「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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Polymnia
真・秋の坂道5
これと言ってなんにもない。
むしろ何もないのはおかしい・・・
いくら連絡しているからって家族から連絡もないのは。
まぁ、下手に心配しても迷惑かな。
さぁ今日のご飯は何かなぁ~ってね。
[真・秋の坂道5 ~大好きな姉への届かない思い~]
「おぅ、頑張ってるか?」
「あ、楓さん。えぇなんとか源さんの教えを生かしてですね。」
えへへと言うのが正しいだろうか、そんな感じの笑いで返す。
「それなら安心だな。・・・・おいチーフ!!」
「は、はい。なんでしょう?社長!!」
「こいつ借りてくわ。」
「「へ?」」
ついついチーフ(名前は名札を見る限り小池さんというらしい)と声を合わせて
驚いてしまった。
「へ?じゃねぇよ。こいつ借りてくんだっつーの。」
そう言って俺も指差す。
「しゃ、社長が言うなら・・・どうぞ。」
どうぞって俺は物じゃないですよ~チーフ?
そんな俺も心の突っ込みも届かず俺は連れ去られる。
「どこいきたい?」
「どこ行きたい?じゃないですよ。楓さん。いきなり連れ出して。」
「ははは、悪いな。俺が暇だったんだ。」
暇ってこの社長は・・・
「とりあえず屋上で一服するか。」
「べつにいいですよ。」
屋上に着く。
言ってた通り楓さんは胸ポケットからタバコの箱を取り出し1本口にくわえる。
お前もどうだと言わんばかりに前に突き出されるが丁重にお断りする。
「はぁ~こんなうまいもんすわないなんてお前もガキだな~。」
「そんな体悪くするだけのもの、吸いたいと思いませんよ。」
「それもそうだな。」
そういって楓さんは屋上から見える景色を眺める。
「なんで体に悪いって分かってるものを吸うんですか?」
「・・・・・・・お前保健の時間とかでならわなかったか?」
「何をですか?」
「タバコを吸う人は何か問題を抱えていたときがあるって。」
初耳だ。
「ってことはなんか昔トラブルでも?」
少し冗談交じりに言ってみる。でも楓さんは笑っていなかった。
それが本当のことであることを示していたのだろう。
しばし沈黙のときが流れる。
そのときだ。
「なぁ。」
楓さんが口を開いた。
「なんです?」
「お前の両親の話してやろうか?」
「是非聞きたいです。」
即答する自分がいる。
でも、それは当然の答えと言ってもいいだろう。
俺は母さん達のことが大好きだったんだ。だが・・・
「じゃあどこから話して欲しい?」
「とりあえず楓さんが話に出てこないところからですかね。」
「なら話はすすまんな。」
「冗談ですよ。正直どこがいいというか・・・欲張るなら全部と言うか。」
「それが普通だよな。じゃあこんな話をしてやろう。」
そういって話し始めた・・・
「あれは今から10年近く前か、俺が19歳、姉さ・・・お前の母さんが22歳のときな。
丁度彰人さんに出会った頃だったと思う。」
彰人さんとは俺の父さんだ。確か母さんとは2つ年が離れてるから24歳だな。
「俺はな、姉さんのことが好きだったんだ。姉さんとも仲がよかった。
そんな時な、彰人さんを連れてきたんだよ。」
どんな気持ちで楓さんは父さんとであったのだろうか。
「正直こいつしんじまえって思った。」
なぜだろう?冗談に聞こえない。
「でもな、それは違ったんだ、俺なんかよりも彰人さんは姉さんのことを考えてくれてたんだ。
だから二人が結婚するって言ったとき素直に祝福したよ。
ん?なんだ。その疑いの目は。」
「えぇ~あの楓さんが素直に祝福したんですか?」
「本人の前で「あの」とか言うなよな。ホントだよ。素直な気持ちで祝福した。
でな、その2年かそんぐらい後にお前が生まれた。」
「それで?」
「お前が猿みたいでさ。小便はそこらへんにするし、大変だったんだな。」
楓さんは微笑する。
「彰人さんもすごい人だったしな。彰人さんとも何度か話したな、聞きたいか?」
「是非とも。」
「よし。1回お前が生まれてから二人で山に登ったんだ。
その時は今まで感じてた父親になった責任感って鎧を脱ぎ捨てるかのように気楽な、
いつもの彰人さんだった。
でも、そうじゃなかった。山頂に着いたときにな、こう言ったんだ。
ーなぁ楓。俺はなこの景色を蕗にも見せてやりたいんだ。
それで自然って言うものを感じて欲しい。
仕事ばっかりの俺達の分だけ俺達が忘れてる「夢を追う心」を持ち続けて欲しい。-
「すんごい親バカでさ、お前の誕生日の日なんか何あげよう何あげようって喜んで悩んでたよ。」
「へぇ~」
「そんな時お前が外で待ってて熱を出した…知ってるか?お前一週間意識なかったんだぞ。」
「そんなに!?」
そりゃあ目覚めた時母さん泣いてる訳だ。
「意識ない間ずっと姉さんはお前にごめんって言ってたぞ。確か彰人さんは少し自暴自棄
になってた気がする。」
- なぁ、楓。俺今まで蕗の父親出来てると思ってたけど、出来てなかったな。一番理解
しなきゃいけないあいつの気持ちを理解してなかった。ただ偉そうにもがき続けてただけ
だったんだな…
彰人さん…はぁ。
ボカッ!!
痛っ…楓?
あんたはいい父親だ。いや、最高の父親なんだ。そんなあんたは俺の目標なんだ…だから
そんなこと言わないでくれよ…
楓… -
「楓さんにも正論言える時期があったんですね~。」
「うるせぇ。今も正論しか言わねぇよ。」
「で、母さんはどうだったんですか?」
「む、そうだったな。
姉さんは…見てられなかった。」
「えっ…!?」
「あの人は正直最初は子供なんか欲しいと思ってなかったんだ。だから自分の夢を追い求
めてた…。なぁ、蕗?そんなのおかしいと思うだろ?」
「はい…」
「ところがな、今はそうみてくれる社会じゃないんだ。子供を作るのが人生の成功者じゃない。
どれだけもうけれるかが社会の勝ち組か負け組かを左右してるんだ。」
「楓さんのいってることは分かります・・・でも。」
でもやっぱりそんなの哀しい。愛ってなんなんだろう?
「ある意味夫婦仲もよくなかったんだろうな、離婚しようなんて片方が言ったら即離婚。
そんな感じだった。」
俺は言葉を失った。そりゃあそうだ。
仲がよかった思い出しかない二人がそんな状態だったなんて・・・
「お前がいたからだ。」
「え?」
「お前が二人を引きとめた。」
「どういう・・・ことですかね?」
「お前が外で待ってくれてたときに姉さんは気付いたそうだ。
自分はなんて馬鹿な真似をしていたんだろうって。なんでこんな
か弱い子供のことすらみてあげれなかったんだろうって。
でな、そこから姉さんはかわった、彰人さんもより家事、教育の面でサポートするようになった。
そして雪菜が生まれた。そのときが多分お前ら並原家のなかで一番幸せだった時期なんだろうよ。」
そういって楓さんは口にためてたタバコの煙をふぅーと吐く。
「・・・・両親の事故死。」
「そう・・・だな。
お前は即死だと思ってるみたいだけど即死だったのは姉さんだけだったんだ。
彰人さんは死にかけてただけだった。」
- 彰人さん!!彰人さんしっかりしてくれよ!!!
楓・・・?ははっ悪い。俺もう助からないや。
そんなこと言わないでくれよ!!もっと生きてくれよ!!なぁ!!
うるせぇ。正直蕗と雪菜を残していきたくないさ。もっと将来みたいさ。
なら!!!
でもな、体が分かるんだよ。もう死ぬんだって。そしてお前の姉さんも死んだんだって。
彰人さん・・・・
蕗と雪菜はお前に託す。
俺には無理だよ・・・あんたじゃないと・・・
楓、お前は立派だ。そして俺の自慢の弟だ。
え・・・!?
最高に愛してる、楓。そんなお前に出来ることは姉さんを天国で幸せにしてあげることだけだ。
・・・・・・
楓・・・最悪なのは分かってる。でもお前しか・・・
早く姉さんを迎えに行ってやれよ。はやくしないと姉さん他の男にさらわれちゃうぜ。
俺の自慢の姉だからな。
ぷっ!!ははっはは・・・
蕗たちは任せて。だから・・・
また会ったら笑顔でおかえりって言ってやってくれ・・・
「最期彰人さんは話さなかった。でもくちではこう動いてた気がする。あ・・・」
「もういいですよ。これいじょう聞きたくないですよ・・・。」
涙が止まらない。止まってくれない。
「ならこの話は終わりだ。」
いままでの雰囲気をなくすような楓さんの笑顔。
そんな楓さんがすごくて・・・
泣いてる自分が恥ずかしくて・・・
鼻水たらす自分も恥ずかしくて・・
「じゃあそろそろお昼時間ですし飯食べに行ってきます。」
「おぅ。・・・これは俺の勝手な想像だがな、お前の母さんも父さんも幸せだと思うぞ。」
「へ?」
「こんな立派に息子が育ってくれてな。」
返答できない・・鼻水すするおとしか出せない。
とりあえず精一杯作ることの出来た笑顔で返す。
そして俺は屋上からでた。
扉を閉めると楓さんの泣く声が聞こえた気がする。
・・・・なぁ、姉さん。俺あんたらのかわりになれてるかな?
姉さんならもう少しうまいかもな。なんたって俺独身だし。
姉さんは今でもあのとき愛せなかったこととか悔やんでるのかもしれないけど
悔やまなくていいと思う。
むしろあいつらを誇ってやってくれ。
こんな馬鹿馬鹿しい運命に翻弄されながらも生きてるんだ。
だからあの世でも笑顔で迎え入れてやってくれよ。
- 姉さん!!また蕗俺のこと馬鹿にしやがった!!
また?あんたも弱いわね~なにされたの?
俺のことじじいって言うんだぜ。
そんだけ?
そんだけ!?俺まだ23歳だぞ!?この年でじじいはきついよ~
そうね・・・あっ楓がじじいなら私はばばあかしら?
プッ!!ははははっ確かにそうだ・・グハッ!!
母さんを馬鹿にするな!!
うるせぇ!!してねぇよ!!!
わぁ~逃げろ。じじいが怒った~
こら!!待て!!・・・・なぁ姉さん、俺子供嫌いだ。
ふふふ、そうね。
あんなのの何が可愛いんだか。
そうね・・・やっぱや~めた!!自分がおんなじ立場になったら分かるわよ。
えぇ~、そこまで言ってかよ!!
じゃあヒント。子供と遊びたいならおんなじ立場だと思って触れ合いなさい。
分かったよ。
おぃ!!じじい、遊ぼうよ~
しゃあねぇな。でも遊んで欲しいなら俺のことは楓って呼べ。
分かったから遊ぼうよ~ボーウあるからこっちこっち!!
(これでいいか?)
うんうん。やっぱ自慢の弟だ。 -
[大好きな姉への届かない思い~完~]
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