「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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Polymnia
想い配達便 4通目
ヤンさんのお店は相変わらず日用品と非日用品の差が激しい。
こんなもの絶対使う機会がないぞというものもあれば、これがなくちゃ生きていけないというものを置いてある。
昔ヤンさんに日用品だけを売ればもっと繁盛するんじゃないかと尋ねたことがある。
するとヤンさんは屈託のない顔でその方が面白いだろと言った。
ヤンさんは自分の仕事が好きなのだろう、それは利益だけを追い求めた人じゃたどり着けない場所。
そう…辞めていったあの子たちのように。
「あれ?そこにいるのって夏菜さんですか?」
店の中でそういきなり呼びかけられる。振り向くとそこにいたのは辞めて言った子だった。
しかも最後に私に捨て台詞を吐いたあの子。
「久しぶりだね。どう?新しい仕事には就いた?」
私はこみ上げる感情を抑えてそう尋ねる。
すると彼は辞めた時と同じような蔑みの目で笑った。
「まぁ、こんなこと言っちゃダメですけど。夏菜さんのとこより設備もいいし、待遇もいいですよ。
それに給料もいいですしね。ホント辞めてよかったです。」
「そ、そう。よかったね。ハハハ。」
正直この状況から立ち去りたい。この子と同じ空気すら吸いたくない。
でも体が動かないのだ。心のどこかで向こうが私の前から去ることを期待している。
私は…臆病者だ。
そんな私の様子を見て彼はため息を吐いた。
「夏菜さん、言いたいことがあるなら言ってくださいよ。
正直言ってそうやって言いたそうな顔する癖に何も言わないところ、マジムカつくんすよ。
…あなた、生きていて楽しいんすか?」
「…!?」
バッと顔をあげる。焦ったような私の顔に彼は嬉しそうな表情をした。
「だってそうでしょ?人に愛想笑いふりまいて、安月給のくせに誇りだの振りかざして命かける。
もうそんな時代は終わりだ。あなたはもう古いんだ。」
「・・・。」
何も言えず唇をぎゅっと噛む。悔しかった。泣きたくなるぐらいかなしかった。
でも泣くことすら私はできなかった。なんでこんな時に泣けないんだろう、そう苦しみながら自問し続けた。
「・・・ほら、そうやってまた黙り込む。はぁ・・・これだから時代おくれは。」
「黙りなさい?それ以上汚い口を開けると顎砕くわよ。」
気配を殺していた三春姉がいつの間にか彼の背後に立ち、冷めた声でそう彼の耳元でささやいた。
普段は笑っていてわからないが、こういう時の三春姉の目は百獣の王ですら殺せそうなくらい気迫がある。
「私の妹のこと悪く言わないでくれるかしら。大事な妹なの。」
その言葉が嬉しくもあり辛かった。いつでも三春姉は私が倒れそうな時助けてくれる。
そして笑顔で大丈夫だったと頭をポンポンと叩かれると悔しさが涙となりこみあげるのだ。
「・・・結局あなたはそうやって誰かに支えられないと生きていけないんだ。
今日はもう去ります。殺されたくないんでね。次会う時はもう少しマシであってくださいよ。」
それだけ言って彼は去って行った。私は顔すらあげれず彼がいなくなるのを待った。
三春姉はふぅと小さく息を吐き、いつものように大丈夫だった?つらくない?と優しい言葉を投げかけてきた。
でも今日の私は違った。いつもならありがとうと取り繕うことができるのだが、
今日だけはこみ上げる思いをぶつけざるを得なかった。
「なんで・・・なんでいつもそうやって私の問題に首を突っ込むのよ…!
そうやってお姉ちゃんぶってなんでも入ってこないで!!私もう23だよ!?
いつまでも子供じゃない!!もう介入してこないでよ!!」
吐き捨てるようにそう言った。
理不尽なのはわかっている。でも三春姉は何も言わない。
それが優しさなのかはわからないが冷静な判断のできない今の私には蔑みしか感じれなかった。
三春姉の前から逃げるように背を向けて歩き出し、みんなを集めた。
そして今日は買うもの買えたしお出かけは終わりと勝手に打ち切った。
「えぇ・・・楽しみにしてたのにもう終わり?つまんないなぁ。」
ユミちゃんがそう文句を垂れる。
「・・・なら勝手に出かけなさいよ。誰も止めないわ。」
「う、うん。ごめんなさい。」
険悪な空気が流れる。
ユウ君と目が合った。ユウ君は何か言いたそうな顔をしていたが何も言わなかった。
「ユウ君何か言いたいんでしょ。言いたいことがあるなら言ってよ。」
「別に。ただそうやって言うなら好きにやらせてもらうさ。」
ユウ君は店を出て行った。
ユ、ユウ!待ってよ。とユミちゃんはユウ君を追いかける。
二人が出て行ったことを確認すると次に私は秋代とブンちゃんとカナメ君の方を見る。
私が何か言う前にブンちゃんが先に口を開いた。
「今の夏菜は見てられないわ・・・。私たちはほかの場所へ行く。好きにしていいんでしょ・・・?」
「そ、そうよ。勝手にして。」
「わかったわ・・・。」
心のどこかではブンちゃんは私の味方であり続けてくれると思っていた。
でもそんなブンちゃんにすら見放された私は独りになった。
独り、店を出ると外からは雨が降ってきた。
「あは。あはは…馬鹿みたい。」
私は自分を蔑むようにそう呟いて笑った。
横にあった鏡に映る自分の顔に生気がなかった。
雨でぬれてぺしゃんこになっている髪。
少しおしゃれして着た服も色が変色している。
「あれ?夏菜じゃん。」
顔をあげるとそこにいたのはススム君だった。
「どうしたんだよ、傘もないのにこんなところでふらふらして・・・
なにか、あったのか?」
「いや…その…。」
ススム君に話したら失望されると思い、真実を隠してウソをついて
この場は納めておこうと思うのだが何も浮かんでこない。
私が言いづらそうにしてるように見えたのか、ススム君は苦笑した。
「まさかユウとユミのことか?あいつらがなにか迷惑かけちゃったんなら俺の責任だよな。
ってか俺には言いづらいよな。そんなこと。」
「えっ?」
なにやら誤解を生んでしまったようだ。ススム君は申し訳なさそうな顔をしている。
「と、とりあえずそのまんまじゃ風邪ひくし、俺の家近くだし服乾かそう。な?」
私の手を握りそうやって優しくしてくれるススム君の優しさを足蹴にする勇気を私は持ち合わせていなかった。
その頃ユウとユミはというと・・・
「ユウ!待ってよ、速いよ!」
ユミは珍しく気が立っているユウに焦っていた。
ユミ以外の人には気が立っているかなどわからないだろう、ユウは気が立っていてもあまり感情を表に出さない。
だがユミだけが知っているのだ。ユウが気が立っているときには速足になる、誰とも目を合わさないこと。
この動作もユミ以外の人からしたら気付かないだろう。ずっとともにすごしたユミだからこそわかるのだ。
それだけこの姉弟の絆は強いのだ。
ではなぜユウが憤っていたか。ユウは夏菜と夏菜の元同僚との会話を一部始終聞いていたのだ。
そして夏菜と三春の喧嘩も。
だがなにもできなかった。いや、しなかった。
自然と夏菜のことを自分に置き換えて考えてしまったのだ。
自分がもし自分の話題で誰かに仲裁に入られたらどう思うだろう。
間違いなく、三春に怒った夏菜と同じ行動をとるだろう。
ユウが憤る理由は夏菜のその後の行動にあった。
ユミにあたったこと。これが許せなかった。
ユミがそうであるように、ユウにとってもユミは唯一無二の存在なのだ。
そんなことを考えて歩いていると後ろから殴られる。
「!!な、なんだよ。」
振り向くと泣きそうな顔をしたユミがいた。
「ばかぁ!ユウ!なんで無視するんだよぉ…。」
