そんなにカッコつけなくても♪

File.2★そんなにカッコつけなくても★
やはりこの話も学生時代のことである。ファイル1の事件の一年ほど前
のある春の日の出来事。当時そのぽんは流行のテニス部に在籍して
おり(きっちり、体育会である。間違っても「体育会系」ではない)
近所に住む「下宿組」の後輩の家にいりびたっていた。その日は昼前
から雨が降り出し、そのぽんはキャンパス内にある部室まで自分の
傘を取りに行くため、チャリンコを借り、小雨の中
後輩の下宿を出たのだった。部室は坂道を下って右折した所にある。

そのぽんの名誉のためにことわっておくが彼女は「チャリンコ暴走族」
とも呼ばれるほどの運転技術をもっているのである。
しかしその日は悪魔に魅入られていたのかもしれない
小雨でしっとり濡れうす~く砂や砂利が表面にあるアスファルイトが
いかに滑りやすいか、たかをくくっていたのだ。

いつもなら坂道を下ってからしばらく惰性で走り2本目の角を右折
していたのだが心が急いていたのか、下りきる前の
1本目の角をまがろうとしたが曲がりきれない!
このままでは植え込みに激突する!とハンドルを切った その瞬間!!
加速のついたチャリンコは激しい横滑りと共にスピンし、
(しない、しない!)そのぽんはあっと言う間に投げ出されたのだった。
衝撃のすごさにびっくりしつつもあたりを
見ると・・・春休みでもキャンパスを歩く人はいるのである。
遠くからめちゃくちゃ驚いた顔をして見ている二人連れ。
それを確認するなりそのぽんはシャキ~~ン!と起き上がり
脳天から出てるような声で「あ~~♪イタカッタ♪♪」と
一発かわいこぶってから飛び散った後輩のサンダルをかき集め
(結構遠くまで飛んでた)チャリを起こしてそそくさと角を曲がった
のであった。歩いている最中にヒザがやけに痛んできた。部室に着き、
鏡をのぞきこんで見るとそこには・・・・・・・・・・・・・・・・・
鼻から上唇にかけて見るも無残な傷を負ったそのぽんの顔があった。
ひざもみるみるうちに腫れ上がってきている。
そのぽんショックで本当に血の気が引いて貧血状態。一人、部室に
うずくまるのであった。とりあえず回復したのでスゴスゴと後輩の
下宿に戻ったが三人いた後輩が部屋に入ったそのぽんを見て三人全員、
あんぐり口を開けて絶句した姿を一生忘れないだろうそのぽんである。


その後は上を下への大騒ぎ。まず口の中もやられてたのでとりあえず
歯医者へ・・・。「ファイル1」の冒頭に登場した狸親父歯医者である。
彼はまずあきれた顔でこう言った。「人間てえのはなあ、『あぶないっ』
と思ったら顔をそむけるもんなんだ!地球とぶつかって勝ち目があるか!」
まあ、最後にばかやろう!とつかないだけソフトな方かもしれない。

看護婦さんが痛ましそ~~うな顔で口の中以外の顔面の傷に薬を
塗ってくれた。そして狸親父の治療が始まる・・・。
「あ~~こりゃあ、根っこまでいっちゃってるよ~~。抜かなきゃ
だめだなあ~」の声にそのぽんあせって「え~~!なんとかこのまま
治らないですか???」と口を開けながらも抗議しようとした
のも空しく、 ガキッ という音と共に、そのぽんは
前歯に永遠の別れを告げたのであった。

傷があるのですぐに歯は入らない。仮歯さえもだめと言われ、
前歯スカスカのまま数週間、そのぽんは先輩同輩後輩の嘲笑をかいつつ
切ない春を送ったのであった。

その後仮歯を狸親父に入れてもらったがこれが快調でなんと仮歯のまま
10年過ごしたのは唯一の「オトク」だったかもしれない。

しっかし、なにが恥ずかしいってやっぱりベロベロの顔で
「あ~~♪イタカッタ♪♪」などとかわいこぶったことである。
これぞまさしく 「どの面さげて」 の実践といえよう。



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