Polymnia

Polymnia

秋の坂道4 ~悲しみはいつも唐突に~


「・・・・ぶなが!!」
「!?まさか敵か!?」
「信長!!貴様を討つ!!」
「くぅ!!こしゃくなたかが光秀のくせに!!」
「はい!!カット!!」
「なんでだよ!?迫真の演技じゃないか!?」
「そんな台詞はないよ、蕗。」
「最悪~私の演技潰した~」
「そういう渚ちゃんもおかしかったよ?」
「えっ?あはは~・・・ごめんなさい」

[秋の坂道 ~悲しみはいつも唐突に~]

「ふぅ~ただいま。」
瑞希の劇練習はスパルタだ。
声が小さいだの、動きにリズムがないだの、言葉が棒読みだの・・・
おかげでもう声がからからだし、筋肉痛だ。
「おかえり~♪今日はご飯たいといたよ。」
「おっさすが俺の自慢の妹♪気が利くねぇ。お兄ちゃん感動!!」
「・・・・いいから早く家のドア閉めてよ。そんなこえだす気違いが
私の家にいるだなんて思われたくないから。」
あの~一応私の家ということになってるんですが・・・・
「そんなことより早くご飯作って~」
「はいはい。」
じゃあ先に父さんたちに帰ってきたこと伝えなきゃ。
父さん、母さん元気?
俺は少しだるいかな。
雪菜はいつも通り元気です。
すこし落ち着きとか、色気が出てきてもいい頃だと思うんだけどね。
まあ楽しくやってるよ。
じゃあ。そろそろ飯作ってくるよ。

「ほら雪菜!!飯だ。飯。」
「はいは~い。あっ今日は私の好きなアジの干物じゃない!?さっすが~」
「そうだろう~俺が食べたかったんだよ。」
「とにかくいただきま~す。」
「(モグモグ)そういやぁお兄ちゃん、風邪治った?」
「(モグモグ)いんや。まだだるいかなぁ。」
「(ゴクン)ふ~ん。まぁ今日も早くねなよ?皿洗いはしとくから。」
「ん。ありがとう。じゃあ今日はもう寝るよ。」
「うん。お休み~」


ここは?
ん?そこにいるのは・・・・母さん!?
父さんまで・・・・なんで?
えっ?
か な し い う ん め い の な か
う ん で し ま い す ま な い 。
よくわからないけど・・・
俺は父さんと母さんの間に生まれてきて幸せだと思っているよ。
だからそんな哀しい顔しないで。
俺まで悲しいじゃんか・・・・
いままでためてた涙、流れるじゃんか・・・
せめて笑顔でいてくれよ。
それで俺を抱きしめてくれよ・・・・

「はっ!!夢か・・・・。哀しい運命の中、か。」
哀しい運命とはなんなんだろう?それにしても体がだるい・・・
今日は学校休むか。まぁあと学園祭まで1週間あるし、それまでに治すか。

次の日・・・・
ん~やっぱりだるい。熱何℃あるんだろう?
・・・・・・37,6℃か。まぁこんぐらいなら病院にいかずに寝ておくか。
ふぅ~なおるかな?
「お兄ちゃん起きた~?」
「あ~ゴメン、雪菜。今日も熱あったから学校休むよ。」
「そう?じゃあゆっくり休んでね。」
「ありがと。」
明日こそはきっと治す。みんなに迷惑かけないように。
そう、心に誓った。

でも、現実は甘くなかった。

俺の風邪は日に日に悪くなっていき学園祭の日は39℃まであがってしまった。
結局学園祭にはいけなかった。
瑞希は俺にお前が気に病むことじゃない、来年こそは二人で頑張ろう。そう言ってくれた。
渚には何回馬鹿といわれたか分からないほど言われた。でも表情は常に哀しそうだった。
俺はなんのために今まで頑張ったんだろう。
なんで俺が・・・・
そう何度も自問してしまった。
その答えが見つかるわけでもないのに。
その答えを誰かが教えてくれるわけでもないのに。
積み重なるむなしさが妙に泣けてきた。
でもあの日誓った「思い」が俺を泣かせない。
そんな俺の中には昔の思い出がフラッシュバックした。

そう、あれは13年前。俺がまだ4歳の頃。
たいして覚えてないはずなのにそのことだけははっきり覚えていた・・・
俺の両親は生前夢を追いかけていた。
母は教師。父は会社の部長・・・
二人共自分のことばかりで俺の事なんか見てくれなかった。
でも俺は悲しくなかった。
夢を追いかけてる二人の顔を見るのが好きだったからなのかもしれない。
そんな日々が続いてた。
でも・・・2月16日、俺の誕生日だ。
友達は俺におめでとうと言ってくれた。
嬉しい気分だった。
でも心のどこかで「なにか」を期待したのかもしれない。
そう・・

他でもない親にほめてほしかった。
怒られてもいい。
ただ「おめでとう」その一言が欲しかった。
その思いだけで俺は外で待っていた。
外は雪が降っていた、でも俺は待ち続けていた。
後先考えずに・・・・・
そこでその時の俺の記憶は途絶えていた。
次に目を覚ましたときはベットの上だった。
母さんも父さんも涙を止めようとせずただただ泣いていた。
「ゴメンネ」・・・そう連呼していた。
違うのに・・・
そんな言葉を俺は期待していたわけじゃないのに
二人からもらいたかったのは「おめでとう」だったのに・・・

その日から両親は早く帰ってきてくれるようになった。
母はいつの間にかいつも家にいた。
仕事は?そう聞くと母さんは笑っておやつをくれた。
なぜくれるのかは分からなかったけど
ただその時は俺にかまってもらえるのが嬉しかった。
妹も生まれた。第一印象は猿みたい。今の雪菜にはとてもじゃないがいえないが。
こんな日々が続けばいいとそんな幸せな気持ちになっていた。

雪菜が生まれて一月たった10月の満月の日。
両親は仲良く二人で買い物に行った。
俺が今日はお肉が食べたいなんてわがままいったから・・・

即死だったらしい。
相手は飲酒運転で対向車線に入っていたという。
真正面から、ドン。

悲しみはいつも唐突に
そして
儚い者を儚き物に・・・・

「お兄ちゃん生きてる~?」
夢から覚めた・・いや現実に戻された。
「・・・・あぁ」

「生きてるよ。」

「生きてやるさ・・・・」

          [~悲しみはいつも唐突に~完]

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: