「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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紅葉吹雪 第6話
なんか紙が落ちてるので拾ってみる。
そこには文字が書かれていた。
【お兄ちゃんへ。
いろいろあって3日間出かけます。なので桜の面倒をお願いします。
幼稚園への送迎・ご飯よろしくb】
・・・・・・・・・はい?
もう一度読み返してみる。
【お兄ちゃんへ。
いろいろあって3日間出かけます。なので桜の面倒をお願いします。
幼稚園への送迎・ご飯よろしくb】
桜?この寝ている女の子が桜・・・?
でかくなったなぁ。よく見れば渚そっくりだ・・・。
俺は彼女に触れようとした。しかしあと少しというところで手が止まってしまう。
それを何度も繰り返し、ある結論にたどりついた。
なぜか・・・それは自分自身が一番分かっていることで、彼女たちの平穏を奪ったのは
ほかでもない、自分だからだ。そして、雪菜にも言っている。
俺は3年前のように桜を愛せる自信がないのだ。
もう・・父としては桜を抱くことは許されていないのだ。
「う・・・うん。」
桜が寝がえりをうち、うっすらと目を開けた。
「・・・あれ?」
「あ~・・そのなんだ?」
「桜、あたし桜。」
「俺蕗。」
「5歳・・・。」
「26歳・・・。」
もうあと4年で三十路か・・・。
「幼稚園に通ってるの。」
「会社に通ってる。」
なんでまともにこんな風に返すんだ、俺。
「桜だっけか。どこの幼稚園?」
「御園幼稚園だよ。お父さんは?」
「俺は幼稚園じゃないぞ。桜。」
「そう・・・お父さんも幼稚園だと思ってた。」
どう思ってるんだ、俺のことを桜は・・・。
「とりあえず明日からも幼稚園だろ?寝ろよ。」
「うん、おやすみ、お父さん。」
「おぅ・・・ってか今何ていった?」
「お父さん?」
ブフゥ!!!
口に含んだウーロン茶を盛大に噴き出す。
「大丈夫?」
「ゴホッゴホッ!!」
10秒くらいせき込むとなんとかおさまった。
しかし半泣きだ。まぁそのくらいなんとかなる。
「お父さん?」
「顔を覗き込むな!!ほら早く寝る!!」
不思議そうに桜はしているが知ったことじゃない。
まぁ寝たからいいのだが。
はぁ・・・これからどうしようなぁ。
とりあえず楓さんに3日の有給休暇をもらった。
それ+誰にもこのことは伝えず風邪とでも言ってくれと。
家にお見舞いもいらないと。
受話器を置いたあと深くため息をつきながら、思いふけった。
・・・・やはり心のどこかでは沙紀に知られたくない気持ちがあるのだろう。
嫌われたくない。
渚のことを知ってほしくない。
こんなウソだらけの醜い俺を見てほしくない。
はぁ・・・とりあえず寝よう。
チュンチュン
ゆさゆさ・・・
「んん・・・」
「起きてよ。」
これはまさか男の夢の「幼馴染が起こしにくる!!」っすかぁ!!
もちろん起きますとも!!
ガバッ
そこには5歳の少女、桜がいるだけだった。
「・・・・・。」
「おはよう、お父さん。」
「おやすみ。」
ガサァ・・・
ゆさゆさ
無視だ無視。俺は久し振りの休み・・・
ん?なんで休みとったんだっけ?
・・・・・・・・・・・・・あっ。
ガバッ!!
「桜!!学校は?」
そう見てみるときちんとした格好だ。
あっ俺だけか。
「す、すぐ着替えるからな。」
「うん。」
ちゃっちゃと服をとり、着替える。
「さ、行こう。御園幼稚園だよな。」
こくりとうなずく。
よしいくか・・。
御園幼稚園・・・ってこんなぼろいのか・・・。
駐車場なんてものはなく、公園近くに停める。
そして子供と一緒に歩く。その距離は200mくらいだが、
運動不足の俺にはキツい。
「お父さん、大丈夫?」
「おぅ、大丈夫だ。でもな。はっきり言う。俺はお前の父さんじゃない。オジサンと呼べ。」
「・・・お父さんはお父さんだもん。」
「いやだから・・・」
「お父さんだもん・・・。」
あぁ!!泣くなんて卑怯だ・・・。
「わかったよ・・全く。」
後ろからちょこちょこ付いてくる。
振り向いて手を握ることができた。
しかしなぜか手が出ないのだ。
やはり心の中で勝手に止まるんだろうな・・・。
あぁくそ!!なんであいつらの顔が浮かぶんだよ。
胸くそ悪い・・・。
多少イライラしながらも御園幼稚園につく。
「おぅ、桜ちゃん。おはよう。」
おっ俺と同じくらいのおっさんが担当の先生か。
「瑞希先生おはようございます!!」
瑞希・・・?
