Polymnia

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想い配達便 2通目


私はびっくりして少し叫んでしまった。
しかし(少し頭がおかしい)秋代は逆に笑顔で、三春姉はいつも通りのほほんと笑っている。
「夏菜ちゃん久しぶり~この前会ったのいつのかしら?」
三春姉が私の発言をスルーしてそう尋ねる。
というかいい加減服を着てほしい。
ダイナマイトボディーをいつまでもバスタオル一枚の格好で披露されていると負けた気になる。
「確かこの前の正月。それより三春姉服を着なよ。」
「あら?可愛い二人ね。なんて名前?」
いつの間にか私の後ろにいたユウ君とユミちゃんの方に三春姉の興味は向いていた。
「また無視かよ!」
「も~なっちゃん口調が荒くなってるよ!」
秋代がツッコミに疲れ地べたにはいつくばっている私の前でちょこんと座りながらそう言う。
秋代は三春姉よりもしっかり者だ。そこは信頼に値すると思う。
ただ少し…というかかなり私にべったりなのだ。昔実家にいたとき何度も朝起きたら隣で寝ていた。
実家を出たかった理由の上位に入ると思う。
だから出ていくとき秋代はかなりぐずった。
「私たちね、ブン姉から父さんたちのいる本社に従業員がいなくなったって連絡がきたのよ。
それで助っ人として呼ばれたってわけ。」
やはりブンちゃんがちゃんと連絡をしてくれていたようだ。
にしても…と秋代がムフフと笑い出す。
「なっちゃん久しぶりに見たけどやっぱしかわいー!!!!」
ない胸で顔をしめつけられる。若干息がしづらい。
私は秋代を引き離そうとしたがなかなか離すことが出来ない。
私が力が弱くなったわけではない。日々鍛練を軽くながらやっていたからだ。
となると秋代の力が強くなったんだな。改めてみると顔付きも少し大人びたし…。
とかそんなことを考えているとだんだん酸素が足りなくなってきたことに気付く。
「むーむー!!むむむむむむむむ!!(訳:秋代!!息出来ないから!!)」
「ん?なっちゃんどうしたの?………あれ?よく見ると顔が青く……あー!!ゴメンね、なっちゃん!
息出来なかったんだね!」
やっとのことで秋代は体を離した。人生でもこんなに酸素が美味しいと思う機会は少ないであろう。
十分すぎるほど酸素を堪能し、呼吸を整えてから秋代の方を見る。
「ハァハァ…ふぅ。あんた力強くなったね。」
私がそう言うとえへへと秋代ははにかんだ。
「私ね、いつかなっちゃんの役に立ちたいなって思って二年間戦闘科へ行ってたの。
だから外務の時は私を連れていってね!」
「秋代…あんた。」
秋代は私のためにそこまでしてくれたのかと思うとつい涙腺がゆがむ。
戦闘科とはドーム外の仕事を前提としたカリキュラムを組まれていて非常に辛いものだと聞いている。
さらに卒業してからも命の保証はできないような学科なのだ。
心の中で秋代にありがとうと感謝した。口に出しはしなかった。気恥ずかしいからだ。
「なによーなっちゃん。その何かいいたげな顔は。」
「なんでもないよ。それよりあんた太った?」
「んな…ふ、太ってないもん!これ筋肉だもん!」

そんな会話をしている後ろ、三春とユウとユミはというと…。
「俺がユウで、こっちが姉のユミ。」
「へぇ…ユウ君とユミちゃんかぁ。ということは、あなたたち11番出身?」
「えっ!?おばさん俺らの名前聞いただけでグェッ!」
話の途中で誰かに腹を殴られる。誰に殴られたかも理解できないスピードだった。
しかしすぐに犯人は分かった。前の方からひしひしと殺気を感じるからだ。
「ユウ君今何て言った…?『お姉さん』聞こえなかったなぁ…。」
お姉さんを強調されてなぜ怒られたかわかった。
「お、お姉さんなんで僕たちが11番出身ってわかったんですか?」
ユウがそう言うと三春はうんうんと頷き、
「ユウとかユミとか…そういう感じの名前は11番特有なのよ。知らなかった?」
ユミはユウに知っていた?と聞くが、ユウも初耳であった。
ならしょうがないなぁと三春は笑顔で答える。
「1から12番まで区切られているのは何で区切られているかっていうと肌の色とかで区切られているの。
もっと昔の話をするなら神様にたてついた昔の人への罰で神様が言語を変えて人々を混乱させたらしいの。
それで言語の通じる人だけを集めて今のドームっていう形にしたの。
……もっとも今は共通語というのを50年前から義務教育で教えられて来てるから他ドームの人との会話には
支障はないけど…それでもドーム毎に名前の付け方には癖があるのよ。」
「そうだったんだ…。ちなみに漢字ってここだけの文化?」
「漢字は…そうねぇ。エレキプロジェクトのあのお人で有名になったけど元々は三番だけの文字ね。」
へぇと感心するユウとさ対照的にユミにはなんの話をしているのかさっぱりであった。
途中からあきらめて秋代と夏菜たちを見ていた。
あれと同じ様にじゃれついたらユウも喜んでくれるかなと考えた。
ユミは少しでも考えたら行動に移す性格なのだ。やりたくてうずうずしている。
しかしこの前ユウに人が話しているときは話に入らないようにと注意を受けたばかりなのだ。
我慢しているユミの肩が突然叩かれる。
「ひゃあ!?誰?」
ユミが振り向くとそこには見知らぬ女性がいた。見る限り、お姉ちゃんと同い年くらいかなとユミは思った。
しかし夏菜とは対照的に文学的な印象を与える女性であった。
「あっ驚かしてごめんなさい。私文子(あやこ)っていうの。みんなブンちゃんっていうけどね。
あなたの名前は?」
「ユミです。あそこにいる男の子が弟のユウです。」
「そう。ユミちゃんね。ユミちゃんはコーヒーと紅茶どっちが好き?」
「私は両方苦くて嫌いです。牛乳入ってるなら…どっちも好き!」
「そう…私もよ。あんな苦いの飲める人の方が不思議よね。」
ユミは若干驚いた。こんなに大人びた人なのにコーヒーが飲めないなんてと。
そしてこれがユウの言っていた人はみかけによらないということなのだろう。
「とりあえずご飯出来たからみんなを呼びに着たんだけど…そうだ、ユミちゃん。
先に向こうの机に行ってコップとか並べておいてもらえないかな?
コップは近くの棚にあるし、食べ物はもう皿にいれてあるからそれを運ぶだけ。どう?」
ユミは快諾した。元々ユミは人に頼まれたら断れない性格だったし、なにより文子が気に入ったからだ。
ユミが向こうへ行ったのを確認すると文子は周りの状況を確認した。
ぎゃーぎゃー騒いでる秋代と夏菜。
すっかり自分達の世界に入りきっている三春とユウ君。
頭が痛いなぁと軽くため息をついて文子は苦笑した。

パンパンと文子は手をたたく。
みんな自分たちの世界に入っていたのだがそこまで没頭していなかったのだろう。
すぐに音に気づき、音の根源である文子の方を向く。
「みんな、晩御飯冷めるけど。」
そしてニコリと笑う。
夏菜は経験上知っていた。文子がこうやって笑う場合、なかなかご立腹であることを。
それは夏菜だけでなく、長い間家族ぐるみで付き合い続けた三春も秋代もわかっていた。
わかっていないのははじめてのユウだけできょとんとしていた。
「秋代、離れて!すぐにご飯盛る!三春姉は服を着て食堂に来る!
ユウ君は・・・ユミちゃんのところへ!!」
秋代と三春はコクリと頷き、サッといなくなった。
出遅れたユウの肩の上にポンと手が置かれる。
ユウが振り向いた先にいたのは先程あの三姉妹を動かす原動力となったあの女性が笑顔でいたのだ。
「あなた名前は?」
すでに夏菜はいなくなっていた。
ユウはこんなに怖い思いをしたのは昔いきなりA級魔物に出くわしたときくらいだ。
いや、逃げられないことが分かっている分だけさらに恐怖は増している。
「ユ、ユウです・・・。」
「そう・・。まぁユミちゃんから聞いてたんだけどね・・・。
あなたがしなきゃいけないこと、わかる?」
大きく首を縦に振りユウは反応する。
額には恐怖でかいた汗が顔へと流れ始めている。
「いい子ね。じゃあいきましょうか・・・。」
先ほどと同じ笑いなのだが、そう言いながら頭をなでる文子の姿に顔が赤くなっている自分にユウは気づいた。
「・・・?どうしたの?はやくおいで・・。」
「う、うん!!」

(*ここからは夏菜視点に戻ります)

食堂へ行くとユミちゃんがゆっくりながらも丁寧に食器を並べていた。
こうやってみると結構でかいテーブルだったんだなぁと思う。
全盛期はここに15人くらいいた。
私が入社した時の話だ。
あの時は社長が私の叔父さんだったのだが、いつも一緒に仕事させてもらっていた。
私が原因で死ぬまでは・・・。
叔父さんが死んでからはまた一人、また一人と別の担当に回り、
気づけば当時いた人は同期のブンちゃん以外誰一人いなくなり、そこまで思い入れがない新入社員が増えた。
あの時のように郵便配達に対して真剣だった人はいなかったのかもしれない。
エレキプロジェクトが提唱されたと同時にどんどんまたいなくなっていった。
その頃からブンちゃんと二人きりの食卓だった。
それがまたこうやってみんなで食事を囲めるようになるなんて。
「ユウ君とユミちゃんが来ることは知らなかったから食事4人分しかないけど・・・
まぁおみそ汁とご飯と唐揚げだからそんなに気にすることないよね。」
ブンちゃんがそう言っていつもの定位置に座る。
「ユウ!!ユウ!!これ、私が持ってきたんだよ!!」
座って嬉しそうにコップを指さすユミちゃん。
「うるさいな、ただ持ってきただけだろ。ったく・・この馬鹿姉貴。」
口ではそう言いながらもちゃっかりユミちゃんの隣に座るユウ君。
「にしても夏菜とご飯食べるのいつぶりかしらねぇ。」
昔から着続けているネグリジェに着替えた三春姉が嬉しそうにブンちゃんの隣に座る。
「確かお正月以来だよね、なっちゃん♪」
秋代はこちらを見ながら笑顔でちょこんと私の座る席の隣に陣取る。
「そうだね。さ、いただこっか。」
「「うん!いただきまーす!!」」
ユミちゃんと秋代がそう言い、メインの唐揚げに手を伸ばす。
案外この二人気が合うんじゃないかなと思う。
ユウ君と三春姉もいただきます、といいみそ汁から手をつける。
この二人は絶対嫁いびりするタイプだ。
「夏菜・・・なに笑ってるの?」
ブンちゃんが不思議そうにこちらを見て首を傾げている。
「・・・いや、こうやってみんなでご飯食べるの久し振りだなぁって嬉しくなっちゃって。
ゴメン、なんか辛気臭くなっちゃって。さ、食べよ。」
「・・・・うん。」
この日の唐揚げはいつもよりおいしく感じた。

