「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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さしの部屋
スイス
イタリアに夜10時過ぎに到着したというのに、今回のスイス旅行は翌朝に
早速出発というハードスケジュールであった。でも、勢いがある時は勢いに乗っておけ!
っていう主義。何とかなるさと、旅立ったのだ。
最初の日はまず、一気にクールへと向かう。本来旅行の行程に入っていない場所ではあるが、
目的地のツィリスのたった2軒のホテルが反応してくれない事や、町の規模が
あまりに小さい事から、グラウビュンデン州の中で大きいこの街を選んだのだ。
ローマ時代からの歴史がある為、イタリア語での名前を持つ。コイラという。
コイラという名前は、以前、ヴァル・ヴェノスタで行った教会に描かれた
人物がコイラの城主?だったかなぁ、で、その時は、=クールだとは分かっていなかった。
夕方賑わう駅前を抜け、ホテルにたどり着くと、早速様子がおかしい。
レセプションのお姉さんが、困った顔をして、ちょっと待ってくれというのだ。
う~ん。この辺りはドイツ語圏なので、私も英語で話すしかなく、
細かい主張が出来ない。(この翌日からは、イタリア語圏に行くので、一気に強くなる私)
言われるがまま、待っていると、やはり、ネットでの予約が、システムのブロックで
ホテルを通さずに行われてしまっていたというのだ。そして、ホテルは満室。
ああ、こんな小さな街なのに、何でなんだぁ。向こうも、申し訳なさそうに
しているもんだから、他のホテルに電話して予約してって頼んだら、
案外あっさり、受け入れてくれる。その辺がイタリアと違う。イタリアだったら、
インフォメーションの場所を教えてくれるくらいじゃないかな?相当暇でない限り。
早速、部屋を見つけたというが、ちょっとお値段が上がるので、
お姉さんはかなり申し訳なさそうにしている。が、聞くと別に予算内。
そんなところで粘ったって、仕方ないと、あっさりそこに決定。
が、実はこのホテル、値段の割りにかなり良い所で結果的には大満足だったのだ。
街に出て、少し歩いて驚いた。この街はおかしい。アホみたいな、
サイケな格好をしている人が、わんさか居る。普通じゃない趣味だ。
が、広場に出てすぐに分かる。CALANDAとか言うビールの巨大なブースが
出来ていて、皆が飲んで歌って踊っての大騒ぎ。地元ビールのお祭りなのだろう。
で、皆がその為にサイケな格好をしているらしいのだ。う~ん、だからあのホテル、
満室だったのね。そうじゃなきゃ、こんなオフシーズンにおかしいものね。
ビールな祭りだけあって、特設トイレもいっぱいある。男性用は、3人が
向かい合って(つまり外側に背を向けて)用を足すオープンタイプのもので
目のやり場に困る。でも、こんなにさっぱりしたお祭りもめずらしい。ビール飲んで、
サイケな格好で繰り出す!それだけ!?でも、唐突にやってきた者にしてみれば
すっごくおかしい。本当に、すごい格好で可愛い人だらけなんだもん。。。
明日からの旅行に備え、陽気な街を散策して、レストラン見つけて
美味しいラム肉の夕飯を食べて、ふかふかの布団でゆっくりと眠ったのでありました。
さて、翌日は昨日通過した道を戻って、ツィリスへ。
そうそう、この路線。約2時間かかって、昨日はベッリンゾーナからクールへと
抜けたのだけど、面白いんです。最初乗車した時、運転手さんにイタリア語で
話しかけると、ごく普通に対応しているので、安心してたら、ある時、
停車駅の名前が、イタリア語風から、ドイツ語風に変わってくるんです。そうしたら、
当たり前だけど、お客さんの言葉も変わる。運転手はごく普通の事として反応している。
その境目に何があるわけではありません。国境も、目印もない。
ただ名前が変わるだけ。でもね、誰もが二ヶ国語を話せるわけでもなくて、
帰りの運転手さんは、ドイツ語で話しかけられ、「分かりません」とイタリア語で
答えていた。そうしたら、いかにもドイツ顔のおばさんは、下手なイタリア語で、
用件を言うんです。なんとも可愛いでしょ。
さて、ツィリスですが、ホテルらしきものは2、3あるだけ。
牛の鈴の音が鳴り響くそんな町です。バスを降りたら、もう目的地はただひとつ。
サン・マルティン教会です。ここの、天井の板画パネルは修復後まもなくて、
近年公開されたのです。全部で153あると言うけど、どんな感じなんだろう。
奇妙な想像上の動物がいっぱい居るというから楽しみ。
これが外観。BGMはもちろん牛の鈴です。
意外でしたが、ちゃんと受付小屋があって、お姉さんが居ます。
そして一歩足を踏み入れれば分かる。それが、その天井が、どういう事かという事が。
これだけのものを目で見て、感じ取ってある程度記憶するにはどれだけの
時間が必要でしょう。首を上に向けても、目に入るのはほんの一部に過ぎない。
この写真に写っているのも、ほんの一見上げの範囲なんです。
手鏡がいっぱい置いてあって、それを使ってご覧くださいという事になってはいるが
やっぱり、せっかく、ホンモノを目の前にして、虚像を見つめる気にもなれない。
ゆっくり見上げていると、少しずつ、分かるものは分かってくる。何を描いているのか
見えてくる。だけど、さっぱり分からないものはいくら見上げても分からない。
二つに分かれた魚の尾を持つ牛は、棒に結び付けられた1人の男を軽々と持ち上げ
その舌を足の裏に当てる。牙を生やし、象のような白い動物は形の違う3つの尾を持ち、
小さい耳と馬のようで非なる2本の前足を振り上げ、波の上を飛んでいる。
羊の角を持った動物も半身は魚で、顔はまるで驢馬のようでさえある。
静かだけど、濃すぎて、よく分からなくなる時間と空間で、もうこれでお終い。って
思うまで見学して、教会を出る。開いているのか不安になるような売店がひとつ。
絵葉書を見出すと、奥からおばあさんが出てきて、ガラス戸を開けてくれた。
選んだ絵葉書を差し出すと、丁寧に紙袋につめ、その袋に、小さな字で金額を書いてくれた。
昼食は街道沿いのお店に選択の余地もなく入ってみる。おそるおそるだったけど、
扉を開くと、地元の人で賑わっていた。適当に選んだメニューが理想どおりで
私の勘の鋭さに驚く。そこから、再度バスを乗り継ぎ、
ジョルニコという町へと向かう。メルローのワインが有名なんだそう。
ジョルニコにはサン・ニコラオがある。こここそ、動物表現の宝庫と期待がある。
でもまず、教会に向かう前に、レヴェンティーナ博物館へ。
入口が良く分からず、やっと見つけてはいると、冗談ばかり言うおじいちゃんに
向かいいれられる。リュックを受付でおろし、見学。本当はどんな博物館なのかも
よく分かっていなかった。民族歴史博物館と言ったところだろうか。
ミラノ軍との戦い、民族衣装、カカオ砕き機、ロシア軍の控え室、色んなものが、
所狭しと陳列されている。それをおじいさんは誇らしげに説明する。
博物館の外観は大変個性的だ。一体元々は何の建物なのか、未だ分かっていない私も
いただけないと思う。ただ、これから向かう教会への道のりと、超える川が窓から
開放的な景色を見せる。ここは、スイスの山奥なんだ、って思う。川がそういう顔をしている。
橋を渡り、私はニコラオ教会に向かう。さっき、博物館で挨拶をした二人連れも居る。
ファサードの下には2匹のライオンと、兎と牛と、色々な動物が愛らしげに
私を迎える。そう、ここは、以前行った、バーリのサン・ニコロとの共通要素を
指摘されているところなんだ。その共通点は見るからに明らかだ。
これだけの距離と、これだけの気候の違いも、忘れさせる。観たから分かる。“似て”居るのだ。
内部にも動物表現は数多くかくれている。大変質素に思われる単廊式の教会だが、
二層に分かれた祭壇部とクリプタは一般的な形よりも幾分上にずれていてつまり、
クリプタが浅い。そして、柱頭彫刻にある動物が見たことのないようなダイレクトさで描かれている。。
教会を出て、向こうに見える崖の上の要塞のようなお城(オリジナルはロマネスク教会)に
向かうも、修復中で、道をさえぎられる。そして、バスに揺られ、ベッリンゾーナへと向かうのだった。
ベッリンゾーナもまた、中継地点でしかなかった。ユネスコに登録された3つのお城に
囲まれた、それはそれは美しい街ではあるが、私の旅行計画にそれらを見学する時間は
組み込まれていない。私の下の名前を電話で伝えただけのホテル予約に不安もあったが、
到着するなり、電話に出たお兄さんが、君が○○だね、と握手で迎えてくれる。
日曜日で、どこも開いていないから、夕飯もホテルのレストランで食べ、ゆっくりとした夜を
今日も迎えた。窓からは、崖の上のようなお城が良く見える。本当にここは
お城に囲まれた街なのだ。そして、その事を誇りに暮らしている。
翌朝、バスまでの時間が中途半端にあったから、何をしようかと、とりあえず、
