「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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Polymnia
紅葉吹雪 第9話
カバンの中に俺と桜の分の服を詰め終える。
なぜ雪菜の分はないかと言うと、雪菜が行くのを断ったからだ。
本人いわくあの可哀想な姿はもう見るのが辛いらしい。
俺はそれを反対はしなかった。
その日は動き回ったからか、ご飯も作れず、9時には寝てしまった。
・
・
・
「おはよう。」
会社に入りそう声をかけながら席に着く。
入社20分前に座り、う休んだ3日間のみんなの仕事の進行具合を見る。
・・・・・俺がいなくても十分やっていけるじゃないか。
その結果を見てそう呟いた。嬉しい気持ちはもちろんあった。しかしそれと同じくらい、
いやそれ以上にさびしく思った。
そうしているうちに時間が来た。昨日の発言もあってか、みんながこちらを向いていた。
「あ~・・・その、なんだ。みんなに言わなきゃいけないことがあるんだ。」
立って言う。誰も俺の言葉に返事しない。ある意味蔑まれているのかもしれない。
勇気を持って言おう、言わなきゃ進めないんだ、そう自分を励まし、
「俺は今日で辞めることにした、いままでありがとう。」
言いきった。
さすがにこれにはみんな驚いたのかざわつき始めた。
空気の読めない上田が、バッと立ち上がり、
「なんでですか!?」
と大声で叫んだ。隣の大須ちゃんかわいそうに、両耳押えてるよ。
「お前みたいなのがいるからかな。」
「そ、そんなぁ・・・俺先輩のこと尊敬してるんすよ?」
こ、こいつ・・・
「ば、バーカ・・・・いつまでも甘えるなよ?いつかは旅立つんだ。
俺みたいなやつを忘れて、今のお前みたいなやつを助ける。・・・そうして人ってのは成り立つはずだからさ。
ほら、退社する時まで辛気臭いこと言わすなよ、ほら笑ってくれ!!」
パンと手をたたく、それが仕事開始の合図になる。
12時頃飯を食べに行った。廊下で涼香にすれ違う。
向こうは軽くはにかみ、手を振った。
俺は会釈をし、今日の発言は涼香的には?と聞いてみた。
すると彼女は自分の口元に人差し指をおきながら、まぁまぁでした。といった。
俺は軽く笑い、彼女の前を去った。
「ふぅ・・くったくった。」
そうありきたりな言葉をはきながら自分の席に座る、今日のお昼は食堂のランチSセットだ。
これがまた350円なのにうまいんだな。でも今日で食べれなくなるのか・・・
そう思うとやっぱりさみしい。
机をふと見ると行く前にはなかった紙がある。それを広げてみると、
「先輩へ
今日の7時にみとせ駅でお待ちしています。できればお越しいただきたいのですが・・・。
菅原沙紀」
と書かれていた。そういやぁ沙紀ちゃんとはきちんと向き合っていなかった。
だが・・・やっぱり怖いな。けれど迎えねばならないポイント。
とりあえず行ってみよう・・・・
・
・
・
・
キーンコーンカーンコーン6時だよ、6時だよ
何度聞いてもなれなかったこのチャイム。これともお別れだ。
俺がカバンの中に荷物をまとめ、出て行こうとする。
「「先輩!!」」
振り返るとそこにはこのグループのみんながいた。
先頭は上田と、涼香。
「先輩、これからも・・ヒックヒック・・。」
上田がボロボロ泣く。涼香が見ていられなくなったのか、彼が持ってた花束をとり、
「先輩、ここを辞めても、頑張ってくださいね。」
そして花束をくれた。
俺はふぅ・・とみんなの前に立ち、笑顔で上田を馬鹿にした。
「プッ、変な顔。」
「ヒックヒック・・・。」
「お、おい、笑えよ。」
「だって、ヒック、先輩俺、ヒック」
だんだんムカついてきた・・・。早く話せよ。
「優しくなっていった先輩がいたからこの会社辞めないって思ったんですから。」
「!?」
上田がそう言うと後ろからも声がする。
― 俺も先輩が悩んでる時にコーヒー奢ってくれたから!! ―
亀井・・・・。
― 私はうっとうしい彼氏から助けてもらえた!! ―
新方・・・・。
― ワタシは日本来てわからないことあた時にセパーイが教えてくれ~た ―
チャン・・・。
気づけば俺は涙を流していた。
「あれ?泣いてるよ、これじゃあ上田を馬鹿に出来ないな・・・・。
これ以上いたら泣くだけじゃ済まなくなる、去りたくなるな・・・。
昔親友がくれた言葉を教えてやるよ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
― 「蕗。運命をうらむな。前を見ろ。」
「え?」
「俺達は同じ道に立っているんだ。でもある事情でお前がフライングしちまった。審判はいない。じゃあ俺達は何が出来る?」
「・・・・」
「お前を追いかけて一緒に歩くよ。それが友達だろ?
