないのは分かっている。
だからそれはただの俺の戒めに作り出した『幻影』なのだが・・・。
俺は彼女たちの告白を断った。それが一番いい選択だったと自分を納得させながら。
・・・そんな思いにふけているうちに卒業式は終わった。
1組から順番に退場していく。俺たちは3組だからちょうど真ん中だ。
隣で起きる気配のないスバルを起こし、立ちあがる。
周りをふと見るとちらほら泣いている奴がいる。そいつらはよほどいい高校生活だったのだろう。
こういう時にべちゃくちゃ喋る奴は強がりか、ただのクズだ。
俺は・・・・どれだろうな。
担任は泣いていた。それにつられてなく奴もいたが俺は泣くことはなかった。
なぜか涙を流せなくなったのだ。出し切ったのかもしれない。今日という日に泣けなかったのだ、
これからも泣く機会はあまりないであろう。

「あっ、いたいた。おーい!蠍くーん。」
卒業式が終わり、スバルと話していたらふと後ろから呼ばれる。
振り向くとそこにはよく喋ったことのある仲矢さんがいた。
「ん?どうしたの?」
「あのね、ちょっと暇かなぁ?」
…………………
「ずっと好きでした!付き合ってください!!」
そう目の前で告白するのは仲矢さんの友達の確か三倉さん。
彼女は転校生だったのだが、最初見た時は焦った。
花火にそっくりだったのだ。(まぁ焦ったのはそれだけではなく、なぜか出会ったことがあるように思えたからだ。)
細かく言うなら少し違ったのだが、最初見たときの衝撃はすごかったのを覚えている。
俺が返答しないでいると間を取り繕うように仲矢さんが話し出した。
「あー…蠍君?この子さ、転校してきてすぐに蠍君に一目惚れしちゃったらしくてさ。
本人いわくアタックしてたらしいんだけど…気付いた?」
転校してきた日から…
-蠍君その荷物重そうだね!!
これ?いやただの空の箱だから軽いよ?-
-蠍君!こういうの興味ない!?]
いやぁ…六星占術はちょっと…-
「あれは嫌味か嫌がらせだと思ってた。」
「ひうっ!?」
ゴメン蠍君、少し待ってて。と、
隣でおろおろしてる三倉さんの手を握り俺に話が聞こえない(だろう)ところまで駆け足で行った。

※ここからの会話は蠍には聞こえていません。

「(ぼそぼそ)あんた何したの!?」
ぼそぼそ声だが、仲矢の声ははっきりと少し怒り目の声で三倉に言った。
言われた方の三倉はおどおどしながらも答えた。
元々声の大きくはないが、すごい剣幕のためにさらに小さくなっていた。
「その時ハマッてた六星占術とか勧めたり、よくある定番の重たい物持ってあげるみたいな…」
「……そりゃあ嫌味にも思われるわ。」
「な、なんでぇ!?」
その問いに答えず、蠍の元に戻った。

二人が戻って来て、蠍が先に話し始める。
「あの…さ。俺付き合う気とかはないから。」
中途半端な断りが悪かったのだろう。仲矢はまだ大丈夫だと言わんばかりに三倉のことを推した。
「まぁまぁそうすぐに結論出さなくてもいいじゃん。ね?
まずは家に帰って、ゆっくり考えて!ほら、これ菫の電話番号ね!」
と、ぺぺぺと携帯を見ながら殴り書きをしたメモ用紙を手渡される。
そうして二人は風のように去って行った。
「なんだったんだか・・。」
そう苦笑する蠍であった。
「あ~あ。かわいそう、今の子。泣くよ。」
誰かの声がする。そう、聞いたことのある声だ。
「蠍ちゃんのた・ら・し。」
バッと後ろを振り向いたが誰もいない。
「・・・・・くそっ!!」
未だに幻影に翻弄されているのであった。