昨日散々歩いた街中に足を向ける。月曜日が来たから、様子は思いの外、違う。
お店が開いているから活気があるのだ。店先で、絵葉書を見る。
絵葉書って不思議なもので、その街の自慢ポイントが写しだされているから、
あ、こんなところあるんだぁなんていう発見をすることが多い。今回もそう。
どうやら、私好みの教会があるらしい。早速、名前をチェックして、インフォに駆け込み
地図をもらって覗いてみると、ちょっと城壁を出たところらしい。早速行って見ることにする。
現れた教会には、やはり、この地方にふさわしいサン・クリストフォロの壁画が、
堂々とファサードに見られる。ん?これはなかなかいいぞ。改築され、
ごく日常的に住民に親しまれている感じの教会ではあるが、明らかにオリジナルは
ロマネスクであり、原型を比較的いい形でとどめている方だと思う。
絵葉書になっていたアプシデのフレスコは13世紀くらいのものだろうか。
柱に、めずらしいフレスコも残る。何を描いたものだろう。なかなか見ることのない題材に思える。
さて今日は、今回の旅行の最大の難所というべきところへと向かう。
ネグレンティーノのサン・タンブロージョ・ヴェッキオという教会がその目的地である。
ベッリンゾーナからはバスを3本乗り継いで赴く予定が、途中、バスの待合場で
運転手にどれに乗るかをたずねたところ、始発が出るところまで1回連れて行ってあげると、
誰も他の乗客がいないスクールバスに5分ほど乗せられた。なんとも不思議な状況で、
席の一つ一つにマルコだのサーラだのカラフルなネームプレートがついている。
で、始発から乗ったものの、先程居た、待合場に再度戻ってくる事になった。
なんでなんだろう。事実、その後に乗ったバスの運転手は、待っていれば下まで行ったのに、
っていうんだけど、私は指示通りに動いただけだ。私は、スイス鉄道のサイトから、
オンラインチケット(クレジットで申し込むとPDFでチケットが送られてくる)を
プリントアウトして持って行っていたので、さすがに、そこまで田舎に行くと、
かなり物珍しいらしく、運転手は、大真面目に、チケットの確認をしている。
なんか、模様みたいな部分にプラスチックシートをあてると名前が浮き上がるのだ。
そんな感じで、運転手と和気藹々、山間のレオンティカという小さい町に到着。
そこの、オステリア・チェントラーレというレストランで、教会の鍵を受け取らなくてはいけないのだ。
う~ん、なんて事だ。町があまりに小さくて、お店が1軒しかない。そしてそれが
チェントラーレ。入るなり、特異な客に店員はすぐ、鍵が欲しいのだと気づく。
「そうなんです。教会に行きたいので鍵が欲しいのですが、
その前に、ここで食事をしたいんですが。。。」と聞くと、
「ピアッティ・フレッディ(加熱しない料理、パニーノやサラダなど)しかないんだけどいい?」
と、正直、がっかりもしたが、ここで食べておかないと、夜までありつけないので
仕方なくいいと答える。席に着くと、さっきのバスの運転手が入ってきた。
そうか、ここしかないんだもんね。軽く挨拶する。すると、お店の人が、
「やっぱり、パスタも出来るわ。それと、サラダ。」
イタリアでは、ランチのサラダと言えば、インサラトーネと呼ばれるサラダボールの
ことが多いので、それならばパスタがいいわと言うと、
「違うの、前菜としてサラダも出せるって事。」との事。ふ~ん。スイスでは
サラダを前菜に食べるのね。そう言えば、今までの食事でもそういうことがあったわ。
出てきたサラダは、スーパーのサラダミックスを皿に空けただけ。パスタは、
缶詰のミートソースをかけたリガトーネ。そして、何にも言わないのに、
がっつりしたチーズ一切れが、セコンドとして出てきた。そういうの、
逆に愛くるしいよね。かなりボリュームのあるボディの運転手とおんなじメニューを
平らげる。食べている間には、町人の標本みたいに濃いおじさんたちがとっかえひっかえやって来て、
飽きる事はない。ここが、唯一の娯楽スポットなんだから。。。
さて、デポジットを払って、鍵を受け取り、いざ出発。お店の太っちょお姉さんは
丁寧に説明してくれたけど、実際足を向けてみると、表札が出ていて、迷子になる事はない。
但し、途中からは本格的な山道になり、清流がかなり下に臨まれる。
私は、シーンズにリュックの軽装。なんか、思っていたのより本格的。
30分と言われた道のりも、終盤になって、登山服に、あの、登山用の短いストックみたいなものを