いいか?卒業は別れじゃないんだ、旅立ちなんだ。」
「じゃあ、先にお前らの見本になるようにしてるから、また会ったときには話しかけてくれよ?」 ―
俺は昔の大事な思い出を思い出す。そしてふーと大きく息を吐き、しゃべり始めた。
「運命は人の力で変わる。でも人の決めた決断には逆らえない。出会いは動けばある。
でも別れは動かなくてもやがて来る。ならそれでいいのか?・・・そうじゃない、
動かなくても来るなら逆に追いかければいい。そしてそこから追いかけた人の今までの行いを手本にしていけばいい。
卒業の時にこうやって言ってくれたんだ。・・・ほら、やっぱり辛気臭いじゃないか。
・・・・・・・・・じゃあ行くよ。」
「「あ、ありがとうございました!!」」
俺は頭を深々と下げる後輩を見て軽く敬礼をし、部屋を出た。
ふと時計を見る、6時50分。みとせ駅到着。
沙紀は・・・・いた。
後ろからお待たせ、と肩をポンと叩いた。
彼女は振り向き、声の主が俺だとわかると笑顔になった。
「待た・・・せちゃったよね。」
「い、いえ。むしろ呼び出してゴメンなさい。」
「いいよいいよ、どうせ暇だし。それよりどこか行くの?」
そう聞くと、彼女は自分のカバンの中から紙をとり出す。
紙を受け取り、見てみると・・・
「なになに。え~『100万ドルの夜景プレゼント券』?」
「そ、そうなんです。カップル限定なんですけど・・・誘えるの先輩くらいしかいなくて・・・。」
俺は照れながら話す彼女を可愛く思い、別に断る理由もないので快諾した。
「じゃあ、案内頼むよ、俺ここら以外ホントにわからなくてさ。」
「は、はい。じゃあ先輩の車でいい・・・ですか?」
「OKOK、こっちこっち。」
彼女が助手席で地図と格闘している。時々「これかな?」なんて怖い言葉が聞こえてくるが、
それでも笑顔でこちらに道を教えてくれる。俺はそんな姿をあいらしくかんじた。
でも・・・考えてみれば、最初はきちんと話してくれなかったよな。
― 「迷惑・・・でしたよね?」
「いや。こういう機会もなかったし、久しぶりにウキウキするよ。」
「よかった・・・・。」
「菅原はなんでそんなマイナス思考なんだ?」
「え?・・・・それは・・・やっぱりこんな性格だから、
昔からよくいじめられたんです。それから人が怖くなって・・・。」 ―
もう、もう十分人と接せるじゃないか・・・・。
そう、彼女を見ながら感じた。笑顔で地図を見てる。
彼女が次の道は、と声を出した瞬間、バッタリ視線が合ってしまった。
嫌な空気が車中を包み込む。
ボンツと音が立ちそうなくらい顔を真っ赤にする沙紀を見て、やはり変わらないんだなと笑ってしまった。
「ここですよ。」
沙紀が目的の場所についたことを知らせる。
しかし俺は到着した場所に疑問しか持てなかった。
確かに夜景がきれいなのだが、こんなチケットを使うほどちゃんとした場所ではない。
ご老人の方が散歩するコースのような、つまりなにもない丘なのだ。
俺は沙紀から受け取っていたチケットを確認することにした。
ポケットから取り出した「それ」をとり出してみると裏はただの広告であった。
「沙紀ちゃんこれどうい・・・・むぐぅ!?」
話をさえぎられる。沙紀がキスをしたからだ。今度は頬ではなく口に。
「・・・・・・・・・騙してごめんなさい・・・。でもホントのことが聞きたくて。」
そうか、彼女なりに考えた上でのこの行動か。
いつかは話さなくちゃいけないことだ、それが今なんだろうな。
「・・・・あの話は全部本当だ、事実婚してる。その彼女とは3年前離ればなれになった。
手掛かりが見つかったんだ・・・だからいかなくちゃいけないんだ。」
「嫌です!!」
「そう言われても・・・。」
「嫌なんです・・・・私を一人にしないでください・・・・。」
表情を読み取ることはできなかったが声の感じからは悲しそうなのはわかる。
「沙紀ちゃん・・・。」
「私、バカですから頭の中でいろいろ考えてたんです。家は小さくてもいいとか、
子供の名前は男なら昂が女な刹那だとか・・・それに子供には頭悪くても自分の意見はしっかり持ってほしいとか・・・
そんな想像を何度もしました・・・相手はいつも先輩なんです!!」
「!?」
「だから・・・だから行かないでください・・・先輩が好きなんです。こんな私に接してくれたあなたが大好きなんです!!」
「・・・・ゴメン。」
「嫌です!!」
バチン
頬に平手が来る。そして彼女は走って去って行った。
2月の寒さと頬に走る熱い衝撃が俺の頭の中で悲しく主張し合っていた。
「ただいまぁ。」
「おかえ・・・どうしたの?その頬。ものすごく腫れてる。」
やっぱりか・・・今も痛いもんな。
ちらっと玄関の鏡を見ると・・・なんじゃこりゃ!!
「ハハッ・・・まぁ叩かれたんだよ。」
「どうせ女の嫉妬でしょ。」
よくわかるな・・・同性だからか?
「正解、だと思う・・・・・なぁ雪菜。」
「うん?」
「俺、辛えぇよ・・・ホントなんでこんな恨まれるのかな?平穏は俺にはないのか・・・?」
「お兄ちゃん・・・・ちょっと後ろ向いて。絶対こっち見ないでね!?」
言われた通りに後ろを向く。
ムギュ
すると後ろから抱きつかれる。おい!と後ろを向こうとすると、見ないでと怒られた。
「どう?渚姉ちゃんほど胸は豊かじゃないけど・・お姉ちゃんには負けてないでしょ?」
「いや大敗だろ・・・。」
率直な意見。あいつはもっとこう・・・・って何考えてるんだ俺は。
「・・・・・変態。そういう意味じゃないもん。」
「はい?だって自分でそう言い始めたんじゃ・・。」
「ち、違うよ!!お兄ちゃんを思う気持ち!!」
あっ・・・こいつなりに慰めてくれてるんだな。
「お姉ちゃんが来たとき、嬉しかったけどそれ以上に寂しかった。もうお兄ちゃんは私に見向きもしてくれないのかなって。
もう馬鹿にしてもちゃんと意見返してくれないのかなって。」
「ゴメンな、雪菜。迷惑ばかりかけて。」
「ううん。お兄ちゃん。」
「なんだ?」
「大好きだよ。」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・あぁ。」
「・・・・・・・・俺もだ。」
― 「ただいまぁ~ん?雪菜はいないのかぁ」
『いるわよ・・・』
「なんでそんな死にそうな声なんだよ・・・」
『あのねぇ!!今何時だと思ってるの!?』
「えっと・・・あっ。もう8時か。」
『そう8時!!ご飯は!?』
「お前がご飯でも炊いてくれてたら・・・」
『むぅ~!!』
「まぁそういうことなら今日は食べにでも行くか。」
やはり彼女の顔が急に明るくなる。まだまだ色気より食い気だな・・・ ―
―「もう四苦八苦だったよ~」
「ん?なんで馬鹿なお前がそんな言葉覚えてるの?」
「馬鹿って・・・だって私今年受験生だよ?そんぐらい勉強するもん。」
「あ~そうか・・・もうそうなのか。」
「そうですよー。ほらほらお兄ちゃんは早くご飯食べてよ。冷めちゃうよ。」
「あっ!!忘れてた!!じゃあいただきまーす!!」 ―
― でも・・・
兄がいてくれたから、私は今までこうして楽しく過ごして来れました。
今まで恥ずかしくて言えませんでしたが・・・私はそんな兄が今も昔も大好きです。 ―
・・・次の日・・・