スバルとはあの後すぐに別れた。後日二人で出かける予定だ。
一人になった帰り道、俺がいつもいくのはあの校舎。
学校から自転車で30分くらいの距離。
近くのコンビニで俺の分のパンとあいつの分のパンを買いこむ。
そして後者につくとまず向かうのは保健室。
彼女がいたベットにパンを置き、俺もかってきたパンを食べる。
そして近くにある机で今日の日記を書く。
あれから毎日書いているからもう数十、数百冊は書いている。
ネタが尽きない自分を少し尊敬することもある。
だが今日は別だった。
全くペンが進まないのだ。
いや、今日に限ったことではない、この頃この行為の意味はないのではないかと思い始めている。
最低だ・・・そう呟く。自虐的に
すっと立ち上がり、気分転換に保健室の窓を開け校門に咲いている満開の桜を見た。
「I wanted the favorite day which meets and which can be said to come you.
however, my dream which comes out of you only in my dream be [ my freedom of changing you ]
pleased with the thing to which it becomes pain exactly now and which you came out in the dream
when doing I am gladder to be many a word more more painful
[ at least one day I want me to teach ] than one many a word♪
(直訳:あなたを好きでよかった
そう言える日が来ることを私は望んでいた。
しかしあなたは私の夢でしか存在しない。
私の夢はあなたを望む姿に変える。
それが今苦痛として私を苦しめる。
どうすれば夢にあなたが出てきたことを
喜べるだろうか。
私に教えてほしい。
一日でも多く。
一つよりも多く。)」
悲しくもなる自虐的な歌詞を口ずさんだ。
「そうやって私を裏切るのね。」
「!?」
ばっと振り向くとそこには花火がいた。
顔に表情は見られない。
「蠍ちゃん言ったじゃない。私と結婚してくれるって。」
雰囲気にのまれちゃダメだと自分に言い聞かせる。
そうしていると矢継早に花火(の幻影)は俺をたたみかける。
「私のこと嫌いになったの?」
「そんなことはない!!俺は今だって・・・!!」
駆け寄り触れようとするがすり抜ける。彼女に触れようとした両手が空を切るのと同時に花火は消えた。
「どうすれば・・いいんだよ!!なぁ!!!」
「どひゃあ!!」
「・・・・・え?」
誰かいた・・?
窓際には三倉さんがいた。しかも先程怒鳴ったのに焦ったのか口をパクパクさせていた。
「わ、私から言わせてみればですね・・・。」
「いやいや。まず事情知らないでしょ。」
ついついつっこむ自分がいる。
「あ、そうですね。アハハ・・。」
冗談で言っていたのかと思ったら彼女はマジで何か意見を言おうとしていたらしい。
「ただ・・・。」
「うん?」
彼女は少し暗い顔をしながら、しかし意を決したかのように話を続けた。
「今の蠍君を見たら悲しくなると思います。」
と言ってもなんで悲しんでるのか知らないんですけどねと彼女は苦笑した。
「相談に乗ってくれる?」
俺は無意識に近い感じで彼女にそう言った。
彼女は笑顔で快諾してくれた。

「俺には彼女がいたんだ。でもな、死んじゃったんだ。」
嘘ではない。でも本当でもない。そんな中間な話し方を彼女にはした。
まだ彼女を信用してないからなのかもしれないが。
「そうだったんですか・・・。」
「彼女と死ぬ前に約束したんだ。誰とも付き合わないから天国で会おうって。」
「・・・。」
彼女は無言で俺の方をじっと見ている。
「今思えば馬鹿なこと言ったよな、出来るわけもないのに・・・。でもなやらなきゃいけないんだ。」
「ホントに好き?」
彼女が唐突に聞く。
「え?」
「ホントに、彼女のこと今でも好き?」
「あ、当たり前だ。」
「彼女は優しいの?」
「優しい・・・優しいよ。」
「なら彼女はあなたのことが好きだったの?」
「好きだって言ってくれた・・・。」
「なら蠍君はこんなことやる必要はないんじゃないですか?」
「!!」
頭の中でプチッと何かが切れる。
気づくと彼女に詰め寄っていた。
「言いたいこと言いやがって・・・あんたに何がわかる!!彼女に死なれた気持ちが!!
彼女とやっと再会できたのにすぐに別れなきゃならなかった気持ちが!!
こうでもしなきゃ彼女との関係がなくなっちまう!!それが・・・それが怖いんだ・・・。」
徐々に声に力がなくなるのがわかる。
「大丈夫です。」
彼女はきっぱり答えた。
「蠍君がその彼女さんのことをいつまででも覚えていれば。」
「だけど・・。」
迷う俺を見て彼女は俺の顔をくるっと自分の顔の方に向け(いわゆる見つめ合う形にして)笑顔で続ける。
「こうやって自分のいちばん大好きな人が自分のことで悩んでいると感じるのが一番つらいんですよ?」
「・・・・ハハハ。」
俺は今まで感じていた重荷が一つ一つ外れていくのを感じた。
「ハハハハハハハ。」
彼女はそんな俺に一言すら語りかけないで静かに見守っている。
「俺、馬鹿だ。馬鹿すぎる。三倉さんに言われなくても、あぁ花火なら悲しそうな顔をするんだろうなってどこかで思ってた。
でもそれを認めたらダメな気がして・・・。でもそうなんだよな。そんなん自分の勝手な想像が生みだした偶像に過ぎないんだよな。」
「辛かったんですね。」
彼女のその一言は涙の枯れていた俺には十分の言葉だった。

「で、なんでここにいたかと言いますと。」
お互いに落ち着いた時、彼女はここにいた経緯を話し始めた。
「実は蠍君の答えを聞いて来いってさつきちゃんに言われて追いかけてきてたんです。
そしたらコンビニに行って、この校舎に来て。入るには入れないからそこの窓から見てたんです。
どなり声についつい反応しちゃったんですけどね。」
「そうだったんだ。でもね、三倉さん。俺は・・。」
「わかってます。その彼女さんが大切なんでしょ?今でも好きなの位私にだってわかります。」
そう言って笑った彼女の笑いには曇り一つない綺麗さを感じた。
「でもここ懐かしいなぁ。」
彼女は保健室を見渡しながらつぶやいた。
「どういうこと?」
「実はここ、私もともといたんです。小4位までこの近くにいて、それから転校だから。」
「ってことは・・・。」
俺は1年の頃に転校したからであっているのか?三倉さんに。
「三倉三倉・・・・。ボンタン?」
そう俺が言うと彼女は眼をパッチリ開けて驚いた。
「そ、それって私の思い出したくないあのあだ名のことを言ってるんですか・・・?」
「まさかやっぱりあの『三倉さん』なの?」
「つまり蠍君は私のこと知ってる、この学校・・・・。まさか1年のころに転校したあのかっちゃん!?」
「そうだよ、確か俺がボン子ちゃんって呼んで殴ったよね。」
「ひゃ!!そ、そういう時期があるんです、女の子には!!そんなこと言ったらかっちゃんそんな性格じゃなかったです!!」
この出会いに運命というか奇跡を感じた。そんな俺の頭にふと『あの』ペンギンのぬいぐるみが浮かんだ。

「ってことはすみれちゃん天野花火のことわかるよね?」
知っている子だからか少し安心して俺は小学校の時の呼び方で呼ぶ。
ボン子は殴られて失禁しかけて以来封印だ。
「え・・まさかあの交通事故で死んだあの花火ちゃん?」
「そう・・・信じてもらえないかもしれないけどね。
彼女は確かに俺がここに戻ってきて4日間だけ生き返ったんだ。
俺忘れててさ、彼女のこと怒鳴ったんだ。でもここにきて思い出して、
それからホントの彼氏彼女になれてさ・・・。遊園地とか行ったんだ・・・。
で、彼女はここで光になったんだよ。」
ベットの表面をさすりながら俺は震える声を精一杯振り出し言いきる。
―口に出すと彼女の死に向き合わないといけないから―
「・・・信じるよ。」
彼女ははっきりそう言って俺の隣にきてベットを一緒にさする。
「だってこのベットに花火ちゃんがいるような気がするんだもの。
花火ちゃんね、当時の私は彼女が本当にうらやましかったなぁ。好きな子が転校したのに気丈にね。
笑顔なんだよ?私には無理だよ。それで一度聞いたんだ。なんでそんな元気なのって。
そしたら・・・・でもこのことは言わない方がいいよね。ねぇかっちゃん、図書室行こう?」
菫は俺の手を握りひっぱる。彼女にも何か思うところがあるのだろう。俺はついていくことにした。
こんな時に言うのはおかしい話だが、彼女の手を握っていることで安心できた。

わぁ、すごい量。それが彼女の図書室での最初のセリフだった。
確かに思い返せばすごい量のコンパスノートだ。
花火のが4割、俺のが6割だ。
菫は走って日記帳の方へ行く。そして右手で一冊適当に取りペラペラめくる。
「なんか恥ずかしいな。」
俺がそう言うと、彼女はですよねぇと苦笑し、ノートを閉じて元の位置に戻そうとした。
「・・・・。」
そして無言で俺に手渡してきた。
「・・・どういうこと?」
「これが、先ほど述べようと思って述べなかった答えです。」
俺にはまだ理解できなかったが言われた通りにめくる。
これは花火が俺が転校してすぐに書いた日記だ。あの時も読んだ。
3月25日晴れ
今日はかっちゃんがどこかへいっちゃった。
私のことわすれちゃうかな・・
3月26日くもり
今日からここにこの本を置いて毎日書くことにしたの。
そしたらかっちゃんがここに来たときも見てくれるかなぁ?
3月27日雨
今日は雨がきついなぁ・・
かっちゃんはかぜ引いてないかな?
3月28日晴れ
今日から春やすみ。
毎日ここに来れると考えるとうれしいな。
4月5日雨
少しお熱を出しててかけなかった・・・ごめんね。かっちゃん。
今日はかっちゃんとの思い出を書くの。
一回ね、私が寝込んだときおぼえてる?
かっちゃんね、私のためにヨモギ持ってきたの。
これで治してって。
本当馬鹿だよね。治る訳ないのに。
でもそんな優しいかっちゃんが大好き。

