Polymnia

Polymnia

戯曲「おもいあい」1幕目


   セミの心地よい鳴き声が公園で響いている
   コーシローが本を読んでいる
   長い沈黙
   タクヤ・トモミ、出る

タクヤ  よ!
甲子郎  あ。
タクヤ  悪い悪い。
甲子郎  そんなことないよ。
トモミ  何読んでるの?
甲子郎  え、ただのヒマつぶし(本をしまう)。
タクヤ  やっぱり、待ってたんじゃないかよ!
甲子郎  そんなことないって(笑)
トモミ  ホントに?
甲子郎  何?え、何?
タクヤ  あ、そうだ渡すモンがあったんだ。
トモミ  何?
甲子郎  あ、新しいの?
タクヤ  そ、新作「サンタのいない夏」読んでくれるよな。
甲子郎  うん。あ、でも、タクちゃん、ゴメンちょっと今日、用事あるから…
タクヤ  え~、そうなのかよ。
甲子郎  ゴメン、だから今日は…。
タクヤ  じゃあ、家で読んでくれよ。
甲子郎  う、うん。
タクヤ  え~っと(カバンを探す)あ!そうだ、家だ!
甲子郎  あぁ、今日は、ムリだね
タクヤ  家から取ってくるからさ、待っててくれよ。
甲子郎  いいけど、なるべく急いでね。
タクヤ  分かってるって。

   タクヤ、ハケる(上手へ)

   トモミ、甲子郎を気にし、座る

甲子郎  ど、どうしたの?(座る)
トモミ  甲子郎さぁ、アメリカ行くんだって?
甲子郎  え!何で知ってるの?
トモミ  兄さんから聞いた。
甲子郎  あぁ、しゃべっちゃったんだ。 
トモミ  …。
甲子郎  …。
トモミ  いつ…帰ってくるの?
甲子郎  わかんない。お兄さんの転勤についていくから。
トモミ  いつ終わるの?
甲子郎  さぁ。
トモミ  でもさぁ、途中で甲子郎だけ戻ってくればいいんじゃない?
甲子郎  だよねぇ。
トモミ  どうしたの?
甲子郎  イヤね、なるべくたくさん向こうに居たいかなぁって。
トモミ  あ、そっか。
甲子郎  ごめん。
トモミ  でも…また戻ってくるんでしょ。
甲子郎  多分ね。
トモミ  良かった。(立つ)
甲子郎  あのさ!
トモミ  何?
甲子郎  タクちゃんにも言ったほうが良いよね?
トモミ  え、まだ言ってないの!?
甲子郎  うん。
トモミ  なんで?
甲子郎  だってさ、僕の勝手なんだよ。
トモミ  は?
甲子郎  僕がワガママでアメリカに行くなんて言ったら…
トモミ  何言ってんのよ。
甲子郎  とてもとても。
トモミ  じゃあ何も言わずにお別れするの?
甲子郎  それはイヤだ…
トモミ  言わないのはナシでしょ。
甲子郎  そうだよね…。うん。言うけどさぁ
トモミ  当然でしょ。
甲子郎  僕が言うから、トモミちゃんは絶対に言わないでよ。
トモミ  はいはい。
甲子郎  よし!フ~。

   タクヤ、出る

タクヤ  おぉい!
甲子郎  あ、あのさ!
タクヤ  コレ「サンタのいない夏」。頼むぜ。
甲子郎  あ、あの、タクちゃん。
タクヤ  今日用事あるんだよな?
甲子郎  え、あ、うん。
タクヤ  でもこれだけは言っておきたいんだけど。
甲子郎  あ、何?
タクヤ  花火大会、今年は28日にあるんだって。
甲子郎  え!?28日…!土曜日だよね?
タクヤ  確かな。どうかしたのか、甲子郎。
甲子郎  あぁ、ゴメン28はちょっと。
タクヤ  は?なんだよ、花火大会だぞ!行けないってのかよ。
甲子郎  ゴメン。用事が。
タクヤ  なんの用事だよ。花火大会より大事なんだろうな。
甲子郎  う~ん。どっちも大事なんだよねぇ。
タクヤ  じゃあ花火大会に来いよ。
甲子郎  あぁ…っと。
タクヤ  まず、用事ってなんだよ。
甲子郎  あ、まぁ自分勝手なんだけど…。
タクヤ  だから、来いって。
甲子郎  えっと。
トモミ  もう止めなさいよ。用事があるって言ってるんだから。
タクヤ  トモミは黙ってろよ。
トモミ  いいじゃない!
タクヤ  なにぃ。
甲子郎  あぁ、今日も用事あったんだ、ごめん。じゃあ。
タクヤ  え。おう…。またな。
トモミ  バイバイ。
タクヤ  なんなんだ。
トモミ  まぁ、ムリに聞く必要もないでしょ。
タクヤ  まぁな。オレも帰るわ。またな
トモミ  バイバイ。

   タクヤ・トモミ、ハケる(上手へ)

   暗転

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