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鈴ノ木ユウ「竜馬がゆく 9 」(文藝春秋社) トラキチ君の2024年9月のマンガ便で届きました。鈴ノ木ユウ版「竜馬がゆく」(文藝春秋社)第9巻です。8月30日の新刊です。「早いなあ、出たばっかりやん(笑)。」「まあな。新しく登場する名前が覚えられへん。」「ふーん、自分らの世代でもそうか。」「でも、まあ、話は面白白いからな。」 トラキチ君は40代になったばっかりですが、幕末は、遠い昔というか、初めて出会う歴史なのでしょうね。シマクマ君は、なぜ、そうだったのかわかりませんが、10代で、幕末の志士とかの、まあ、竜馬、西郷、高杉というようなビッグネームの、ちょっと外まわりの人物まで知っていました。マンガとかで読んでいたのでしょうかね。まあ、学生時代の最後の卒論とかで、吉田松陰についていじったりしましたから、普通の人よりはその時代をうろついたわけで、子供のころからとか、思い込んでいるだけかもしれませんが。 さて、第9巻では、少しマイナーですが、しかし、幕末史に名をのこした歴史上の人物たちが、次々と、新しく登場してきます。 土佐でいえば吉村寅太郎、安岡嘉助、那須慎吾という勤王党の面々、長州では久坂玄瑞という吉田松陰門下の俊才たちですね。原作が、かなり丁寧な歴史小説ですから、まあ、当然といえば当然ですが、司馬遼太郎は町娘から船頭にいたるまで、おそらく、なんらかの裏を取って登場させているはずです。 まあ、寝待の藤兵衛がホントにいたかどうかあたりから虚実が問題になりますが、そっちを考え始めると、司馬遼太郎の小説論の問題になりそうですね。 とか何とか、考えていて思い出したのが、安岡章太郎という作家の「流離譚」(講談社文芸文庫)という作品です。 この第9巻に登場する土佐勤王党の安岡嘉助という人物は、兄が覚之助で、ともに幕末の志士として名を残しますが、嘉助は天誅組の乱で獄死、覚之助は会津戦争で戦死します。で、その経緯をたどったのが「流離譚」なわけですね。お二人は作家安岡章太郎の先祖で、作品は傑作!歴史小説 ですね。 傑作といったのは、まあ、ボクの評価ですが、幕末という時代を生きた人間の姿を、こちら側から描いた作品としては、司馬遼太郎的大衆性はありませんが、読みごたえのある傑作です。 で、第9巻の話にもどりますが、名場面はこちらですね。 姉、乙女との別れです。原作は大昔に読んだのですが、この場面はなんとなく覚えていました。竜馬、いよいよ脱藩! 10巻以降が楽しみですね。 追記 ところで、このブログをご覧いただいた皆様で楽天IDをお持ちの方は、まあ、なくても大丈夫かもですが、ページの一番下の、多分、楽天のイイネボタンを押してみてくださいね。ポイントがたまるんだそうです(笑)
2024.09.27
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鈴ノ木ユウ「竜馬がゆく 8 」(文藝春秋社) 快調に幕末史を駆け抜けるように描いている鈴ノ木ユウの「竜馬がゆく 8 」(文藝春秋社)がトラキチクンの2024年5月、二度目のマンガ便に入っていました。 土佐に帰った竜馬の苦闘が描かれている巻でしたが年代を整理すると、第8巻の巻頭の71話からの事件が、後に「井口村刃傷事件」と呼ばれている土佐藩の郷士、上士がぶつかり合う血みどろの幕開けの事件で、1861年3月、続く事件が「土佐勤王党」の結党で、同年8月、で、この巻では、まだわからない龍馬脱藩が1862年3月です。 7巻で江戸から帰国した竜馬が土佐で巻き込まれたのは、関ケ原以前の領主、長曾我部の家臣と、以後の山之内の家臣を「郷士」、「上士」と分けて、身分的上下関係で統治してきた幕末土佐藩の宿痾! ともいうべき現実で、78話あたりから登場した参政吉田東洋の暗殺、まだ姿を現さない山之内容堂の復権、武市半平太の処刑と続く、幕末史の中でも、とりわけ殺伐とした藩内闘争のはじまりのシーンなのですね。 坂本龍馬が幕末の志士と呼ばれている人たちの中で、独特のスタンスに立った理由の一つは、まあ、素人考えですが、土佐藩の、この内情をその目で見たということが関係していると思いますね。 で、8巻の名場面はこれです。 江戸の長州藩の藩邸で開かれた草莽決起の集会 に登場した高杉晋作ですね。まあ、それにしても、独特な顔で描きましたね。ちょっと笑ってしまいましたが、竜馬、晋作と登場して、まだ、当分、出てきそうもありませんが、西郷隆盛はどんな顔で描かれるのか、チョット楽しみですね。 8巻の、もう一人の新顔は乾退助ですね。彼は上士であるにもかかわらず、やがて勤王党に参加するはずですが、8巻ではまだ吉田東洋の周辺人物です。ハイ、自由民権のあの人、板垣退助として100円札だったかで有名になる人です。 まあ、とにかく、次号はどうなるのかな、脱藩まで行くのかな?そういう感じですね(笑) 追記 ところで、このブログをご覧いただいた皆様で楽天IDをお持ちの方は、まあ、なくても大丈夫かもですが、ページの一番下の、多分、楽天のイイネボタンを押してみてくださいね。ポイントがたまるんだそうです(笑)
2024.05.17
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鈴ノ木ユウ「竜馬がゆく 7 」(文藝春秋社) 愉快な仲間のトラキチクンが毎月運んでくれる「マンガ便」ですが、2024年の3月の「マンガ便」に入っていたのは鈴ノ木ユウ「竜馬がゆく 7 」(文藝春秋社)でした。 江戸で剣術修業をしていた竜馬の、土佐への帰国途上のエピソードが描かれていて、幕末の風雲急な時代の始まりを予告する、「竜馬がゆく」という物語の節目の第7巻でした。 ところで、このマンガの原作は司馬遼太郎の「竜馬がゆく」(文春文庫・全8巻)ですが、実は1962年から1966年にかけて産経新聞の夕刊に連載された新聞小説なのですね。思えば半世紀も昔の作品ですが、作家を、時代を越えた流行作家にした出発点になった作品ですね。 で、もう一つの特徴ですが、一般には、この作品が「歴史事実」に対して「ウソ」=「作りごと」のない「歴史小説」であるかのように読まれてきているのですが、実は「ウソ、偽り」で面白さを担保した「時代小説」 ということですね。 たしかに、歴史上の人物の伝記的事実を柱に描かれていて、いかにも歴史事実を忠実にたどっているかに見えるのですが、実は、司馬遼太郎流といえばいいのでしょうか、想像上の人物を登場させたり、こうであっただろうという、まあ、想像を書き込むことで新聞小説の読者を喜ばせる、あるいは、飽きさせないことを狙ったのだろうと思われる「ウソ」が随所にはめ込まれていて、作家の思惑通り、だから面白いのですね。 この第7巻で、竜馬の一の子分として活躍する寝待の藤兵衛は、司馬遼太郎の創作した最も優れたキャラクターの一人でしょうね。「このろくでなしが」「・・・・」「・・・・」「竜馬どの」「旦那だって人殺しの術を使う剣客でしょうが」「盗賊の人殺しと一緒にするな」「武士の剣は千年の・・・考えぬかれた義と理と法とがある武士道じゃ 武士はその道によって人を斬り時には己も斬る」「な~に勝手なことを言ってんだい 殺しは殺し…一緒だろ」 このシーンそのものが、かなり作り話的だと思うのですが、藤兵衛はもちろんのこと、同席しているのが、三条家で見習いをしている、土佐藩の家老だかの娘お田鶴というのもすごいのですね(笑)。 で、司馬遼太郎のえらいところは、まあ、会話をお読みください、この席で、やがて、「武士道」を相対化して新しい世界を作り出してゆく坂本龍馬誕生! の、産婆役として藤兵衛に「殺しは殺し、一緒だろ」とと、実の重要な発言させているのです。坂本龍馬という歴史上の人物の、歴史的改心、あるいは、武士からの脱皮の瞬間をこうして描いてみせるのが「司馬史観」に特有のテクニックですね。 さて、この巻後半、68話から、70話、土佐に帰った竜馬が出会うのはアメリカです。まだ出てきていませんが、この時代の土佐には、あの、ジョン万次郎がいるのですね。楽しみです。 追記 ところで、このブログをご覧いただいた皆様で楽天IDをお持ちの方は、まあ、なくても大丈夫かもですが、ページの一番下の、多分、楽天のイイネボタンを押してみてくださいね。ポイントがたまるんだそうです(笑)