「お前まさか・・・。」
「へ?・・・・まさか蕗?」
「やっぱり瑞希か!!」
こいつは米原瑞希。俺の高校時代の親友。
もうかれこれ5年近くあってなかったのか。
「お~!!!どうしたんだよ?久しぶりだな。へ?あっ・・・マジで!?」
桜を見たあと俺を見る。そしてポンと手をたたき納得する。
「お互い老けたな。」
「だな・・・・でも心配したぞ。」
「悪い・・・。」
「今日は無理だけどまた一緒に出かけないか?その時にいろいろきかせてくれよ。」
「おぅ。多分お互い1日じゃ言いきれないぞ。」
「ハハッ。じゃあお宅のご子息はお預かりします。」
「よろしくおねがいしますよ、米原先生。桜もいい子にしててくれよ。」
「うん、バイバイ。」
「・・・・・。」
俺は御園幼稚園を出た・・・・。
久しぶりの休日だ・・・。
なにしようかな。
とりあえず家帰るか。
そしていつものようにポケットに手を入れ、何かがないことに気づく。
「あっ・・・。」
タバコを忘れてきた。いや・・・もうしばらく吸ってない。
持ってくるのを忘れたんじゃなくて存在を忘れたんだな。
でももう煙草はいいのだ・・・。
俺の肺は職場が幸せで満たしてくれるのだから。
~君を悲しませることが すべて消えてしまいますように~
携帯が鳴っている。ちなみに曲はアンダーグラフの「言葉」だ。
電話かよ・・・しかも相手は沙紀ちゃんか。
「もしもし?」
「あっ先輩、あの・・・。」
「うん?」
「お腹出して寝たらだめですよ?」
「・・・・はい?」
「楓さんが蕗先輩が夏風邪だって。」
違う!!しかも夏風邪って馬鹿がひくんじゃなかったっけ?
そんなことはどうでもいい!!しかし休んだ理由は任せるっていったし・・・
「ゴホゴホ、実はそうなんだ。」
「パンツくらいは履いてました?」
あれ?沙紀ちゃんからこんな言葉が?
「・・・まさか。」
「そんな・・・先輩欲望の目で見ないで。」
「コルァ!!近藤!!」
「アハハ、ばれました?」
この野郎・・・。
「切る。虫の居所が悪い。」
「あっ待ってください。」
切ろうとしたら急にまじめな声で近藤が止める。
もう一度携帯を耳元にもっていき、
「沙紀が悲しんでます。」
「たかだか一日休んだだけで。」
「馬鹿ですね、乙女の気持ちくらい察してあげてください。」
「ならどうしろと言うんだよ・・・・!?」
「え?」
「・・・いや、スマン、きつく当った。」
「別にいいですけど、あっそだ、今日ごはん食べましょう、一緒に。」
「やだ、切る。」
「せ、先輩!!私マジです!!」
「信用ないが・・・。」
「まだあきらめてませんし。ね?行きましょうよ。」
「はぁ・・・行くって言うまでしぶるつもりだろ?それだと沙紀ちゃんの携帯代がやばくなるからな。」
「アハハそうですね。じゃあ4時にみとせ駅に。」
「待ってる。」
通話を切る。近藤か・・・なんでまた誘うんだろう。
ま、いっか。
とりあえず掃除でもしよう。
・
・
・
かれこれ12時、やり始めてから3時間経った。
使っていない部屋は掃除しようか迷ったが、結局しなかった。
そう、渚と雪菜の部屋だ。
彼らはいない、でも彼らは確かに「いた」のだ。
俺が手を加えたら、もうそれは彼らのぬくもりを、俺が上書きすることになって、
・・・・つまり彼らの思い出を忘れないために触らないことにした。
しかしなぜだろう。今までこんなことを考えずに、ただ素通りしていた。
そう思った瞬間、なんでか涙が出てきた。
意味もなくただただ、俺は涙を流した。
あんな一方的な約束だったが、はたして先輩は来るのだろうか。
来なくてもいい、むしろ来ない方がすっきりする。
まだ私は遊園地であれだけ一方的に発言して、どういう意味で言ったのかわかっていない
「ゴメン」で納得してすごすご引き下がった。
これで最後にしよう・・・・。
そう、近藤は携帯を沙紀に帰したあと誓った。
午後4時。俺はみとせ駅にいた。
遅い・・・といらいらしてしますがよくよく考えたら向こうは仕事だ。
少しくらい遅れるかもしれない。
ポンと肩をたたかれる。
振り向くと近藤はいた。
「今度はドタキャンしなかったな。」
「それはこちらも言いたいですよ。ドキドキしたんですからね。
いないかもしれないって・・・。」
「ハハッ・・・なら行こうか。」
「はいはい、じゃああそこですね。
先輩、ムンヒュウム行きましょう。」
「は?なんじゃそりゃ。」
「気にしないでください、ほら。道案内しますから。」
軽くため息をつき、そしてついつい口元がほころんでしまう。
暇だったからなのかな、会えたのがうれしい。
30分車で走るとつくのだが・・・・・
「あのぉ・・・近藤?」
見えたのは俺らは一般企業に勤めてるような普通の人は一生来れなさそうな外観だった。
「帰ろう。俺らには無理だ。」
「は?何言ってるんですか。ここ私の父の店ですよ。」
「そうかそうか・・・・・ってえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!?」
「耳元で叫ばないでください。ほら入りますよ。」
ポケーンとするしかなかった。まさか近藤がこんないいとこのお嬢さんだったとは・・・。
彼女GET=玉の輿GET?
すごいな・・・ある意味難しそうだ。
店に入ると典型的な執事顔の人がお出迎えしてくれた。
もちろん俺ではなく近藤の方がお出迎えされたのだが。
そしてしばらくするとオードブルというのか?
つまり今まで目にしたこともないようなものが出てきた。
「食べれるの?」
「食べれますよ。ほら食べましょうよ。おなか減ってて・・。」
「お、おぅ。」
ヤバイ・・・手が震える!!
ふと近藤を見てみると・・・・
「優雅だ。」
「はい?」
!?ついつい口に出してしまった。
「な、なんでもない。はむ、もぐもふ・・。めっさうめぇ。」
「喜んでいただけて何よりです。で、先輩、私と沙紀になにか隠し事していませんか?」
なんでこいつはそんな勘がいいんだ?
「これおいしいな。」
「ありがとうございます、で。なんでですか?」
うっ話題転換できなかった。しかも睨まれてる・・・。
「あー!!はいはい。言います、言えばいいんでしょ。そのかわり沙紀ちゃんには内緒だぞ?
軽蔑もなしだぞ?」
「わかってますよ、先輩のことまだ好きですもの、軽蔑するわけないじゃないですか。」
「バッ・・・ったく。」
観念して俺は近藤にすべてを言った。
幼いときに両親を亡くしたこと。
ホントは事実婚していること。
その妻が家庭内状況がよくないらしいので家に連れていったこと。
子供がいること。その子供がいま家にいること。
姑のせいで妻とも妹とも離ればなれになったこと。
ついこの間まで生きる希望すら見いだせなかったこと。
全て伝えた。伝えきると近藤はあいた口をふさぐことができていなかった。
「まさか・・・そんなことが。」
「だろ?笑っちまうよな。好き勝手やった罰が下ったのさ。」
「・・・・。」
何も言えないようだ。
「・・・なら帰るよ。こんな俺だ、もう付きまとわない方がいいかもな。」
なんでこんな近藤につらく当たってしまうのか、それは本人すらわからない。
ただ近藤は優しさで聞いてくれただけなのに。
理由があるなら・・このもどかしさがだれにも理解されないからなのかもしれない。
それまた自分勝手なと心の中で自嘲する。
「なら帰るよ、うまい飯をありがとう。」
すっと立ち上がり出て行こうとする。
すると近藤に呼びかけられる
「まだこんな男に用があるのか?」
「その・・・・。」
「いいか!?その!中途半端さが一番俺にはキツイんだ!!突っぱねるなら突っぱねてくれ!!」
バン!!
大きな音をたてながら俺はドアを閉めた。
あぁ・・・馬鹿だ、こんな意味のないことを・・・・。
少し後悔しながら車に向かった。
ならどうすればいいんだよ。
俺はいつしか吸わなくなっていたタバコをポケットからとり出し、昔好んで聴いた、
志方あきこの「空の茜 空の蒼」を車内でくちずさんだ。
あぁ私は馬鹿だ・・・なんであんなことで先輩ときちんと向き合えなくなってしまったのだろう。
もう先客がいたから?あぁそれならなんて私は醜いのだろう。
沙紀に嫉妬だけじゃ飽き足らず、婚約者にまで・・・。
でもしょうがないじゃない、先輩に対する思いがあるんだもん。
好きなんだもの、あきらめれないんだもの!!
