「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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ワインアドバイザーの食卓
奈良県、久保本家
奈良県で旨い地酒を造っている「久保本家」さんに行き、蔵見学させて頂きました。
久保さんとは、ある勉強会で知り合ったのです。
お取引をさせていただくにあたって、最初久保さんから
「蔵見学をしていただいてから」
と言われたのです。
高知と奈良、仕事の都合上、そう簡単には行けません・・・。
一刻も早くお取り扱いをさせて頂きたかった私・・・。
そこで特別に、まず久保さんが当店まで来てくださいました。
私も「年内に必ず蔵に行かせて頂きます!」と約束をし、機会を伺っていたのです。
「蔵見学をしていただいてから」
この言葉に対し驚かれた方もいらっしゃると思います。
ですが、蔵見学をして納得しました。
ここまで手間をかけて造っているのに、
おいそれと簡単にポイポイ売るわけにはいかないのだ!と・・・
久保本家さんは、阪急近鉄線「榛原(はいばら)駅」から車で20分くらい。
周りを山に囲まれ、山からの新鮮な空気と清らかな水に恵まれた土地。
「又兵衛桜」という「しだれ桜」が近くにあるので、桜好きはご存知かも?
古民家と蔵がくっついている大きな建物
家が築100年(庭が素敵でした)。
250年前の蔵(現在は試飲スペース)もありました。
年間500石(1升瓶で言うと、5万本)
それを蔵人6人で造っています。
こちらが専務の久保順平さん
穏やかな顔ですが、酒造りはアツいハートを持っています。
そして杜氏の加藤克則さん。
久々に凄いオーラの出てる方にお会いしました。
(杜氏の写真は無し。撮ってもいいですか?って言えなかった・・・)
米は、地元の契約農家と徳島の契約農家があり、その年の出来、つまり杜氏が米を見て、その年の使い方を決めています。
水は吉野山の伏流水。
米麹つくりですが、まず蒸した米に麹菌を混ぜ込みます。
そして、まず保温。
状況を見て、じょじょに乾燥させたりもします。
麹菌は、もちろん水分が無いと生きられません。
だから、水分のある米の中へ繁殖していくのです。
こうして、米の表面だけでなく、芯まで麹菌が根をはった強い米麹の完成。
そして次の作業
「もとすり」
これがカルチャーショックでした!
(「もと」は酒へんに元と書きます。パソコンで出ない・・・)
(「すり」は「摺り」と書きます)
普通の蔵は、タンクに米、米麹、水、酵母を入れます。
(これらを混ぜたものを「酒母(しゅぼ)」と言います)
そこから発酵が始まるのです。
大き目の「たらい」に、米、米麹、水を入れる(酵母は入れない)
そして櫂(デッキブラシのブラシが無い物を連想してください)を使い
2人がかりで、円を描きながら摺っていくのです。
これを休み無く40分くらい。
すると、最初大きかった米の粒が、だんだん細かくなるのです。
粘土状になるのではなく、どちらかと言うとサラサラ状。
これをすると、このサラサラ状物体の中では、亜硝酸還元菌ができて亜硝酸を作り出し、雑菌を殺します。
そして亜硝酸還元菌は亜硝酸によって死滅し、この中は
ほぼ無菌状態になるのです
ここでやっとタンクに入れて酵母を添加します。
だから最初、酵母は安全な状態で繁殖できるのです。
でもまだまだ作業はあるのです。
酵母の繁殖次第では、櫂を入れてかき回します。
ただ回すだけでなく、
押すときに勢いよくするか、引くときに勢いよくするか
そのときの発酵の状況により、そこまで決めてるのです!
これは、今「流行形」と言われるフルーティな香りを出さないためでもあります。
これにより、温度変化を激しくし、
酵母にとって過酷な状況を作り出し、
弱い酵母は死に、強い酵母だけが生き残ります。
つまり、米、麹、酵母、全てに強さを求めているのです。
仕込みのとき
タンクの温度が上がったら、普通はタンクを冷却します。
けれど久保本家さんは、氷をタンクの中に入れます。
(その仕込み水は減らす)
「きもと」の酒は、発酵50日・・・すげぇ・・・
左:この板は250年前に使ってた樽を再利用(リフォームの番組に出てきそう)
右:250年前に酒つくりをしてた蔵を「試飲スペース」にしている。
ジャズが流れるオシャレな空間。
左:瓶を洗って乾かしている、奥に見えるのは瓶詰機
右:この中にお湯をはり、日本酒を入れたケースを中に入れて
65度で殺菌。全て手作業。
久保本家さんの酒は、全体的に「切れ味が良さ」がズバ抜けてます。
・冷やは、もちろん旨い
・燗酒も、飲みやすくて旨い
・燗冷ましも旨い
・色々な料理に合う (醤油、味噌系の料理は特に)
・飲み飽きしない
・万人ウケするタイプ
まさに理想のお酒。
でも奈良県では、あまり置いている店が無いとか・・・。
もったいない!
比較的涼しい県で、せっかく旨い燗酒になる地酒があるのに・・・。
だから・・・当店でしっかり売ろう! と心に誓いました。
久保本家 初霞 特別純米 720ml
ちなみに「夏子の酒」の作者、今は「オンサイト」を書かれている、
「尾瀬あきら」さんが、蔵に遊びにきて作業をすることもあるのだとか・・・。
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