2024.03.21
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鈴ノ木ユウ「竜馬がゆく(6)」(文藝春秋社) 2024年、1月、トラキチクンのマンガ便は絶好調! 鈴ノ木ユウ君の「竜馬がゆく」(文藝春秋社)第6巻です。2023年11月30日新刊です。 開巻早々、まあ、前号からの続きですが、土佐藩主、山之内容堂公主催の剣術大会で、長州の俊才桂小五郎を頭突きに次ぐ、突き一本見事に決めて倒すというかっこいいシーンがこの場面です。「郷士の子には惜しい腕でござりまする。」「うむ 上士ならばさっそく予のそばで話の相手にでもさせるのだがの。だが、郷士の子は郷士・・・一生虫けら以下じゃ」 試合を見物していた容堂と、そのおつきの者の会話です。「予のそば」は「余のそば」が正しいのじゃないかとか、「話の相手にでもさせる」という言い回しが、ちょっと変な気がするとか、まあ、小さなことですね(笑) 郷士というのは、土佐藩の場合、関ケ原の合戦まで治めていた長曾我部家の旧臣ですね。関ヶ原の結果、土佐の国主は、それまで掛川藩主だった山内一豊の山内家になりますが、長曾我部に仕えていた武士たちが半農半兵の郷士として残りました。農民武士ですね。上士、下士と身分を区切る場合は下士のことで、くっきりと身分が分けられていたようです。 というわけで、藩主山之内容堂に「郷士の子は郷士、虫けら以下」 といわれた土佐郷士、才谷屋の坂本龍馬が、二度目の江戸剣術修行を終えて帰国するわけですが、時は安政5年、1858年ですね。幕府大老井伊直弼が勅許なしで日米修好通商条約を結んだのが、この年の6月ですね。安政の大獄の始まりです。まあ、いいかえれば尊王攘夷の始まりでもあるわけで、いよいよ、波乱万丈の幕末の始まりです。 もっとも、龍馬が歴史の表舞台に登場するには、もう少しかかるはずです。 で、江戸遊学を終えた竜馬は土佐に帰国です。千葉道場のお嬢さんであるさな子さんとの関係は史実のようですが、北辰一刀流、無双の使い手というのは、チョット眉唾ですね。 なかなか捨てがたいキャラで、竜馬の子分を自称する寝待の藤兵衛という登場人物は、多分、司馬遼太郎の造りだした人物でしょうね。 司馬遼太郎は、調べつくした歴史に沿って「時代小説」を書いたわけで、史実を書いたわけではありませんね。「竜馬がゆく」は小説であって、歴史研究ではありません。だから、鈴ノ木くんの空中で激突する剣術試合も面白いわけですね(笑) どうも、ジジ臭いことをいって申し訳ありませんね。中岡慎太郎、岡田以蔵、桂小五郎、武市半平太、井伊直弼、山内容堂、いよいよ、役者も出てき始めましたね。ここから、もっと面白くなりますよ(笑)
2024.01.11
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鈴ノ木ユウ「竜馬がゆく 5 」(文藝春秋社) 2023年、10月のマンガ便です。司馬遼太郎の原作を鈴ノ木ユウがマンガ化している「竜馬がゆく」(文藝春秋社)、第5巻です。2023年8月30日の新刊です。ヤサイクンもはまっているようですね。そりゃあそうですね、マンガの展開も面白いのですが、原作が面白いのは、今更いうまでもないわけですからね。 今回の山場は二つ、一つは土佐、井口村の地下浪人、岩崎弥太郎との出逢いです。地下浪人というのは士分を売ってしまって、一応、身分は武士なのですが、藩士ではないというか、そういう最下層の武士ですね。 この方ですね。明治の政商、三菱の創始者になる人で、ここで坂本龍馬と出会ったことは歴史的事件でした。「すべては金じゃ」「物も人間も政ですら金で動かんもんはないき」 司馬遼太郎が作ったセリフなのか、実話なのかわかりませんが、なかなか味わい深い(笑)セリフですね。もっとも、彼は、この時、獄中の人ですけどね。このあたりで、とりあえず、登場することは、もちろん知っていましたが、さて、どんな顔の人物にするのか、興味津々でしたが、まあ、悪人面もいい所で、笑ってしまいました。 さて、第5巻のもう一つ読みどころというか、見所は、江戸の剣術大会ですね。幕末の江戸には、神道無念流の斎藤道場、桃井道場の鏡心明智流、千葉周作、千葉定吉兄弟の北辰一刀流、というのが、まあ、三大剣術指南所というわけで、そこで名を挙げた幕末の有名人では、4巻で龍馬が出会った、長州の桂小五郎が斎藤道場の、竜馬の同郷の先輩武市半平太が桃井道場の、それぞれ塾頭、そして、主人公龍馬が、当時、実力の小千葉と呼ばれていたらしい、北辰一刀流の千葉定吉道場の免許皆伝ですね。 戦いの描写はこんな感じで、剣術マンガですね。結構な迫力で、面白いですよ。こういう場面は、原作を読んだ記憶には全く残っていませんが、上に書いた千葉定吉道場の話とかは、原作からの知識以外にあり得ませんから、原作も、そういう剣術小説の面があったのでしょうかね。 今回の剣術大会に武市半平太は出場しませんが、桂小五郎と坂本龍馬の決戦は第5巻後半の山場ですね。まあ、お読みください。鈴ノ木ユウ君、絶好調! まあ、そういう感じですよ。
2023.10.02
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鈴ノ木ユウ「竜馬がゆく 4 」(文藝春秋社) 2023年7月のマンガ便です。鈴ノ木ユウ「竜馬がゆく4」(文藝春秋社)です。第31話から始まります。 時は1954年、嘉永6年です。所は伊豆半島の東、三浦半島の長州藩が海防基地の海岸あたりです。僧なんです、ペリーがやってきているんです。で、長州藩の陣地を偵察していた北辰一刀流の剣豪坂本龍馬と、長州藩士で神道無念流の達人桂小五郎の一騎打ちで開巻です。 というわけで、表紙の人物は桂小五郎君です。吉田松陰門下の俊才の一人です。維新の有名人の中では、珍しく、1877年、明治10年、43歳くらいまで生き延びて、維新の三傑とかいわれた人です。ちなみに、三傑の残りの二人は西郷隆盛と大久保利通です。 この第4巻33話は吉田松陰の「下田渡海」、伊豆半島の下田港沖に停泊中のペリーの船に、金子重助という、弟子だった足軽の青年と二人で乗りつけてアメリカに連れて行ってもらおうと談判した有名な事件があるのですが、そこが描かれていて感無量でした。 あのー、実は、シマクマ君は40年前の卒業レポートで(まあ、卒論ともいいますが)、吉田松陰の詩と真実とでもいいますか、そのあたりをあれこれ調べたことがあるのです。だから、まあ、やたらなつかしいわけですね。 で、桂小五郎ですが、彼は松下村塾ではなくて、藩校の明倫館で、天才少年と言われた松陰、吉田寅次郎から山鹿流の兵学講義を受けた人で、歳は松陰の三つ年下に過ぎません。ただ、残された肖像画の松陰がえらくオジサンに描かれていて、誤解されるのですが、松陰という人は1859年、安政6年に処刑さた時、29歳なんですね。ついでに言えば、このマンガの主人公坂本龍馬も30歳くらいで亡くなっていますし、高杉晋作は27歳で病死、先ほどの金子重助は25歳で獄死です。 70歳になろうかという、馬齢を重ねている目から見ると、異様な若さですね。で、1954年が舞台の本巻では、まあ、20歳そこそこの龍馬とか小五郎とか、松陰が、今、まさに幕末の志士へと変貌せん! とする、その時が描かれていて、なかなか、感無量ですね。「同じ国の藩同士がそれを隠したり隠されたりするようでは日本はもう守れんよ」「……」「面白い」「坂本くん・・・・キミに長州陣地の全てを教える」 31話の最後のページです。小五郎が龍馬を知ったシーンです。まあ、事実か創作かはわかりませんが、司馬遼太郎らしい演出です(笑)。 なにはともあれ、幕末の始まりですね。ここから、いよいよ面白くなるはずですが、この時、「日本」を揺るがしたのはペリーだけではありませんでした。 もう一つの大事件が繰り返し「日本」を襲います。 本巻36話に描かれた「安政東海地震」(1954・M8.4)、この巻ではまだ触れられていませんが「安政江戸地震」(1955・M6.9)という、二つの巨大地震ですね。 「安政東海地震」は、所謂、南海トラフ型、「安政江戸地震」は直下型で、地震としてのタイプは違いますが、後者が大都市江戸を直撃したことが、決定的だったわけです。まあ、そのあたりは次巻以降の話題でしょうね。楽しみです。 というわけで、鈴ノ木版「竜馬がゆく」快調です。面白いですよ(笑)。
2023.08.05
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鈴ノ木ユウ「竜馬がゆく 3」(文藝春秋社) 2023年、3月の末に届いたマンガ便です。鈴ノ木ユウの「竜馬がゆく」(文藝春秋社)、第3巻です。シマクマ君はこのところ松本大洋くんに取りつかれていますが、マンガ便を届けてくれるヤサイクンは、こっちのようです。「あんな、幕末とかの偉い人の名前出して、説教する人おるやろ。キライやねん!」「ふーん、あんた、名前、シンサクやねんけど。」「知らんがな。つけたん、あんたらや。」「幕末でね、リョウマとシンサクは図抜けてカッコええねんけどな。」「長州と土佐で、ちがうんやろ。」「うん、でも、時代こえてたんは、その二人ちゃうか。」「そやから、そういういい方がわからへんいうてんねん。」「アンナ、武士って、兵隊やん。戦争するのんが仕事やろ。で、何のために人殺すかいうたら、殿さんとか将軍とかのためやん。百姓とか町人とか、戦争しててもよらんでええわけ。で、そういう身分とかなしで、みんなが戦争によるようになるには誰の国ということが変わらんとアカンねん。それが、まあ、明治維新やな。」「ほんで、リョウマとシンサクがどうやねん。」「二人とも、理想はナポレオンやったというのが共通してんねん。」「それが、どうしてん?」「ナポレオンは、ヨーロッパで初めて、『フランスはおまえらの国や』言うて、身分すっとばして、みんな兵隊にして、勝ちに勝ったわけ。」「ナポレオンは皇帝ちゃうの?」「うん、皇帝になるけど、『お前らの国や』いうたんがそれまでの皇帝とは違うんねんな。」「フーン、それとリョウマは関係あんの?」「うん、説明しようおもたらなごなるな。このマンガ読んでたら、そのうちわかるかもやな(笑)。」 そんな、話をしながら裏表紙を見ると「わしは自分自身と‥‥大切な人のためにしか戦えん」 と、ありました。国民国家の燭光が差し始めているセリフですね。まあ、勝手な推測ですが、このきめ台詞は、原作者の司馬遼太郎のもののような気がしますね。 今回の第3巻は、竜馬の江戸遊学のエピソードですが、桂小五郎、のちの木戸孝允との出会いが描かれています。実は坂本龍馬は北辰一刀流、桂小五郎は神道無念流の、それぞれ、免許皆伝というチャンバラの達人なのです。ボクは40年前に原作を読んだ時に知って驚きました。で、その、明治維新のトップスターの二人がチャンバラの試合で出会うというのが、マンガみたいなのですが事実のようで、だから、マンガも面白くなるわけですが、今回は、その桂小五郎のエピソードに、吉田寅次郎、若き日の吉田松蔭が出てきます。うれしいですね。えーっと、フーテンの寅さんとは関係ありませんよ(笑)。 原作の「竜馬がゆく」(文春文庫)もそうなのですが、司馬遼太郎の歴史小説、時代小説は登場人物たちの肖像をかなり丁寧に書く、群像劇であるところが魅力だと思いますが、この作品も、そこはわかっているようで飽きさせませんね。 さて、桂小五郎と坂本龍馬という二人の剣豪の戦いシーンは次号におあずけですが、鈴ノ木ユウさん、なかなか快調です。楽しみですね。
2023.03.31
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鈴ノ木ユウ「竜馬がゆく 2」(文藝春秋社) 2022年の12月のマンガ便です。鈴ノ木ユウ「竜馬がゆく」(文藝春秋社)の第2巻です。11月30日の新刊です。表紙のリョウマが、まあ、ぼくのリョウマのイメージとあまりに違うので、ちょっと引きましたが、1巻、2巻と読み終えると、鈴ノ木流のキャラクター総出演という感じで頑張っていて、すっかり、はまり続けています。 第1巻では土佐を出発した竜馬でした。というわけで、ここからは、マンガとか、小説とか、映画とかで、もう、何度も出会ってきた幕末の有名人との出会いです。「人切り以蔵」の呼び名で知られる土佐藩の下級武士岡田以蔵とか、「月様雨が・・」の月形半平太のモデル武市半平太とかとはすでに出会っていますが、第2巻でも再会です。 初登場、一人目は、京都、伏見の寺田屋(この宿も有名です)の女将お登勢ですね。船山馨の「お登勢」(講談社文庫)が僕たちの世代の定番ですが、幕末きっての女傑です。竜馬との因縁は深くて、彼があいした「お竜」さんの義理の母のような人で、この後、このマンガにも複数回登場するはずです。 それから、北辰一刀流の千葉定吉道場の面々です。北辰一刀流といえば、神田お玉が池の千葉周作が有名ですが、桶町の小千葉と呼ばれた定吉の道場が実力は上という評判が、たぶん司馬遼太郎の原作にあったような気がしますが、坂本龍馬が入門したのはこちらです。 この辺りを読んでいて、ふと思い浮かぶのが、「武市半平太って、桃太郎侍の高橋英樹やんなあ。」とか、「寺田屋のお登勢って、森光子やったし。」というわけのわからない記憶なのですが、たいていは1968年のNHK大河ドラマ「竜馬がゆく」のキャストの皆さんのお顔なのですが、なぜか竜馬だけは北大路欣也じゃなくて、「竜馬暗殺」という別の映画で主役だった方なのですね。マア、その話は、このマンガに「おりょうさん」が登場したときのネタということで置いておきますね。 それにしても、たぶん中学生の頃に見たテレビ・ドラマなのですが、なんで、こんなに覚えているのか、それが不思議ですね。 で、第2巻の最大の出会いというか、坂本龍馬という歴史上の人物にとって、おそらく、人生最大の事件に違いない出来事はこれです。 このシーンは1853年7月8日(嘉永6年6月3日)、浦賀沖に初めてやって来た「黒船見物」のシーンです。ペリーが最初に浦賀にやって来た年が、坂本竜馬が江戸にのぼった年だったのですね。竜馬は1836年1月3日(天保6年11月15日)生まれですから、このとき、17歳くらいです。竜馬君、えらいものを見ちゃいましたね。 ここから「幕末」が始まるわけで、当然、出演者はオールスター・キャストですね。いよいよ時代の児の活躍が始まりますね。まずは、第3巻が楽しみです(笑)
2022.12.12
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鈴ノ木ユウ「コウノドリ 新型コロナウイルス編」(講談社MORNINGKC) 人気マンガ(?)「コウノドリ」の番外編です。鈴ノ木ユウ「コウノドリ 新型コロナウイルス編」(講談社MORNINGKC)を読みました。ヤサイクンの9月のマンガ便に入っていました。 新コロちゃん騒ぎが始まって3年以上もたつのですが、収まりそうもありませんね。当然ですが、ウイルスは老人も子どもも、容赦しないということを実体験したばかりなので、妊婦さんや赤ちゃんにとって の新型コロナの物語が語られるのも、まあ当然ですね。 今回の番外編は、こんな感じで始まります。今からコロナ感染者の妊婦が来るよついにですか 聖ペルソナ総合医療センターというのが「コウノドリ」の舞台ですが、当然のことながら、今回も同じ病院です。ただ、感染者を受け入れているという設定が、普段と違うわけです。 これまた当然のことですが、今回のお話も、ピアノ弾きの産婦人科医鴻鳥サクラ君が主人公で、同じく産婦人科医の下屋カエさん、助産師の小松ルミ子さんも活躍します。もちろん救急救命科医の加瀬医師は、救急車で運ばれ来るコロナ患者に大わらわです。 なぜか、故郷に帰って、「コウノドリ」の舞台からは遠ざかっていた四宮ハルキ先生も登場するところが、番外編ならではでしょうか。 出産と新型コロナという組み合わせは、結構スリリングでしたが、まあ、ぼくが男なので、そう思ったのかもしれません。我が家でも、この時期に赤ちゃんが生まれてきました。だから、出産したゆかいな仲間がいるわけですが、このマンガ読んで、初めて「ああ、不安だったろうな」とか同情している始末ですから、話になりませんね(笑)。追記2022・12・12 なんだかわからないし、思い当たる節もなにの新型コロナに感染して、自宅隔離という体験を同居人と二人でしました。幸い症状が軽かったので言えることかもしれませんが、この病気というか、感染症のというか、の特徴の一つは「不安」だということをを実感しました。 病気にかかる以前は、まあ、他人ごとだったのですが、かかったとわかった時点から、あまり経験したことのない「不安」に激しく襲われるました。そのうえ、その不安が、あんまり自覚したことのない恐怖と連動していると気付き始めることで、何とも言えない孤独感に落ち込んでいきました。 マア、気づくのが、実体験の結果というのは、何とも愚かですが、このマンガが描いている、患者さんや医療従事者の人たちの世界の実相に、ようやく、気づいたというわけですね。 健康は大切ですが、健康とか健常とかの世界でのぼせていると大切なことを見落とすことを肝に銘じた体験でしたね(笑)。
2022.09.24
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鈴ノ木ユウ「竜馬がゆく 1」(原作 司馬遼太郎・文藝春秋社) えらい小説がマンガになっていました、再び流行りそうです。2022年、9月のマンガ便に入っていました。「コウノドリ」で、ヤサイクン一家をトリコにした鈴ノ木ユウが「週刊文春」で新しく連載しはじめた「竜馬がゆく」です。 もちろん、原作はいわずと知れた司馬遼太郎です。1970年代の大人気小説です。1968年にNHKが大河ドラマに取り上げたのが記憶にあります。北大路欣也が竜馬で浅丘ルリ子がおりょう、姉の乙女は水谷良重だったことを覚えています。 文春文庫の「竜馬がゆく」は、黄色い背表紙で覚えていますが、文庫化されたのは1974年ころだったと思います。全8巻で、ぼく自身は大学1年生の頃、文庫の新刊が出るのを追いかけるようにして読みました。面白かったですね。数ある司馬遼太郎の時代小説の中でも、一番人気の作品で、文庫・単行本合わせてでしょうが、2000万部をはるかに超える、とてつもない数の本が売られたようです。昭和の終わりを、あるいは大量消費の時代を象徴する「国民文学」ということになりそうです。 その「竜馬がゆく」の、多分、初めての本格的マンガ化のようです。マンガ便が届いて、珍しくチッチキ夫人が先に読みました。「おもしろかった?」「うん、おもしろいよ、これ。竜馬も、他の人も、不細工なのがいいよ。」 で、引き継いで読み終えて確信しました。「これは、流行る!」 第1巻は、幼年時代の「寝しょんべん垂れ」が土佐の日根野道場で目録をうけ、江戸への剣術修行に出発するまでが描かれています。 坂本竜馬19歳。出発の朝のシーンはこうでした。・・・・さあ、竜馬支度せえよそろそろ夜明けじゃ うまいものですねえ。乙女の素顔や、竜馬の表情をどう描いているのかはお読みいただくほかありませんが、司馬遼太郎の原作にも、こんなシーンがあったんでしょうかねえ? 姉の乙女、岡田以蔵、家老の娘お田鶴、今後も登場するはずの主要キャストたちの登場ぶりも印象的で、ぼくにとっては懐かしい名場面、名セリフ満載です。 まあ、今の人たちが、どう評価されるの興味津々ですが、当分、マンガ便が待ち遠しいことになりそうです(笑)。
2022.09.19
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週刊 マンガ便 原泰久「キングダム(64)」(集英社) 3月のマンガ便に入っていました。「キングダム」(集英社)64巻です。「なあ、このまま秦の統一まで、まじめに書いていったら、もう十年ぐらいかかりそうやねんけど。」「どっかで端折るんちゃウか。いちいちマジメには無理やろ。」「今回は、まだ趙やろ?戦国の七雄ていうねんで、趙が滅んでも、まだ五つも残っとるやん。」「そうやな、趙にもまだ李牧がおるからなあ。あんな、今回はな、秦の政が6大将軍とか決めたやろ。その中の桓騎いう奴が奇策で趙を負かすねんけど、捕虜10万人を皆殺しにする話やねん。」 まあ、そんな会話があったような、なかったような。 今回の「キングダム」64巻は趙の領土、武城・平陽に攻め入った秦の中央軍を率いる桓騎将軍と、これを迎え撃たんとする趙の総大将扈輒(こちょう)将軍との戦いで始まります。 この裏表紙の方が扈輒(こちょう)さんです。顔にボタンみたいなものを埋め込んでいらっしゃいますが、何なのかよく分かりません。で、表紙の中央の方が桓騎さんですが、桓騎将軍の秦軍は苦戦に苦戦を重ねますが、本陣を孤立させ、おとりにするという奇策で、敵将扈輒を誘い出し、見事に逆転勝利します。ここまでが、本巻の最初の読みどころですが、そこからがメインでした。桓騎将軍による捕虜10万人に虐殺です。 これが武城・平陽の戦いの結論のページですが、秦軍六大将軍に選ばれたほどの大将軍による暴挙がなぜ行われたのか、その後、どのような決着を見たのか。そのあたりは本作をお読みになっていただくほかありません。 実は、この作品がよりどころにしているであろう、司馬遷の「史記」の中には「坑(穴)にす」とか「斬首」という言葉は結構、頻繁に出てきます。「焚書坑儒」という言葉がありますが、坑儒とは儒者を生き埋めにすることですね。ただ、多くても何百人単位の出来事なのですが、今回は10万ですから、桁が違います。 後の将軍李信である「信」少年と、後の始皇帝である「政」少年のビルドゥングスの物語である「キングダム」ですが、この事件に「政」少年、この時点では、すでに秦王嬴政(えいせい)がどう対処するのか、あるいは、作者の原さんがどう対処させるのか、そこが本巻の読みどころでした。まあ、読んでみてください。なかなか読みごたえがあると思いましたよ。 さて、いよいよ、次巻は趙の名将李牧の再登場なのでしょうかね。待ち遠しいことですね。
2022.03.24
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鈴ノ木ユウ「コウノドリ 32 最終回」(講談社) 表紙で鴻鳥サクラくんが笑って、手を振っていますね。今回の「コウノドリ(32巻)」が最終巻だそうです。ザンネンですね。 ぼくはこのマンガに登場する若い医療従事者たちの、前向きな生き方が、まあ、もちろんマンガではあるのですが、いや、マンガであるからこそかもしれません、好きでした。 産婦人科のお医者さんのサクラくんや、四宮くん、そして、下屋カエさん。助産師さんの小松ルミ子さん。ああ、それから、救急医の加瀬さんもいいキャラでしたね。聖ペルソナ総合医療センター院長の存在も忘れられません。 彼らが、危機一髪の悪戦苦闘をなんとか乗り越えていくたびに、涙しながら読んでいる65歳を越えた徘徊老人というのも、ちょっと、大丈夫かという気もしますが、新しい命が生まれてくる現場をまじめに描き続けてきた鈴ノ木ユウさんに拍手したい気分ですね。 今回は最終回ということもあるのでしょうね、助産師の小松さんに「恋の季節」が巡ってきました。「おお、仕事をとるか、男をとるか。小松さん、どうするのでしょうね?」 と、引っぱられていると、なんと、主人公鴻鳥サクラくんの前に、彼を生んですぐにに亡くなったお母さんの面影を宿した女性が登場します。 サクラくんが育った「ママの家」のケイコママが、その女性を見かけて、サクラの母、幸子を思い出したところです。 女性はサクラくんが通うデンタルクリニックの歯科医片平ミユキさんです。 さあ、どうなるのか?と期待したのですが、シングル・マザーとして出産を決意した彼女は、急性白血病の妊婦としてサクラくんの患者さんになってしまうのでした。 場面は、ほとんど命懸けで赤ちゃんを産み終えた片平さんが、自らも生き抜きたいと泣き叫ぶところです。 ぼくですか?もちろん、泣きましたよ。そのために読んでいるのですから、トーゼンですね。(笑) 左のページは、別れた男性との間にできた、おなかの子どもを産むことについて、片平さんが苦しんだ時のシーンですね。「出産って、誰のものなんだろう・・・・」 これが、おそらく、鈴ノ木ユウさんが、このマンガを描き続けながら、考え続けてきたことでしょうね。簡単なようで、重い問いですね。 さて、大団円、小松さんの恋の行方はいかに?果たして、片平みゆきさんは助かるのか。助かったとして、サクラくんとなんとかなるのでしょうか?ああ、それよりも、なによりも、この病院の仲間たちはどうなるのでしょう。 まあ、そのあたりは、本書を読んでいただくしかありませんね。というわけで、これが裏表紙でした。オシマイ!ボタン押してね!ボタン押してね!
2020.11.20
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野田サトル「ゴールデン・カムイ(22)」(集英社) 「ゴールデン・カムイ」の単行本を一冊づつ紹介してやろうという「野望」に燃えていましたが第4巻であえなくダウンしているうちに話はどんどん進んでしまいました。 登場人物たちが北海道から樺太へ移動するという展開になってしまって、ロシア革命の話から、アリシバちゃんのお父さんの出生の話から、もうてんやわんやなんですよね。 で、6月の末にマンガを届けてくれたヤサイクンがこう言いました。「もうわけわからへんな。新しいのが出たらそこまで読み直さんと付いて行かれへんやんな。」「まあ、そのうち読み直すということで、何となくついていけてるぐらいの感じでええんとちゃうの。」「そういうけど、なんで樺太に行ったか、覚えてるか?」「ええっと?覚えてません。」「ホラ!」というわけで6月の「マンガ便」です。届いたのが最新号、野田サトル「ゴールデン・カムイ22巻」でした。 このマンガの面白さは不死身の男杉元とアイヌの天才少女アリシバちゃんの二人三脚に、アホの白石君が絡み、「北方の文化」、「自然」、そして「食卓」をあれこれ紹介する珍道中だと思うのです。 ところが「樺太」編の間は、とても三人組の珍道中というわけにはいかない「しっちゃかめっちゃか」の状態だったように思いました。 作者には「物語」の着地点は見えているのでしょうが、「どうなるのか」の予想が立たない「おろかな」読者である、まあ、ボクも含めた「ゆかいな仲間」たちには、ほとんど、お手上げの展開が続いてきました。 エピソードが単行本ごとに独立しているわけではないので、その巻だけ読んでも「わけがわからん」ということになってしまっていて、「固め読み」をするとか、「フィードバック読み」をするとかしないと、いや、そうしても話の筋についていけないという感じでした。 で、22巻ですが、この巻の冒頭で、くだんの3人組が帝国陸軍第7師団鶴見中尉の追及から逃れ、ついに北海道に帰還します。 そこからは、以前の「ゴールデン・カムイ」調を取り戻したようで、なかなか楽しく読めました。 最初が流氷の上のシロクマとの対決です。 アシリバちゃんが白い「キムンカムイ」の神聖さと毛皮の価値を講義し、杉元と白石のドタバタです。これを待っていました。 二つ目が「砂金掘り」です。 もともと「アイヌの黄金」がこのマンガのお宝なわけですから、この話がどこかで出てこないはずはなかったのですが、ついに出てきました。 もっとも、「お宝」に目のない白石君の道化話かと思いきや、新たな「入れ墨男」の登場でした。久しぶりの登場です。そのあたりは本冊でどうぞ。 さて、22巻で気付いたことですが、アリシバちゃんの表情が少し変わり始めていますね。 いかがですか。表紙の彼女もそうなのですが、少し「大人っぽく」なってきていませんでしょうか。 樺太での、自らの出生の秘密と使命を自覚する体験の中で成長してきたのでしょうね。子どもっポイあどけなさ魅力の少女だったのですが、「地獄へ落ちる覚悟」を決めたようです。 果たしてアシリバちゃん、「女性」に変貌するときがやってくるのでしょうか。 やっぱり次号が楽しみですね。ボタン押してね!ボタン押してね!
2020.07.06
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野田サトル「ゴールデン・カムイ(5)」(集英社) 第5巻です。 表紙の人物は谷垣源次郎一等卒です。秋田のマタギの出身。日露戦争に従軍し、第七師団、鶴見中尉の部下だった男ですが、「不死身の杉元」を追跡する中で負傷し、アシリパちゃんの村で、おバーちゃんに看病してもらい、軍を捨ててしまいます。 第5巻は、ちょうど村の生活になじんできて、「マタギ」の暮らしに戻る谷垣のもとに、第七師団の追手がやってくる展開です。 谷垣の所持する武器がこれです。大日本帝国陸軍初の制式銃である村田銃ですね。第3巻、第4巻で登場した、網走監獄を脱獄した刺青の「悪夢の熊撃ち」二瓶鉄造が持っていた銃ですが連射できないところが特徴です。谷垣は、この巻ではまだ使っていません。 話が進むにしたがって、おバーちゃんに依頼され、主人公アシリパちゃんを護衛するという重要な役どころを担う登場人物です。 というわけで、今回の「今日の料理・アイヌ・北海道編」です。「北海道編」と追記しているのは、料理がだんだん「アイヌ」の民俗では説明しきれないものを含みはじめたからです。 「ニシン漬け」ですね。身欠きニシンとキャベツ、大根、ニンジンをこめ麹で発酵させた、発酵食品です。これなんかは,まあ、よくわかっているわけではありませんが「アイヌ」の食品とは言えないんじゃないかと思いますね。 今回も、カンドーの動物が登場しました。 「レプン・カムイ」、「沖にいる神」という意味だそうですが、「シャチ(鯱)」ですね。 「シャチ」の皮下脂肪を煎って油を作っていますね。さて、この油で作る料理といえば、揚げ物ですね。 「鯱の竜田揚げ」です。醤油で下味をつけて、粉をまぶして揚げています。うまいでしょうねえ。でも、これは食材以外は普通の料理ですね。漫画家さんが好きなものを描いている気がしますね。もう一つ、旨そうなものを揚げています。 「子持ち昆布の串揚げ」です。いいですねえ(笑)。 昆布にニシンが卵を産みつけたものが「子持ち昆布」ですね。魚卵付き生昆布を串揚げにしています。ちょっと食べてみたいですね。 これは海辺の幸のお料理でしたが、川の幸のお料理もあります。 これもカンドーの動物ですね。幻の巨大魚、イトウです。実際に2メートルを超えるイトウが捕獲された記録もあるらしいのですが、鮭の仲間のようです。「イワンオンネチェプカムイ」というそうです。 そのイトウに咥えられたアホの白石君は今や絶体絶命ですが、新たな登場人物、アシリパちゃんのおとーさんのお友達、キロランケに助けられて事なきを得ました。 アイヌの生活では「イトウ」は、その皮が「チェプウル(魚皮衣)」という服の生地に使われたり、靴や小刀の鞘、膠(にかわ)がわりの接着剤にまで使われるらしい。しかし、ここではお料理です。「あ刺身」でした。最近「トロ・サーモン」とか呼ばれてはやっているあのお刺身ののような感じでしょうか。。マンガでは「ヒンナ、ヒンナ」を連発して、やはり目玉を、しゃぶって食べています。茹でダコの味だそうです。 だんだん、お料理教室のネタが減ってきましたが、この先どうなるのでしょうね。では第6巻もお楽しみに。追記2020・03・01「ゴールデン・カムイ」(第1巻)・(第4巻)の感想はこちらからどうぞ。ボタン押してね!ボタン押してね!
