Polymnia

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スコール 第4話


それは3年間で最大のイベントであり、最大の転機である。
「ねえ、修学旅行ってまず何処へ行くんだっけ~?」
俺たちは奈良・京都へ向かっていた。
「まずは、法隆寺で集団行動をして・・・」
京都には俺のバアサンの家があるので、
正直新鮮なところがまるでない。
「アメ食べる?」
ただただ帰りたい。
「かくん・・ん~、エイ!!」
バシ!!
「って!いきなりなんだよ!?」
「ずっと呼んでたよ。」
帰りたい最大の理由は班員にあるのかもしれない。
俺、ジョナサン、生徒会長、
アメリア、サマサ・・・そして、志之眼。
生徒会長はさっきから黙ってるし、
ジョナサンはアメリアと愛を語り合うし(ちなみに告
白したのはアメリアらしい。)、志之眼はずっと外見てるし、
サマサは一人はしゃぐし、
お前ら一体何しに来たんだよ。
俺も外でも眺めるか…おーあれは今流行りの任天堂の会社だな。
「……………ってとこなんだけど、どう思う?」
いきなりアメリアが話を振ってきた。
「はい?なにが?」
「いやだから、私たちってピッタリよね!」
なにかと思えばノロケかよ…。
ジョナサンもなにかを期待しているような眼をしていた。
「あー…うん。まぁいいと思うぞー。」
「なんか投げやりね。」
「とりあえず自分達が幸せでお似合いだと思ってりゃいいんだって。
少なくとも日本はそうだ。」
もちろん適当だが二人は納得したようだ。
そうしているうちに京都についた。
次は…嵐山探索かよ…
「よ~し、今日はもう自由行動だから、
6時までに旅館に来るようにね。」
MS白峰の号令で、籠の中の鳥が放たれてしまった。
「どうすっかなぁ~、取り合えずその辺りブラツクかな~。」
俺も例に漏れず歩きだす。
「ちょっといいかしら。」
しかし、直ぐに止められた。
「少し、言いたい事があるの。」
志之眼だった。
「あなた、アタシのこといろいろかぎまわってるらしいけど。」
「いや、かぎまわってはいないけど。」
「これ以上踏み込んでこないで、はっきり言ってウザイわ。」
志之眼はさらっと言った。
「ウザイって、お前。俺は・・・」
「とにかく邪魔だから、そんだけ。じゃね、修学旅行楽しんで。」
そういうと志之眼はどこかへ消えていった。
嗅ぎ回っている…確かに俺は【あの日】から
彼女のことを他の人に聞いている。
彼女は去年どうだった、とか。
わかったのは彼女は確かに
バスケ部の子が言ってたことをやっていたようだ。
それにあの性格だから友達もいないようだ。

