「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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Polymnia
戯曲「異世界日誌」後半
ヘイト ハァ。
ルイ・アークレイト、出る
ルイ あ。
ヘイト え、ヒト?どうしてこんな所に。
ルイ こんにちは。
ヘイト やぁどうも、僕はヘイト。キミ達は?
ルイ ルイ。
アークレイト アークレイトだ。
ヘイト そうかそうか、よろしくね。いやぁヒトと話すのって久しぶりだなぁ。
アークレイト その気持ち、僕にも分かるよ。僕も最近までヒトに会わなかったから。
ヘイト でも、今はそんなことないみたいだね。
アークレイト あぁ、今はルイを元の世界に戻すために旅をしているんだ。
ヘイト 元の世界って。
ルイ 私、<人間の子>なの。
ヘイト あらぁ、じゃあ寂しかったでしょ、親や友達に会えなくなって。
ルイ 寂しくないよ、アークレイトがいるから。
アークレイト …。
ヘイト そうかぁ、2人は親友なんだね。
…
ヘイト 僕には友達なんかいないんだよ。
ルイ 何で。
ヘイト こんなヘンテコな森、誰も来やしない…
アークレイト 自分から会いに行くのはどうだ。
ヘイト 出られないんだ。歩いても歩いても、同じ場所に戻っちゃう。
アークレイト 迷ってしまうわけだな。
ヘイト だからずっと独りぼっちだったんだよ。
ルイ 私も分かる。私も友達いなかったからさ。
アークレイト いるんだろ、キミの実力を認めない友達が。
ルイ え、そんなこと言ってないよ。それに私を認めない人なんているわけないよ。
アークレイト …この前の望みのせいだ。
ヘイト え、どうかしたの。
アークレイト すまないが、少しだけ待っていてくれ。
ヘイト 分かったよ。
アークレイト …ルイ、やっぱり記憶はなくなっているんだ。
ルイ そういう話はもうやめにしない?いい加減うんざり。
アークレイト 大事なことだ。
ルイ どうだって良いよ。
アークレイト 記憶が全てなくなれば、自分が何者であるかも忘れ、旅の目的も忘れ、元の世界に帰れなくなる。
ルイ そんなに帰したいの。
アークレイト どういうこと。
ルイ 私がここにいたら迷惑だから、早く追い出したいわけね。面倒くさがってるんじゃないの?私の世話しながら長い旅に付き合うのが。じゃあそうハッキリ言えば良いじゃない。
ヘイト ちょっとちょっと、喧嘩はダメだよぉ。2人は親友なんだから。
アークレイト 僕のこと、そんな風に思っていたのか。
ルイ …。
ヘイト はいはい、仲直りの握手。
ヘイト、2人を握手させる
ヘイト 良いなぁ、僕も友達欲しいなぁ。
アークレイト …そろそろここを出ようか。
ルイ そうだね…
ヘイト え、もう行っちゃうの!
アークレイト 旅の途中だからな。
ルイ バイバイ。
2人、ハケようとする。
ヘイト ちょっと待ってよ!
立ち止まる
ヘイト 行かないでくれよ、もっとお話したいよ。
ルイ でも、私達、行かなきゃいけないから。
ヘイト そんなこと言わないで、もう少しだけ。
ルイ すぐに行かないと。
ヘイト 何で。
ルイ え。
アークレイト 記憶がなくなりかけているんだ。分かってくれ。
ヘイト やだよ。やっとヒトに会えたと思ったらもう行っちゃうなんて、僕にはとても耐えられない。お願いだからもっとここにいてくれよぉ。
アークレイト カンバルダ様に助言をもらわなければいけないんだ。
ヘイト そんな…(泣く)
ルイ アークレイト、先行ってて。
アークレイト もしかして──
ルイ 信用できないの。
アークレイト 分かった。
アークレイト、ハケる
ルイ ヘイト。
ヘイト 何だよぉ。
ルイ 寂しい?
ヘイト そりゃもう。
ルイ 私が助けてあげようか。
ヘイト 本当!