2020.03.01
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野田サトル「ゴールデン・カムイ(4)」(集英社) さて、第4巻です。表紙の人物は「大日本帝国陸軍・第七師団」所属する情報将校、鶴見篤四郎(つるみ とくしろう)陸軍中尉です。 容貌魁偉というのはこういうのでしょうかね。仮面のような額当てをしていますが、日露戦争の戦場で頭を吹き飛ばされても生き残った男で、今でも目の周囲の皮膚は剥がれていますし、吹き飛ばされた頭蓋骨にホーロー製のカバーを当てているのですが、時々脳漿のがにじみ出てくるという、恐るべき状態なのです。とはいいながら、その活躍ぶりは、なかなか、どうして、半病人などではありません。 土方歳三の刀のことを言いましたので、彼が手にしている拳銃についてちょっと。この銃はボーチャード・ピストルというそうです。ドイツで開発された、最初の軍用自動ピストルです。戦争映画などでナチスの将校が手にしている軍用拳銃ルガーP08というピストルの原型だそうです。 さて、この男が、アイヌの埋蔵金を狙う「三つ巴」の一角を担う、いわば、副主人公なのです。そして、彼の周りには狙撃の名手・尾形上等兵、マタギの末裔・谷垣一等兵、死神鶴見中尉の右腕・月島軍曹といった、後々、大活躍の人物が勢揃いしているのですが、それぞれの人物がクローズアップされる「巻」が待っています。紹介はその「巻」で、ということで。いやー先は長いんですよ、話の展開も一筋縄ではいかないようですし。 というわけで、「きょうの料理・アイヌ編 第4巻」ですね。 「鹿肉の鍋」です。「ユㇰオハウ」というそうです。プクサキナ(ニリンソウ)とプクサ(行者ニンニク)が入っているそうですが、なんと、アシリパちゃんが「味噌」をねだるようになっています。 「鮭のルイペ」。生肉や魚を立木にぶら下げて凍らせたものを「ルイペ」というそうで、とけた食べ物という意味だそうです。「鮭」は「カムイチェプ」というそうです。 さて、今回のカンドーは「大鷲」です。「カパチㇼカムイ」と呼ぶのだそうです。 見開き2ページを使った姿です。翼を広げると2メートルを超えるそうです。羽が矢羽根に使われます。モチロン肉は煮て食べます(笑)。 脚を齧っています。残念ながら「鍋」のシーンはありません。この後、おバカの白石くんは鷲の羽根を売りに行って、事件に巻き込まれます。 そのあたりは読んでいただくとして、次号では「クジラ」と、北海道といえば「ニシン」が出てきそうです。お楽しみに。追記2020・02・11「ゴールデンカムイ」(一巻)・(二巻)・(三巻)・(五巻)の感想はこちらをクリックしてみてください。先は長いですね。にほんブログ村にほんブログ村ゴールデンカムイ 杉元が持っている 食べていい オソマ (味噌) 140g(株)北都 企画販売 ダイアモンドヘッド
2020.02.12
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野田サトル「ゴールデン・カムイ(3)」(集英社) 「ゴールデン・カムイ」第三巻ですね。まだ、話の全体の姿は見えてきません。しかし、役者がそろい始めました。 表紙をご覧ください。この殺気にみちた老人、手にしている銃はウィンチェスター・ライフルM1892、腰に差している刀は「和泉守兼定」ですね。そうなるとこの人物は明治2年、函館、五稜郭で狙撃された「燃えよ剣」のあの人、土方歳三です。 マンガの舞台は日露戦争直後、明治40年代の北海道ですから、史実としては享年34歳で死んだはずのこの男は70歳をこえた老人というわけです。どうして土方がこのドラマに登場するのでしょう。そのあたりは作品で確認いただくとして、土方歳三の相方として登場するのが元新撰組随一と称された剣の達人永倉新八です。 永倉新八という人は、沖田総司(紹介するまでもない人気キャラですね)や斎藤一(マンガですが「るろうに剣心」で敵役をした人)よりも強い使い手だったことは有名ですが、もともと松前藩の出身で、大正年間まで北海道で生きていたそうです。月形町の「樺戸集治監」とのかかわりが、この「ゴールデン・カムイ」に出てきますが事実のようですね。看守に剣術を教えていたそうです。ネットでお調べになると写真もあります。マンガの絵は、それによく似ていますよ。 ついでに土方が手にしているウィンチェスター銃ですが、「ライフル・マン」とか「ララミー牧場」で育った世代には懐かしいですね。その銃が何故ここに登場するのでしょう。 維新戦争を戦った双方が手にしていた銃器は基本的に輸入製品ですね。アメリカの南北戦争が終わったのが1865年ですが、その結果、余ったり、使い古したりした大量の銃や大砲が誰に売られたのか、海の向こうで国内戦争はじめた人たちですね。だから、ここでこの銃がでてくるのは、結構リアルなんです。 日本の国産の銃の始まりは「悪夢の熊撃ち」としてこのマンガに登場する二瓶鉄造の愛用する「村田銃」ですが、軍用銃としては「杉元君」が手にしている「三十式小銃」ですね。この銃が日露戦争後、改良され旧日本陸軍の「三八式歩兵銃」へと進化?)するわけです。 余談が長引きましたが、話を戻しますが、元新撰組のこの二人が、「不死身の杉元」君、「アシリパ」ちゃん、エゾオオカミ「レタラ」君と「脱獄王・白石由竹」君たちの対抗馬(その一)というわけです。対抗馬(その二)については第4巻で紹介しますね。 さて今回の「お料理講座」です。「サクラ鍋」ですね。馬肉料理。ここではアシリパちゃんが新しい味に挑みます。 そうです、ついに「オソマ(ウンコ)味」を克服する瞬間ですね(笑)。「サクラ鍋」はみそ味に限るというのが杉元君と白石君の意見ですが、異文化理解はいつの時代でも、どこかの舞台から飛び降りる勇気がいるようです。それにしても可愛らしく描いていますね。 これはエゾシカ、鹿肉の食べ方です。ステーキというか「ディア・ロースト」というか、うまいに決まっているでしょうね。 三巻は「お料理シーン」が少なかったですね。代わりに鉄砲のお話でした。では次号をお楽しみに。追記2020・01・30「ゴールデン・カムイ」(第一巻)・(第二巻)・(第四巻)の感想はそれぞれクリックしてみてください。追記2020・10・30最新刊まで、一巻ずつ感想と案内を書こう答という目論見は頓挫しています。続けることは、なかなか、むずかしいですが、本編は今、23巻進行中です。ボタン押してね!ボタン押してね!
