先物取引の実態(経験者談)


 容疑者の仕事は牛乳販売ということだが、儲からない仕事という話を聞いたことがある。それに加えて母親は殆んど寝たきりで自らも介護していたと。
 これだけでも充分悲惨なのだが、先物取引で借金を作ったということだ。
 実はこの先物取引、無作為だかリストがあるのかわからないが、いきなり電話での個人宅にもセールスが来る。
 ごみかきは経験者である。
 リスクの部分は殆んど話さずに今○○を買えば絶対に儲かるという話をいきなりする。ごみかきの時はプラチナ(白金)だった。絶対に値上がりする社会的背景を事細かに話す。ある意味営業マンもその値上がり説を信じていると言える。そうでなければこういった営業はできないだろう。その上で今買えば下がることはないというように時間的なプレッシャーをかけられる。残りは最後の○個お早めに、みたいな感じ。
 それで財産の一部で少しだけやってみる気になる。
 そうしてやり始めたら止まらないだろう。かならず、資金に余裕があるのなら今回のチャンスを逃すと後悔すると全財産を投入するはめになる。
 もう一つ先物取引の恐いところは最悪の場合ゼロで終わる株と違い、マイナスつまり借金を背負うことになるのだ。なぜそうなるかというと資金で直接現物を買い付けるのではなく、取引の権利を買うからだ。例えば100万円の資金がある場合、それは現物の購入費としてではなく、1000万円分の物を動かす権利を得るということなのである。その時点で既に100万円を担保に1000万円の借金を背負ったも同然なのだ。(書いていて今気づいた)
 だから値上がりした時は10倍儲かるが、損も10倍なのである。従って予想に反して値下がりした時は元本をはるかに下回る結果(マイナス・負債)もあり得る。
 それと追証(おいしょう)というシステムが更に失敗した時のマイナスを大きくしてしまう。
 先ほどの話で1000万円分購入したものが10%値下がりするとマイナス100万円になるのだが、その時点で追証つまり追加の資金を入れれば1000万円分の購入の権利は継続されるのだ。払わなければ元金の100万円はゼロになってゲームオーバーなのである。
 この時に営業マンは絶対に値上がりするから、追証を払った方がいいとアドバイスするだろう。100万円は全財産だということを承知の上で・・・
 実は法律上は資金が無い状態つまり借金をさせて先物取引をさせるような営業は禁止されている。そのことは業者のパンフレット自体にも明記されている。現場の営業マンはあまりその規定を尊重していないようだ。もしこうした営業がされているのであれば違法であるのだが、いかんせん複雑な構造が被害者にプレッシャーを与え泣き寝入り状態にさせるのだと思う。
 もしこの親殺しの容疑者がそうした違法な営業方法の被害者だとしたら、心中をしようとする前になんとかなったのではないかと思うのだ。
 ごみかきは幸いにも損をする前にやめることができたが、合法的な商行為とは到底思えなかった。法律で認められていることが不思議である。
 しかし、先物取引は相場を安定させるという利点もあるらしい。
 日本でも古くから米の先物取引が行われていたという。
 だとしても、現在はそういった本来の先物取引の目的である相場の安定確保とはまったく別の方向に暴走しているような気がするのだが、どうだろう。


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