レバノンは古代フェニキア人の居住していた地域になる。かつてのレバノン山脈には森林が広がり、フェニキア人はレバノン杉を材料にしてガレー船を建造して、地中海を航行した。レバノン杉は年輪が緻密であるから、船舶や宮殿建築などにも多用される高価な木材だった。エジプトのミイラの棺がレバノン杉なのは知られている。フェニキア時代からレバノン杉の森林が伐採されてきたので、現在はガディーシャ渓谷などにわずか1200本が残っているに過ぎない。レバノン杉の森は世界遺産として認められている。 直立した幹の外観が杉に似ているので、レバノン杉と呼ばれているが、本来はマツの仲間である。日本でありふれた樹種の杉は、世界に10種類程度しか残存しない古代針葉樹であり、北米のセコイアや中国のメタセコイアなどが奇跡的に残存している。有名なヒマラヤ杉も同じくマツであり、レバノン杉とは近縁関係にある。レバノン杉の寿命は3000年近くあって、植林しても一人前になるには百年程度必要になる。レバノン山脈が草地になっているのも当然かもしれない。
レバノンは中東で唯一砂漠のない温暖な地域であり、この豊かな土地をめぐって古代から戦いが繰り返されてきた。レバノン杉を植樹するには、安定した経済と政権が必要になる。中東のパリと呼ばれるほど繁栄した歴史があるベイルートの現状は悲しい。容赦のない空爆を行うイスラエルと自爆テロを主張するヒズボラとは、永遠に和解する時代は来ないかもしれない。古都ビブロスには十字軍時代の要塞があるというから、厳しい宗教戦争が昔から続いていたのである。といっても、少しの慰めにもならないが・・・。
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