球根

レクイエムが歌えない



暗闇だけを背負って生まれてくる人なんていない筈
きっと誰もが光と影を命と共に抱いている
光が眩しすぎたり影が重すぎたりしながら
それでもここまで一緒に泳いできたから、
多分この先も大丈夫って、何の根拠があったのだろう

いきなりあなたを失くしてしまって、今まで自分たちが信じてきたものすべてがわからなく
ただただ力の無さを思い知らされた
たった一人の女の子を生きることに向かわせるのに、何が必要だったのか
何も知らずにいた私には、
どうすることもできなかった、本当に?

わかろうとなんてしなかった
より愛すことさえしなかった
勝手に線を引いた
限界なんか人間に決められることではないだろうに

どうして、なぜ、答の出ない問いかけは、受けとめる人のいないまま
宙へふわふわ流れ出て、明日が来るたびめぐって来る

あなたが手を振りながら去ってゆく
温い暗がりにのみ込まれていってしまう
私たちの声は届かない
行かないで、行かないで、
呼ぶ声は聞こえなかっただろうか?
顔を思い出してはくれただろうか
最後に、何を、想ったのだろう
それは、あなたをこちらに引き留めはしなかったか
一つも心残さずに、深い海の底へと沈んでいったのか
それとも空より高いところに召されていったのか

無くなってしまったら、どこに心をぶつけていいかわからないから、
写真とか、思い出とか、ものすごく頼りないものにすがるしかなくて、
行き場がない、逃げ場がない
追い詰められて、後がない

あなたがいなくても日々は変わらず、流されていると忘れてしまいそう
忘れるほうが、刻みつけるより楽なのはわかっている、けれど
一度ついた傷が消えないことも知っている
できるだけ浅ければ痛みも少なくてすむけど
心にでこぼこ穴があいて、何かで埋めようとしているけれど

あなたを救えなかった私が、誰かの救いを欲しがっている
本当に魂を静めてもらいたいのは、私のほうかもしれないと
弱すぎる
償わせてほしいのに


残されて、生きている
歌えない鎮魂歌をかかえたまま

2000.8/16

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: