アンティークな琥珀堂

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素人に出来る、鑑別法



A.鑑別とは、その石かなにであるのか、天然石なのか合成石(あるいは処理石)なのか、それを判定することです。 鑑別の実際においては、さまざまな器具を用いた科学的方法によって、それを知る訳です。 

しかし、それらの器具は高価なものですし、操作方法に熟練しなくてはならず、第一、持ち運びに不便です。 もっと手軽で、やさしい鑑別方法はないのでしょうか。

肉眼検査というのがあります。 なんの器具も使わずに、じぷんの肉眼だけを頼りに鑑別するやりかたです。  ルーぺ検査というのがあります。 ルーぺとは、単レンズの小型拡大鏡です。 通常、倍率は10倍です。 これはポケットに入る大きさです。 宝石の内部を10倍に拡大して、その特徴を頼りに鑑別するというのがルーぺ検査です。 

肉眼検査
「プロは肉眼だけでホンモノかニセモノか分かると聞きました、これってほんとうですか?」というような質問を受けることがあります。 これはある意味ほんとうで、ある意味云い過きです。 プロの鑑別鑑定士や、熟練した宝石商などは、じぶんの肉眼だけを頼りに、宝石を識別できる場合があります。 しかし、ある種の天然宝石と合成石との識別は、肉眼だけでは困難なことが多く、合成製造の技術が日々進歩している現在、ますますそうです。

それらは、あとで述べるルーぺ、あるいは顕微鏡で拡大して、内部特徴を調べてみることが、どうしても必要です。  けれどそういう場合でさえ、外観の様子を見るだけで、なんらかの有力な手かかりを得ることができる場合があります。 もっと詳しく調べてみなくては分からないか、これはひょっとして合成石かもしれない、というような疑いをもてる場合があるのです。

これは大事なことです。 こういう鑑識眼は、非常に役立つものです。
優れた鑑別鑑定士ほど肉眼検査を重要視します。 まずじぷんの眼で見て、その石がなになのか見当をつけておくと、あとの器具を使った本格的な検査がやりやすくなるからです。

プロの鑑別鑑定士や熟練した宝石商が見るのは、宝石の外観の様子です。 石の表面の光の反射具合(これを光沢と云います)を観察します。

たとえばダイヤモンドは、特徴的な金剛光沢を示します。 ファイアとよばれる、虹色の光の分散効果ともあいまった、独特の外観です。  ある種の合成石やイミテーションは、あまりにキラキラしすぎて、不自然で人工的な印象を与えるでしょう。 ダイヤモンドを見慣れた眼には、このちがいが分かります。

ルビーやサファイア、エメラルドやひすいでも、その光沢と独特の色の様子を観察して、見当をつけます。 数多くのホンモノを見続けてきた眼が、それを教えるのです。
もうひとつ、肉眼で見当をつけるときに、知っておくといいのは、石を見る角度をいろいろ変えてみることが大切だ、ということです。 つまり、石を上からだけでなく、横からも、下からも見てみること。  多色性という性質をもった宝石があります。 見る角度によって、二色(三色)の色が見えるという性質です。 アイオライトはブルー・サファイアによく似た青色の宝石です。 けれどこれは著しい多色性を示す宝石なので、見る角度を変えると、ちがった色が現れます。 タンザナイトもまたそうです。 けれどサファイアはそれほどの多色性を示さないので、区別がつく訳です。 

また、張り合わせ石というのがあって、これは二つ以上の石を組み合わせて作ったものなのですが(Q10参照)、こういう石のもっとも有効な見破り方は、石を横から見て、その接着部分を見つけることです。 天然石にそのような接着部分があるはずがありません。 これは石を上から見ただけではわからないことです。


光源を利用するのも有効です。 ペンライトというものがあります。 これはペン状のライトです。 ボールペンみたいに胸ポケットなんかにさしておけるようになっています。 このペンライトの光を、石の底部から照らして、上から見ると、内部の様子が、肉眼でも見やすくなります。 内部キズの様子を知りたいときにはこれは便利です。

さて、以上のようなのが肉眼検査です。 専ら、石の外観の様子を見ることが目的でした。 ペンライトで照らしてやると、内部は見やすくなるのですが、それほど多くのことは知れません。


もう少し詳しく見るには、拡大してみることが必要です。 それを可能にするのが、ルーぺ、小型の拡大鏡です。

ルーペ検査
ルーペとは単レンズの小型拡大鏡です。 倍率は10倍のものを選ぶといいでしょう。 これはポケットに入る大きさです。



このルーぺというのは、手軽な割に、たいへん役に立つ器具です。 ルーぺで石の内部を覗くだけで、あっ、これはニセモノだ、なんて分かったりもします。 使いかたに債れると、ものすごく役立ちます。

優れた鑑別鑑定士ほどルーぺによる拡大枚査を重要視します。 これは肉眼検査の場合と一緒です。 基本に忠実なだけでなく、肉眼やルーぺ検査である程度の見当をつけておくと、あとの本格的な器具を使った検査をするときに、無駄が省けて、スムースに事が運ぷという利点があるからです。

あるいは、宝石のセリ市なんかに参加するバイヤーたちも、みんな10倍ルーぺをもっています。 内部キスの多い、品質の悪いものや、ましてやニセモノなんかを買わされてはたいへんだからです。 大きな顕微鏡を持ち歩く訳にはいきません。 そこで、ポケットに入るルーぺか強い味方で、損な出費から身を守ってくれるという訳なのです。

ルーぺを使って知れるのは、宝石の内部の様子です。 宝石の内部の様子が分かると、ひとつにはその宝石の品質、つまりどの程度の価値があるものなのかということが推測できます。 それからもうひとつ、天然石(ホンモノ)かどうかを判断する、有力な手がかりを得ることができます。

宝石の品質は、宝石内部のキズ(専門用語ではインクルージョンと云います)の有無、あるいは多寡、もしくはその状態によって決まります。 たとえばエメラルドはたいへんキズの多い宝石です。 エメラルドにキズあるのは杜方ないことです。 しかしキスのすくないエメラルドほど価値があるのも裏実です。 また、キズが比較的すくなくても、目立つキズが石の中央にあったりすると、価値は下がります。 キズの状態によっては、割れの危険もあるので、こういう点も詳しく検査しておく必要があります。 これらのルーぺで知れる情報は、バイヤーたちにとってはたいへん大切なことです。

ただ、ここで理解しておいてほしいのは、それは10倍の拡大検査であるということです。 ルーぺでキズがたくさん見えるからと云って、否定的な気持ちになりすぎないように。 それは肉眼では見えないキズかもしれません。 肉眼で見えないキスは、致命的なものではありません。 キズがあまりに多すぎて、透明度が著しく損なわれていたり、割れの心配があるような大きな亀裂がある以外は、それほど神経質になる必要はないと思います。 エメラルドのような宝石の場合は特にそうです。 天然で産出する宝石に、ふたつとして同じものはなく、完璧な品質のものはひとつとしてありません。 そのことを理解しておいてください。

それに、キスの有無を積極的な意味に転じれば、まさにそのキズこそが天然石の、疑いのない証拠にもなり得ます。

天然石は特徴的な内部横造をしています。 天然石は、自然のなかで長い時間をかけて成長する訳ですから、その痕跡をどこかに残している訳です。 ところが合成石は短い時間で人工的につくられるものですから、天然石がもっているような痕跡を残すのは難しい。 そこで区別がつく訳です。

キズのない、クリーンすぎる内部は、合成石の疑いがあります。 ぷつぷつとしたまるい気泡のようなものが見えたら、ガラスの疑いがあります。

もちろん、合成石の技術はどんどん進歩していて、天然石と紛らわしい内部構造をもつものもあります。 これらはルーぺだけではっきり区別することは不可能でしょう。 それでも、なんらかの疑い(ひょっとして合成かもしれないという)をもつことができる場合が多いのも事実です。 はっきり断言できないけれど、ひょっとして……という疑いをもつことが、どんなにだいじで役に立つかは、バイヤーのひとたちがいちばんよく知っているはずです。

さて、ルーぺの使いかたは簡単です。
眼はレンズにできるかぎり近づけてください。 そして石はレンズから約2.5cm離れたところで持つこと。 レンズを石に近づけて、遠目に見ようとしたり、頭をぐらぐら動かしたりして見るひとがいますが、これはいけません。 レンズは眼の近くでしっかり固定して頭を動かさないようにしてください。 安定のために、両肘を机の上につけるといいでしょう。
最初は焦点を合せるのに苦労するかもしれませんが、すぐに慣れます。

また、ルーぺとともにペンライトを併用すればより効果的です。 石の底部をペンライトの光で照らしてやると、石の内部がよりはっきり映しだされます。 ルーぺとペンライトを同時に扱うのは最初難しいかもしれませんが、トライしてみてください。

以上のように、ルーぺもペンライトも手軽な器具で、ポケットに入る大きさです。 けれど使いかたに慣れて、多くの石を見て、経験を積めば、多くのことが知れるはずです。 肉眼検査と併せて、ルーぺ検査にも熟練すれば、プロの眼にぐっと近づけて、損しない、上手な宝石選びができるごと、間違いなしだと思います。 ぜひ実践してみてください。

Q5.宝石の鑑別と鑑定ってちがうものなの?
A.こたえはイエスです。鑑別と鑑定では、その目的もちがえば方法もちがいます。 
鑑別とは、その宝石の持つ化学的・物理的性質を検査することによって、種類はなにであるのか、 天然石なのかどうか、人工的な処理はされているかどうか、を識別することです。 大ざっぱに云 えば、ニセモノとホンモノを区別する検査が鑑別です。 

それに対して、鑑定は、ダイヤモンドにのみ、関係します。 それがダイヤモンドであると証明さ れたら、その結論のうえに立って、こんどはそのダイヤモンドの評価を、キズの有無(クラリ ティ)、色の等級(カラー)、プロポーションの減点(カット)及びその石の重量(カラット)等 について詳しく検査することによって、等級づけ、します。 そのダイヤモンドがどの程度良いも なのかを知る、それが鑑定です。 だからこれは価格に対する重要な目安にもなるのです。  鑑別も鑑定も、鑑別鑑定士のライセンスをもった者が行 います。 そして鑑別は鑑別書として、鑑定は鑑定書として発行されます。 

なお、そのライセンスは、国家試験ではありません。 もっ とも有名で、世界レベルで通用するライセンスは、英国宝石学協会が認定し発行するFGAライセンスと、米国宝石学会(GlA)が認定・発行するGGライセンスの二つで す。 現在、ライセンス取得を希望するひとのほとんどが、 そのいずれかのカリキュラムを受け、試験にチャレンジ しています。 英国宝石学協会は、宝石学から鉱物学に至 る、学術的な色彩の強いカリキュラムに定評があり、 一方GlAは、独自のダイヤモンド等級づけシステム、GlA方 式を開発し、世界に広めたように、より実用的、即戦的 なカリキュラムに特徴をもっています。




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