Polymnia

Polymnia

想い配達便 1通目


私は馬鹿みたいに先ほど沸騰したばかりのやかんを触ってしまい、軽いやけどをした。
考えればやかんが熱いことくらいわかる。
だがなぜか触ってしまった。脊髄も怒っている。もちろんそんな気がするだけなのだが。
私-夏菜は今年で遂に23歳になった。仕事は郵便配達をしている。
親が配達業を営んでいた影響でだと思う、というか間違いなくそうだ。なんたって勤務先=実家だから。
それでも違う視野が欲しいと一人暮らしをしている。
資金面は工面してもらっているのだが父からある条件をうけた上での一人暮らしなのだが…。
その条件とは、まず一に期限は三年であること。
二十歳から始まったから今年が最後。
二に期限以後三の条件を満たさず、なおかつ家に帰らない場合一切の仕送りを打ち切ること。
二にもある三の条件とは最愛の人を見つけること。

はぁ…どうしよ。

『想い配達便』

私の職場は実家なのだが厳密に言うと実家からかなり離れている。
郵便配達はあまり重要視されないためか、かなり離れた場所にある。
だから母達にも勤務して早5年になるが数回しか仕事中は会わない。
最近配達する人も減って来た。昨年くらいに急激に普及した「エレキプロジェクト」
のせいだ。この「エレキプロジェクト」とは寺田内務大臣の提案した5ヶ年計画のことで、
個人情報の保守性がどうのこうのということですべて電子化することだ。
この計画に賛同する人が多いからだろう、めっきり郵便の数は減った。
「エレキプロジェクト」+他の郵便事業が郵便物を盗難され結果として個人情報を流出してしまった。
これでは郵便配達が信頼されないのはしょうがないのかもしれない。
ちなみに影響を受けているのは郵便配達だけで、うちの母たちが行っている運送業はあまり受けてないようだ。
なにか複雑な心境を抱いているのは言うまでもないことだろう。
―手紙にしかできないこともあるのに・・・―

「おはよう!!・・・・あれ?」
私ががらっと事務所のドアを開けると中はし~んとしていた。
周りを見渡すと険しい表情のブンちゃん(私の親友で同期の娘)を囲む3人の後輩が見えた。
「あぁ先輩。いいところに来ました。」
後輩の1人が私に近づいてきてそう言う。
「うん?どうしたの?」
どうせブンちゃんが彼らのことを酷くいったのだろう、やれやれベンちゃんは口が達者だからなぁ。
ここは一つ先輩である私が・・・。
「辞めます、今日でここ。」
「そうか、ブンちゃんに・・・って、え?」
「だから、辞めます。」
「ななななんでよ!?」
私は昂る気持ちを抑えようともせず後輩に詰め寄る。
それを感情を見せようともせずただ淡々に後輩は私の手を払いのける。
「先がないんですよ。この仕事に。そんな仕事にいつまでも付いていたいと思わないのは
普通ではないのですか?」
威圧的な後輩の態度。こんな損得で考える奴が郵便の仕事を理解できるとも思えないし、
見ていて不愉快だ。
― 辞めたいなら勝手に辞めればいい・・・―
「な、ならしょうがないよね。ううん、気にしないで。君達辞めても私たち頑張るから!」
私がそう言うと彼らは嘲笑った。
「ハハハ、何言ってるんですか?頑張るほどの仕事もないくせに!
…………まぁ先輩がそこまで言うのなら罪悪感も薄らぐ気がしますよ、元からないですけどね。
じゃあ今までお疲れ様でした。」
後輩達が軽く会釈をして部屋から出ていく。廊下からは彼らの笑い声が聞こえた。
私は堪えることしかできなかった。先ほどはあぁやって強がったがやはり中途半端に付き合った人との別れは辛いものがある。

私まで暗くなったらダメだと言い聞かせる。…うん、大丈夫。笑顔を『造れた』。
「ブンちゃん、また減っちゃったね。」
「そうね…これであと二人。」
「ん?二人…?」
確かこの前私に辞めると告げた人の時はまだ10人いたはず…。
私が思い描いた最悪の仮定をブンちゃんは告げる。
「私と、あなた。」
不思議と落胆はなかった。むしろそうなることは少し分かっていた。
「ブンちゃんは…辞めないよね…?」
私が恐る恐る聞くと彼女はふーっと小さく息を吐き、辞めないよと笑ってくれた。

そして今日の仕事が始まった。普段私が配達をし、ブンちゃんは仕分けをする。
ブンちゃんに配達は難しい。なぜなら外には魔物がそこら中を歩いてる。
配達するときそこもわたっていかなければならないときもあるのだ。
言っては悪いがブンちゃんの戦闘能力はほぼ皆無だ。
その分知力では勝てる気がしないのだが。
私もそんなに力がある方ではないのだがそれでもやるしかないのだ。今日からいつもと勝手が違うから…。
今日辞めていった彼らは戦闘力がなかなかあるので魔物が出る区域をやってもらっていた。
その分一人一人の区域は小さくしておいたし、給料もよかった。
彼らは命を賭けている分優遇はされていたのだ。
しかし辞めてしまった、今日からは私がそこを回らなければならない。
考えるだけでも憂鬱になる。
だが私まで暗くなったらダメだ…その一心が私を動かしていた。
「じゃあ仕分けヨロシクね、ブンちゃん。」
ブンちゃんはうん。いってらっしゃいと笑顔で手を振った。

普段私たちは自分達が住んでいる第三ドームと第七ドームを配達する。
ドームの中には魔物は出ないのだが、第三から第七ドームへの通り道には魔物がわんさかいる。
ちなみに全くの余談だがなぜ第四や第五、第六には配達をせずに第七なのかというと
第三ドームの自治を任されている霜山代表が第七以外の代表と仲が悪いからだ。
そんなんだからこの頃は街の至る所で代表の辞任を求めるデモが度々起きる。
…正直やるならよそでやってほしい。第三者である私たちを巻き込まないで欲しい。
今日もデモのせいで道が通りにくい。
私は周り道をすることにした。
いつもは表通りである『ヒマワリ』を通るのだが、今日は裏通りである『ヒヤシンス』を通る。
裏通りと言っても治安が悪いというわけでもなく、法に触れるようなこともしているような場所でもない。
むしろ表通りより人の雰囲気が私は好きだったりするのだ。
ヒマワリの通りの三つ目の信号を右折して次の信号を左折する。これでヒヤシンスに入った。
あとはこの道を15分走ってヒマワリに戻り、ビッグロード(ドーム間の道のことだ)に入る。
そのビッグロードが問題なのだ。魔物も出るし大変危険なのだ。
ドームは零番から十番まで時計周りに並んでいる。
三番から七番まではほぼ半周しなければならない、対極の位置にあるのだ。
その分魔物がいきなり現れる可能性も多くなる。
細心の注意が必要になる。

「おぉ郵便ちゃん。今日も配達か!」
裏通りを出掛けたとき野菜配達のスケハチさんに会った。
「そりゃあ私の仕事これだもん。これなんも考える必要ないから私にあってるよ。
野菜さんは今からなんの仕事?」
郵便さんなんて呼び方するもんだから皮肉ってそう呼んでやる。
それでも豪快に笑うスケハチさんはやりにくい。やりにくいけど好きだ。
「おぅ。俺も配達だ。午後からは七番にも向かう。」

「ふーん…気をつけてね。スケハチさんも歳なんだから。じゃあ私は行くよ。」
「馬鹿野郎、まだ39歳でバリバリだっつうの!……まぁなんだ、気をつけて行ってこい。」
スケハチさんは照れ臭そうに笑い、大きく手を私に振った。
多分私が見えなくなるまで手を振り続けていたに違いない。スケハチさんはそういう人なのだ。