あの時感じていたこととは違う。
俺は急いで自分の書いていた日記を読み返した。
5月13日
今日体育があった。まぁ結構いけた方だと思う。
短距離、反復はクラストップだった。
明日はハンドボール投げだが自信はないな。
5月15日
今日はあいにくの天気でできなかったから保険の授業だ。
なかなかつまらない。

そうか・・・。
俺と彼女の違いは『内容』だ。
俺はいつも中心に自分を置いた日記。
でも彼女はいつも俺を主観とした日記・・・。
菫が口を開いた。
「答えは分かった?」
俺は首を振った。
「・・・花火ちゃんね、かっちゃんのことを考えてたら
離れているけど楽しいって笑顔で言ったんです。」
「!?・・・・。あいつはホントの馬鹿だな・・・。
俺なんて8年間は忘れていたのに・・・。あいつと再会してからもなにかあった時はあいつの優しさとかに
甘えてた。ほんでいなくなったら、
今度は勝手な偶像を生み出して勝手に信仰の対象にする、最低だ、俺がしてたのはただの自慰だよ・・・!!」
「そこまでは・・・。!?」
菫は蠍に話しかけようとしたが話しかけれない状況になり、口を閉ざした。
蠍は唇を血が出るほど強く噛みなにかをこらえていた。
「も、もっと単純だったんだ。」
声は少し涙声。
「あいつの心の中に俺がいたように、俺の中にもあいつはいたんだよな・・・。
なんで気付かなかったんだろ・・・。こんなことに頼らなくてももっと単純だったんだ・・・。」
もう俺は虚勢すら張れなくなった。
そして菫の前で叫びながら泣いた・・・。

「あ、あのさ・・・。」
さすがに暗くなったから俺と菫は帰宅することにした。
校門を出て、俺はふと立ち止まる。
「実はさ、ここの校舎はこの春で取り壊されるんだよ。」
「えっ!?中のものをだして来ないでいいの!?」
「いいんだ。もう振り向かないさ。花火だってわかってくれるさ。
ほら、そんな暗い顔をしないで、俺はこんな晴々しいんだからさ。ニュー蠍の誕生の時だぞ?
・・・なぁ、しってるか。この何も意味のなかった校舎の後には住宅街ができるんだ。そしてこの町はさらに人が来る。
変化はいつか来るものだよ。嫌でもね。」
「・・・・かっちゃん、しばらく見ない間にかっこよくなったんだね、外面だけじゃなくて内面も。」
「よせよ、恥ずかしいよ。・・・あっそだ。菫ちゃん。心して聞いてくれ。」
「は、はい。」
「俺は今でも花火のことが一番好きだ。忘れられない。でも・・・・。」
            ・
            ・
            ・
            ・
            ・
            ・

「へーここがパパの前通っていた学校があった場所なんだぁ!!」
「そうだぞ、でも小学校1年生のころに転校したけどな。」
「綺麗な家ばっかりだね。」
「まぁ出来てすぐだからなぁ。花火はこんな家に住みたいか?」
「ん~ちょっとだけ。でも双葉ちゃんやおじいちゃんとかおばあちゃんがいる今の家も好きだよ。」
「そうかそうか。花火はいい子だな。ご褒美に肩車してやろう。」
「わぁ~い!!どわぁ、高い!!・・・・・あっ!!」
「どうした?なんか楽しいものでも見つけたか?」
「いやぁ・・・少し怒り顔のママが・・・。」
「そりゃあ早く帰らないとな。ちょっとかけ足になるからしっかりつかまれよ!!」
「うん!!あ、あとね、パパ!!」
「なんだ。」
「確かここらへんの家なんだけどね!!私と同じ名前の女の子がいるの!!」
「ほぉ、かわいいのか?」
「うん!!天野花火ちゃんっていうの!!」
「えっ・・・!?」
「あっパパ!!止まらないでよ、あれ?パパ泣いてる・・・どこか痛いの?」
「泣いてないよ、ただ・・・ううん、いいんだ。少し思いだしただけだから。行こう。
ママのところへ。」
「うん!!」
「今日はカレーだぞ。」
「なんでわかるの!?パパ」
「なんでって・・・なぁ母さん?」
「ねぇ。」
「ママ!!あっパパおろして。」
「はいはい。」
「よいしょっと・・。ママの手。パパの手。」
「おぅ。早く帰ろうな。」
「で、なんで今日はカレーなの?」
「それはな・・・。」
今日は俺と妻が付き合った日、3月の桜が満開の時期。

だけど俺はいつまでも忘れない。
いつまでも『彼女』は俺の心の中にいるから。
そして俺の心の中にはいつまでもあの『4日間』は残り続けるから・・・。
大好きだよ、花火。今でも愛してる。
これは今も・・・・変わらない思い。変わることのない想い。

遠い日の彼方に夢見た幻想

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