彼女はもう見えなくなった。
探しに行くべきだと思ったが、
彼女がやめてというなら、
そこまで干渉しないほうがいいはずだ。
…やっぱりぶらつくか。
ぶらついていると一人変なのがいた。
そいつは一人で値切っていた。
「……………なにやってんだよ。」
「おお!幸孝…だっけ?みてわからない?値切りよ、ね・ぎ・り」
「そのくらいは分かります。」
「あ、そう。いやぁ恥ずかしいところ見られたねぇ。」
ダブリってとこが1番恥ずかしいでしょうが。
「一人ですけど…誰かと回らないですか?」
「ダブリに友達なんか出来ないよ~それに一人は君も、だよ。」
「俺は自分から一人になりたいんでいいんすよ。」
「なんか悩んでるでしょ?」
「…関係ないじゃないですか。」
「まぁまぁ独り身同士、仲良くしようよ。」
「…別にいいですけど。」
「じゃあ…しゅっぱーつ!」
…………はぁ…
「しかし、あれよねえ。君、ワタシとは同学年なんだから、敬語はやめましょ。」
「はぁ。」
「そうだ、これあげる。」
ダブリはカバンから小さな紙袋を取り出した。
「なんですか?」
「なんですか?」
顔を覗きこんできた。
「あ、いや。なにこれ?」
「そうそう、それでいいのよ。
やれば出来るじゃない。エライエライ。」
ムギュ。
「ムゴッ!ウーウー」
俺の顔はダブリの胸の中に埋まった。
「プハッ、ハァーハァー」
「そんなに喜ばなくても」
「誰がじゃ!」
彼女はまるで恥じらうかのように、
両手で顔を包んでいる。
「ちなみにE」
「聞いてねえし!」
「こんな女の子どう?」
「疲れる。」
「座右の銘は嫌よ嫌よも、好きのうち。」
「限りなくプラス思考だな。たちが悪い。」
「それが健康の秘訣よ。」
「はぁ・・・」
本当疲れる。
「悩み相談に乗るんじゃなかったのか?」
「そうだった?」
「そうだった。」
大丈夫かよ、しっかりしてくれよ。
「まぁ、気にしないことね。はい、相談終わり。買い物再会!!」
そういうと彼女は俺を引っ張っていく。
まずは手頃に小物屋を見る。そこにはアメリアとジョナサンがいた。
「あれ、幸孝。珍しいね、こんなとこで出会うなんて。」
「ソウダナ。明日はどーしゃぶりだぁ!」
好き勝手言いやがって…
「別に。ただ一緒に歩いている人が行きたいって。」
「へぇ…なんて名前?」
「な…まえ…知らないな。」
そうだ…俺はあのひとの名前を知らない。
・・・それって失礼なんだよな。
「あ、アメリア。あんまりジョナサンを尻に引くなよ。」
少し慌てたのがばれたかもしれないな。
でも彼らとはそれ以上話さず別れた。
「長いこと話してたのね。もう買い物終わっちゃった。…どうしたの暗いかおして。」
彼女が俺の顔を覗き込む。俺はかぁっと顔を赤くしてしまった。
「…話があるんだ。とりあえず歩かないか?」
「いいよ。どうせ暇だしね。」
ダブリ先輩と土手を歩く。
「で、話って?」
彼女が話を切り出した。
「…謝らなくちゃいけないんだ。」
「誰に。」
「あなたに。」
彼女はキョトンとした。
「名前、知らなかったんです。」
「アハハ!それが謝りたかったの?別によかったのに。」
「…それだけじゃない。あなたのことをダブリって呼んで…
なにか理由があってだぶったかもしれないのに、
その事実だけであなたを心の中で見下していました…。
本当にすいませんでした。」
俺は頭を下げた。
…許されるとは思わない。でもこれは一つのけじめだから。
「幸孝。」
「はい。」
「アリガトね。」
「えっ…?」
「そうやってホントのこと言ってくれて。
やっぱりダブリってだけでみんなの反応とか視線が痛かったの。
でもみんなそれを見せないで…
あなたたちのクラスの子がうらやましいって思ったわよ。」
「…よかったら」
「うん?」
「名前、教えてもらっていいですか?」
「…木之下愛里。」
「じゃあ、愛里で。」
「なんかいいなぁ。こういうの。」
彼女は手を大きくふって喜ぶ。
「今3時か…じゃあダ…愛里、もうちょっと歩く?」
「イイヨー!じゃあ次は食べ物巡り!お姉さんの奢り!」
「はいはい。」

オタベ屋に入るとそこには…
「あら、あなたたち。そんな関係だったの?」
MS白峰がいた。
「い、いや!全然そんなことは!!」
あせって否定してしまった自分があやしい。
「まさかぁ~、違いますよ。こんなの正に眼中にないですよ。」
余裕の否定をされた自分が悲しい。
「ふ~ん、青春ね~。いいわぁ、先生も戻りたい。」
そういうとMS白峰は俺たちを交互に見た。
「先生にもそんな時期があったのよ。」
MS白峰は胸ポケットに手を入れる仕草をして。
白衣でない事を思いだし、少し舌をだして
おどけて見せてから鞄からタバコを取り出した。
「先生の青春って、どんな感じだったんですか?」
愛里が興味しんしんという顔で聞いた。
「ん~、そうねぇ。」
MS白峰は落ち着いた仕草でタバコに火をつけて、
煙を吐きだす。
「普通よ、先生と喧嘩したり、同級生ともめたり、
家出したり、路上暮らししたり。い
たって普通ね。」
さもつまらなそうに言うが、決して普通ではない。
「もしかして、問題児?」
当たりまえだが聞いてみた、
本人がどう思ってるか気になったのだ。
「そういう言い方もできるかな。」
一本目を吸い終わり、二本目をくわえた。
「タバコはいつから?」
「これは二十歳からよ。」
「意外~」
愛里がライターを奪った。
「体に悪いですよ。せっかくの声も潰れてしまいますし。」
「先生としたことが、生徒に注意されるとは。」
俺たちはしばらく談笑にふけった。
「じゃっ!そろそろ引率があるから行くわ。
あんたたちも大概にしときなさいよ。」
「だから違いますって。」
そこでMs白峰とは別れた。
「…じゃあうちらもゆっくりホテルに向かいますか。」
「あ、あぁ。」
「……………今日幸孝と回れて嬉しかったよ。あっそうだ♪」
そういうと彼女は俺のほっぺに軽くキスをした。
「なっななななな!?」
「今日のお・れ・い。」
「御礼って…」
「仲良さそうじゃない。」
う…後ろから悪寒が。
振り向くと笑顔の瑠璃、サマサ、ナナがいた。
「あっ…お揃いで。」
「幸孝君も大人の階段上ったわねぇ…。」
「おまえも彼氏持ちだろうが…。」
「私はいいの!」
なんで、んな理不尽な理由で怒られなならんのだ…。
「幸孝君…」
「ナナ…さんだっけ?」
「当たり。初めてしゃべるよね?」
「実は結構飯一緒に食ってるんだが。」
「あ…あれ?そうだったかしら」
ナナは話してわかったが不思議少女だ。
見た目はサマサ+アメリア÷2みたいな。
だが基本的に普通の部類かも。
「幸孝はわーたーしの!」
サマサが叫ぶ。
おまえのでも愛里のでもありません。
「ふふふ…もらったわよ、サマサちゃん。
子供には興味ないってさ。」
あんたものるなよ・・・
「ガーン…!」
「あ、あのぉ…」
「幸孝!ホント!?」
「えっ!?それは…あっはっは。じゃあ!」
取り合えず走り出した俺、
後ろにサマサの怒鳴り声を聞きながら逃げ続けた。
「やばい、迷ったかも。」帰りみちがわからない。
しかも、風景が寂れていた。
「やべえなぁ。」
歩き回っているとそれなりに立派な墓地についてしまった。
「ついてねえ。」
出口に向かうと、途中で同じ高校の生徒らしい女子が墓前で泣いていた。
「回り道でもするか。」
そう思い、向きを変えようとすると、
その女子と目があってしまった。
「・・・・・志之眼・・」
墓前で泣いていたのは志之眼だったのだ。
こちらに気付いた志之眼は最初唖然としていたが、
やがて我に帰り、立ち上がると、向こうを向いてしまった。
「あんた、邪魔だっていったでしょ。」
志之眼はまだすこしグズル声で言った。
「悪い。そんなつもりじゃ。」
志之眼を見ることができなかった。
しばらく沈黙が辺りを支配した。先に沈黙を破ったのは、意外にも志之眼だった。
「ここね、パパとママのお墓なの。」
驚きだった、志之眼には両親がいなかったなんて。
「そうか。」
何を言えばいいか分からなかった。
「このことは、誰にもいわないでよ。
まったく、アンタなんかになんでこんな話したんだろ。」
「あぁ。」
「そんなに黙らないでよ、怒りにくいじゃない。」
「あぁ。悪い。」
「ふん。あぁ~あぁ~、つまらない、
あんたがこんなんだったなんて。」
志之眼はこちらに向き直り「ウザイのよ。」と、言ったが、
その言葉は今までのものとはどこか違っていた。
「じゃあね、修学旅行楽しんでね。」
その声からはすでに涙は消えていた。
志之眼はどこかへ消えていった。
まるで、いなくなるように、自然に。
俺が立ち去るとき、志之眼の両親の墓には、
志之眼が置いた花とは別の花も置かれていた。


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