「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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Polymnia
マグナカルタ-NOVELS2
まだこの時間なら自分の親友が靴みがきをしているとキャメルは思ったからだ。
クイナはというと、初めて見る光景にただただ驚いていた。
自分の今まで見て来た世界がどれだけ小さかったか。それを痛感した。
クイナ・エストレールはここらへんで有名な事件の発端、行方不明になった王女である。
今まで表に出たことがなく、誰も顔を知らない。
だから先程もガトーはあのような口をきけたのだろう。
顔がばれていないということが今回クイナにとってはよく、
捜す兵隊から見れば最悪の結果になった。
数百メートル船着き場を二人で歩いていると、クイナ・キャメルと同い年くらいの少年が
貴族の靴を笑顔で磨いていた。
キャメルにはそれが一目でクライヴ・シャロットだと分かった。
二分くらい経ったか、貴族の靴みがきが終了したようで、貴族から駄賃を貰っている。
キャメルは後ろからクライヴの肩を叩いた。
クライヴははい!と活きのいい声、笑顔でこちらを向く。
そしてキャメルの存在を確認すると明らかに落胆していた。
「なんだよ、キャメルかよ…てっきり事件を知った貴族かと思ったのに…。」
クライヴは皮肉家で言いたいことははっきり言う性格である。
しかし信じた相手のためなら命すらなげうつ、そんな情熱家でもある。
「ハハハッ、悪いな。クライヴ。で、儲けの方はどうだい?」
「あぁ、都市の貴族様は払いがいいよ、どんどん出してくれる。それより隣の女の子は?」
クライヴはキャメルの後ろにちょこんと佇むクイナを指差した。
キャメルが答えようかと思った時、今までぼーっとしていたクイナは刹那、きりっとした顔になり、
自己紹介を始めた。
「クイナ。クイナ・エストレール。」
クライヴはきょとんとした。キャメルにはなぜきょとんとしたのか、
自分と同じく見惚れたのかなどと考えていた。
クライヴはエストレールと小さく呟き、
「へぇ…いい名前だな。俺はクライヴ・シャロットだ、よろしくな。」
と、クライヴとクイナは握手した。クライヴはどこか探るように見つめている、
そうキャメルは思った。
「でもなんで靴みがきをしているの?」
クイナがそう聞くとクライヴは待ってましたと言わんばかりに笑顔になった。
「俺はな!この靴みがきでお金を貯めて…。」
「貯めて?」
「アメリカに行く!」
アメリカ?と呟くクイナの後ろでクライヴの話を遮らない程度の声の大きさで
キャメルがこの前俺らの国から独立した未発達の国だよと教えた。
「アメリカはこの前戦争が起きたばっかで治安がいいとは言えないがあそこは革新の国だ!
思想・環境・資源・土地…なにをとるにしてもいい!そして俺は…!」
先程は話を遮らないようにしていたキャメルだが、
今回は遮るようにそろそろ靴みがきに戻った方がいいぞとクライヴに言った。
最初話を遮られたクライヴは納得いかない様子だったのだが、キャメルがなぜそうしたのか、
理解したようで別れの挨拶を言った。
「ま、今が稼ぎ時だからな。じゃあお二人さん、仲良くな。」
クライヴはキャメルの元にそっと行き耳元で、
「夜中話したいことがある。いつもの公園で。」と言った。
キャメルはそれに頷いた。クライヴが去った後、キャメルは笑顔でクイナに次はどこに行く?と聞いた。
「なら…あそこヘ行ってみたい!」
クイナはキャメルの手を引っ張り走り出した。行き先は…
「ハァハァ…いてて。で、そこまでして行きたかったのが。」
「そう!ずっと気になってたの。このでっかい木が…。」
リヴァプールには街全体を見渡せる丘がある。そこにはでかい樹木があるのだ。
小さい頃はキャメルもクライヴと登って景色を眺めていた。
「ここはミケルの丘。別名ダリア。」
「えっ?でもここらへんにダリアは咲いてないよ?」
「いろいろあるのさ、まぁまた調べとくよ。」
「うん…でもすごい。ここから見たら人が蟻みたい。」
「蟻か…なんていうか人間ってちっぽけだよな。どれだけ自分が立派でかわいくても、
空から見たら些細な努力にすぎないのに・・・。ここイギリスもそうだ・・・。
今でこそ栄えているがそれは・・・君が言う蟻の支え以上に
それ以下のウジ虫扱いされているアジアの人たちの力で持っている。
そんな傍若無人が許されるわけないはずだ。いずれ皆が平等になる時、この国はもう権力はないだろう・・・。」
「キャメル?」
クイナはいきなりのキャメルの発言に困惑した。キャメルは自分で納得し、
笑顔でそろそろ暗いし市場に戻ろう。とクイナの手を握った。
その時のキャメルは普段のキャメルだった。
市場につくころにはクイナはどこかしら怯えていた。
例えば周りをキョロキョロしたり、物音・人の声に過敏に反応したり。
キャメルは彼女を家まで送ろうと思った。
こんなおどおどしている彼女を一人にするのを危険だと感じたからだ。
「クイナ、家まで送っていくよ?家はどこらへんなの。」
するとクイナはばつがわるそうになった。
それはそうだろう、家が宮殿だとは言えるはずがない。
しかし帰りたくもない、もっとリヴァプールにいたい。クイナはひらめいた。
「キャメルの家に泊めて!」キャメルは何を言っているのかリアクションをうまくとれなかった。
クイナもドキドキして次の言葉を発しなかった。
つまり沈黙の時が生まれたのだ。30秒くらいたち、この沈黙を破ったのはキャメルであった。
「どうしてまた…」
クイナは言い訳を考えておらず、さらにパニックになってしまった。
「えっと…その…なんといいますか。」
キャメルはクイナにも事情があるのだろうと思い、深く追求しない方がいいのだろうと思った。
「いいよ。じゃあ家に行こうか。」
いくら世間知らずのクイナでもこのキャメルの態度を不思議に思った。
もしかしたら自分が王女なのを知っていて、連れ込んで取引に使われるのではないかと。
「深い理由があるんだろ?なんも聞かないさ。ただ話してくれたらそりゃあ嬉しいけど、
ほら今日知り合ったばかりだし。」
キャメルの弁明に安心感を覚えたクイナはキャメルを信じることにした。
クイナからすればキャメルが自分を信じてなにも聞いてくれなかったのに自分が信じないで、
なおかつ泊めてもらおうというのはむしがよすぎるからだ。
「ありがとう!キャメル!」
これでしばらくは隠れるとクイナは微笑みながらキャメルと共に家に入って行った。
キャメルたちが歩いていたのは三番地の表通り。いつもキャメルが一人、
もしくはクライヴと帰るときは裏通りの二番地なのだが、女性を連れてあるくには危険だと思い、
今日に限って三番地にしたのだ。それがまたとしても兵士を苦しめた。
ちょうどその時二番地を捜していたのだ。
そんなことを知らず、どんどんイギリスを震撼させていくキャメルであった。
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