もって歩く夫婦に遭遇。こちらをじろりと見るものだから、やっぱり、私って、浮くかなぁって
思っていると、やっぱり私を執拗に見つめる。そして、私が教会への矢印に
進んでいくのを確認すると、「鍵はお持ちですか?」と。そうかぁ。
この人たち、鍵を持っていなくて、教会に入れなかったから、私を見つめていたんだ。
「ほら、持ってますよ。一緒に行きますか?」夫婦は、本当に嬉しそう。
でも、ちょっとおかしいの。無口なんだよねぇ。この2人。普通、お喋りしたり
するんだけどなぁ。話しかけても、必要最小限の返事しか返ってこない。
そして、5分後、教会に到着してみて分かった。(ページトップの画像参照)そこには、
更に6人ほどの登山客が、教会の扉をガタガタとひっぱってみたりして、そこに居たのだ。
私にすごい視線が集まる。「今、私が鍵で開けますよ」と、鍵を見せると、歓声が沸く。
が、イタリア語でないのだ。そうかぁ。ドイツ語圏のスイス人で、イタリア語が
上手ではない人たちなんだぁ。みんな、私と一緒に嬉しそうに内部に足を踏み入れる。
それでも、先程の夫婦は比較的イタリア語が分かるらしく、彼らを通訳に、
鍵にお金は払ったのかなど、気遣いをしてくる。なかなか感じのいい人たちだ。
管理人も居ないので、フラッシュなしの撮影ならばと、私がカメラを取り出すと、
みんな、じゃあ、僕もってな具合で写真を撮り始めたり、すごく真剣。
ちょっとだけ、騒がしいので、一度外に出て、東から見た教会のところにあるはずの
孔雀のレリーフを見に行く。
本当にさりげないんだけど、不死の鳥、永遠の象徴が実にさりげなく残されているのだ。
ベンチで休んでいると、本当にイタリア語が全然分からないという感じのおじいちゃんが、
一生懸命、ドイツ語でお礼を言ってくる。私が、イタリア語で強引に話し続けても、
嬉しそうにお返事をくれる。確かに、ここはイタリア語圏なのだから。
その後、内部に再度戻って、ゆっくり見学していたら、最初の夫婦以外は、姿を消していた。
皆、元の登山に戻って行ったのであろう。登山日和、、だったしね。
私は、オステリア・チェントラーレに戻り、鍵を返し、コーラを飲みながら、一時間後のバスを待ちつつ、
メモ書きに今日見たことを書いていた。相変わらず、標本みたいな人たちが
とっかえひっかえに店を訪れていた。リリカを歌うおじいさんはただの酒癖悪い
変な人にも見えたりもしたが、町そのものを彩っているような気がした。
その夜はロカルノ泊。やけに安い宿に着いたら、やっぱり人が居なくて、
電話してくれって、張り紙があった。どうやら、ドミトリーもやっているような
安宿だったのだ。でも、通された部屋はツイン。十分だ。文句なし。
翌朝は、偶然ロカルノで展示をしてる作家仲間のギャラリーを見学。その後、
本来の目的地であるムラルトへ向かう。バスで行かなくてはいけないと思っていたのに、
思ったよりもロカルノからずっと近く、単純に駅の裏。そんなわけで、
徒歩で到着。
最初は、駅の裏の味気ない教会にきてしまったかと思ったけれど、実は、
よくみると、素敵なものばかり。
特にクリプタには、めずらしいんだけど、下の方(地面と接触している
部分)にさえ、動物や人物の彫刻が施されえいる。
身廊の上部のフレスコも、目立たないが、興味深い。カインとアベルの図像が
目立っているが、他にも、断片的に色々な表現が見られる。
でもさすがに、移動時間を行程に入れていていた私には余分な時間が多かった。
散々街を歩いて、おいしそうなお店を見つけ、ランチをしてみて、そして、
現代美術のギャラリーを覗いて、そろそろ、旅行は終わり?残ったスイスフランで
銘菓なんか買ってみたり、家に絵葉書を書いて送ってみたり、湖畔を散歩したり。
そして、帰途に着くのでした。その夜は、着替えて、スカラ座でのオペラに出かけたのですが、
実は転寝してしまっていた事、ここに書くのが恥ずかしい。
でも、そういうことを含め、楽しいんだよね。きっと、明日も、私が見たのと
同じような風景が流れる。そしてそれを、誰かが訪れる。何かを綺麗に払拭する。
スイスは、山登りして、自然を眺めるだけの国ではありません。
その立地条件は、実は、複雑な歴史と、誇り高い遺産を持った国なのです。
そう感じながら、インテルシティーは、眠い私を日常のひとかけらとして
運んでいったんだと思うんです。気付く人にか、気付かれないままに。。。
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