「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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Polymnia
秋の坂道 Famiglia ~絶望~
少年が生まれて間もなく父母が死んでしまったのです。
なので、食事も一人、睡眠も一人でした。
いつもさみしいので、いつしかさみしいという感情が
わからなくなってしまいました。
そんな少年も朝目覚めると涙を流しています。
はっきりとは思い出せませんが、どうやら夢の中で、
大きな男と大きい女に自分が抱きかかえられていたのです。
少年の住む島には竜巻がきます。
そのため、時々いろいろな物を運んできます。
今朝も竜巻がきて、そして去っていきました。
何を運んできたかなと少年は探検をすることにしました。
しばらく歩いていると、よくわからない字で書かれた
本があるではありませんか。
手にとって読んでみますがさっぱり読めません。
しかし、一つの絵が少年の目に映りました。
そう、それこそがいつも少年が夢で見ている
男と女に抱きかかえられている小さき子なのです。
そのページにはでかでかと「愛」と書かれていました。
少年はこの読めない、「愛」というものがどんなものなのだろうと、
非常に知りたくなりました。
しかし少年がそれを知る日は来ません。
なぜなら、一人だからです。
・
・
・
「はい、今日はここまで。ほら桜。もうおねんねの時間よ。」
「はーい。」
桜がひょこっと立ち上がる。
もう目がしょぼんとしている。さすがに9時だから眠いのだろう。
「ほら、パパとお姉ちゃんにお休みの挨拶してきなさい。」
「うん、パパ!!お休み~。」
「おぅ桜。またあした遊ぼうな。」
「お姉ちゃんは・・・いたいた。
お姉ちゃ~ん!!」
桜は助走をつけて雪菜に飛び込んだ。
「あっ桜。」
「えへへ、お休みぃ~♪」
あれ?なんだろう、この疎外感。
「お休みのチュウ~」
なんと桜から雪菜の頬にキスをしているではないか!?
「はいはい。じゃあね。」
桜はその後、いつもの俺と、渚の間の布団に入り、
すぐに寝息を立て始めた。
「・・・・お兄ちゃん、妹にまで殺気立てるのやめてくれない?」
「く、くやしぃ~!!」
「どれだけ愛情もって接しているかがバレバレね。」
「なにおぅ!?俺のほうが愛情持ってるやい。」
「知ってる?かわいそうな男の話。」
「な、なんだよ・・。」
「ある男は家族のために一生懸命働きました、そのため家に全く帰れません。
久しぶりに帰ると子供が出迎えてくれました。
子供はふと聞きました。パパ、今度はいつ遊びに来るの?と。
その数日後、その男は精神的な問題か、心臓麻痺で死んでしまいましたとさ。」
「こ、こえぇ・・。」
「お兄ちゃんそれギリギリかもよ?」
「うぐっ・・・ま、まぁ俺は大丈夫だがな。
お~い、渚。明日は桜一日借りるぞ!?」
「・・・思いっきりあせってるじゃん。」
チリリリリリリリ!!!
電話が鳴る。
こういう場合、一番電話に近い人が出る。
今回は俺らしい。
俺はガチャリと受話器を取る。
「もしもし~並原です。」
「俺だよ、俺。おじいちゃん。」
この発言にカチンとくる。
このあせっているときにオレオレ詐欺電話を入れてきたこと、
そして・・・
「馬鹿野郎!!俺はまだ23だ!!」
ガチャン!!
俺を爺呼ばわりしたことだ。
「ハァハァ・・・ふぅ。オレオレ詐欺敗れたり。」
「お疲れ様、蕗君。」
「にしても・・・爺か。母さん達も桜見たかったのかな・・。」
「ちょっ、お兄ちゃん!!」
「へ?あっ!!ご、ゴメン、渚・・。」
「いいのよ、別に。そんな気にしないで。ね?
今はここの家が私の生きがいなんだがら。」
「それよりもう私は寝ようかな。
明日遊びに行くんでしょ?二人も寝たら?」
「そうしようかな。な?渚。時には休むことも大切だから。」
「そうね。じゃあ寝ましょうか。」
雪菜は階段を上り自分の部屋に入った。
それを見計らって俺は、
「なぁ、渚。」
「ん?なぁに?」
「・・・・辛いかもしれないけどこのままじゃいけない気がするんだ。」
「なにが?どうしたの蕗君。そんな暗い顔しちゃって。」
「明日尾野水家に行こう。」
俺がそう言った瞬間渚の顔色が変わる。
・・・・だから5年間話題に出さなかった。
「・・・・・。」
「な?」
「・・・・・。」
「あぁ~もう!!」
「え?」
「なんでかなぁ・・なんでお前ら家族は腹割って話そうとしない?
