Polymnia

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マグナカルタ-NOVELS4


昨日で観光できる所はすべてまわった。もうリヴァプールには見れる場所はない。
いや…あるにはあるがあそこらへんはあまり治安がいいとはいえない。だから却下だ。
「そうだ。おい、キャメル。」
朝ご飯中にキャメルはガトーに突然話し掛けられる。
普段食事中はしゃべらないのに。
「ど、どうしたの?」
「今日は俺仕入れに行かなくちゃならないから店番頼みたいんだが…今日はまたクイナと出かけるか?」
「あー……。」
どうしようかとクイナの方を見る。クイナはなにか悩んでいるようだったが、
よしと呟いてクイナはガトーに、
「いいよ、おじ様。私とキャメルで店番しとく。それでいい?キャメル!」
「あ、ああ。クイナが…いいなら。」
内心クイナがそうやって言ってくれて喜んでいたキャメルであった。

ガトーは朝食後、着替えてすぐに仕入先の市場に向かった。
キャメルとクイナは家に残り、今日しなくてはならならないことを話し合っていた。
「クイナがするのは売り子さん。」
初めてのクイナには売り子の意味がわからなかった。
「売り子さん?」
「そう。店の前にたって来るお客さんに愛想をふりまいていらっしゃいと言ってくれているだけでいい。
販売は俺がやるから。」
それなら迷惑をかけずにすむとその仕事をやることにしたクイナ。
いや、元々クイナがやると言い出したのだから拒否権はなかったのだが。
「じゃあ父さんが帰ってくる12時まで頑張ろうな、クイナ。」
「うん!」
朝9時、周りの店もどんどん開けていく。キャメルの店も開けた。
この時キャメルは緊張していた。もちろん一人で店をまわすことくらいある。
しかし今回は初体験の、自分より経験不足な子との仕事だ。
無理な仕事ではないか、ちゃんと面倒を見れるか。そんな中ハリスが店に来た。
これは毎日の日課で、ガトーと世間話をして、人が港から流れて来たら帰って店番をするのだ。
「おはよう、キャメル。ん?ガトーはまだ起きていないのかい?」
「それがさ、今日は仕入に行かなくちゃならないからって、俺とこの娘で留守番任せられてるんだ。」
「ほぉ…ならこの娘がクライヴの言ってた娘か。」
「そそ。ほらクイナ!」
キャメルはまだ家の中にいるクイナを呼んだ。
「どうしたの?」
ハリスはクイナを見るなり、綺麗な娘だなとキャメルの耳元で呟いた。
「こ、この娘がクイナだよ。ほらクイナ。彼はハリス。昨日会ったクライヴのお父さん。お隣さんなんだ。」
「そうなんだ!はじめまして、クイナ・エストレールです。」
「いやはや綺麗な娘さんだね、こりゃあ色男キャメル君もほっとかないわけだ。」
「ちょっ、おじさん。」
「そうですよ、私なんかキャメルと釣り合わないです。」
「またまた謙遜しちゃって………でもま、今日はいつでも頼りな。じゃあ今日もお互い儲けような。」
「………うん!」
そう言ってキャメルとハリスは拳をぐっとぶつけ合った。
それはハリスがガトーが若い頃からやっている二人だけの気合い注入だ。
いざ仕事が始まってしまえばクイナの面倒を見る余裕などないくらい、忙しかった。
いつもは感じない辛さも人一人増えるだけで感じる。ガトーにいつもこのような面倒をかけていたのかとついつい苦笑してしまった。
やがてガトーが帰って来た。
「キャメル、お疲れ。午後はクイナを遊びに連れていってやれ。」
「でもクイナ、今一人でそわそわしてる。話しかけたら悪いよ。」
そう言うとガトーはわざとらしくため息をついた。
「わかってないな、おまえも。まぁ騙されたと思って話し掛けてみろ。」
と、ガトーはキャメルの背中をどんと押し、店のカウンターに行った。
ドタっと大きな音がするもんだからクイナもキャメルの方をむいた。
「ど、どうしたの、キャメル?」
「あ、あのさ…もしよければ今からミケルの丘に行かない?見せたいものがあるんだ。」
「ホント!?」
いきなりクイナが笑顔でそう言うものだから、キャメルは驚いて言葉も出ず、ただ頷いた。
それでもクイナは喜んだ。
「わぁーい!!じゃあ行こう!キャメル!!あっ…でも仕事はいいの?」
「父さんがもう午後からは遊んでいいよってさ。クイナは仕事したい?」
そう少しからかいの気持ちで皮肉を言うと、クイナは明らかに困った。
「冗談だよ。行くなら行こうか。」
「うん!」
キャメルが先に歩き、クイナが後ろからちょこちょこ着いて来た。
その光景をキャメルは照れ臭く、あまり人に茶化されたいとは思わなかった。
しかしそういう時に限って人にであうものなのだ、すでにこれはキャメルの中でジンクスになっている。
今回もやはり出会ってしまった。しかも最悪なハリスにだ。
「おーおーキャメル。さっきはあんな風に言いながらもなんだかんだで楽しんでいるじゃないか。」
「そ、そんなんじゃない。」
「そう言ったって顔が真っ赤だよ。ねぇ、クイナちゃん。」
「ホントだ、どうしたの?キャメル?風邪?」と、クイナはキャメルの額に自分の額を当てようとした。
その行動にさらにキャメルの顔が赤く、ハリスの顔がにやけていったのは言うまでもない。
「じ、じゃあ行ってきます!ホラ!クイナ行こう!!」
「ハハハハ…楽しんでこいよ。」

