Polymnia

Polymnia

紅葉吹雪 第3話


時間をみると9時5分。
急いでくれたのだろう。
息を切らしている。
「・・・・久し振り。」
「うん。」
「あぁ~その、なんだ。とりあえず、公園で座ろうか。
飲み物奢るよ。」
「アリガト。」
こうやって歩くのはホント何年ぶりなのだろう。
懐かしいような、気恥ずかしいような。
「あれから3年か。」
「いろいろこっちも大変だったよ。」
「・・・・ホントにスマン。」
「お兄ちゃんが悪いわけじゃないよ。ただ・・・予想以上にあの人たちが、ね。」
「あの後のことを教えてくれないか?」
「・・・・・・・あの後お母さまは大変怒った。
加藤・・・あっお兄ちゃんを殴った人ね。がのびてたからさ。」
「あぁ、俺の右一発でKO。」
「で、その八つ当たりがお姉ちゃんに・・。」
「渚・・。」
「・・・・ねぇ、3年前したように尾野水家にきて、助けて。」
「・・・・。」
「ねぇ!!」
「・・・・・。」
「どうして!?あんなに渚お姉ちゃんと仲良かったじゃん!!
桜のことも・・・。」
「なぁ、雪菜。どうしてかな。」
「なにが?」
「もう・・・思い出せないんだ。
渚がどんな顔だったか。昔はあんなに夢に出てきたのに。
この頃はさっぱりだ、さっぱりなんだ。出てきたとしても顔がわからない。
桜のことだってそうだ。今頃あって俺が父親だ、なんて言えると思うか?
もし信じてもらえたとしても、あいつを愛せる自信がない。」
「そんなこと…!?」
「渚との思い出が夢だったんじゃないかって思えてきてさ・・・。
ひどいだろ?でも・・・ホントなんだ。」
「渚お姉ちゃんは!!!・・・・いや、何でもない。
お兄ちゃんがそんな腑抜けになったなら、頼れないよ。」
「ど、どういうことだよ!!」
「別に。久しぶりに会えてうれしかった。」
雪菜が去っていく。
「ちょっと待てよ!」
俺は右手をつかんだ。
「!?離してよ!!」
「・・・・・。」
俺は雪菜の手を離した。
「雪菜。最後に教えてくれ。
・・・・俺は笑っていてもいいのか?」
「いいわけないじゃない。」
「!?」
「いいと思ってたの?渚お姉ちゃんを裏切った時点で、
お兄・・・蕗は一生笑う権利はない。償えない罪を償いながら生きるの。」
「はっ。」
「何笑ってるのよ。」
「そうか、やっとわかった。」
「は?」
「もう・・・尾野水なんだよな。」
「意味が分からないんですけど。」
「俺はあの日から家族のすべてを失った。」
「私は・・・・。」
「お前のほうが現実から逃げているんじゃないか?」
「違う!私は・・・」
「もう意地を張らなくていいんだよ・・・。」
「違う・・・違う・・・。」
「雪菜は人を非難するようなことなんて言わなかった。
俺の知ってる雪菜はもっと馬鹿で、でも頭良さそうに見せて、
誰よりも人のことを考えて・・・・それで、口では馬鹿にするけど、
俺のためにいつでも頑張ってたよな。
覚えてるか?俺が赤点取ったっていったとき。
あの時言ってくれたお兄ちゃんのご飯が食べたいって。
今でも時々思い出してはうれしくなってご飯を作るんだ。」
「お兄ちゃん・・・。」
雪菜は泣き出した。
そんな彼女を俺は抱きしめた。
雪菜はただただお兄ちゃんと連呼し、ごめんねともいっていた。
       ・
       ・
       ・
「俺には渚が助けれない。」
「うん。」
「でも、助けれるなら助けたい。」
「うん。」
「俺なんかでもできるかな。」
「できるよ、きっと。」
「ならさ、信じていてくれないか?」
「・・・・。あのさ。」
雪菜は立ち上がり、こちらを向いて頭を下げた。
「ホント生意気なこと言ってゴメンなさい!!」
「・・・・ふぅ。」
俺は頭をなでてやった。
「大好きな妹を許さない兄がどこにいる。」
「お兄ちゃん・・・決めた。
私もやっぱりどこか逃げてたんだと思う。
これからは運命に立ち向かう。
だから・・・・逃げないで尾野水家に戻るね。」
「そっか、その・・・なんだ。がんばれって言うのもおかしいよな。」
「大丈夫・・・でも、さみしくなったらまた『私たちの家』に戻ってもいいかな?」
「いつでも歓迎する。俺しかいないからな。」
「じゃあ行くね。今日はアリガト。」
「おぅ・・・・雪菜!!」
雪菜が俺の呼び声に応じてこちらを向く。
「照れくさくて言えなかったけど、俺はお前のことが大好きだよ。」
キョトンとした顔をし、彼女は鼻で笑った。
「プッ、26にもなってまだ何言ってるのよ。キモチワルッ。」
「うるせぇ。ほら早く行けよ。」
「はいはい、わかってますよ・・・・じゃあね。」
雪菜は本当に去って行った。
彼女も一歩進めたのかな・・・。

俺も一歩進まなきゃな。
とりあえず寒いから家に帰ろうっと。
そんな俺の後ろから心配そうに見ていた女性がいたことに俺は気付かなかった。
「先輩・・・・。」

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