なんでそうやって逃げるんだよ・・・。
一歩進まなきゃ良くも悪くもならないぞ?」
「・・・・蕗君。」
「あん?」
「どんなにお父さんもお母さんがクズでも、
私のこと見捨てないでね?」
「・・・・バーカ。そんくらいで捨てるほど中途半端に愛してないよ。
約束する。どんなに不幸な結果が待ち受けていようと、
俺はお前も必ず迎えに行く。」
「アリガト、大好きよ、パパ。」
「おやすみ」
[秋の坂道 Famiglia ~絶望~]
「おはよう~♪桜ちゅわ~ん!!」
むくっと起き上がったのを見計らって俺は桜のもとに走る。
そして飛び込む。
「ふ、ふえぇぇ・・・。」
ヤバイ!!桜がなく!!
「くわぁ~!!なにが悪かった!!」
「全てでしょうが・・。」
「くそぅ、負けたわけじゃないからな!!」
「まず勝負してないから・・・。」
「パパ~。」
「ん?誰?俺?」
「そそ、蕗君。行くなら行きましょ。」
「・・・あぁ。行くか。」
「どこに?」
「そうだな、遊園地かな。いい機会だ。おまえも来い。」
「はぁ?まぁいいけど・・・。」
「よし!!じゃあ出発!!」
俺たちは騒ぎながら車庫に向かい、車に乗り込む。
その時、誰が予想できただろうか。
まさかこのような結末が待つとは・・・。
「ここ?」
「そうよ、近いでしょ?」
「そりゃあ高校一緒だったしな。許容範囲内だろ。
さぁ降りた降りた。俺車向こうに停めてくるから。」
俺は三人を下ろし、離れた公園付近に車をとめた。
その頃渚はというと・・・
「懐かしいなぁ・・・。」
自分が16年過ごした街並みも見て複雑な心境になっていた。
嫌々ながらも過ごしたこの町・・・。
「渚・・・?」
どこかで聞いたことがあるとさっと振り向いた先にいたのは
あの頃から少し老けた母の姿だった。
「・・・・やっぱり渚なのね。会いたかった。」
「・・・。」
「やっぱり怒っているのね。でもそれも仕方ないこと。
私たちね、あなたがいなくなったあとすごく後悔したの。」
「ホント?」
「ホントに決まってるじゃない。
だから、ね?お家に帰りましょう。」
騙されるな、騙されるな、私・・・。
「お~い渚。」
ここでタイミングよく蕗が来た。
「渚、そちらの方は?」
「こちらは並原蕗。私の夫。」
「夫って・・・あなた。」
「大丈夫、籍は入れてない。でももう子供もいるわ。」
渚の母はびっくりしたのを隠せないようだ。
うっすら額に汗の跡が見える。
「ま、まぁ詳しい話は家の中でしましょう。
ほら疲れたでしょ?」
「わかった、蕗君、桜、雪菜ちゃん行くよ。」
俺たちは渚の母と渚についていき、初めて尾野水家の家の扉を開けた。
外面(渚いわく)気にしているのか庭にはしっかり手入れされた跡がある。
まさか、ホントに変わったのかと少し思いかけていた時に、
ふと雪菜の言葉を思い出した。
― ホントの悪者って悪者に見えないのよね~ ―
最後まで気を抜いちゃだめだぞ、蕗。
そう、自分の心に言い聞かせるのであった。
ガチャリ
渚母が戸をあける、そのあとをずらずらついてゆく。
俺が戸を閉めた瞬間、この密室空間の空気が変わった。
くるりとこちらを見た渚母にもう外のような
付き合いやすい印象を感じることはできなかった。
(そういうことか・・・・タチ悪いな。)
「渚、そして蕗君でしたか。」
「は、はい。」
俺と渚が反応する。
「いったいどこまで私たちの家族を馬鹿にすればいいの?
あんたたちのせいで・・・」
「うちの周りからの印象はぼろぼろ、ですか。」
「!?」
「なんで渚のことを見てやらないんですか・・。
どうして周りしか見れないんですか・・・。」
「黙りなさい!!部外者が口を出さないで!!」
「お母さん!!」
「なに!?」
「・・・私、この3年間の家出の罰ならどれだけでも受けます。
だから蕗君は何も悪くないから・・・。」
「渚。・・・・お母さんも少しあつくなりすぎたわ。
決して本心じゃないの。あっそうだ、お父さんにも電話入れないとね。」
そう言って渚母は受話器を手にとり、俺たちから少し離れる。
何を言っているか聞こえなかったが、とりあえず俺と渚はホッとした。
数分後ピンポーンとチャイムが鳴らされる。
俺と渚は玄関にいた。なぜなら父が来たから出迎えに行きなさいと言われたからだ。
ガチャと扉が開く。
すると明らかに「父」と言うには若い、いや若すぎる男性が入ってきた。
「お~い、尾野水さん。この男がお宅の娘の誘拐犯ですか??」
誘拐・・・犯?どういうことだ。
「そうなの!!早く渚を助けて!!」
「この野郎!!よくもご近所さんの子供さんを!!」
腹にパンチが入った。
痛・・い。
それより・・・もどういうことなんだ・・?
「おらぁ!!ついてこいよ!!」
俺の首根っこはつかまれ、家から出されようとしていた。
「な・・渚。」
「蕗君!!ちょ、お母さん!!話が違う!!」
「黙りなさい!!あんたなんか生まれてこなければよかったのよ!!
こんな我が家にマイナスになる存在ならね!!」
ピキッ
「ちょっと待て・・・。」
「蕗君・・」
「ふざけるなよ!?」
「あなた・・・まだそんな元気があるのね。
いいのよ、110番しても。ちょっと、加藤君。」
「なんでしょうか!!」
「ボコボコにしても、彼のこと、警察につきだしちゃダメよ。」
「へ?」
「だってそんなことしたら彼の家族にも迷惑がかかるでしょ?ね?」
このアマ・・・ここでも善人ぶりやがって・・。
「わかりました!いやぁその寛大な心にはホント感動しぱなっしです。
ほら!!奥さんに感謝しろよ!!では奥さん、こいつはそとにほってくるので。」
「ありがとう、加藤君。」
「渚・・・。」
最後の力を振り絞って俺は声を出す。
「渚、約束・・・・守るから。」
「!?うん、うん・・・待ってる、待ってるから!!」
ガチャ。
出るなりいきなり殴られる。
顔、腹、そして顔だ。
もう痛みを感じない。それくらい一発一発が重いのだ。
意識が飛び始めたとき・・・
「お前さぁ何のために生きてるの?人の娘さん誘拐して。
普通の人には思えねぇ。」
「はっ。」
俺は鼻で笑う。
その仕草に男はむかついたようだ、腹にもう一発くらう。
「グハッ・・・・殴ればすっきりか?」
「てめぇ・・・。」
「いいこと教えてやるよ。殴り合いはな、力じゃない。」
「うるせぇ!!くたばれ!!」
男がパンチを振り出そうとする。
「呼吸とタイミングだよ。」
男がパンチを放つ寸前、癖で手を後ろに引くらしい。
0,1秒の世界だ。しかしここを狙われると大体は驚き手が止まる。
そしてこんなふらふらの俺のパンチもきれいにあたる。
「グハッ!!」
きれいすぎてどうやら鼻骨を折ってしまったらしい。
男は気絶した。
「ハァハァ・・・痛っ。やばい。とりあえず逃げるか。」
俺はフラフラになりながらも自動車付近まで歩く。
今俺は全てを失った。
大事な妹も・・・・・
大切な愛娘も・・・・
そして
大事で大好きな
俺のたった一人の嫁さんが・・・
そう考えた瞬間寂しさや虚しさが心の中を埋め尽くす。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ついに俺は坂道から転げ落ちてしまったのかもしれない・・・
[秋の坂道 ~完~]
~~~~~~~~あとがき~~~~~~~~~
遂に秋の坂道、3部作目が終了しました。
え~いかがだったでしょうか?
なになに?終りが中途半端?
でも秋はこれで終わりですよ~。
ってことで次回からは、
「紅葉吹雪」が始まります!!
物語は秋の坂道 Famigliaから3年後が舞台です。
予定では毎回が急展開です。
お見逃しなく!!
ではではありがとうございました。
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