「お~い、桜。準備できてるか?」
「うん。そういえばお父さんと久しぶりに話すね。」
「そうだな!!飛行機の中ではずっとしゃべろうな!!」
「うん!!早く行こう。」
「・・・じゃあ雪菜。行ってくる。」
「うん。・・・・ねぇ!!」
「どうした?」
「また・・・・」
「股?ズボン・・・うお!!破けてる!?」
うわぁ・・・座ったらパンツ見えるよ。
「また・・・またみんなで笑える日は来るよね?」
雪菜の頭をコツンと叩く。
「バーカ。当たり前だ。4人一緒だ。」
俺と桜は家を出た。
飛行機の時間まであと一時間。
もちろん行き先は札幌。
……渚は稚内にいるらしい、二月ってこともあり桜には目一杯厚着をさせた。
もっとも、今は暑そうなのだが。
札幌か…思えば東海三県から出たことがない。
また渚が帰って来たらなんばグランド花月に連れてってやろうかな。
ふぅ……ん?あの子どっかで見たことあるよな。
誰だろ…あっ今目があった。こっちに走ってきてる?
「先輩!!」
こちらに向かってくる女性、正体は沙紀であった。
「どうしたの?ってか俺がここにいるのよく知ってたね。」
「ハァハァ…それは妹さんにお聞きしました。」
どういうことだと携帯の着信履歴を見てみた。すると菅原沙紀一分半とあった。
「昨日はスイマセンでした。私が聞きたいって言ったのに勝手に怒って…。」
「いや、いいんだよ。それより今までゴメン!あれじゃ…沙紀ちゃんで遊んでたと言われてもしょうがない……。」
「……許しません。」
だろうな、女の子を傷つけて頭一つ下げただけで許してもらえるはずがない。
それはわかってる。でもそうするしか出来ないのだ。
「謝られると…私許してしまいそうです。」
え…!?
「許してしまうと・・・そんな日々が、楽しかった日々がなかったような気になっちゃうんです・・。
……私はホントに感謝してます。もちろん先輩と一緒に暮らせれたら、
なんて想像してしまう日もあります。でもそれは私のわがままです。
これからは先輩のおかげで相手がいるんだって誇っていきます。
………だから・・・謝るのはやめてください。私はこの日々が宝物なんです・・。」
そっか…結局謝ることは俺の心に言い訳する手段なわけで、
単なる自己満足なのか……
「なら………今まで楽しい時間をありがとう、沙紀ちゃん…。」
「はい!こちらこそありがとうございました。」
これから歩き出す…それぞれの道を。
沙紀は帰って行った。来るときとは違い、すがすがしい顔で。
― 「先輩、好きな人は言えないんですけど・・・・
夢が出来たんです。」
「夢?聞きたいな。」
「できたというか・・・いつも夢見てるんです。
自分の隣には誰からも好かれる大好きな人がいて、
でもその人はなんだかんだいって私のことを見てくれるんです。
失敗しても笑ってくれてて・・・。
そんな人と結婚するのが夢なんです。」
「そっかぁ・・・沙紀ちゃんならいつかで会えるよ。」
「そう・・・ですよね・・(ボソッ)もう目の前にいるのに・・・。」 ―
「お父さん~まだかな?」
桜が痺れを切らしたようだ。時間は……あっもうきてるはずだな。
「よし、桜行こう。札幌行きは…こっちか。」]
俺と桜は飛行機に乗り込んだ。渚にもう一度会うために、
渚ともう一度暮らすために。
発進する少し前、スイマセン、ちょっとスイマセンと言いながら乗り込む少年がいた。
どこかで見た覚えもあるが気にせず、桜と話していた。
「これであってた!!ったくあの野郎無茶な依頼受けやがって…」
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