ルイ もちろん、よく聞いててよ。
ヘイト 助かるよぉ。
ルイ あなたは頭が空っぽになる。空っぽになってなんの感情も持たなくなる。怒りも憎しみも悲しみも。
ヘイト 悲しみも
ルイ そう、完全な生命体になれる。…ほら、喜びなさいよ。…うれしくないの…私が、あなたを救ってあげたんだよ!…感謝とか、しないの。……そりゃそうか。
ルイ、ハケる
場面転換(ヘイト、ハケる。ルイ・アークレイト、出る)
アークレイト この頃、ルイがまるで別人になってきた。スパンクのときが最後だったはずだが、これまでより遥かに早く変わってきている。もしかして、僕のことを忘れてしまうときが来るのだろうか。早いところ、カンバルダ様の所へ行かなければ。
ルイ この旅ってあとどれくらい。
アークレイト さぁ僕にも分からないな。すぐ終わるかもしれないし、まだまだ終わらないかもしれない。
ルイ そんなことは知ってる。
アークレイト あぁ。
ビショップ、出て、ルイの剣を盗もうとする。
ルイ 何!
アークレイト 止まれ!
ビショップ …。
ルイ あんた…何してるの。
ビショップ 申し訳ございません!つい、魔がさしてしまいまして!
ルイ とにかく、それ返して。
ビショップ はぁ。…おや、あなた様もしや<人間の子>では?
ルイ 分かる?
ビショップ あなた様の気品を見れば一目で分かります。私、一度でも良いので<人間の子>様にお目にかかりたいと思っておりました。
ルイ 私みたいな。
ビショップ はい。
アークレイト もう良い。さっさと立ち去るんだ。
ルイ 何で。反省してるじゃん。
ビショップ 申し訳ございません。私、一生の恥と悔やんでおります。
アークレイト 信用できない。
ルイ …。私、ルイね。あなたは。
ビショップ 私、ビショップと申します。あなた様にお会いできて感激しております。
ルイ そんな感激するほどのことじゃないよ。
ビショップ いえ、一生分の幸せでございます。
ルイ そう言ってくれると、何かうれしいな。
ビショップ ところで、つかぬことを伺いますが、<人間の子>様が望みを叶えられるというのは本当ですか。
ルイ 本当だよ。
アークレイト おい、お前、それを聞いてどうするつもりだ。
ビショップ いえ、古くからの言い伝えの真偽を確かめたいと思いまして。
アークレイト ダメだ。やはりお前は立ち去れ。
ルイ ねぇアークレイト、そこら辺見回りしてきてよ。
アークレイト 何のためだ。
ルイ ビショップみたいな盗人がまだいるかもしれないでしょ。
…
アークレイト 行ってこよう。でも──
ルイ 分かってる!!分かってるよ…何回も何回も。
アークレイト すぐ戻ってくる。
ルイ ありがと
アークレイト、ハケる
ルイ 何でも言いなよ。叶えてあげるから。
ビショップ とんでもない!私めが、あなた様のお力に甘えてしまうのは…
ルイ 遠慮はいらないよ。
ビショップ いえ。…ですが強いてあげれば…。
ルイ 言ってみて。
ビショップ あなた様の旅のお供につきたいと思っております。
ルイ そんなことか…。
ビショップ 勝手なお願いですが聞き入れては頂けないでしょうか。
ルイ それはこっちからお願いしたいぐらいだよ。他にはないの。
ビショップ ございません。旅のお供ができるのが何よりもの幸福。
ルイ なら仕方ないか。
ビショップ ただ、心配なことがございまして。
ルイ 何!
ビショップ 私の力ではあなた様をお守りできないかもしれません。
ルイ …。そうか、じゃああなたを強くするってのは?
ビショップ なるほど!それは名案
ルイ じゃあ決まり。ビショップはこの世界で一番強くなる。そしてこの世の誰にでも打ち勝てるようになる。
ビショップ おぉ、力がみなぎるようです。
ルイ これで最高の人間だよ。喜びな。
ビショップ はぁ。(笑う)
アークレイト、出る
アークレイト 何があった!
ルイ 何だ、もう帰ってくるのか。
アークレイト ルイ。お前!ルイに何をした!
ビショップ いえ、私めは何も。
アークレイト 望みを叶えたのか。
ルイ だったら何。
アークレイト ルイを騙したんだな。
ルイ 何言ってるのアークレイト。ビショップはね、私の素晴らしさを理解してくれる本当の親友なの。その見返りをあげて何が悪い。
アークレイト 目を覚ませ、キミはこいつの口車に乗せられたんだ。
ルイ 黙れ…
アークレイト 黙らない。お前、ここから立ち去れ、二度とルイに近づくな!(剣を向ける ルイが近づくと刺しそうな空気)
ビショップ ん。
ルイ アークレイト!
アークレイト ルイがどんな望みを使ったか知らないが、素手で勝てる程僕はやわじゃない。
ビショップ く、くそう。
ビショップ、ハケる
ルイ ビショップ…
アークレイト どうしたんだ。
ルイ いつもいつも余計なことを…
アークレイト 正気に戻れ、今のキミはキミじゃない。
ルイ 成長したんだよ。
アークレイト 成長。キミは成長なんかしちゃいない。むしろその逆だ。
ルイ よくもビショップを。…本当にこの剣が役に立つときが来るなんて。
アークレイト え、本気で言ってるのか。
ルイ 本気だよ。
戦闘開始 アークレイトは防御だけ。
アークレイト 僕はキミとは戦わない。
ルイ 私は強くなる。ビショップよりももっと!
アークレイト 僕達が争う理由なんてあるのか。
ルイ 悔しかったんだ、私がもてはやされるのが、そうなんでしょ。それを妬んで、ビショップを追い出したんだ!
アークレイト それは違う!
ルイ 違わないね!
アークレイト こんな調子では、元の世界には帰れないぞ。
ルイ 私には望みがある。それさえあればここの支配者になれるんだ。
アークレイト どういう意味だ。
ルイ もう元の世界には戻らない。
アークレイト え。
ルイ 私は、次の一撃でアークレイトに勝つ。アークレイトはそれを決して避けられない。
アークレイト …。
アークレイト、切られて倒れる。
ルイ はぁはぁはぁ…!(頭痛)ケガしてる。
ルイ、日記を拾い上げてハケる
ハケている間に剣を袖口に置いておく
場面転換(アークレイト、演技しながらハケる)
ルイ 何も覚えていない。自分の名前とカンバルダ様に会いに行くということ以外は。この日記を読み返してみると、どうやらアークレイトというヒトと旅をしていたらしい。どうして今はいないのだろうか。思い出そうとすると、頭がおかしくなりそうだ。
ルイ 私はどこまでもどこまでもひたすら歩いた。もうどのくらいになるだろうか。言葉では表すことはできないと思う。この日記によると私はルスード=ルフィアのヒトではないらしいが、イマイチ実感できない。
ルイ ずっと一人でいると、寂しくなってくる。アークレイトというヒトはどこにいるのだろうか。一度、会ってみたい。
ルイ はぁ(歩いている)
カンバルダ 何者だ。
ルイ 誰。
カンバルダ <人間の子>と見えるが。
ルイ らしいです。あなたはもしや、カンバルダ様。
カンバルダ いかにも。ルスード=ルフィアを統べるカンバルダである。
ルイ 私、あなたに会うのが目的だったんです。
カンバルダ 元の世界に戻りたいのだな。
ルイ 分かりません。
カンバルダ 嘘をつくでない。私には分かる。
ルイ はぁ。
カンバルダ まず、帰り方を教える前に、お前がここに連れてこられた理由を話そう。
ルイ お願いします。
カンバルダ これまでの旅で分かったと思うが、この世界は荒れておる。
ルイ はい。
カンバルダ そこでルスード=ルフィアは、<人間の子>を連れてくることを考えたのだ。
ルイ なぜです。
カンバルダ ルスード=ルフィアの栄養源は<人間の子>の思い出だからだ。
ルイ 栄養源…
カンバルダ ルスード=ルフィアはこの世界で、望みを叶えさせることを餌に、<人間の子>から思い出を奪うのだ。つまり、欲にまみれた<人間の子>ほど望みをたくさん使い、ルスード=ルフィアの復興に貢献することができるのだ。
ルイ じゃあ私はただ利用されてたの…
カンバルダ そういうことだ。お前は支配者になることなど不可能。お前がルスード=ルフィアの思惑に支配されていたのだ。
ルイ …どうすれば…どうすれば元の世界に戻れるの!
カンバルダ お前にはとうていできないことだ。
ルイ 教えてください。
カンバルダ 望みを使わない<人間の子>、つまり利用価値のない<人間の子>になれば解放されるであろう。
ルイ どういうことです。
カンバルダ 欲がなく、他人に愛情を注げる<人間の子>になれば良い。
ルイ 愛情…何ですかそれ。
…
ルイ カンバルダ様。
場面転換
ルイ 愛情が何なのか分からないままカンバルダ様は消えてしまった。記憶さえあれば愛情の意味も分かるのに。…。本当に分かっただろうか。
ルイ …。
ビショップ、出る
ビショップ …!ここにおられたのですか!随分お探ししました。
ルイ あなたは。
ビショップ 何と嘆かわしい。忘れてしまわれたのですか。
ルイ 私、記憶が抜けてるの。
ビショップ さようですか…。私はあなた様の弟子にして真の親友、ビショップでございます。昔はよくあなた様とともに旅をしたものです。
ルイ そうだったんだ。
ビショップ そしてよく私の他愛もない望みを叶えてくださったものです。
ルイ 覚えてないな…
ビショップ 実は私、新しい望みができまして──
ルイ 残念だけど…望みは叶えられないの。
ビショップ …今なんと。
ルイ 私、ここから出るために、望みは使えないの。
ビショップ ここから出る必要がおありですか。私がいつもあなた様にお使えするのですよ。何に不満があるのです。
ルイ 嫌なものは嫌なの。
ビショップ どうしてもと言うのなら──(剣を構える)
ルイ え。
ビショップ お前を探すのにどれだけの時間と労力を使ったことか。
ルイ し、知らないよ…待って…(色々怯える)
アークレイト、出る
アークレイト やめろ!!
ビショップ あなたは…
アークレイト ルイから離れろ。(剣を構えている)
ビショップ 良いでしょう。あなたには随分と苦汁をなめさせられましたからね。
2人、戦う(ビショップ、やや優勢)
ルイ ………。負けないで!!
アークレイト、勝つ
ビショップ 信じられない…
アークレイト さぁ、消え去れ!
ビショップ くそぅ。
ビショップ、ハケる
アークレイト …(疲れている)。久しぶりだね。どう、ケガはないかい。
ルイ 私、何も知らないの。あなたのことも、自分のことも。
アークレイト まぁ、無事で良かった。…僕はアークレイト。キミはルイ。
ルイ アークレイトさん…
アークレイト アークレイトさんじゃない。アークレイトだよ。
ルイ あ…
アークレイト どうしたの。
ルイ 分からない。でも何だか懐かしくて、ホっとする。…どうしてここに。
アークレイト 約束したろ、キミを元の世界に戻すって。
ルイ 私そんな約束覚えてない。
アークレイト そうか…
ルイ でも、あなたは覚えててくれたんだ。ありがとう。
照明、著しく変わる。BGM
ルイ 何これ。
アークレイト とうとう帰れるみたいだね。
ルイ え。…あ!
アークレイト 何。
ルイ 思い出した。色々。全部!あなたのことも、アークレイト…会いたかった。(近づく)
アークレイト 良かった。
ルイ この傷…
アークレイト 心配いらないよ
ルイ ごめんなさい…
アークレイト そんな悲しい顔をするのはやめるんだ。元の世界に帰れるんだから。
ルイ これだけじゃないよ──!
アークレイト 今分かったよ。ルスード=ルフィアはキミの気の持ちようで、豊かにもなれば戦争が起こってしまうこともあるようだ。だからこれからのキミしだいで、簡単に立ち直れるに違いない。
ルイ そうなの?でも、カンバルダ様は全然違うことを。
アークレイト きっとキミ自身に気づいて欲しかったんだよ。
ルイ そうだったんだ。じゃあ、帰ってから復興に貢献しないとね。
アークレイト すっかり、元のキミに戻ったね。
ルイ 全部アークレイトのおかげだよ。
…
ルイ 私達、また会えるかな。
アークレイト …いや。キミはもうここには来ない。
ルイ なんか…残念だな。
アークレイト でも、いつも見守ってるよ。遠いようで近い所からね。…もうお別れだ、元気でね。
ルイ これ、日記返すよ。もう大丈夫だから。
アークレイト (うなずく)
ルイ …バイバイ
アークレイト じゃあね。
…
ルイ 私、
アークレイト 何。
ルイ アークレイトに会えて良かった
アークレイト …僕も
元の世界に
友達 何してんの。
ルイ え、あ、うん。(辺りを見回す)
…
友達 寝てたの。
ルイ 違うよ。…全然。
友達 ん?まぁさっさと行こう。
ルイ あのさ、高橋の絵ってある。
友達 お前さ、しつこい。
ルイ 見せてくれないかな。まだじっくり見たことなかったから。(BGM)
友達 え、何だよ、急に。
ルイ まぁ、ちょっとね。
後ろにアークレイトがいる
幕降りる
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