そう、答えなどない問いに言い訳をした。
誰も、答えてはくれないのに・・・・。
「うぅ・・・うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
「あぁ・・・。」
もう6時だ。何もする気になれない。
トイレに行こうと立ち上がる。すると机の上に置手紙があることに気づいた。
そうだ、桜の迎えが。と大切なことを思い出した。
行かなくてもいいのかもしれない、しかし行かないとそれこそ生命にかかわる。
しゃあない、と近くにあった空のペットボトルに八つ当たりしながら家を出る。
めんどくせぇ・・・・。
動くのがめんどくさい。
息をするのがめんどくさい。
人のために動かなくちゃいけないことがめんどくさい。
はぁ・・・自分から話しておいて、勝手に機嫌悪くなる。
迷惑な存在だ。
かれこれ15分か。別に今は朝じゃない。
幼稚園前に停めても大丈夫だろう、そんな気持ちで俺は幼稚園前に車を止めた。
中に入るのは初めてだったが桜がいそうな場所は分かった。
まぁ、明かりがついてる場所がひとつだったからだ。
多分事務室か職員室なのだろう。
「失礼しまーす。」
「はいはい・・・蕗か。」
「なんだよ、俺見たとたんに機嫌悪そうな顔をしやがって。」
「幼稚園は2時までだ。」
現在6時30分。
「ゴメン。」
「謝る気がないなら謝るなよ・・・。」
「謝ってるんだからいいだろ。」
「あの子をホントに愛してるのか?あれは・・・妹さんだったんだろ?
今までここに桜ちゃんの送迎してさ、ホント偉いよ。」
「なら!!俺にどうしてほしいんだよ、もう愛せるかなんてわからない!!
俺の幸せも奪われた、あいつの幸せを奪った!!・・・どうすればいいんだよ。」
「蕗・・・・苦労してきたんだろ。でもな。難しいことを言ってるつもりはない。」
そう言うと瑞希は机の上からあるプリントをとってきた。
「見てみな。」
数枚プリントらしきものを手渡された。
1枚目は絵。男の人だということはぎりぎりわかる。題名を見てみると、
「お父さん。」
「これは大好きな人を書いてくださいって言ったとき書いたやつだ。」
2枚目は手紙。宛先が書かれていない。
「読んでいいのか?」
「どうぞ、どうせお前宛だし。」
手紙を取り出して見るとそこにはこう書かれていた。
おとうさんへ。
元気ですか?私は元気です。私は桜です。
お父さんに会いたいです。でもおねいちゃんはいつか会えるよとしかいいません。
お父さん、会ったら私の絵を見てください。お父さんを書きました。
会ったら・・・ほっぺにチューしたいです。
お父さんにふぁーすとキスをあげます。
「ハハッ馬鹿じゃねぇの・・・おねいちゃんじゃねえ、おねえちゃんだよ。
それにファーストキスはほっぺじゃねぇし・・・。」
「蕗?」
「アハハハハ・・・・ダメだ俺。この頃涙もろいよ。こんなアホくさい文でも泣いちまう。」
「はやく迎えに行けよ。そのプリントとか全部やるから。」
「あぁ。」
クイクイと瑞希は後ろを指す。あそこに桜がいるのだろう。
そう思った瞬間俺は少し走っていた。
答えが見つかったんだよ・・・・どれだけ一人で悩んでも出なかった答えが。
ガチャ
「はぁはぁ・・・。」
「あっお父さん。見て見て。」
こちらに走ってきて一枚の紙を見せる。
「誰だよ、これ。」
「お父さん。似てるでしょ?」
「バーカ、もっと男前だよ。」
「お父さん、何で泣いてるの?」
そっと桜がほっぺたを触ってくる。
あぁ・・・こんな単純なことだったんだ。
許す、許さない、許されないなんかちっぽけなことだった。
ただ素直によろこんで、一言会いたかったって言って抱きしめればよかったんだよ・・・。
ギュッ・・・・
「帰ろう、桜。俺たちの家に。」
「うん、お腹すいちゃった。」
よいしょ、と桜を肩車する。
「任せろ、とびっきりのうまいの作ってやる。」
「やったぁ・・・でもおいしくなくてもお父さんの作ったものならなんでも食べるよ?」
「ホントかぁ?もうさつまいもは食べれるようになったのか?」
「え?お父さん、なんで私の食べれないもの知ってるの?」
「なんでだろうな、お父さんなんでも大好きな桜のことわかるのかな?」
「やったぁ。ねぇ、お父さん?」
「うん?」
「もういなくなったりしない・・・?」
「これからは絶対お前と離れたりしない。約束するよ。」
「うん・・・♪」
・・・もう一度つなげたこの手を放したりなんかしない。
そういやぁ瑞希からもらったやつの3枚目は何だったんだろう?
これは・・・児童引取り案内!?
み、瑞希め・・・怖いもの渡しやがる・・・・。
ま、いいや。これになんか頼るもんか。
あぁ・・・家に帰るのがウキウキになるなんて久しぶりだな。
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