2020.01.29
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野田サトル「ゴールデン・カムイ(2)」(集英社) まず、表紙をご覧ください。「不死身」の杉元君とアシㇼパちゃんの二人連れの守護神ホロケウカムイ「レタラ」君登場ですね。現在では絶滅したエゾオオカミが三人目、いや、二人と一匹めか?の仲間ですね。かっこいいですよ。 今回はアシリパちゃんの「コタン(村)」に二人で立ち寄るというストーリーなので、アイヌ民俗学講義のおもむきの展開なのですが、それは読んでいただくとして、とりあえずは「お料理」の紹介です。 今回のお料理講座はまず「イセポ(エゾウサギ)のチタタプ汁」です。「イセポ」というのは「イーッと鳴く小さなもの」という意味だそうで、エゾウサギのことだそうですが、鍋にするようですね。 目玉が珍味らしいのですが、杉元君は困っています。ああ、それから「おいしい」は「ヒンナ」というそうです。 つづいてカジカ汁ですね。カジカは冬の川で獲れるものがおいしいそうです。「キナオハウ」(野菜たっぷりの汁物)というのだそうです。塩焼きもおいしそうですね。 ところで、こうした鍋物には「味噌」という調味料(?)が思い浮かんできませんか?杉元君も携行している「味噌」を取り出すのですがアシリパちゃんは、杉元君が差し出す「味噌」を「オソマ」と呼んで拒否します。「オソマ」というのはアイヌ語で「うんこ」という意味だそうです。 このマンガ家さんは、基本的にこのタイプの下ネタが好きです。 余談ですが、この魚の絵を見て思い出しました。カジカのことを、兵庫県の北部の田舎の子供たちは「グズババ」と呼んでいたように思います。一応、断っておきますが、但馬方言では「ババ」には、どこかの方言のように「オソマ」の意味はありません(笑)。 さて次は「カワウソのオハウ(汁物)」です。一番うまいのが頭の丸ごと煮なんだそうですが、これは、ちょっと大変そうですね。ウサギにしても、カジカにしても、カワウソにしても、獲り方から描かれていますから、なかなか興味をそそられます。やはり、このマンガの面白さの一つはこの辺りにあると、ぼくは思います。 話の筋に戻ります。とりあえずこのページを見てください。 丸刈りの男が、上で紹介した、エゾオオカミの「レタラ」君に咬まれていますね。今回から三人目の仲間として、杉元君とアシリパちゃんの二人に同行し始めるのが、この男、「脱獄王」白石由竹君です。 こう見えて、この男、日本国中の監獄を脱獄してきた強者で、背中に妙な刺青を背負っています。 第一巻で、少し触れましたが、二人がお宝として探し始めた「金塊」の隠し場所は網走監獄を脱獄した24人の囚人の背中に分けて彫られた地図を、すべて集めると見つけられるだろうというお話なのですが、その一枚を背負っているわけです。 次回からも、一人ずつ紹介してゆきますね。では第四巻・第三巻・第一巻は、ここをクリックして見てくださいね。ボタン押してね!ボタン押してね!
2020.01.23
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野田サトル「ゴールデン・カムイ(1)」(集英社) ついに到着しました。ヤサイクンの「マンガ宅急便」、2020年第二弾。待ち焦がれていた「ゴールデン・カムイ」(集英社・ヤン・ジャン・コミック)です。 今さら、何を騒いでいるのだとおっしゃる向きもあるかとは思いますが、何しろ噂だけはあちらこちらから聞くものの、ヤサイクンからは、どなたか別の方に貸し出し中などという無情な返事が返ってくるばかりで、昨年の秋のあいだずっと待ち続けていた作品です。同じ紙袋には「コウノドリ」の最新刊も入っていたのですが、迷うことなく、さっそく読み始めたというわけです。 表紙を飾るのは、「不死身の杉元」こと、日露戦争の激戦地、「203高地」から生きて帰還した杉元佐一元一等兵が銃剣付き「三十年式小銃」を構えているところです。モチロン彼が主人公の一人です。 なぜか舞台は酷寒の北海道の森の中、「不死身の杉元」の本領を発揮し、巨大なヒグマとの死闘を制して名乗る主人公、それを称える、おそらくは、もう一人の主人公、アイヌの少女アシリパちゃんの登場です。 図抜けた武闘派ですが、お調子者で、少々おバカな杉元君と、登場早々、アイヌ式の弓の凄腕を披露し、森の生き物について、これはもう、知恵の塊というべきなのでしょうか、鮮やかな罠や狩猟の技術を駆使し、その上、エゾオオカミまで従えている少女アリシパちゃんのコンビです。 この辺り、キャラクターとしても好みですね。その上こんなシーンもあるのです。 リスのつみれ鍋です。アイヌ語では「チタタㇷ゚ オハウ」というらしいですね。まあ、人によっては、それは…という方もいらっしゃるでしょうが、シマクマくんは興味津々ですね。 今後、巻を追うに従ってがって、いったい、どんなものを食べるのか。今回、見事にヒグマを倒しましたが、食べませんでしたからね、次は何を食べるんでしょうね。 というわけで、この二人が何故、明治の末年、冬の北海道の山中で出会い、ここから何を探して戦いの旅を始めるのか。大きな枠組みは、この第一巻で暗示されています。 お宝は金塊らしいのです。しかし、当面の探し物は網走監獄を脱獄した24人の脱獄囚です。このお宝をめぐる争奪戦は、どうも、紹介した二人、陸軍の軍人、そして監獄で生き延びている謎の男の一味による三つ巴のようですね。そのあたりは、次号以降で少しづつということで、今回はここまで。 ぼくはアイヌ料理の旅が続けばいいのにな、というのが次号への期待ですね。追記2020・01・23第二巻(ここをクリック)はアイヌ民俗学、郷土料理特集ですね。面白くて、やめられません。第三巻・第四巻ここをクリック。追記2022・09・25 全巻、感想、完走を目指しましていましたが、あえなく挫折してしまった「ゴールデン・カムイ」でしたが、最近完結したようです。「完結したらしいけど、まだ買わないの?」「どこまで、読んだか、うん、買ったかわからなくなったから。」「ええー、うちに来てるのは、ええっと、23巻かなあ?」「話がややこしなり過ぎて、読み直し読み直しせな前に進まんからなあ。」「書いてる当人も、わからんようになったんちゃうの?」 まあ、わからんようになっているのは、しゃべっているご当人のお二人なのですが、というわけで、我が家では最終巻の31巻にはまだ届きません。多分、28巻くらいまでは読んだと思うのですが。まあ、とりあえず、第1巻から復習し始めています。追記2022・11・12「ゴールデン・カムイ(全31巻)」(集英社)を読み終えましました。拍手! 途中から、北海道・自然派グルメ・マンガの面白さが消えて、歴史バイオレンス・マンガになっていましたが、最終巻では、主人公のお二人が「干し柿」を食べながら、「ヒンナ!ヒンナ!」と喜んでいました。ほぼ3年がかりの全巻読破ですが、各巻の案内はまだまだですね(笑)。筋がややこしすぎて説明しきれないのです。いずれゆっくりと・・・。今日は、とりあえず、最初の巻の修繕でした。ボタン押してね!ボタン押してね!ゴールデンカムイ 食べていいオソマ 山椒みそ 140g (株)北都集英社 野田サトル 蝦夷 おかず
2020.01.20
