「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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Polymnia
冬を歩こう
何をするでもなく、ただあるべきほうへ向ってる。
10月・・・もしかしたら小学生は運動会の練習をしているかもしれない。
中学生は学園祭。
でも俺には全く関係ないイベントである。
いいのは年齢だけで中身はダメダメだ。
何かやりたいものも見つけれずに・・・
そんな俺でも、いやそんな俺だから変えてやりたい。
変えてほしい。
[冬を歩こう]
「はぁ・・・・」
「おいおい、ため息はしてもいいが俺の運気は逃がさないでくれよ」
「逃がしましょうか?」
「冗談、お前にはそんなこと出来ません。」
「くそぉ・・・」
なんで俺はこんなついてないんだよ。
神様は不平等すぎる。
俺は中肉中背、運動神経並、知能猿並。
かたや隣の兄はジャニーズにいてもいいくらいかっこいいし、
勉強、スポーツ超一流。
天は二物を与えず?ウソつけ!!
「そんなことよりお前はどうなんだ?」
「なにが?」
「高校だよ、高校。」
「あ~高校ね、まぁ順調かな。」
「ならいいな。」
「問題起こしちまった、とでも言ったら?」
「お前は高校生活一年生からやり直しだな。」
「うへ~勘弁してくれよ~。」
「なら頑張れ。」
おまけに兄はこの通り性格もいい、面倒見もいい。
俺には・・・似てない。
「じゃあ俺はここで。」
「うん。美咲さんなかすなよ~。」
「はははっ泣かさないさ。」
もちろんそんな兄だ。彼女くらいいる。
めっさ可愛い。
最初見たとき一目ぼれしかけたほどだ。
俺にもあんな彼女がいたら・・・
「なーにぶつぶつ言ってるの?」
「あっ、沙里。」
説明しておこう、この沙里は別に彼女じゃない。
そう、腐れ縁だ。それ以上でも以下でもない。
「別にお前には関係ないことだよ。」
「あっ!!ひどい。折角心配してあげたのに~」
「まぁ心配してもらえることは嬉しいことだよな、ありがとう。」
感謝すると彼女の顔はパァッと明るくなった。
「そうそう、何事も感謝はいいことだよぉ~。」
「で、お前はなんでここに?」
「えっ?あぁ買い出しだよ。」
「買い出し?」
「そろそろハロウィンでしょ?」
「ハロ・・・あぁ!!はいはい。」
「今日は10月29日だしね。」
「ふ~ん。」
「それで・・・」
「分かってるよ、荷物もちだろ?」
「あったり~♪さすがよねぇ、パシリの鏡よねぇ。」
「お褒めの言葉感謝いたしますよ。」
「・・・・あんたこれがほめてると思う?」
「正直殺してやりたいと思った。」
「ま、とにかくいこっか。」
「おぅ。」
*************************
「なぁ兄ちゃん。」
「ん?」
「美咲さん、可愛いよね。」
「あっちもお前のこと可愛い弟さんって言ってたぞ。」
「そりゃあ光栄だね。で、兄ちゃんは美咲さんのことどう思うの?」
「好きだよ。」
「好きって何?」
「好きってかぁ・・どうだろうな。お前は沙里ちゃんといてどう思う。」
「どう思う?」
「正直にな。」
「えっと・・いつも近くで笑ってて欲しいと思うし、一緒にいたい。
いつまでも・・・とは言わないけどそんぐらいいたいと思う。
変かな?」
「変じゃないさ。むしろそこまで自分のことが分かるのは立派さ。」
「答えになってないよ・・・。」
「それが好き、なんじゃないかな?」
「へぇ!?」
「ほら赤くなってる。」
「ウソだって、だってあいつは幼馴染で・・・」
「幼馴染のことを好きになったってかまわないさ。」
俺は好きなのか・・・
まさか・・・
10月30日
昨日の兄の言葉がまだ俺の脳裏をよぎる。
-それが好き、なんじゃないかな-
俺は沙里の事が好きなのかな?
まさか・・・
バンッ!!!
「痛ッ!!誰だよ?」
いきなり背後をたたかれた。誰だよ全くそんなアホは・・・
「なーに考え込んでのよ?珍しい。」
「さささささささささささ沙里!!どどどどどうしたんだ?」
「えっ?いや通りかかっただけだけど?」
「そうか・・・」
「ん?なんか悩んでるの?」
そういって沙里は顔を近づけてきた。
ボンッと鳴ったであろうか、体温が急上昇したような。
「べっべべっべべっべべっべ別に大丈夫、うん。あはは~」
そういって俺は去ってしまった。
あいつと話し合う勇気のない臆病者か?
いや
一人で考えたかったんだ。
俺は確かに沙里の事を大事にしたい、でも愛ってなんだ、好きってなんだ?
この思いが本当に愛なのか?分からない。
それに好きだといって失敗したらどうする・・・
もう今までみたいに馬鹿を出来ない、笑い会えないかも知れない。
それが怖い・・・。
それなら今の関係のままでもいいんじゃないか?
