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「父が死んだ。電信柱に頭をぶつけて。生真面目に生きてきた父が電信柱に頭をぶつけ、真摯そのものだった人生に幕を下ろした。」(P005) 死んだ父 は80歳を過ぎた老人で、名前は コ・サンクウ 。 前職がパルチザン だそうで、似たような年恰好で 脊椎狭窄症の母 と二人暮らしでした。
「お葬式」小説 です。
「面白い!面白い!」 と、ボクがどんどん読めてしまった理由は、 「前職パルチザン」の両親の生活 に対する興味がまずありました。ボク自身の 現代韓国社会に対する関心 に。ほとんどジャストミートで応えているところです。
「ユーモア」小説だ! ということですね。
ぶっきらぼうなユーモア あるいは、自分を笑うというか、集まった人たちに対するちょっと醒めた眼で語り続けてられています。
父の遺灰を握ったまま、私は泣いた。 ドタバタだった 葬儀 の終わりに、初めて涙を流すシーンの冒頭ですが、 「パルチザンの娘」 を生きてきた語り手が、 パルチザン以前 に、
人間として生きた父親の素顔の発見! にたどりつく感動のラストです。
チョーありきたりです! しかし、 パルチザンの娘 として偏見と蔑視にさらされて生きることを押し付けられた50年の人生の苦闘の結果、あたり前の人間として生きた父親の遺灰を抱きしめるかのラストは、 社会、家族、個人 という、まあ、 吉本隆明ふう にいうなら、 共同幻想、対幻想、個的幻想 という、人間存在を縛る幻想性の衝突と和解を文学的に昇華させんとする作家の力技のなせる業だと思いますが、実に、感動的ですね(笑)。
本書は 2022年 に韓国で刊行された 「父の革命日誌」(チャンビ刊) の全訳である。 まあ、これだけでお隣の国の政治、社会のことをいかに知らないか実感したのですが、一人の人間が「書く」という時に、今、生きている社会にたいして、書き手がどんな覚悟をもっているのか、読み手の側も、腹を据えて読む必要を実感した読書でもあったわけです。
著者 チョン・ジア は、美しい智異山(チリサン)と蟾津江(ソムジンガン)に囲まれた全羅南道(チョルラナムド)の求礼(クレ)で生まれる。父はかつて全羅南道党組織部長であり、母は南部軍政政治指導員であった。父は長い期間にわたって収監され、娘のチョン・ジアは軍部独裁政権下で多感な時期を送った。
1990年 、 「パルチザンの娘」(全三巻) という実話をもとにした長編小説を書き、センセーションを起こした。 チョン・ジア はパルチザンの娘である自分に課された使命だと思って執筆したと述べており、両親がパルチザンになったいきさつや、どのような活動をしたのかについて記録した。
ところが思想の自由が保障されていなかった当時、 「パルチザンの娘」 は刊行直後に 国家保安法違反 により 発禁処分 を受け、 チョン・ジア は指名手配され逃避生活を余儀なくされた。
チョン・ジア (チョン,ジア) 韓国の 新しい文学 、翻訳も揃い始めています。面白そうですよ。
1965年、韓国・求礼生まれ。1990年、自身の両親をモデルにした長篇小説『パルチザンの娘』で作家デビューするが、発禁処分となる。作品集に『歳月』(新幹社)など。李孝石文学賞ほか、数々の文学賞受賞。
追記
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