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鈴ノ木ユウ「 コウノドリ 19 」(講談社) ヤサイクンがクリスマスの「マンガ宅急便」を届けにやってきました。「あと何巻あるの?」「28巻かな?最新は。うちには20何巻やったかな?コユちゃん姫が読んでるから、読み終わったら持ってくるわ。」「エエー、小学生が読んでるの?」「テレビでやってたやろ、知らん?19巻の腰巻になってるやん。下の二人が出産ごっこしてんの見たやろ、チビ二人で。あれ、テレビ見て、やってんねん。」ポカーン!? テレビを見ないシマクマ君とチッチキ夫人は、一年生と保育園のチビラ2号、3号の二人が、ぬいぐるみをスカートの中から引っ張り出す、その遊びにはおぼえがあります。 それにしても、「どうして、そんなことを知っているのか?」と思っていたわけなのですが、なんともはや、今ごろ言うのもなんなんですが、テレビの教育力はすごいですね。 一方で、四年生のオネーちゃん、チビラ一号は読み仮名を振っているわけではない、ちょっと大人向けの、この「産婦人科」マンガを、65歳のジージと(この程度の漢字なら、一応、軽く読める)競い合って読んでいるというのも、考えようによれば、かなり「???」という感じがしないわけでもありません。 さて、19巻。このマンガの面白さの一つは、病院内の人間関係の描き方にあるんじゃないでしょうか。鴻鳥サクラくんを中心に、巻毎にそれぞれの人間模様が描かれる。今回のお話は二つ。 54話「NICU part12」は白川先生の成長譚。何巻か前に壁にぶつかって「救急救命」にいってった下屋カエさんと同期の自信家ですが、彼がぶつかる壁は「医療ミス」の危機でした。 自分の診断を過信するとはどういうことか。たぶん、教育の現場なんかでもありがちな、一生懸命やっている自分に対する過信。適当な人はぶつからないかもしれない壁ですね。「ここ(NICU)のスタッフが何か変だと思ったときは何か変なんです」「白川先生はその助言をないがしろにしました」「それは明らかにあなたのミスであり・・・実力を過信したに過ぎない」 先輩今橋先生の厳しい一言。なんか、40年前に学年の主任の先生に言われたことばを思い出しましたね。「シマクマさん、あなただけで働いているわけでもないんですよ。」 微妙なニュアンスなんですが、けっこう記憶に残ってますね。 55話「羊水塞栓症」は助産師小松ルミ子さんと親友の助産師武田陽子さんの究極の友情の物語でした。大げさな言い方で申し訳ないが、ちょっと究極でした。 小松さんが武田さんと出会ったのは助産師免許を取る学校ですね。 回想シーンのお若いとき、(多分お二人は十代ですね)と、ちょっと高齢出産の年齢になられたお二人に、絵柄上ほとんど差がないのが、このマンガ家さんの特徴ですね。普通、へたくそって言うんですが、あんまり気にはなりません。 小松さん、悩んでたんですね、助産師になるかどうか。背中を押してくれたのが武田さん。いい友達ですね。その武田さんが、、親友小松さんの病院で、無事、出産、めでたしのはずが、出産直後「羊水塞栓症」という、よく知らないんですが、読んでると分かる症状を発症するんです。 帝王切開の手術室が、命がけの現場になってしまっています。 小松さんは、武田さんが出産した赤ちゃんを、約束どおり取り上げて、保育器の部屋に運んだあと、手術室に走ります。そこでは心肺停止した武田さんに「除細動」の電気ショックが施されようとしています。勝負がかかっています。ボー然と立ち尽くす小松さんが祈ります。「武田・・・ちゃんといるぞ。」「私はちゃんとそばにいるぞ!」 ね、読者はここで、やっぱり泣くと思うんです。「心拍再開!」にじゃなくて、小松さんが、そこに駆け戻って、祈りながら、呼びかけることにね。祈るなんてどこにも書いてないんですが、読んでるとわかるんです。小松さんは心から祈っていました。 「赤ちゃん」が誕生する漫画を描き続けている鈴ノ木ユウさんは、テレビドラマ化もされ、きっと人気者になっているに違いないんですが、このシーンで、このセリフがでてきて、こんなふうに描けるかぎり読者は読み続けるでしょうね。 思うに、このマンガは、始めっから、わたしはあなたのそばにいるぞ! という、「祈り」の話なんですよね。相手が「赤ちゃん」なんですから。追記2019・12・27「コウノドリ1」はここをクリックしてください。ボタン押してね!にほんブログ村
2019.12.28
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鈴ノ木ユウ「コウノドリ(1)」(講談社) 十二月に入って、留守中にやって来たヤサイクンの「マンガ宅急便」ですが、なかなか、アタリ!が多かったですね。小林まことの「女子柔道部物語」、原泰久「キングダム」最新号、そして、これ、鈴ノ木ユウ「コウノドリ」と山盛りです。 主人公は産科のお医者さんでジャズ・ピアニスト。2013年に連載開始で、ただ今、28巻、進行中だそうです。この間、テレビドラマにもなって、世間では、世の中のことを何にも知らないとシマクマ君が思っている女子大生でも知っている、当たり前の人気漫画であるらしいのですが、テレビも見ないし世間様との付き合いも、ほぼ、無い徘徊老人は知らなかったというわけです。なにげなく手に取って、ちょっと引きました。 「なんですか、これは?」 「鴻鳥サクラ」、名前がまず、「はてな?」でしょ?絵は微妙なので、イケメンなのかどうかはともかく、ジャズピアニスト「ベイビィ」がアンコールで舞台から突然消えるんですね。病院で緊急出産手術というわけなんです。フツーは、ここで終るのですが、次のページでこんな展開。 「でも未受診なのは母親のせいで、お腹の赤ちゃんは何も悪くないだろ」 これが、最初の「あれっ?」 最近、産婦人科の医師である増崎英明さんに最相葉月さんがインタビューした「胎児のはなし」(ミシマ社)という本を読んで、いたく感動して、あちこちで「付け刃」を振り回しているのですが、その「付け刃」に、このマンガが繰り出してくる「妊娠」と「出産」の話題が次々とジャストミートし始めるんですよね。 こう言っては何ですが、私こと、自称徘徊老人シマクマ君は65歳を越えています。ここからの人生で、誰が考えても、まず、関係のない出来事が、妊娠・出産なんですね。なのにどうして? 「胎児のはなし」を読んだ、一番大きな収穫というか、なるほどそうか!というのが、いま生きている人間にとって、死んだらどうなるかと、これから生まれる赤ちゃんは、どうやってこの世にやってくるのかという二つの領域は、相変わらず神秘の領域として残されているということだったんですよね。 まあ、とはいいながら、死んだらどうなるかは、個人的にはですが、ただの「死にッきり」で結論が出ているわけで、やっぱり、興味がわくのは、「赤ちゃん」の神秘ですね、というわけなのです、きっと。 ページを繰っていくと、下手をすると、きわどいというか、人間のエゴが噴出しかねないこのテーマに対する、マンガ家のスタンスというのでしょうか、構えという方がいいのかな、に、どうも、ちょっとほっておけない独特なものがあるのですね。そこのところに惹かれてしまったようです。止まらなくなりました。 というわけで、たとえば、第1巻の名場面はこれです。 妊娠23週の超早産児と父親との対面のシーンです。 この二人のの出会いまでの経緯が、母親と胎児、妻と夫、そして、担当医師と先輩医師という関係を三本の、少し太い経糸(たていと)にして描かれています。そこに、それぞれの家族、産科病棟職員、患者と医者、医療技術など、様々な横糸が張り巡らされ、破水、切迫流産、帝王切開と畳みかけるように出産へと緊張の展開です。読んでいて息つくひまもない印象です。 そして、このシーンなんですね。ここまで、けっこう緊張しながら読んできた徘徊老人は、マンガの登場人物の涙に、思わずもらい泣きというわけでした。「胎児のはなし」の中で、増崎先生は出産に立ち会った男性は泣くものだとおっしゃっていましたが、年のせいでしょうか、やたら涙もろくなっていることは認めますが、マンガの対面シーンで泣くとはねえ、困ったものです。 第二巻以降については、おいおい、名場面をご案内しよう目論んでおります。ああ、それから「胎児のはなし」(ミシマ社)・「女子柔道部物語」・「キングダム 56巻」はそれぞれ題名をクリックしてみてください。追記2022・09・24「コロナ編」を読みました。で、昔の感想を修繕しています。追記2020・01・23「コウノドリ19」の感想書きました。クリックしてみてください。ボタン押してね!ボタン押してね!【あす楽/即出荷可】【新品】コウノドリ (1-28巻 最新刊) 全巻セット
2019.12.19
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