ご飯を食べ終わると、みんな何気ない話をしていた。
ユウ君と三春姉は先程の話の続き。
ユミちゃんと秋代は自分の兄弟自慢。
ブンちゃんはお茶をすすっている。
私は考えていた。
これからのこと。
「う~ん・・・。」
頭が痛くなる。なまじ初心者が多いことがなぁ。
郵便配達は道順を覚えるまでが大変なのだ。
そこからは一人で行かせてもいいのだが。
ブンちゃんは私が悩んでいるのに気づいたのか、
そっと紙とペンを持って隣に座る。
「私の考えでよければいっていい?」
「いいよ。」
私が了承するとブンちゃんは紙の真ん中にびーっと縦線を引いた。
そして一番上には【外】【内】と書く。
次に【外】と書いた方の真ん中に横線を引いて、上には【難】、下には【易】とかく。
多分【難】はドーム外、【易】はドーム内なのだろう。
【内】とは郵便物の仕分けのことだ。
「まずは【外】に分類するのは、ユウ君、ユミちゃん、秋代ちゃん、そして夏菜。
【内】は私と三春さん。」
ここで一つ疑問が生じた。
「ブンちゃん、ユウ君とユミちゃんのこと知ってるの?」
「さっき準備してるときユミちゃんの大まか聞いたから・・。」
「あっなるほど・・・。つづけて。」
紙の【内】の欄に三春、文子と名前は書かれる。
「次に【外】なんだけど、ここはローテーションにしようと思うの。」
「ふむふむ。」
「正直に言うわ、あなたはこのメンバーで一番弱いんじゃない?」
「うぐっ・・・バレました?」
「しょうがない話だもの・・・。で、多分この中で個人的な見解では、
秋代ちゃん、ユミちゃん、ユウ君、あなた。の順番で強いと思うの。
でも秋代ちゃんは市内事情に詳しい。だから最初は秋代ちゃんとユウ君を【易】に入れて、
一人でできるようにする。この二人が慣れ始めたらユウ君を【難】にする。
最終的にはあなたを【内】に入れて、【難】に二人、【易】を一人にできるように。
正直【内】は二人でもきついのよ、でもあなたたちの方がつらいのはよくわかるから。
予定では3週間でできるはずね。どうかな・・・?」
「さすがうちの参謀。それでなんも問題ないんじゃないかな。
はぁ・・にしてもこんな頼りない社長なんて叔父さんも笑ってるだろうなぁ。」
ハハハと笑うと、コツンと頭を小突かれた。
「あいてっ。」
「夏菜・・・そんなわけないでしょ。少なくとも私はそうは思わないよ。
だってここにいる人はあなたを中心に回ってるんだもの。」
「・・・?」
ブンちゃんが言いたいことがまだ私にはわからなかった。
そして長かった一日も間もなく終わろうとしていた・・・。

次の日、私が目を覚ましたのは11時だった。
確か今日は月曜日、皐郵便すべてがお休みの日だ。(毎週月曜日と水曜日は休みなのだ。)
寝ぼけた頭で何をしようか考える。
とりあえず服を着替えようと呟いてみる、脳が覚醒してないからこんなことから考えてしまうのだ。
寝間着をぱっぱと脱ぎ、タンスの中から休日に着る服の中では結構お気に入りの方に入る服を選んでみた。
そして扉の近くにある鏡で寝癖を直し・・・そこら辺から脳が完全に覚醒し始めた。
そうだ、今日はみんなで出かけようと思いつく。
こんな突拍子のないことをブンちゃんの前で言ったらまだ寝ぼけているのかといわれそうだ。
しかしまだみんな昨日知り合ったばかりなのだ、お互いを知る上で一緒に遊びに行くべきだと意気込む。
よしと両頬をペチペチたたき、ニコリと鏡の前で笑う。
さぁ今日も一日がんばろう、そう自分に言い聞かせた。


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