スケハチさんと別れてから5分くらいでビッグロードの入口に着く。
そこでチェックをしているススム君とは同級生で仲良しなのだ。
(お互い親の仕事を受け継ぐことが決まっていたからかなぜかお互いの心情を共感できたのだ。)
「おはよう、ススム君。」
流れ作業のようにテキパキ動いていたススム君の動きが止まり少し驚いた表情をした。
「あぁ夏菜じゃん。久しぶり。」
「そうだねぇ…半年くらい会ってなかったよな。」
「そうそう!確か最後に会ったのって同窓会じゃなかったかな。」
「だって夏菜ここ通らないし。俺ここ動けないし。にしてもなんで今日は?
確かお前はドーム内だけじゃないっけか。」
ススム君は半年前にちょいと愚痴ったことすら覚えていた。
私なんかススム君に言ったことすら忘れていたのに…。
「実は今日…ってな理由で。」
私が今日辞めた人の話をするとススム君は大変だなと小さく笑った。
その後すぐにあっそうだ!と叫んだ。どうやらなにかひらめいたらしい。
「うちに変な双子がいるんだけど雇わないか?」
「変なのはちょっと…」
「多分想像しているのとは違うよ。なぁに多分やってくれる。
……それにお前一人でビッグロードは危険だしな。」
ススム君は昔優しくしてくれた仕事の人をビッグロードでなくしている。
少し考えた後、私はススム君の気遣いを受けることにした。
「………うん、わかった。なら今日からお願いしてもいい?」
よっしゃ、任せなさいと二の腕をポンと叩き電話を手に取った。
例の双子を待つ間、私は他の人の迷惑にならないように部屋に入れてもらった。

それから数分後部屋の戸をコンコンとノックする音がした。
私がはーい、どうぞと言うとすぐにがちゃっと開けられ二人の男女が入って来た。
「失礼しまーす。えっと…あなたが夏菜さん?」
双子の女の子の方が言う。見る限り利発そうな子だ。
「はい。そうです。えっと…。」
申し遅れましたと女の子の方が言いペコリと頭を下げた。それに続き、男の子の方も慌てて頭を下げる。
「私は高柳ユミ。こっちは双子の弟のユウです。」
「ユミちゃんとユウ君ね。わたしは夏菜。23歳で、郵便配達をやって…って知ってるか。」
23歳ってことは…とユミちゃんが考え込む。そして指を折り始めた。
それをユウ君が恥ずかしいからやめろよと制止した。
「そんな風に数えなくてもすぐわかるだろ。俺達が16歳なんだから…。」
「あっ8歳違い?」
……惜しい。
ユウ君も呆れたのかため息をついている。
「じゃあ面接しよっか?」
そういうとユミちゃんは顔を強張らせて気をつけの姿勢をとる。
その様子が面白くて笑ってしまった。
今度は逆にユミちゃんが驚いている。
「ゴメンゴメン。そんなに強張らなくてもいいよ。
ただユミちゃんとユウ君のことちょっと聞くだけだから。」
あっなぁんだと胸を撫で下ろす仕種が妙に可愛かった。
「まずは…二人ともなんの仕事するか聞いた?」
「うん。郵便配達だろ?」
ユウ君がユミちゃんより先に答える。それがユミちゃんには面白くなかったようだ。頬を膨らましている。
「ユウ君正解。それでね、知っていてほしいの。
手紙は…ううん、郵便って人の心なの。だから私達の仕事って人の想いを配達してるの。」
二人はぼーっとしている。…ちょっと難しかったかな?
すると突然ユミちゃんの顔が光った。
「感動しました!」
逆にユウ君は呆れている。
「お前ホントに意味わかってんのか…?」
「ううん、わかんない!でもいいこと言ったのはわかる!私やるよ!この仕事!」
「姉貴は単純だからそう言うと思ったよ…まぁいいや、ねぇ、姉ちゃん。」
ユウ君が突然話を振ってきた。
「な、なにかな?」
「俺達やるよ。いや、雇い主だもんな。やらせてください。」
深く、深くお辞儀をする。
「うん…いいよ。採用します。私のことはなんとでも呼んでね。」
「あ、ありがとうございます!お姉ちゃんって呼んでもいいですか!?」
ユミちゃんが採用の喜びからか、やや興奮気味で言う。
お姉ちゃん…なんていい響き…。
「じゃなくて…コホン。
じゃあ今日は配達がてら配達経路回るかな。ユウ君ちょっと手伝ってくれる?」
「えっ、俺?まぁいいけど…なにすりゃいいの?」
「この配達用のバイクにバギーを連結させるのをやってほしいの。確かトランクの中に…あった。」
「どうでもいいけどよ…姉ちゃん。明らかにトランクに入らないでかさじゃねぇか…そのバギー。」
「ユウ君細かいこと気にし始めたらダメ。ほらほら早く早く。」
「別に細かくねぇよ…まぁいいや。ちゃっちゃとやるか。」
簡単な仕組みだったからか、ユウ君が機械が実は得意だったからか、5分もしないうちに組み立てることができた。
これで3人まで乗ることが出来る。これ以上連れていくならこれからは車にする必要がある。
そうなるとお姉に借りに行かな…あっそういえばお姉達に人が足らないこと言うの忘れてた。
………まっ、ベンちゃんが言ってくれてるかな。うん。
うんうんと一人で頷きユウ君とユミちゃんの乗るバイクに乗った…。

「バイクは動くよ~ふーふふんふんふ~ん♪」
「えらい上機嫌だなぁ、姉ちゃん…。」
そりゃあそうだ。やる気ない人が辞めた後に自分からやりたいと言ってくれた子
が二人も入ってくれたのだから。
「それはユウ君とユミちゃんのおかげ。」
俺達?ますます意味わかんねぇよ…とユウ君は首を傾げている。だがそれでもいいのだ。
なぜなら私の所詮自己満足なのだから。
ユミちゃんは何をしているのかとちらっと見ると、ドリルをしていた。
「ユミちゃん、なんの勉強してるの?」
余程集中していたらしく、声をかけてから数秒後にへっ?と反応した。
「あ、あぁ。これは計算ドリルというやつでユウに作ってもらったやつです。
ユウはものすごく頭がいいんですよ。ね、ユウ?」
ユミちゃんはユウ君のことを自慢にしていることがよくわかった。仲がいいのだろう。
まぁ…うちも悪くないかな…。
そういやぁ三春姉と秋代にしばらく会ってないなぁ。
「………姉ちゃん。気をつけろ、すぐに来る。」
ユウ君がそう突然言うと先程まで笑っていたユミちゃんの顔が強張る。
私にはなんにも感じることができずユウ君に尋ねようとしたその、静かだった道が振動しはじめた。
そして振動は波へと変わり…
「これはデカイ…!!」
私がやっとその存在に気付けたとき、それより少し遅いくらいか、のタイミングで砂の柱が低く
大きなうめき声と同時に立ち上がった。
私はどうしようか悩んだ。年下の二人を下げて私が戦う…?しかしあのでかさ、私では勝てるかどうか…。
そんな風に悩んでいる間だって時は流れる。
魔物が低いうめき声と同時に私たちに襲い掛かってきた!
やられる…そう思い目をギュッと閉じた瞬間耳元でユミちゃんの優しげな声が聞こえて来た。
「私たちに任せて!あのくらい朝飯前だから!!」
え?と反応し、目を開けた時私の眼前にあったのは、果敢に飛び込むユミちゃんの姿だった。
魔物との距離があとわずかというところまで来ていた。
「危ない!」
そう叫んだ瞬間バンッという射撃音が私の左方向から聞こえて来た。
「馬鹿姉貴!飛び込むなっていつも言ってるだろ!」
魔物はドンッと大きな音を立てて倒れる。
「仕留めたの…?」
「いんや。このランチャーにそんなに威力はないよ。……ほらくるぞ。」
魔物はユウ君の言うとおりなんともなかったかのように起き上がった。
そしてうめき声をあげながらまたこちらへ襲い掛かって来た。
「きききききたよ、ユウ君!」
慌てる私、ユウ君は冷静だった。
ユミちゃんがなぜ飛び込んだか、私が理解できた、ものの5秒の間に魔物の体は真っ二つに引き裂かれていた。
楽勝楽勝、ブイ♪と笑顔でVサインを作るユミちゃんに私は渇いた笑いしか出なかった。
腰が抜けストンとお尻を地面に落とす私をユウ君は手を貸してくれた。
「怖かったろ。もう大丈夫だよ。姉ちゃん。」
その優しい一言に私は涙腺を緩ませてしまい、ついつい怖かったよ~とすがりついてしまった…。

