ムゥミンの家

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身体の機能 2(循環、神経、その他)

酸素運搬系としての呼吸と循環

酸素運搬を規定する因子
心肺機能のもっとも重要な働きは、大気中より酸素を動脈血に摂取し、組織に送り、組織の代謝に必要な酸素の供給とその終末産物である二酸化炭素を静脈血から大気中に排泄することである.生体における酸素の運搬は、換気、拡散、血液、循環の4つの因子によって影響される.

肺気量と呼吸量
肺気量は1回換気量(1回呼吸気量)、予備吸気量、予備呼気量、残気量にと言う4つの単容量にわけられる.また、腹容量として、深吸気量、機能的残気量、肺活量、全肺気量がある.
これらの中で肺活量は、年齢や体格によって異なるが、日本人成人男子では3.5~4.5リットル、女子では2.5~3.5リットルが正常値とされている.スポーツマンは普通、一般人よりも大きい.また、最大吸息位からできるだけ速く呼息を行わせた時の呼息開始から一定時間までのはき出せる空気量を「時間肺活量」といい、1秒までの量を1秒量という.その肺活量との割合である「1秒率」(=1秒量/肺活量×100)は、成人男子の正常値は85%前後である.1秒率は個人の呼吸筋や胸郭の発達、気道抵抗、肺や胸郭の弾性に左右されるため、肺の動的換気能力を判断する指標として、単なる肺活量より価値があると言われている.
1分間の呼吸の総量を「毎分換気量」という.これは、1回換気量と呼吸の速さによって決まり、その量は安静時において成人で約6~8リットルである.運動を始めるとその量は増え最大毎分換気量は成人男子で120~140リットルである.安静時に意識して最大換気をさせた時には170リットルであるから、運動時に最大の換気を行っていても換気の能力自体は余力を残している.
肺に取り込まれた空気全てがガス交換と関係はしない.気管や気管支などの部分ではガス交換は行われない.この無関係な部分を死腔(デッドスペース)といい、そこに含まれる空気量を死腔量という.この死腔量は解剖学的死腔量と生理学的死腔量に区別されることがある.解剖学的死腔量は鼻および口から気管支に至るまでの約150ミリリットルと言われている.生理学的死腔量とはそれに「肺毛細血管血流のない肺胞に入るガス量」と「ガス交換をする以上に肺胞に取り込まれるガス量」を加えた者である.健康な人の安静時では両者はほぼ一致する.
肺換気量とは実際に肺胞内に出入りした空気量であり、1回換気量は肺胞換気量と死腔量とにわけることができる.肺胞換気量は有効換気量、死腔量を無効換気量と言うこともある.運動強度が上がると肺胞換気量も死腔量も強度の上昇に伴って直線的に増大していく.しかし最大酸素摂取量の80~90%あたりから死腔量は増大の仕方が大きくなる.これは呼吸数の急激な増加による浅くて速い呼吸によるもので、ガス交換という面から見ると効率の悪い換気になっているといえる.

肺拡散容量
肺に取り込まれた酸素は肺毛細血管内へ拡散していき、肺毛細血管内の二酸化炭素は肺胞内へ拡散していく.つまり拡散によってガス交換が行われるのである.拡散とは濃度勾配にしたがって、高濃度の方から低濃度の方へ物質が移動することである.酸素は拡散によって血中のヘモグロビンと結合し、酸化ヘモグロビンとなって運ばれていく.

ヘモグロビンと酸素解離曲線



動きのコントロール系としての神経

スポーツにおける身体運動はほとんどの場合多くの関節を同時に動かす多関節運動である.この多関節運動の制御はほとんど未開拓ではあるが、スポーツパフォーマンスを考える時避けては通れない.

反射運動
反射運動の最も簡単なものは「頭蓋腱反射」である.検査とかでも経験する膝のちょっと下をたたくと、膝がポーンと伸びる反射の事である.膝の下にある腱を叩くと大腿直筋(腿の前の筋)が急に伸展され、筋紡錘が興奮する.筋紡錘の興奮はIa(神経線維)を介して、大腿直筋のα運動ニューロンに興奮を伝え、大腿直筋は伸展に抗って筋収縮を起こす.これはシナプスを1つしか介さない単シナプス反射であり、伸張反射と呼ばれる.
また、Iaは脊髄内で枝分かれしてさらに2本に分かれる.1つは下位の脊髄レベルに降りて、抑制性の介在ニューロンを介して抑制信号を同側の拮抗筋(大腿二頭筋)のα運動ニューロンに与え、活動を抑制する.もう1つは反対側の1つ下位の脊髄レベルで興奮性の介在ニューロンを介して、興奮信号を反対側の大腿二頭筋に伝え、活動を促進する.これらはシナプスを2個介するので2シナプス反射と呼ばれる.
これを肘関節の屈筋、伸筋で見てみると、同側で同一脊髄レベルでの単シナプス反射と抑制性の2シナプス反射の組み合わせになっていて、屈伸の連続動作が反射的に効果的に行われる仕組みになっている.上腕二頭筋(屈筋)のIaは上腕二頭筋に興奮を伝え、上腕三頭筋(伸筋)には抑制信号を伝える.伸筋のIaも同様に自らに興奮を与え、拮抗筋を抑制する.このような1つの関節に付着した筋の相互の反射を筋平衡反射と総称する.
抑制性の2シナプス反射の良い例が腱器官による反射である.例えば大腿直筋の腱器官が伸張されると、Ibが脊髄に入り、抑制性の介在ニューロンを介して 大腿直筋のα運動ニューロンに抑制信号を与え、腱への負担を軽減するように作用する.
また、3つ以上のシナプスを解する場合を多シナプス反射と言い、痛み刺激などによる広範囲な屈曲反射などがその例である.

随意運動
随意運動を制御する神経系の機能の解析については近年めざましい伸展を見せているとはいえまだまだ未解決の部分も少なくない.したがって生理学的に考えるよりも、システムとして考えると、わかりやすい.
随意運動の指令はある目標値をもって与えられる.中枢神経はこの目標値を検知器(受容器)で量的に検知し、比較器によって現在の運動状態と目標値との差を比較する.その差をフィードバックし、その差をゼロに近づけるように制御装置により制御対象を制御する.たとえば、肘をまっすぐに伸ばそうと言う目標値を与えると、目や筋紡錘などで目標値と現在を比較する.目標とされる状態はどういう状態か、現在の肘の角度や角速度などの情報を量的に集め、比較するのである.制御装置である神経は、その差がゼロになるように筋を制御する.これを繰り返し、その差がゼロであると見なされるまで制御が繰り返される.

多関節運動の特性
全てのスポーツは多関節運動であるが、特に走、跳、泳、漕等の運動では多関節運動系全体の出力が問題とされる.つまり膝関節のみの出力とかが問題になるのではなく、股関節、膝関節、足関節が繋がった状態での出力が問題になると言うことである.
走運動の場合、地面を蹴る力は単純に考えただけでも、股関節、膝関節、足関節のが繋がった状態での出力である.この場合、股関節、膝関節、足関節は直列に繋がっているため、一番弱い関節に規制される.強さの違うバネを直列につなげたものを想像するとわかりやすいかもしれない.直列に繋がったバネは一番弱いバネの力に制限を受ける.ここからわかるのは、パフォーマンスをあげようとするなら、直列連結系の一番弱い所を鍛えるか、もしくは伝達要素化することである.つまり、一番弱いバネを強いバネと交換するか、バネをやめて単なるひもにするかである.
身体運動を多関節運動系として解析すると言うことは、その系の一番弱い出力関節はどこかを明らかにすることである.これは力学的な特性と共に、筋作用機序の特性から解析する必要がある.これはバイオメカニクス的な知識が必要なため、詳細はそちらに譲る.


身体のはたらきと環境

高圧、低圧あるいは高温、低温下で行われるスポーツの種類は多く、それらは生体に対して異常なストレスを与える.

気圧と運動
低圧環境では筋への酸素供給度が減少する.平地では動脈血の酸素分圧は90mmHg、静脈血は40mmHgであるから差し引き50mmHgの酸素が利用できる.しかし、6,000mになると40mmHgと26mmHgになり、14mmHgしか利用できなくなる.これが特に持久性能力の低下を招く.
低酸素環境では酸素供給が低下するが、その環境に長期滞在すると血液や筋肉に酸素輸送を増大させるための変化が生じる.この現象を利用して生理学的機能を高めようとするのが高地トレーニングである.しかし、高地トレーニングによる結果は、今のところ予想に反して、効果が高地トレーニングによるものか判定不可能だったり、全く認められなかったりの状況である.その最大の問題点は高地トレーニング強度が上げられないと言うことである..現在では、トレーニング強度の低下を補うため時々平地に戻る方法(インターバル高地トレーニング)や、平地に設けた低酸素室を用いて、トレーニングは通常通り行い、それ以外を低酸素室で過ごす方法などが考えられているが、まだ研究中の段階である.

地下あるいは水中は生体に取って高圧環境となる.特に水中スポーツでは推進に比例して大きくなる圧力が生理学的に重大な変化をもたらす.
水深が深くなるにしたがって吸い込んだ窒素が徐々に体内に拡散していく.身体内に拡散した窒素は、中枢神経に影響を与えて、窒素麻痺と呼ばれるアルコールに酔ったような現象を引き起こす.これは死の恍惚とも呼ばれ死と直結しやすい.
また、深深度から急激に浮上すると、窒素は体内で気泡となる.炭酸飲料のふたを開けた時に泡がでるのと同様の現象である.小血管内の窒素の気泡は血栓となって血液の流れを止めてしまう.そのためいわゆる潜函病が発生する.
また、ボンベへ詰められた高圧酸素が、酸素中毒の原因となる.吸気の酸素分圧が高いと、呼吸路を刺激し気管支肺炎を起こしたり脳血管を収縮させて中枢神経系に重篤な支障を起こす.さらに二酸化炭素とヘモグロビンとの結合を妨げ、除去量を減少させる.このように高圧環境が生体に及ぼす影響についてはいろいろ明らかになってはいるものの、高圧環境に対するトレーニング効果あるいは処方については未知である.

気温と運動
低温に対して生体は、皮膚血管を収縮させて皮膚の断熱効果を増す.そのため皮膚温は低下する.特に、四肢の末端に行くほど低下の度合いが大きくなる.その結果、手や足の指先に不快感や痛みを感じるようになる.手指の温度が20℃になるとその感受性は35℃の時の約1/5になる.低温に対してはふるえによる産熱もあるがその効果はきわめて微々たるものである.熱損失が産熱を上回るようになると体温の異常降下が始まる.次第にエネルギー源も失われ神経筋協調能も不調になり、脳が冷却し死に至る.
運動中には大量の対遮熱が発生するため、高温環境ほどの影響を与えることは少ない.しかし、水温阿摂氏0℃以下になったり、低温の風邪に遭遇すると運動能力の低下は免れない.体温が低下するにしたがって酸素摂取量などが低下する.
体温の冷却は空気中を移動する速度によって大きな影響を受ける.例えば0℃で無風の時冷却率は約5cal/m^2/秒であるが、風速1m/秒で22calになり4m/秒では40calにもなる.言い方を変えれば気温7℃の時に自転車で時速20kmで走れば身体には-1.4℃に感じ、時速60kmでは-9.4℃になる.
低温環境での運動が生体にどのような影響をもたらすかについての研究資料は乏しい.

高温下で運動を維持するためには熱放散のために皮膚血流を増やさなければならない.結果骨格筋への血流が押さえられてしまい、運動能力が低下する.それを解決するため生体内ではいろいろな生体的変化や調整がなされている.
循環調整: 高温下では1回拍出量が低下する.そのため心拍数を増やして拍出量を保つ.また、胃腸や肝臓、腎臓への血流を制限して、発汗のために皮膚血管への血流を増やす.
脱水: 汗によって水分が大量に失われる.水分損失量が体重の1%程度ならば生理的に何ら異常は生じない.しかし失われる水分の出所は主として血液であるため、4~5%に達すると循環血液量が減少し、生理機能や運動能力が著しく低下する.
運動をすると気温や運動強度に応じて汗をかく.発汗が始まるとまず組織間液の水が失われる.汗の円分量はわずかであるため組織間液の塩分濃度が濃くなる.すると浸透圧現象で筋細胞の水が組織間駅に移り、今度は筋細胞の濃度が濃くなる.次にこれは血液の水分によって薄められる.そのまま汗をかき津づけると血液の塩分濃度が濃くなっていく.
塩分濃度の濃い血液は、心臓の働きを乱し、生命維持にとって大変危険な状態となる.そのためこの血液が脳に送られると脳は汗を止める命令を出す.こうして汗が止まると体熱が放散できなくなり日射病や熱射病などの熱傷害を起こし、最悪は死に至る.汗をかくとのどが渇くのは、そういう状態にならないように水を飲めと言う信号である.発汗による減量は重量制限のある一部のスポーツでやむを得ず行うことである事を認識しなければならない.
このような生理学的事実があるにもかかわらず、ちょっと前までは運動中は水を飲むなと言われてきた.それは、「汗をかくとばてる」から汗の元となる水分をさけると言うような意味だったり、自由に水を飲むと飲み過ぎてしまうからと言う理由が多いようだ.確かに水を一気に飲みすぎると「ばてる」事がある.しかしのどの渇きを我慢せずにこまめに取るようにすれば一気に水を飲むことはない.それで暑さをしのぐための汗を制限してしまっては、より体温は上がり運動能力を下げてしまうため逆効果である.事実、汗と同量の水を摂取するのが一番体温が上がりにくく、その次に自由に水を飲む場合となり、全く水を飲まない場合は体温が一番上がるだけでなく疲労困憊になるのが最も早いと言う研究結果がある.そのとき自由に水を飲んだ量は汗の量の2/3にも満たなかった.のどが渇いて水が飲みたくなるのは、実際に起こっている水の不足よりも遅れる.したがって、長時間の運動をする場合には前もって水を補給することも必要である.
トレーニングをすると体温が高まるため、それを放散するための機構が働く.したがって高温環境でなくても、トレーニング自体が高温馴化をもたらす.高温馴化の生理学適応には次のような現象が認められている.
  1. 皮膚血流量が増加する -> 退社による身体深部の熱を能率良く体表面へ運ぶ
  2. 心拍出量の配分効率が良くなる -> 皮膚や骨格筋への配分が効率よくなる.
  3. 発汗生き血が低くなる -> 発汗が始まる時点が早くなり、冷却効率があがる.
  4. 皮膚上での発汗の配分効率がよくなる -> 有効面の使用が適切になる.
  5. 発汗量が増加する -> 蒸発による冷却が大きくなる.
  6. 汗の塩分濃度が減少する -> 体内の電解質の損失が少なくなる.

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