「別についてこなくてもよかったのに…はぁ。悪かったよ。で、殴るからには何か俺に言いたいことあるんだろ?」
「う、うん!あのね、お姉ちゃんのところへ行かない?」
ユウはあきれた、どうしてこいつはここまで人がよいのだろう。
あんな理不尽な怒りをぶつけられたのにそうやって気遣えるのだろう。
「いいのか?さっきみたいに言われるかもしれないんだぞ。」
「ううん。そんなことないよ。」
「・・・・なんで言い切れるんだよ。」
「だってお姉ちゃんつらそうなんだもん。つらくて苦しんでるんだよ?だから私たちは優しくしてあげることが大事なんだよ。
うん、そうだよ。だからいこ!!ユウ!!」
相変わらず意味のわからない理屈だなとユウは苦笑した。
でも嫌いではなかったし、ある意味的を射ていた。
「でもどこにいるのかわかってるのか?」
そう意地悪な問いかけをするとユミは想像通りのリアクションをとってくれた。
「あっ!わからない!!どうしよぉ…ユウゥ…?」
「どうしようもないな。・・・・・・ぷっ、ハハハハ!!なんだよ、その泣きそうな顔。
いいよ、探そう。探せば見つかるよな。」
「う、うん!!いこ!!」
ユミは走り出した。ユウも後に続く。
気付かなかったが雨はやんでいた。しかしユウたちが走っていた先、歩いてきた道の向こうはまだ雨が降っていた。
秋代は困惑していた。
何も文子がしゃべらないからだ。
カナメとしゃべろうにもカナメはカナメでいきなりあのような場面に遭遇したものだから
どうしたらいいのかわかっていない。
三春姉は三春姉で暗い顔をしているのだ。
秋代が現状でわかるのは私たちが向かう先は晴れているということだけ。
向かっているのがどこだかは分かっていないのだが。
そんなときである。文子が急に立ち止まってなにかを考え始めた。
「…なんで夏菜はあんな風に言ったのかしら…。」
文子は三春の方を向いて言った。これは三春が関与している、そう確信しているのだ。
文子はずっと夏菜と一緒にいた。夏菜は元々プライドが高い。
高い、と言っても謙遜さを持ち合わせているからこそ周りと調和がとれている。
自分を抑えつけている、自分に自信がないと言った方が正しいのかもしれないが。
そんな夏菜が自分の感情をあらわにするのが姉妹の話題のときである。
自分に自信がない理由に天才といわれた姉、次期覇王と期待された妹の存在があった。
自分だけなにもいいところがない、頭のいいのも並。戦闘能力も並。
そのような人間はこの世界いくらでもいる。しかし夏菜は違った。
異色のなかに常にいなければならなかった。
家族から期待されない、周りからは期待をされる。
そんな夏菜の気持ちなど誰にも理解できないほど深い闇の中にあった。
「…言えないわ。」
三春は苦しそうな顔をしながらそう、吐き出すように言った。
文子はそれ以上何も聞かなかった。
心の中で苦しいのは夏菜だけじゃないのよとつぶやいた。
秋代とカナメは理解できず、ただただ困惑しているだけだった。
「あれ?姉ちゃん達じゃん。なにやってんだ。」
ユウとユミが前から歩いてきた。秋代は内心ガッツポーズをとった。
「別になにもしていないわ…。ユウ君たちはどうしたの?」
「いんやぁ、馬鹿姉貴が姉ちゃん迎えに行くって聞かないから探してるんだ。
下手にみんな離れるのもどうかと思うしみんなで行くか?」
行こうと最初に反応したのはなぜかユミだった。
「みんなでお好み焼き食べたい!!」
このあっけらかんとした発言に緊迫した空気が壊れた。
三春も、文子も、カナメもきょとんとして、そして笑った。
秋代だけは内心ユミちゃんいいこというなぁと感心していた。
そしてあれ?いつの間にか雨が止んだやと思った。
「はい、これバスタオル。」
ススム君に家の中に案内してもらい、今バスタオルを手渡された。
好意にひたすら甘え続ける自分が嫌だったが、
それよりもススム君に申し訳ないという思いの方が強かった。
ゴメンネ、それがしばらくぶりに紡げた言葉だった。
えっ?とススム君が神妙な顔つきになる。
一度言葉が生み出さればそこからはすらすら出てくる。