自分にウソつくだけで誰も傷つかない。
どうすればいいんだ・・・
*************************
「で、今日はなんだ?」
「実は・・・」
俺は今の心境を言った。
「それは逃げてるな。」
「・・・え?」
「逃げるな。確かにそう思うかもしれない。でもな・・」
「・・・・ちゃんは」
「なんだ?」
「兄ちゃんはなんでも出来るからそう思えるんだよ!!顔もいいし、勉強も出来る!!
おまけにスポーツも!!俺はその中のちょびっとしかもらってない!!そんなんだから
そう思えるんだ!!!」
「確かにな。」
「え?」
「そう感じていたのならそうなんだろうな、すまないな。そんな思いをさせて。」
「いや、俺のほうこそゴメン。」
「なんで謝るんだよ。お前は間違ってないさ。ただひとつだけ間違えたな。」
「なにを?」
「お前にはお前のいいところがある。例えば俺より料理が出来る。足が速い、とかな。
それに・・・」
「それに?」
「お前は人のことというか人の気持ちがよく分かる。俺が悲しいときもいつも一番に気付いてくれた。
なぁ覚えてるか?小学生のとき俺がいじめられてたの。」
「うん。」
「あの時実はお前が最初に気付いたんだ。口では優しい言葉を言う親も先生も
だれも気付けなかったのに、お前だけ。そういうところは俺にはないよ。
いや多分他の誰も・・・だから自分を下にするな。誇れ。俺はそんなお前を誇らしく思ってるんだ。」
「兄ちゃん・・・」
「な?」
「うん!!」
兄ちゃんはあんなに出来るのに一回も俺を馬鹿にはしなかった。
俺は兄を目標にしてきた。
むしろ
させられてきた。
母からはいつも兄のものさしで計られ・・・
父からは兄の存在なしで褒める事も怒ることもなかった。
時にはそんな兄を疎ましく思った。
でもあっちはそんな俺を一回も見捨てなかった・・・
最高の・・・・兄だ。
今正直に言える。
俺は兄ちゃんのこと
尊敬してるよ。
10月31日
「おはよう!!昨日はどうしたの?」
沙里と登校中にあった。
「あぁ沙里。おはよう。」
「ん?おはよう。」
「昨日か・・昨日は悩んでたんだよ。」
「何悩む必要あるのよ~」
「お前のことかな。」
「え?」
「いや、なんでもないよ。そうそう今日暇?」
「う~ん、8時くらいなら大丈夫かなぁ。」
「実は渡したいものがあってさ。」
「別にいいよ~。」
「ありがと。」
今俺の心では二つの気持ちがぶつかり合う。
一つは逃げ出そうとする気持ち。
もう一つはそんな自分を変えようと思う気持ち。
あぁいいさ。
変えてやるよ。こんな自分だけど。
変わってみせる・・・・。
**********************
時が過ぎるのは早い。もう8時だ。
あいつの家に向う。
家の前にあいつは・・・いた。
しかもこんな寒い中一人で。
俺の手には・・・仮面。
「あっ来た来た。おそい!!」
「ごめんごめん。」
「で、なに?」
「今日は何の日でしょうか!!」
「ハロウィンでしょ。」
「てことでお菓子をもらいにきました。」
「・・・・プッ、そんなことで呼び出したの?」
「でもな、俺ただ甘いだけのは嫌いなんだよ。」
「お菓子?」
「ただ優しいだけじゃない、時には俺を慰めてくれる。」
「え?」
「明るくて、俺が何度も助けられた・・・」
「そんなお菓子ないよ・・・・。」
「あ~駄目だ、もっと言う事考えてきたのになぁ・・・
なぁ、正直俺ってどう思う?」
「裕君は一緒にいて楽しいよ。」
「俺はお前が好きだ。」
「・・・・・・・」
「でも・・・。」
「でも?」
俺の目から涙が出てくる。
とまれよ・・・止まってくれよ。
「この思いを伝えてお前との関係がギクシャクになるのも嫌なんだ・・・
今が楽しい、今のままの関係でもいい。そう考えたときもあるけど・・・逃げたくないんだ。
もう何言ってるか分からないよな、何言ってんだろ。俺」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
無言のときが進む。
この時が長く感じられる。さっきまで早く時が進んでいるように感じたのに
そんな中沈黙を打ち破るかのように片方の口が開く。
「ねぇ、裕君はなにしにきたの?」
「最初言ったじゃんかよ。お菓子をもらいにきたって。」
「・・・私があげるお菓子はとーっても苦いです。時には食べる人も泣かします。
時々傷つけてしまうこともあるかもしれません。でも・・・食べてくれる人のことが大好きです。」
「え?今なんて・・・」
言い切る前にあちらが話す。
「裕君・・・私は付き合うとかよく分からないの。」
「俺も。」
「でもさ・・・今までどおりでいいんじゃないかな。」
「え?」
「今までどおりなら幸せ。下手に意識しなくていいじゃん。ね?
・・・・でもさ、私も裕君のことが好き、大好き。」
「・・・・・・。」
「こんなお菓子だけど・・・いらない?」
「ありがたくもらっちゃいます。」
今年の秋でなにかが変わったのかもしれない・・・
でも言えることは、俺は大好きなお菓子をハロウィンでもらえたということだ。
そう・・・大好きな。
[冬を歩こう~完~]
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