「はぁはぁ…」
急いでミケルの丘に来たせいか、クイナもキャメルも息が切れていた。
「はぁはぁ……エヘヘ」
クイナが突如笑い出した。キャメルは何故か不思議に思い、どうしたのか尋ねた。
「あぁゴメン。……私さ、こんな風に笑いながら生活なんかしたことなかった。」
哀しそうな顔をするクイナにキャメルはクライヴの仮説を問いたくなった。
「それは…王女様だから?」
そう聞くとクイナは驚いたのかびくっとし、バレてたかと苦笑した。
「いや…クライヴがそんな可能性もあるって言ってたんだ。俺はこれっぽちも信じてなかったけど。」
「そう…私は本当の名前はクイナ=エストレール=アントワネット」
「アントワネットって!?まさか…」
「そう、私のご先祖様はあの革命で死んだ惨めな貴族よ。
……だから昔から扱いはひどかったわ。でもね、マ…お母様が周りの名ばかりの貴族を蹴落とし、
再度アントワネット家に権力を取り戻したわ。」
「そういえば新聞で見たことがある…。」
「そそ…でもね言われ続けたわ…呪われた血の流れた家庭だ、また英国を地獄に落とすってね。」
「貴族って俺達からみたら華やかなイメージしかなかったけど…なかなか壮絶だったりするのか?」
「そりゃあもう。特におばさんの嫉妬とか親バカっぷりが。だから私抜け出したの!」
「…………」
「あんな場所から抜け出せたら…でも現実はそんな甘くなかった。」
「いきなり万引きって捕まるしな?」
「あ、あれは財布持ってきたと思ったの!そしたらなくなってて…。」
キャメルはすられたのかと思ったがあえて口にはしなかった。
「それに…キャメルの家とかも…。」
「そりゃあ違うだろうな。」
「だけど…暖かった。この二日間、いろいろな人と触れ合えて…ホント嬉しかった。
人の顔色をうかがっていない。私…こんな普通の暮らしに…普通の家に生まれたかった…。」
そう吐き出すように言ってクイナは泣きじゃくった。
キャメルは頭で判断するより先にクイナを抱き寄せた。
「ひっくひっく…」
「辛かったんだろ。辛いよな…もっと遊びたかったんだろ?遊ぶ友達がほしかったんだろ?」
こくんとクイナは弱々しく頷いた。
「ホントは俺なんかじゃなくてお母さんとかと寝たかったんだろ?でも言えなかったんだろ?」
クイナは先ほどと違い、大きく頷いた。そして… 泣き止むまで頷き続けた…。

話を切り出すタイミングが掴みにくく思えるキャメルだった。
しかしそうも言ってられない、ついに話しかけようとしたその時!
首筋にひんやりと、鉄のような冷たさが伝った。そして後ろからドスの効いた声が聞こえて来た。
「貴様…王女を拉致しよって…おい!兵!このガキを連れてけ!死刑所へな!!」
「ちょっ…待ってくれ!」
「兵士!やめなさい!」
クイナの声は流石にキャメルの時の用に無視はせず、きちんとクイナの方を見、ひざまづいた。
「この少年を死刑所へは連れて行かないで下さい。彼は寧ろさ迷う私を助けてくれた恩人です。」
「!?それはそれは…申し訳ありませんでした。非礼をお詫びします。」
やっとキャメルは掴まれていた腕を放してもらえた。
しかしキャメルは未だなにが起こっているのか、頭の中をきっちりと整理することが出来ないでいた。
「一体どうなるんだ…俺」

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