「だってさ、私みたいなののためにここまでしてくれて…。
迷惑、だよね。」
ハハッと小さく笑うも、ススム君は何も言わない。
いづらい空気になってしまった。
この沈黙すら痛々しい。立ち去りたいと思うほど。
「私、帰るね。これ、ありがとうね…。」
そそくさと立ち上がり部屋から出ようとする。
ガッと腕をつかまれる。
「夏菜。どうしたんだよ。」
「離して…。」
「離すもんかよ。」
「離してって言ってるでしょ…。」
「夏菜が心配なんだ。離さない。」
「は、離してよ!!」
ベチン!とススム君の頬を思いっきりビンタをしてしまった。
「あっ…ゴメン。」
ススム君はイテテと頬をさする。
そして、笑ってこちらを向いた。
「落ち着けって、な?落ち着いて、座ってくれ。」
「…。」
ススム君にそう言われると少しずつ落ち着く自分がいた。
それでも座れなかった。座れる勇気はなかったのだ。
するといきなりススム君に抱擁された。
「!?」
「辛いこと、あったんだろ?俺の胸なんかでよければいくらでも貸す。
秘密も守る。だから…泣きたいときは泣けばいいんだ。」
「・・・・・。」
「・・・・・うぅ。」
「・・・・・・・うぅぅ…。」
「・・・・・・・・うわぁぁぁぁぁぁん!!」
泣いた。声がかれるくらい泣いた。
怖くて泣いたことならある。
でも辛くて泣いたのは初めてだ。
今までどれだけ辛くても笑っていようって思ってた。
泣いてもつらいのは変わらない。なら笑おう。
そう心がけていたからだ。
そうすれば人に迷惑をかけることもない。心配もかけない。
それでいいと思ってた。
「うぅ、ヒック、ヒック…うぇぇぇ…。」
でも笑えば笑うほどつらい自分がいた。
それを抑えている自分がいた。
誰かに理解してほしいと密かに期待する自分もいた。
そんな自分を今はじめて解き放った。
ススム君は頭をなでながら優しく話しかけてくれた。
「自分見せるのって怖いよな。
俺もさ、偉そうなこと言ってるけど憶病なんだ。
みんなに嫌われたくない、でも自分を持ちたい。
自分を見せたら嫌われるんじゃないかって。
でもさ、そんなの辛いだけなんだよな。
本当に大事なのは、自分を見せていても、それでも一緒にいてくれる人なんだよな。
…なぁ、夏菜。俺はお前のそういう存在になりたい。」
「ヒック、ヒック・・・ススム君はぁ、そうだよ。十分、そうだよぉ…。」
「・・・・ありがとう。」
「なんかスッキリしたよ。」
数分間ススム君は頭とか背中をさすっていてくれたから落ち着いた。
「そうか、ならよかった。」
「・・・・。」
「・・・・。」
先ほどとは違う空気の沈黙。
お互いその場の展開上あんな風になっていたが
改めて考えるととてつもなく恥ずかしいことをしていたのだ。
「「あのさ・・・!!」」
さらにきまずいことに同じタイミングで話し始めてしまった。
「す、ススム君からでいいよ!」
「いやいや、ここはレディーファーストで、夏菜から。」
「…じゃあいい?」
どうぞどうぞとススム君は小さく照れ笑いをしながら言う。
コホンと咳払いを最初にし、私は話し始めた。
「あのね、なんであんな風になっていたかというと・・」
私はヤンさんのお店での出来事をすべて話した。
元同僚から言われたこと、それよりも姉に助けられたことが許せなくて
ついつい怒ってしまったこと。そしてそのイライラを他の人にぶつけてしまったこと。
ススム君は最初から最後までちゃんと聞いてくれた。
「そっか…。おれの話をしてもいいかな?」
どうぞどうぞとススム君のまねをする。やめろよとススム君は苦笑した。
「俺の先輩が死んだって話をしたよな。それな、俺のせいなんだよ。
当時の俺はちょうど慣れ始めたときでさ。魔物くらい一人で倒せると思ってた。
いつもいつもその先輩はそんな俺は制止してくれてたよ。
今の俺だったらそれに感謝できる。でも当時の俺はそうじゃなかった。
迷惑だったんだ。耳障り、とさえ思ったよ。
それでだ、その先輩の抑えを振り切って一人魔物の討伐に出かけたんだ。
大事なことを忘れてたんだ。なぁ夏菜。魔物討伐に必要なことは何だと思う?」
「えっ?う~ん・・・自分の力量との差を考えたりすることかな?」
「正解。情報収集は常識だった。でも俺は怠った。
結果はボコボコにされたよ。死を悟った。
最後の一撃を見舞われるその時だ。
その先輩が俺を押したんだよ。そして魔物による攻撃は先輩に当たった。
先輩は打ち所が悪くて、即死。
次の日先輩の葬儀が行われた。
俺だって死にかけてるからな。本当だったら入院、絶対安静が必要だった。
でも葬儀に出たいと無理を言って出たよ。
先輩の家族は泣いていた。知り合いの人も泣いていたよ。
先輩の命は非常に重かったんだ。・・・いや、命自体の重さを知ったよ。
先輩のお父さんお母さんに謝りに行ったんだ。
そしたら大切な御子息を守れて家族皆喜んでおりますって言われたんだ。
・・・そんなわけないと思ったよ。
それから体が治って、何度も家に行った。返答は毎回同じ。
最後に行った日、思い切って聞いてみたんだ。嘘じゃなくて本当の気持ちを教えてくださいって。
そしたら思いっきり殴られた。何度も何度も殴られた。
先輩・・・結壱って言ったんだけど、殴りながら結壱、結壱はって呟いてた。
俺は俺の命でいいなら差し上げますって言ったよ。
そしたら今度は首根っこつかまれた。
そして本当に私たちに謝りたいなら息子が守ったその命を大切にしろって怒鳴られた。
守られるってつらいんだよな。でもさ、
ひとりで人間生きていけるわけないじゃないか。
だから辛かったら助けてもらってもいいって俺は思うぞ。
ってまた夏菜泣いてるのかよ…。」
ススム君の話を聞いてついつい泣いてしまった。
「うぅ・・・そんな悲しい話があったなんて。
でもススム君私なんかに話してよかったの?」
「夏菜だから知ってほしかったんだ。」
「へぇ~実は私のこと好きだったり?」
そんな冗談をかます。理想の答えはそんなわけあるか、みたいな照れ隠しだった。
正直、そんなノリのような気持ちで問いかけたのだ。
ススム君はほぼ即答でうんと答えた。
一瞬何が起きたか理解できなくなる。
そんな時人間は無心で今何て?ともう一度問いかける。
そして俺はお前が好きだよと先程と同じ内容の言葉が返ってくると
その時やっと内容が理解できる。
「えぇぇぇ!?」
「うん?なんだ、冗談で言ったのかよ。
俺はずっとお前のこと好きだったよ。おまえは気づかなかったみたいだけど。」
「わた、私のどこが、ってかえぇぇ!?」
「夏菜って昔から人が気付かないとここで気配りしてたじゃん?
そういうところがいいなって思ってたよ。あとかわいいし。」
「・・・・ホント?」
「あぁ。三姉妹の中で一番かわいい。」
ボンと音が出るくらい顔が真っ赤になる。
返答に困っているとススム君の携帯が鳴りだした。
『もしもし?ススムだけど。』
『あっ、ススムさん、ユウです。姉ちゃ…夏菜を知りませんか?』
『夏菜?なら俺の家にいるよ。大丈夫。落ち着いたみたいだから。』
『そうですか、ありがとうございます。』
姉ちゃんいるってさと言うユウの声が携帯の向こうの方から聞こえてくる。
夏菜はたくさんの子に好かれているんだなとススムは安心した。
『えっと…みんなでお好み焼き食べに行こうって話になったんです。
万房に来てくれってお伝えください。』
『あぁ、わかった、伝えとくよ。あ、ユウ。』
『は、はい。』
『夏菜のもとでしっかり働けよ?』
『…はい、了解しました。では失礼します。』
ピッと電話を切る。夏菜は何かを決心したような顔になっていた。
「ス、ススム君!!」
「う、うん?」
「付き合おう!!」
「・・・・へ?」
「ススム君となら健全に付き合えると思うんだ!!」
ススムは夏菜なりにいろいろ妄想全開で考えてたんだろうなと苦笑する。
そして、よろしく頼むなと頭をなでた。
うぅと小さく唸る夏菜。
ススムは心の底から夏菜を手放したくないと感じた。
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