落ち着いたあと急激に恥ずかしくなった私は黙ってバイクを運転していた。
ユミは疲れたようでもう寝ている。
その後の七番までの道程では一切魔物には遭わず、
さほど多くもない郵便物を運んで帰ろうとしているところまできた。
そんななかである。ユウ君が口を開いた。
「姉ちゃん。さっきのことまだ引きずってるのか?」
その通りだ。でもそれを認めたくもなかった。
私は戦闘能力が高いわけではない。三春姉や秋代に比べると差は歴然だった。
ましてや年下の子にかばわれたということ、これが最もネックになっていた。
「俺達もともと十一番ドーム出身なんだ。」
「!?」
十一番・・・それは十年前激しい内紛がおきて現在十番と十二番の軍隊によって隔離されている場所だ。
「俺達二人が物心もったときに持たされたのはこいつだ。」
ポケットをあさって取り出したのはピストルだった。
「俺は筋肉がつきにくい体質らしくな。ユミみたいに肉弾戦は不可能って言われたんだよ。
そりゃあ悔しかったさ。その頃俺たちを動かしていたのは国を変えてやろうっていう闘争心だったからな。
ユミには専用のチャクラムが作られた。俺にはそこらで量産されている銃一丁だ。
内紛の時俺達は戦場に駆り出された。人もたくさん殺した。ある時は兵士。ある時は命乞いをするお偉いさん。
人って生きてる間はいろいろあがくけど死ぬときは悲しいほど一瞬なんだ。
俺が人差し指をカクンと動かすだけで人はもう動かなくなる。いつの間にか俺の中では人の価値はわからなくなってた。
・・・そんな中さ。ユミが精神改造されたのは。」
「精神・・・改造?」
「あぁ。あいつ馬鹿だろ?数字すら数えられない。・・・答える必要がないから脳回路をなくされてるんだ。」
「!?どういうこと・・・!?」
私は横ですやすや寝ているユミちゃんを見た。全然そのような印象を受けなかった。
「今は幾分か回復しているよ。十一番の技術が馬鹿みたいにすごいんだ。
だが後遺症でユミは悲しいという感情がない。だから俺が死んでもこいつは笑ってられるんだ。
そうやってユミが改造された時初めて知ったよ。人の命の重さは人によって違うんだ。
俺が殺してきた奴らの重さなんかわからない。でも誰かの心には必ず重かったんだ・・・。
俺はユミを連れて逃げだしたよ。その頃のユミはすでに人格崩壊していて俺すら殺そうとした。
その時襲われた後遺症で俺は右腕がなくなった。これは義腕だ。」
そう言われて初めてユウ君の腕の動きがぎこちないことに気づいた。
「それからは・・・うん?もう帰ってきたのか。じゃあここからの話はまた今度な。
三番にまで暗い話題を持って帰っちゃいけないよ。」
「うん・・・。」
「・・・・なぁ姉ちゃん。俺な、姉ちゃんのこと軽蔑してないよ。
むしろ姉ちゃんが好きだ。なんていうのかな・・・昔本で読んだお母さんみたいな。」
精一杯のフォローなのだろう。人とかかわりが少ないから言葉が少なくなってしまう。
私がお母さんになってこの子たちに感情を教える・・・?
教えるなんてそんな態度じゃいけない。一緒に学んでいくんだ。
愛するとは何か・・・。
心とは何か。
「む、ユウ君私はまだ23だよ。少し失礼だね。」
コツンと軽く頭をたたくとユウ君はあたふたした。
先ほどまで命がどうのこうの語っていた少年とはすごい違いだ。
「ち、違うんだ。ふけてるとかそういうことが言いたいんじゃなくて、むしろ姉ちゃんはきれいだよ!!
胸もでかいしおしりもでかいし!!」
さすがにおしりがでかいといわれるとムカツク・・・。
「だからだから・・・。」
「ユウ君。」
私がそういうとユウ君はビクンと震えた。
「悪いと思ったことをいった場合の言葉はごめんなさい、よ。」
「えっ・・・ごめん・・・なさい。」
「うん。よし。じゃあそろそろ事務所つくからユミちゃん起こして。」
事務所のガレージにつくと私の実家の車があった。
誰かが来たのかなと思いながらバイクを止める。
後ろを見るとちょうど顔面を殴られているユウ君がいた。

「ただいまぁ~ブンちゃん。」
「あっお帰り。マイシスター。」
「あっ帰ってきたよ~ブン姉ぇ。」
玄関にはふろ上がりでバスタオル一枚の三春姉とおたまをもった秋代がいた。
「なんで二人がいるの・・?」


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