Polymnia

Polymnia

マグナカルタ-NOVELS3


木の机、椅子。部屋に扉がない。暖炉がない、寒い。
そして人が自分、キャメル、そして今朝自分に怒鳴ったおじさんしか家の中にいないこと。
メイドは?世話係は?兵士は?クイナは最初不安を感じた。
そんなことを知らないキャメルは台所で食事を作っているガトーのところに行った。
「父さん、ただいま。」
「おーキャメル。お帰り、飯はもうすぐ……って向こうの子はなんだ?」
「あの子、なんか家出っぽいんだ、しばらく泊めてあげてもいいかな?」
ガトーは悩まずにキャメルを信じて快諾した。
そして入口でおどおどしているクイナにガトーは声をかけた。
「おーお嬢ちゃんこっちおいで。」
ガトーはこちらを見た女の子に見覚えがあった。
「キャメル、俺あの子に会ったことあるか?」
「多分想像した通りだと思うよ。」
クイナは気付いたらキャメルとガトーの近くに来ていた。
「嬢ちゃん、朝のことは水に流そう。俺はガトー。
この家を自分の家みたいに思ってくれていい。よろしくな。」
言うだけ言ってガトーは食事に戻った。キャメルとクイナは屋根裏へ行った。

「ここは?」
「あぁ俺の部屋だよ。でもま、女の子を男と寝ろと言うのも酷な話だし、クイナが寝て。」
「うん…ホントキャメル、何から何までありがとう。」
クイナがそう言うとキャメルは微笑み、どういたしましてと言った。
夜8時、キャメルはクイナを置いて家を出た。昼間の約束のためである。
公園に着くとすでにクライヴはいた。
「ゴメン、遅れたかな。」「いんや、俺も今来たばっかりさ。・・・キャメル。」
「とりあえず昼はお疲れ様。」
「今日はいつもの三倍は来たからな、バテバテだよ。」
クライヴは肩を落としフラフラだということをアピールした。
「ハハッ。でだ、……なんか用があったのか?」
キャメルがそう切り出すと、先程までおちゃらけていたクライヴも真剣な顔付きになった。
「あぁ、昼のあの子。今どこにいる?」
「クイナのことか?あの子なら今家にいるよ、家出したみたいなんだ。」
「…………。」
クライヴは何かを考えているようだった。
「どうした?」
「おまえ、これ見てみろ。」
するとクライヴは一枚の新聞をキャメルに手渡した。
「これは…なになに?エストレール王女、パーティー中に失踪。」

―私はクイナ、クイナ・エストレール。―
「!?まさか!!」
「可能性はなくはないぞ、そうしたらどうだ。計画に…」
「憶測だろ…まさかそんなはずは…。」
「ま、その可能性はなくはないってことを覚えておこうぜ、そんだけだ。」
クライヴは一旦去ろうとするものの、キャメルの元に戻り、
「女の子にはお節介くらいでいいんだよ、寂しがってるはずさ。」と少々皮肉の含むアドバイスを残した。
「それは王女をきちんとエスコートしろということか?」
「バーカ、奥手なおまえへのアドバイスさ。じゃあな。」
今度こそホントにクライヴは去って行った。キャメルも帰宅した。

ただいまと家に入ると走ってこちらにくる足音が聞こえた。
「おかえり!キャメル!」
こちらに来るクイナをみてキャメルは昔飼っていた愛犬のことを思い出した。
「どこ行ってたの!?いきなりいなくなってびっくりしたんだから!」
「あ、あぁゴメン。ちょっと友達に呼ばれてさ。お詫びに…」
キャメルはポケットからあるものを取り出しクイナに手渡した。
「何これ?」
「そこで拾ったビー玉。なかなか綺麗だと思うけど。」
クイナはビー玉を目にあてて喜んだ。視界がいつもと違うように見えたからだ。
「すごい!キャメルが変な風に映った!!」
ホントに何をやるにしても喜ぶんだなとほほえましく思った。
しかし先程クライヴの言った憶測がキャメルの頭をよぎった。
抑え切れない自分を無理矢理押し止めてクイナに笑顔を向けた。
「そろそろ眠いだろ?」
「あっわかる?実はキャメルが帰って来る前ちょっと寝ちゃってたんだ…」
「一緒に寝室に行こうか。」
キャメルが歩き出すと意を決したようにクイナがキャメルを呼び止めた。
「ん?どうしたの?トイレなら向こうの…。」
「ち、違うよ!…………一緒に寝てほしいの。」
「な…。」
キャメルは自分の顔が真っ赤になっているのを感じた。
そのようなことを異性に言われたことがなかったからだ。
キャメル・フロルは生まれてまもなく母を病気で亡くした。
だから女性と寝たことがない。
言う方が恥ずかしいはずなのに言われたキャメルの方が固まってしまった。
クイナは心配そうにダメ?と聞いた。
その動作にキャメルは気恥ずかしくなりつい流れで首を縦に振った。
「わぁーい!じゃあいこっ、キャメル!ガトーおじ様、おやすみなさい!」
ガトーは久しぶりにおやすみと言われ少々驚いたがそこはキャメルとの経験の差か、
きちんとおやすみと返答した。
キャメルも恥ずかしくはあったが久しぶりにガトーにおやすみと言った。
その時ガトーは心の中でとても喜んだ。
クイナと部屋に入るのはよかったが、入ってすぐにベットが一つしかないのを思い出した。
下に布を引いて寝れば…しかしイギリスは土足で家に入る、あまりに不衛生なのだ。
キャメルが下でやはり寝ようかと切り出そうとしたその時!
クイナはキャメルの予想を見事に裏切る発言をした。
「一緒の布団で寝よ!ほら、私とキャメルだったら入るよ!」
と、うきうきなクイナであった。
キャメルは、俺を男として見ていないと少し切なくなった。
しかし悲しい男の性というか…ついOKしてしまった。

「ホント、警戒心0だな。」
目の前ですやすや寝るクイナをみてキャメルはそう呟いた。
クイナは余程疲れていたのだろう、ベットにはいり数分したら寝てしまった。
キャメルは一人寝れずに眠る彼女を見ていた。
さらさらの金髪、整った顔立ち。
比較的、いやイギリスで1番美人と言っても過言ではないくらいクイナはキャメルから見て美しかった。
こんな子と遊べた、寝れた…それだけで半生分の運を使ったかもしれない。
ドクンドクン…!?
「ぐっ…。」
まただ…とキャメルは本当の自分が抑えきれないくらいわきでた。
キャメルの意識はそこでなくなった…。
数分後、意識がなくなっていたはずのキャメルが突如笑い始めた。
「クックク…おいおい、キャメル。いつになく根性がないな。
こんな美少女になにもしないなんて。俺ならもーっと……あーダメだ。キャメルの体も眠いんだな。
ククク…よかったな、お姫様。また明日楽しもうや…。」
キャメルは先程と別人のように話し始め、そして就寝した。

次の日…。昨日も天気がよかったのだが、今日はそれ以上によかった。
キャメルよりも先にクイナが起きた。
クイナはキャメルの寝顔を見てなんか嬉しくなった。
いつも、今のベットの三倍くらい大きなベットに独りきり。
初めて人の言う「狭い」の意味を理解した。
ぷにぷに
キャメルの頬を突いた。眉毛がぴくぴく動くのが妙に面白おかしくなり、
突くのをやめようとしなかった。五、六回突くと、キャメルは唸りながら数回瞬きをした。
「ん……。」
「あっ起きた!キャ~メル!おはよっ、朝だよ!」
キャメルは寝ぼけているのか何が起こっているのか当初わからなかったが、頬に当たる人差し指、
笑顔のクイナ。そしてあっ起きたという発言。
「起こして…くれたの?」
えへへ…と照れ笑いをしているクイナ。よいしょと息を吐きながらキャメルは起き上がり、
下に行こう。とクイナに声をかけた。しかしクイナは動かなかった。
「どうしたの?」
「キャーメール…朝の挨拶がないよ!」
キャメルはあぁそういうことかと苦笑した。
何分起きてすぐに朝の挨拶をする習慣が全くないからだ。
「おはよう、クイナ。」すると先程までムスッとしていたクイナの顔がぴかっと明るくなり、
おはようと元気よく言った。

キャメルはこの娘とこれからこのような日々が…いつまで続くかわからない
この楽しい日々がいつまでも続けばいいと思ったキャメルだった。

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: